今のところおかしなところはないと思うのですが、もしあったら教えてください。
お願いします。
~陸斗side~
束さんと出会ってから1カ月が経った。あれ以降、束さんは毎日メールを送ってきている。といっても内容はなんの変哲もないものなのだが、返信がめんどくさいので返すか返さないかは半々だ。
今日はアルバイトだった。
神様がそうしたのだろうか、俺はまだ小4だというのに身長が162cmもあるため、小さい高校生に間違われるのだ。実際筋肉も結構つけた(主に修行で)。そのおかげで、年齢詐称をしてバイトができているのである。
アルバイトと言っても危ないものではなく、近所のコンビニでレジ打ちやら商品の仕出しやらをするだけだ。で、今日もコンビニの売れ残りの弁当やら惣菜やらをもらってきたのだ。
その帰り道、突然俺の携帯が鳴る。マナーモードにしたはずなんだが……。設定し忘れたのかな?
俺は不思議に思いながらも携帯を開けると、そこには意味不明な文字が並んでいた。
『プリティー束さんからのメール 1件』
「は?」
思わず声をあげてしまった。
いや、そりゃあげるでしょ。だって、普通は『受信メール 1件』だろ?あのウサギめ、やりやがったな。
まあいいや。ひとまず見てみよう。
『今日りっくんに会わせたい人がいるから、9時にあの公園に迎えに行くね☆』
「……は?」
本日2回目。マジでこれなに?なんかのいたずら?いや、でも束さんからの誘いだし、断ったらどうなるか……。
「まあいいか。行ってみるか。」
気が進まねえけど、行くしかないか……。
~公園にて~
というわけで、公園についたのだが……。
「どこにいるんだ、束さん。」
「りっく~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!」
後ろからの気配を感じ、体を横に動かす。
「うわっ!ぶっ」
見事に俺の目の前にあった柱に激突。
「りっくん酷いよ~。束さんの愛情をよけるなんて……。受け止めてよ~~。」
束さんが涙目になりながらこっちに歩いてくる。
「後ろからの気配にはいつも警戒しているもので……。すみません。」
「む~。まあいいや。それじゃあこっちに来て!今からちょっとばかり空の旅をすることになるから!」
束さんに連れてこられた先には、小さい円形の窓が2つついた鉄の塊があった。
「あの、束さん、これは……?」
「これ?束さんが開発した、『ミニ旅客機』だよ~!」
……へ?なにそれ?
「これから束さんの住んでるところに行くからこれに乗ってね!」
束さんが俺の背中を押す。
「い、いや、ちょっ、待ってください!俺自分で飛んでいきますから!」
「だいじょぶだいじょぶ~。りっくんが自分で飛んだらお話ができないじゃないか~。ほら乗って乗って!」
「い、いやだ~~~!」
こうして、俺はミニ旅客機(?)に乗せられたのであった……。
現在、俺は束さんの家にいる。なんでも、束さんは政府やらなんやらの保護下に置かれているらしい。そんな家に行って大丈夫なのか?と思ったのだが、束さん曰く、『あんな監察官たちを出し抜くなんて簡単すぎて嫌になっちゃうね~』とのことらしい。事実、今俺はこうして無事(?)に束さんの家に入っているのだ。
「はいこれジュース。」
「礼は言いませんよ、束さん。」
「も~つれないな~。まあいいや。それじゃあさっき言ってた『会ってほしい人』に今から会ってもらえるかな?」
「いいですけど、誰なんですか、その人?」
もしこれが俺を殺すために来た刺客だというのであれば俺は容赦はしないつもりだ。
「り、りっくん、そんなに身構えないでもらえるかな?大丈夫、その人は束さんの大親友だから!」
まあいい。一応いつでも斬魄刀を出せるようにしておこう。
「わかりました。で、その人はどこに?」
「隣の部屋だよ。じゃあ呼ぶね?ちーちゃん、入っていいよ~!」
束さんがそういった瞬間、おそらく隣の部屋と通じているであろう扉が開く。
「まったく、束、事前に何があるか言ってから連れてきてくれないか?毎度毎度振り回されたのでは私の身がもたんぞ。」
開いた扉の先には、すらっとしたクールな女性がいた。見る限りその身のこなしや筋肉の付き方から、ある程度はやるみたいだ。
「りっくん、紹介するね!この人が束さんの大親友のちーちゃん!」
「織斑千冬だ。この馬鹿が迷惑をかけたようだ。すまない。」
スッと手を差し伸べてくる。これは握手を求めているのか?
「で、ちーちゃん、この子がりっくんだよ。」
「とう……。西條陸斗です。別になんとも思っていないのでそう悩まないでください。よろしくお願いします、織斑さん。」
織斑さんの手を取る。
「千冬でいいぞ、陸斗。こちらこそよろしく。(この手は……。)つかぬ事を聞くが陸斗、年はいくつだ?」
「ちーちゃん、りっくんはいっくんと同い年だよ!」
「(なんだと!?一夏と同い年でこの手……こいつは一体……)そうは見えないな。」
「よく言われます。それより束さん、いっくんって誰ですか?」
「いっくんはね、「私の弟だ。」……むぅ。束さんがお話してるんだぞー!」
束さんの代わりに千冬さんが答えてくれた。
「ちなみに名前は一夏という。さっきも言った通りお前と同い年だ。」
「そうなんですか。」
「また今度でいいから会ってやってはくれないか?」
「いいですよ。それじゃあ束さん、今日はもうバイトで疲れて眠いんで帰っていいですか?」
『バイト』という言葉を聞いた瞬間に千冬さんの顔が歪んだ。
「バイト?陸斗、お前親は「ちーちゃん、そこから先は踏み込んじゃいけないよ。ごめんね、りっくん」
「いいですよ、別に。もうあれは気にしてません。それと、千冬さんが詳しいことを知りたいって言うなら全部話してくれてかまいません。」
「全部って……。あの二つ名のことも?」
「はい。それじゃあ俺は帰ります。また会いましょう、束さん、千冬さん」
俺は束さんの家を後にした。
~千冬side~
陸斗が帰ってから場には重い空気が漂っていた。そんな中、沈黙を破ったのは束の方だった。
「ちーちゃん、あのね、まだ16の束さんやちーちゃんが背負うには重すぎるほどの重荷をりっくんは背負ってるの。でもね、りっくんはそんな重荷に耐えてるの。束さんはりっくんを支えるって覚悟した。ちーちゃんはどうする?別にここで引いても束さんは何も言わない。決めるのはちーちゃんだから。」
「……。そんなことだろうと思った。手を握った瞬間に理解したよ。あいつは相当な実力者だ。それも私が足元にも及ばないほどの……。いったいあの年で何があったんだ?何があいつをあんなにしたんだ?」
私にはなにも予想がつかない。わかることはただ一つ、あいつは並の人生を送っていないということだけだ。あの年でバイトという時点でおかしなものだ。
「ちーちゃん、それを聞くってことはりっくんを支える覚悟はあるってことかな?」
「……ひとつだけ教えてほしい。陸斗がああなった原因は私たちにあるのか?」
「本人は否定してるけど、束さんは束さんに責任があると思ってる。……ちーちゃん、白騎士事件、覚えてるかな?」
「!!」
忘れるはずがない、あの事件。
「束、あれが関係しているというのか?」
「直接じゃないよ。直接じゃないけどあの事件の後に広まった風潮がりっくんの人生を狂わせたんだ。」
『女尊男卑』。確かにあれは私たちのせいだ。束の発明を広めるためとはいえ、世の中の男性には酷な風潮を広げてしまったと今でも罪悪感を感じている。
「そういうことなら、私にも責任はある。覚悟はもう今この瞬間決めた。束、陸斗のことを教えてくれ。」
それから先は想像を絶するものだった。
束からすべてを聞いた。名前が『東城海斗』だったこと、妹と生き別れになったこと、母親に見捨てられたこと、親父に殺されかけ、自殺したこと。そしてなによりも、世界各地の紛争で、男性を助けるためにという理由で女性を殺してきたこと。
確かに殺人は許されたことではない。ただあれほどの人生を生きてきたものが、簡単に男性を殺す女性たちを見て落ち着いていられるだろうか?
私にはわからない。わかるはずがないんだ。あいつの気持ちはあいつにしかわからない。だけど……。
気が付くと涙が頬を伝っていた。
「束、私はあいつを支える。いや、あいつに『愛』を教えてやりたい。私たちが奪ってしまった『家族』の代わりになるとは思わないが、それでも私は陸斗を助けてやりたい。」
「ちーちゃん……。」
「束、陸斗の連絡先を教えてくれ。少しでも陸斗と触れ合う機会を増やしたい。」
「うん!!」
陸斗、お前を絶対に見捨てたりはしない。だから……。
この日、私と束は、『陸斗を支える会』を設立した。