町人Aは逆ハーヒロインに狙われる 作:いちおう匿名。いちおう
アレンサイドの27話!入学するぞするぞ。おら、あくしろよってところです。
桜舞う季節、ついに俺は乙女ゲーの舞台である全寮制の王立に入学した。
理由はもちろん、町のみんなを守るために悪役令嬢断罪イベントをぶち壊すこと。そのために今まで準備を重ねに重ねてきた。冒険者ランクも最年少でCになったし、レベルも37まで上がって、ゲームだとラスボスに挑めるくらいだ。師匠との剣の鍛錬も欠かせていない。目立ちたくない俺にとって、入学試験では派手な魔法は使えないから剣術が重要だったしな。
ちなみに俺のステータスは【隠密】スキルで風魔法以外全て隠蔽している。平民でレベル37とか怪しすぎるし面倒事は起こしたくない。いくら課金アイテムとは言え気配も消せるし、ほんとこのスキルは便利すぎる。
とはいえ、教室で隠密スキルを使うわけにもいかず、目立ちたくない俺は教室に1番乗りしてそそくさと窓際最後尾、通称「主人公席」を手に入れることに成功した。まぁ俺自体は平民モブだけどな。
俺のクラスはA。この学院は成績順でAとBの2クラスに振り分けられていて、つまりAクラスはエリートクラスだ。さらに、入試では落とされないよう魔法以外全力で挑んだせいか、俺は平民ながら入試ランキング2位(1位は王太子)を獲得してしまい、原作で2位だったヒロインのエイミーを抜かしてしまった。扱いも「一般(平民)」ではなく「特待生」だ。違いはよく分からないが。
正直断罪イベントまでは目立ちたくなかったし、イベントに介入する気もあまりない。だから別にBクラスでいいんだけど。……というよりBクラスが良かった。
平民はBクラスには3人、Aクラスは俺1人だけ。この国のルールで平民は貴族側から許可がない限り、こっちから話しかけることはできない。そして貴族は平民なんか眼中にない。
……つまりはぼっち確定である。
確かにぼっちは目立ちにくいんだけど、俺も人間で、学院での青春を全て諦めたわけじゃない。人並みには友人も欲しいし、友人との学院イベントというのも期待していたんだ。
「こんにちはぁ」
俺が絶望を味わって俯いていると、ふと隣から声が聞こえてきた。顔を上げると、そこには予想外の人物がいた。
「あたし、エイミー・フォン・ブレイエスです。特待生のアレンさんですよね?よろしくお願いしますぅ」
馬鹿な?この入学式でヒロインは王太子を見てドキドキしているというイベントのはずだ。ランキングで抜かしたのもあるし、俺というイレギュラーが狂わせたのか?
「はじめまして、エイミー様。俺はアレン、平民のアレンです。よろしくお願いします」
とりあえず身体を向け、平民が貴族に対する臣子の礼をしてから俺は平静を装って返した。しかし、俺は動揺を隠し切れなかったのか目の前にいるエイミーは可笑しそうに笑って言う。
「ふふ、エイミーで良いですよぉ。私は元平民ですし、貴族に対する礼もいりませんわ」
「え、えっと……エイミー、でいいん、いいのですか?なら俺のこともも呼び捨てで構いません」
「くすくす、敬語もいりませんよぉ。普通に接してくださいねぇ」
最初は思わずぼっちから逃れたことに安堵してしまったが、ゲームにないエイミーからの予想外すぎる好待遇に、俺は内心でかなり困惑した。ゲームのエイミーは基本的に自分から積極的に話す性格ではないし、おまけに敬語まで要らないと言われ、ただの平民モブの俺になぜそこまでするのか、俺はいよいよ混乱し始めた。少なくとも原作ではこんな展開は無かった。ゲームだと平民がまずほとんど登場しなかったが、大抵出ても敵キャラだったし……。
エイミーは混乱する俺を見てもなお、楽しそうに笑っていて、俺はとりあえず礼を言おうと席を立って頭を下げた。
「あ、ありがとうござ……ありがとう、エイミー」
いちいち吃ってしまう俺に対しても、エイミーは終始笑顔だった。
か、かわいい……。
さすがは乙女ゲーのヒロインだ。この可愛らしさ、そして平民モブの俺に対等に接する慈悲深さに攻略対象達が落ちるのも無理ない、と俺は思ってしまった。
……いやいや!でも断罪イベントだけは全力で妨害するけどね!
しかし、エイミーってこんな甘ったるい間延びした声だっけ?まぁゲームだと口調しか分からないから判断しようもないけど、そこはイメージとは結構違ったな。
「アレンさん、11 才の時に全教科満点で飛び級卒業したんですよね。あたし、その時同じ学校に通ってて、尊敬しちゃいましたぁ」
考えごとをしていると、エイミーは顔を少し赤らめ、そしてキラキラした目で俺のことを上目遣いに見つめてくる。男子が憧れるシュチュエーションベスト3に入るだろう光景に、俺は内心で打ちのめされた。
ぐふっ……。これが……乙女ゲーヒロインの力、か……。
攻略キャラ以前に美少女耐久0な俺が落ちかけている事実に、俺自身が戦々恐々としていると、講師らしき人物が教室に入って来た。エイミーも気づいたようで、俺はとりあえず思考を整える時間ができそうなことにホッと安堵する。
ところが、エイミーは去り際に追加爆弾を投下していった。
「あたしぃ、ちょっと勉強についていけるか不安でぇ。よければ勉強教えてくれませんかぁ」
「えっと……俺で良ければ」
俺は、気づけば反射でそう答えてしまっていた。
ともあれ、こうして俺の学園生活は、早くも大波乱の予感を感じつつもスタートしたのであった。
思った以上にアレンがチョロかった。ま、まあ原作でも一言だけ誉められても浮かれるくらいだし多少はね?
・お願い
マイナー二次創作とかほんと読まれにくいんですよね。今読んでくれた読者様、低くても良いので評価をしていただけませんか?ちょっとでもランキングに載れば、マイナージャンルは読まれるチャンスが数倍に跳ね上がります。そして原作も読まれてさらに人気になります(こっちが本命)。約10秒で終わりますので、気が向いたらよろしくお願いしますm(_ _)m
感想や誤字報告もお待ちしています。良ければアンケートもどうぞ。