おかしなところがあれば指摘してください!
それでは、どうぞ!
~千冬side~
あのあと、陸斗を病院に連れて行き、医者に診断してもらったところ、『過労』と診断された。ただ、吐血したということで、少しの間入院してもらうとのことだ。
陸斗本人はというと、病院のベットでずっと寝ている。一夏を救助してからもう1日が経とうとしているのに一向に目を覚まそうとしない。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえる。
「千冬姉、一夏だけど」
「一夏か、入ってこい。」
一夏が病室に入ってくる。
「一夏、お前は大丈夫だったみたいだな。」
「ああ。そこにいる人が守ってくれたからな。」
「そうか。」
「それで千冬姉、その人は一体誰なんだ?」
「こいつは西條陸斗、歳はお前と同い年だ。」
「これで同い年!?」
そう、陸とは中学1年生とは思えないほど大きく、髪もボサボサでどこかおじさんのように見える。
「そうだ。こいつは少しわけありでな、元々は束の知り合いだ。」
「ええ!?束さんの!?」
一夏が驚くのも無理はない。束は多少は他人と話すといっても、興味のない人間とはほとんど会話を交わさないのだ。その束の『知り合い』だというのだから一夏の反応は当然のものなのだ。
「束の紹介で私も知り合ってな。」
「そうだったのか。でもなんで助けに来てくれたんだ?」
「……それはわからない。あいつの目が覚めてから聞かないと、な……。」
「そうか。わかった。陸斗の目が覚めたら呼んでくれ。」
そう言って一夏が病室を出ていこうとする。
「一夏!」
「ん?なんだ、千冬姉?」
「……目が覚めたら陸斗と仲良くしてやってくれないか?」
「もちろん!」
一夏は右手の親指を突き出し、笑顔で返事をした。
「そうか。引き止めて悪かったな。」
「じゃあ千冬姉、ちょっと外で気分転換でもしてくるよ。」
「ああ。」
一夏はそのまま病室を後にした。
コンコンコン
「はい。」
「ドイツ軍特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ、クラリッサ・ハルフォーフです。少しお話を伺いたいのですが。」
「どうぞ。」
「失礼します。」
軍服に眼帯という格好をした若い女性が入ってくる。
「この度は「決まり文句は必要ない。単刀直入に話してくれ。」
「そうですね。それじゃあ聞かせてもらいます。その方があの
「……そうだ。」
「やっぱり……。その方の名前は?」
「……その質問に答える前に聞かせてくれ。」
もし陸斗のことが軍全体にバレたらおそらく陸斗は追われる身になってしまう。それだけは絶対に避けたい。
「このことを軍全体が知っているのか?」
「いえ、知っているのは私だけです。」
「じゃあこのことを軍全体に知らせるつもりはあるのか?」
「……。正直なところ、迷っています。おそらくあなたとその方はなにやら親密な模様。もしその方を軍に突き出せばあなたを敵に回すことになる。それだけはこちらとしても嫌ですからね。」
……こいつになら話しても大丈夫か?
「わかった。お前の質問に答えよう。こいつの名前は西條陸斗。ちなみに勘違いしているようだから言っておくが、こいつはまだ中学1年生だ。」
「!!そ、それは本当ですか!?」
「ああ。『なぜそんな子供が
「そ、そりゃそうですよ!
「それが当たり前の反応だろうな。ただ一つだけ勘違いをしている。」
そう、陸斗は『女性』を無差別に殺しているわけではないのだ。
「確かに殺人は褒められる行為ではない。むしろ裁かれる行為だ。だが今この時もこの世界では女尊男卑の思想に染まった女性によって『虐殺』されている男性がいるのだ。陸斗はそんな男性を守るためにやむなく女性を殺している。確かに過剰な行為ではある。しかし『虐殺』は言い過ぎだとは思わないか?」
「……。それでもやはり……。」
「ならば聞く。男性たちを虐殺している女性たちにはなんの罪もないというのか?」
「!?」
「軍にいるお前が、市民を守るためにやむなく敵を殺してしまった時はどうなんだ?ISに乗っている限りその可能性も皆無でもなかろう?」
「それは……。」
質問に対して口ごもる。
「口ごもるということは否定はできないのだろう?」
「ですが、私たちは正義のために「ならば正義とはなんだ?」それは…………。」
「何が正義だとか何が悪だとか、それは勝手に人が判断しているだけだ。」
「……。」
「個人がそれぞれの『正義』を持つことは大事なことだ。私にも陸斗にも違う『正義』がある。私は自分の正義や陸斗の正義をクラリッサ殿に押し付けるつもりはない。だが、陸斗の正義を否定しないでやってほしい。」
クラリッサが少し俯く。
「……分かりました。それでは最後に一つだけ聞かせてください。その子が女性を殺してまで自分の『正義』を貫きたい理由は何ですか?」
「……。それは私の口からは言えない。本人に許可を取っていないというのもあるが、何よりも陸斗の覚悟は陸斗にしか語れない。私が言っていいものなんかではない。」
「……。わかりました。軍から何かあったら私の方からお伝えします。織斑さんの方も何かあれば私の方に連絡をください。これ、私の連絡先です。」
そう言ってクラリッサが名刺のようなものを渡してくる。
「ああ、わかった。今回のことは世話になった、ありがとう。」
「いえ、軍として当然のことをしたまでです。それではまた会いましょう。」
「ああ、また会おう。」
クラリッサは一礼して病室を出ていった。
~陸斗side~
あれ?ここどこだ?
見回しても真っ白な空間。何もない。上も、下も、右も、左も。どこを見まわしてもなにもない。というよりも本当に俺はここに『いる』のだろうか?
「俺は…………たしか千冬さんに頼まれて一夏君を助けに行って…………敵に囲まれたから≪須佐能乎≫でずっと一夏君をかばっていたんだが……。」
ああ、思い出した。
「そうか、あの後千冬さんが助けに来て敵が全員逃げて行って……その後俺力を使いすぎて倒れたんだった……。」
ということは……。
「ここは、死後の世界?」
≪お前は……海斗か……?≫
「!?なぜ俺の昔の名前を知っている!?」
その瞬間、周りが黒と赤に染まった。
≪儂はお前の父親じゃ≫
「父親!?そんなことあるはずがない!父親はもう7年前に死んだ!」
そう叫んだとき、目の前に
≪この姿、お前ならよくわかっておるじゃろう?≫
「!!ま、まさか親父が
≪そうじゃ。お前を殺しに来た≫
「ふざけるな!この世界に
目の前の
≪海斗。お前というイレギュラーがいる時点で、この世界はもう変わってしまっているのだ。おとなしく現実を受け入れるのじゃ!≫
「ちっ!親父を殺さないといけないのかよ!」
俺は死神の力を解放しようとする。
「!!死神の力が使えない!?」
≪死ね!≫
「う、うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
~千冬side~
「もったいないな、陸斗。お前はこんなにも顔が整っているというのに……。」
陸斗が寝ているベッドの横にある椅子に腰かけ、陸斗の頬を撫でる。
陸斗は誰がどう見てもイケメンだろう。普段わざと髪型をワックスでぼさぼさにして根暗な雰囲気にしているが、しっかりと髪型を整えるととてつもないイケメンだ。正直なところ、姉弟としてどうしても贔屓目で見てしまう一夏と比べてもその差は明らかなぐらいイケメンだ。
もちろん一夏もかっこいい部類に入る。たまに家に遊びに来る一夏の友達が『千冬さん、この前もまた一夏のやつ告白されたのにそれに気づきませんでしたよ。』と逐一報告をしてくれるくらいだ。
陸斗は一夏を凌駕するほどのイケメンだというのにあの出来事が陸斗にトラウマを植え付けているのだ。『自分はこの顔のせいで父親に殺されかけた』というトラウマを。こんなところでも私は陸斗を苦しめているのか……。
しばらく陸斗の頬を撫でた後、一度病室の換気をしようと窓の方向へと歩み寄った。
その時だった。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
急に陸斗が叫びながら起き上ったのだ。
「陸斗!どうした!?」
一瞬叫び声にびっくりしたが、すぐさま陸斗の様子を確認する。
「……父さんが、父さんが俺を、俺を殺しに……。」
顔を手で覆いながら震える陸斗。微かな声ではあるが、私の耳にははっきりと聞こえた。
「陸斗!聞こえるか、陸斗!」
陸斗の肩をつかんで声をかけるが震えてさっきと同じ言葉をつぶやき続ける。たまらなくなった私は陸斗を抱き寄せた。
「陸斗、落ち着け。ここには私と陸斗しかいない。ゆっくりと深呼吸をするんだ。」
数回深呼吸をした後、どうやら落ち着いたみたいで、陸斗の震えは収まり、落ち着いた表情になった。
~陸斗side~
千冬さんに抱きしめられ、そして言葉をかけられたことによって落ち着きを取り戻した。だが未だに抱きしめられている状況だ。
「……千冬さん、ありがとうございます。」
「落ち着いたか?」
「はい。」
「そうか、それじゃあ……」
そう言って抱きしめている腕の力を緩めていく。
「あの、もう少し抱きしめてもらってもいいですか……?」
「……ああ、いいだろう。」
千冬さんはクスッと笑い声を漏らして再び抱きしめてくれる。こうして抱きしめられるのは実に何年振りだろうか?10年ぐらいか?こうして抱きしめられているとすごく心地いい。千冬さんの温もり、千冬さんの香り、そしてなにより千冬さんの優しさ。その全てで俺を包んでくれている。
こうして抱きしめられて10分ぐらいが経過しただろうか、徐々に涙が零れ始める。服が湿ったことで気付いたのか、千冬さんが声をかけてくる。
「陸斗、泣きたいのなら泣けばいい。私が抱きしめていてやるから、遠慮などするな。今までたくさん溜め込んできたのだろう?お願いだから、もう我慢はしないでくれ」
「あ、あ、あ、あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
千冬さんの言葉に俺は耐えきれなくなった。涙を流したのなんていつ振りだろう?少なくとも両親が離婚してからは泣いてない気がする。今まで溜め込んできたものを千冬さんはすべて受け止めてくれた。いや、包み込んでくれた。この温もりは一生忘れられない。
千冬さんの温もりの中泣いたこの日、俺は千冬さんに恋をした。