必ず読んでください。
~陸斗side~
親父が自殺してから1年が経ったとある日の夕方のできごとだった。その日も俺は紛争を終わらすために何百人もの女性を斬ってきた帰りだった。
家に帰る途中、近くの公園で一人で泣いている女性を見つけた。
このご時世、女性がこんな公園で一人で泣いているなんて言う光景はめったにないことである。
何を思ったのだろうか、俺はその人に近づき、声をかけた。
「お嬢さん、どうかしたのですか?」
その女性の特徴はウサギの耳のようなカチューシャ。
「私、私、どうしよう……。妹に、妹に……。」
「一度落ち着いてください。何があったのか聞きますから。」
自分でも何をしているのだろうと思った。修羅の道を歩むと決めたはずなのに、こんなことをしているなんて。
「グスッ……。君は私の話、聞いてくれるの?」
「はい。僕でよければいくらでも聞きます。ですから一度泣き止んでください。周りから見ればこれ僕があなたをいじめているようにしか見えませんから。」
「うん。わかった。それじゃあ聞いてくれるかな?」
「ここで話すのもなんですから、僕の家に来ます?この近くなんです。お茶ぐらいしか出せませんが……。」
その女性は何も言わずにうなずいた。
「わかりました。それじゃあ行きましょう。」
俺は彼女の手を取り、俺の家へと案内した。
~陸斗の家~
「はい。ひとまずお茶でも飲んでください。安物で悪いんですけど、うちにはこれしかありませんので勘弁してください。」
「ありがと。君は優しいんだね。傍から見たら私って変な人にしか見えないよね?」
確かにそうだ。こんなウサミミカチューシャつけてる人なんて変人以外の何物でもない。
「自分でも不思議です。まあそれより、どうしてあんなところで泣いていたんですか?」
「それはね……。」
それからいろいろ聞いた。一番驚いたのは彼女がIS開発者の篠ノ之束だったことだ。
彼女が泣いていた理由は、『妹に嫌われた』ことだった。なんでも、その妹さんには意中の人がいたらしく、束さんがISを開発したせいで、妹さんは転校を余儀なくされ、その意中の人と別れなくてはいけなくなったらしい。
その時、妹さんが束さんに向かってこう言ったらしい。
『姉さんのせいで別れなくてはいけなくなったんだ!姉さんなんか嫌いだ!何でISなんかを開発したんだ!目の前からいなくなってくれ!』
この一言に衝撃を受けた束さんは、家を飛び出し、あそこで泣いていたらしい。
「妹、か……。」
忘れもしない、俺にも妹がいた。
「君にも妹さんがいるの?」
「正確には『いた』ですね。」
その言葉を聞いたとき、束さんは顔をしかめた。
「どういうこと?それにおうちの人はどうしたの?仕事?」
「いえ、そういうことではないんですが……。」
俺はすべてを話した。今までの出来事、そして今俺がやっていること。そして俺の本名のこと、最後は俺の二つ名のことを。これを聞いたらきっとこの人は俺から離れていくだろう。こんな人殺しと同じ空間にいるというのはどんな人でも嫌に決まっている。
だが、帰ってきたのは予想外の一言だった。
「ごめんね。私がISなんてものを開発しちゃったばかりに君にもつらい思いをさせたね……。」
俺はこの言葉にどこか違和感を覚えた。
「失礼ですが、束さん、あなたはどうしてISを開発したのですか?」
俺は今までずっと聞きたかったことをこのタイミングで聞いた。なぜかといわれるとわからないが、俺の勘がこれを聞くべきだと教えてくれたからだ。
「私はね、本当は宇宙に行きたくてISを開発したの。」
衝撃だった。この人は何も悪くない。だって宇宙は誰しもが行ってみたいと思う場所である。
「でもね、誰にも認めてもらえなった。だから私は自分の持てる力をすべて使って、そして友達にも手伝ってもらって、『白騎士事件』を起こしたの。おかげで私の開発は注目された。だけど、本来の使用目的ではない方向で使われ始めたの。本当にごめんね、りっくん。」
そうだったのか。俺はこの時思った。この人は悪くない。たしかに手段としては危険な手段を用いた。だけどこの人がやろうとしたことは無下に扱われていいものではないと思った。
俺はこれまでの考えを改めた。『ISをすべて破壊する』ことが目的だったが、この時、俺は目標を『ISを救いだし、本来のあるべき姿に戻す』にかえた。
そして同時に気付いた。この社会での俺の敵を。
「束さん、俺とくみませんか?俺は人外な力を持ってる。そしてあなたには技術力と権力がある。もう一度、宇宙を目指してみませんか?」
「……りっくんは私のこと恨んでないの?家族を引き裂く元凶を作り出したんだよ?」
「あなたは何も悪くありません。あなたはただ宇宙を目指しただけ。夢を追いかけただけなんです。だから、あなたがそんなに罪を背負うことはありません。僕の罪は自業自得ですので一生背負っていくつもりです。ですがあなたの罪は他人に擦り付けられたものなんです。あなたのような人がそんな罪を背負うことを僕は耐えられない。」
「りっくん、君は優しいんだね。」
違う、俺は優しくなんてない。結局は人殺しなんだ……。
「俺は、優しくなんてない……。こんな血にまみれた人間が優しいなんてことがあるはずがないんだ……。」
「りっくん……。わかった。束さんはりっくんと一緒にもう一度宇宙を目指すよ!」
「そうですか。それはよかった。ではこれを。」
俺は一枚のメモ帳を取り出した束さんに渡した。
「なにこれ?」
「そこに俺の連絡先が書いてあります。俺はこんな生活をしているので、住居はコロコロと変わります。ですから何かあったときはそこに書かれてる電話番号かアドレスに連絡をください。」
「わかった。ありがとね!りっくんのおかげで元気出た!それじゃあ今日は帰るね!ばいばい!」
そう言うと、束さんは恐ろしいスピードで帰って行った。
この日を境に、俺の人生はほんのわずかだけ変わったのであった……。
この時の束さんは箒に罵声を浴びせられたことで弱気になっていたため、陸斗とまともに話しただけです。
普段は原作と同じで、他人には興味ありません。
陸斗にはこの一件によって興味を持ったため、今後もかかわっていくことになります。