遊戯王GX~GX世界に転生してデュエルアカデミアでカイザー達と同期になったんだけど、多分僕はモブだろう~(お試し版)   作:カイナ

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プロローグ

 吾輩は転生者である。名前はまだない。

 

 ……冗談だ。名前はきちんとある、どこにでもあるような苗字二文字と名前二文字が組み合わさった面白みのない名前である。しかし昨今よくあるキラキラネームと比べればマシというものだろう。

 

「……じょーだんはさておき。まあ、そんな冗談を呟いてないと緊張でしょうがないんだけど」

 

 埠頭の中でも入り組んだ場所、そう簡単には見つからないような場所で一人ごちる。ドクンドクンと心臓が脈打つのが分かる。しかしそれも仕方のない事だと自分に言い聞かせる。

 

 ──もうすぐ、デュエルアカデミア高等部行きの船が出発します。デュエルアカデミア高等部への入学生の皆さんは所定の位置に集合してください。

 

 そんな放送が集合場所から少々離れたこの場所でも耳に届く。いよいよだ。この()()()()()の物語の主な舞台、デュエルアカデミアへ向かう船が今自分がいる埠頭から出る。

 そう、この世界は遊戯王GX、さらに細かく言えば遊戯王デュエルモンスターズの世界。それを自分が理解したというか唐突に()()()()()のは幼少の頃にテレビで「デュエルキングの軌跡」と題された武藤遊戯がペガサス島から始まってバトルシティを勝ち抜いてきた事を振り返るという特番を見た時だ。

 それからこちらの世界でも遊戯王デュエルモンスターズを始めて、近所で開催される小さなもの限定だが大会にも出場してそれなりに結果を出して、そうしたら馴染みのカードショップでデュエルアカデミア中等部の話を聞いて入学試験を受けて、中等部生活を経て、成績優秀な特待生としてデュエルアカデミア高等部への編入試験を受ける事が出来て合格。

 ついに遊戯王GXの主な舞台であるデュエルアカデミアへと行く事になったのだ。

 

「武藤遊戯がいて、バトルシティが終わったって事は無印が終わった後なのは間違いないよな……」

 

 武藤遊戯がデュエルキングと呼ばれているのだから時系列的にバトルシティが終わっており、それから特番が組まれる程に時間が経っている以上は恐らく無印も終わっているのだろう。となると次はGXになるのだが……。

 

「僕、GXは途中までしか見てないんだよね……異世界に渡ってからどうなったんだっけ?」

 

 実はGXは途中までしか見ておらず、その後の作品もノータッチ。だから正直GXしか自分が分かるものがないというのも、次はGXだという判断材料という名の希望的観測だ。

 

「ま、関係ないか」

 

 しかしそこはもう気にしたって今更どうする事も出来ないだろう。大体、自分がそんな物語で活躍できるとは思えない。

 遊戯王GXの記憶自体かなり曖昧になっているが、自分の名前をしていたキャラは覚えている限りいなかったし、平凡な名前だからきっとモブだろう。それなら自分から関わろうとしない限り安全は保障されているも同然だ。

 最後には主人公(遊城十代)がなんとかしてくれると信じて自分はデュエルアカデミアで平和な学園生活を満喫すればいい。それに結局危険に巻き込まれるのは最低でも一年だけだろうという確信もある。

 

「そこにいたのか」

「やっほー」

 

 誰かが唐突に声をかけてきた。いや、今まで一緒にやってきた親友であり好敵手(ライバル)である彼らに対して誰かなんていうのは無粋だろう。

 

「ちょっと緊張しててさ。一人で落ち着きたいと思ってたんだ。ごめんね、亮、吹雪」

 

 青い髪を短く切った背の高いイケメン──遊戯王GXではカイザーの異名を持つ凄腕デュエリスト、丸藤亮。

 その隣に立つのは人懐こい笑みを浮かべた茶髪のこっちもイケメン──遊戯王GXではキングとまで呼ばれたデュエリスト、天上院吹雪。

 二人とも遊戯王GXの登場キャラで、本編が始まった時には三年生。つまりそれと同級生である自分は留年でもしない限りデュエルアカデミアにいる間は彼らが、正確には吹雪はダークネスに洗脳されていたから亮が卒業するまでに起きた唯一の事件──セブンスターズ編に注意すればいいということだ。破滅の光とかに関してはまあ、おいおい考えるとしよう。

 

「そろそろ集合場所に向かおう」

 

「オッケー、行こうか」

 

 目下の目標は結局どうしてそうなったのか分からないけれど吹雪がダークネスに洗脳されないように気を付ける事。そうすればとりあえず二年間は安全だろう。

 せっかく転生したんだ。いくら識っているからとはいえ先の事を考えすぎるのもつまらないだろう。そう考え方を変えればこれからの学園生活が楽しみになり、思わず走り出していた。

 振り返れば突然走り出した僕にポカンとしている亮と吹雪の顔が見え、思わずおかしくなる。

 

「ほらほら亮、吹雪、急いで! 船に乗り遅れてデュエルアカデミア入学取り消しとか笑い話にもならないよ!」

 

 顔を見合わせてやれやれというように苦笑して、二人も僕を追いかけて足を進めたから僕ももう一度振り返って集合場所目指して駆け始める。

 

「待て、優介」

「待ってよ優介」

 

 声をかけて追いかけてくる二人に追い抜かれまいと走るスピードを上げると、二人も追いかける足を速める。それに負けじとスピードを上げれば二人もまたスピードを上げる。

 いつの間にか全力疾走になっていた負けず嫌いな男子三名の意地の張り合いは集合場所まで続き、引率の教師や他の入学生達のポカンとした顔が僕らを出迎えるのであった。

 

 これは僕。遊戯王GXにおいて特に物語の舞台に上がる事のなかったモブ、()()()()のなんの変哲もないだろう物語だ。

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