遊戯王GX~GX世界に転生してデュエルアカデミアでカイザー達と同期になったんだけど、多分僕はモブだろう~(お試し版) 作:カイナ
これは三話連続投稿の二話目です。
もしも一話目を読んでいないまま間違えてここに飛んできた方は一話目への移動をよろしくお願いいたします。
デュエルアカデミア。デュエルの貴公子とも呼ばれる海馬コーポレーションの現役社長──海馬瀬戸が未来のデュエル界を牽引するエリートデュエリストを育てるために設立されたデュエリスト養成学校。
何故か海のど真ん中の島に設立されているため学生は強制的に三つある寮に割り振られる事になる。またその三つの寮は成績によって所属が決められ、成績によってはより上位の寮に昇格したり逆に下位の寮に降格する事もあるという、実力主義といえる校風になっている。
そんなこんなの説明を入学式の中で受けながら、優介達のデュエルアカデミア入学式の時間は過ぎていく。
「ん~っ! やっと入学式が終わったね」
「吹雪、みっともないから伸びはやめろ」
大きく伸びをする吹雪とそれをみっともないと注意する亮。新しい環境になってもいつもの光景に優介もふっと笑った。
「えーっとそれで、僕達はオベリスクブルーに行けばいいのかな?」
オベリスクブルー。先ほど説明したこの学園の三つの寮の中でも最上位の寮、デュエルアカデミア中等部からの所謂内部進学組の中でも特に成績優秀な生徒だけで占められており、まさしくこの学園のエリートと呼べる立ち位置の生徒が所属する寮だ。
原作でも亮と吹雪はブルー寮に所属していたからそこに行けばいいのかと考えている優介に対し、亮が呆れたようにため息を漏らした。
「お前は入学案内をきちんと読んでいなかったのか? 俺達は特待生として扱われるから別の寮に行く事になっている」
「「え、そうなの?」」
「吹雪もか……」
「いや、特待生なのは知ってるけど。別の寮が用意されるとまでは覚えてなかった」
「同じく」
暢気な学友二人に亮は頭を抱えたのだった。
「おー見つけたデアール。ムッシュ丸藤、ムッシュ天上院、ムッシュ藤原デアールな?」
そこにドスドスとした重い足音をさせながら、太った小柄な男性が駆け寄ってきた。
その相手に吹雪が首を傾げる。
「あなたは?」
「入学式で自己紹介したはずデアールが……まあいいデアール。吾輩はデュエルアカデミア教頭のナポレオン、デアール。三人を特待生寮に案内するデアール、ついてくるデアール」
男性──ナポレオンはそう言って歩き始め、三人もついていく。そして少し歩いた先に車が用意されていてナポレオンが「乗るデアール」と促してきたので乗車、ナポレオンが助手席、三人が後ろの席に乗って車が出発。
その車は森の中の豪華な洋館とでもいうべき場所まで三人を送って停車。車から降りたナポレオンは同じく降車した三人に対してその洋館に仰々しく手を向ける。
「ここが特待生寮デアール。ドロップアウトのオシリスレッドや凡人のラーイエローなどに邪魔されないような静かな環境で、授業以外でも勉学に励んでほしいデアール。あーちなみに寮長は実技最高責任者のクロノス平教諭が、オベリスクブルーの寮長と兼任して行うデアール、何かあればそっちに言ってほしいデアール」
どうやら特待生寮への所属生徒は形式的にはオベリスクブルーへの所属という事になっているらしく──実際彼らに配布された制服もオベリスクブルーのものである──そこの寮長が特待生寮の寮長も兼任して行うとのことだ。
しかし兼任とはいえ本来の寮長であるクロノスはオベリスクブルーの寮長としての生徒への挨拶や歓迎会への参加、その他の寮長としての業務で忙しいため、代理としてナポレオン教頭が案内役を行っているらしく、クロノス教諭はこの後落ち着いてから挨拶に来るそうだ。
「あとは内装や設備の説明デアールな。ついてくるデアール」
ナポレオンに促されて寮に入る三人を出迎えるのは「お帰りなさいませ」と一糸乱れぬ動作で声をかけてくる大勢のメイド及び執事の使用人。
亮と優介がぎょっとし、吹雪がメイドさんに笑顔で「どうも」と手を振って挨拶する辺りに咄嗟のコミュニケーション力の違いが表れていた。
「特待生寮にはシフト制の24時間体制で警備員兼任の使用人が在住しているデアール。日常生活で困った事があれば彼らにお願いするデアール」
警備以外にも食事の準備や寮内の掃除などの日常生活における雑務も使用人がこなすため、寮生は学生生活に集中するようにということらしい。
その他に特待生寮にはわざわざアカデミアのデュエルスペースに行く必要がないように寮の地下に特待生専用(「そもそも特待生寮には特待生以外立ち入り禁止」と注意された)のデュエルスペースやそこで使用可能な最新式のAIを搭載したデュエルロボ、さらには本来はアカデミア内にある資料室のデュエルモンスターズのカードデータベースとリンクしたカードデータの検索及び閲覧システムまで完備されていた。
平たく言えば「極論授業の時を除けばずっと寮内にいてもデュエルの修練には困らない」ようになっている。
「とはいえ、いくら最新式のAIと言っても。実戦はやっぱり生きたデュエリスト相手が一番だよね」
「ああ。各人の個性がデッキ、そしてデュエルには表れるからな」
「それにずっと寮に引きこもるっていうのも性に合わないしね。まあデッキ調整には便利だと思うよ?」
「むぅ……まあ、その辺は生徒の自由デアール。こっちとしても特待生として問題ない成績や素行、要は結果さえ出してくれればあまり文句は言わないデアール……が」
厚意は受け取るが、やっぱり寮に引きこもっているのは面白くなさそうと答える生徒達にやや閉口しつつもナポレオンは結果さえ出せばうるさく言わないと回答。しかしその次に目を鋭く研ぎ済ませた。
「君達は特待生としてデュエルアカデミアに選ばれた。これだけは忘れないで欲しいデアール。君達は全ての生徒の模範となり、目標とならねばならない。もしも君達の成績や素行がそれにそぐわぬと判断された場合、君達の特待生としての資格は容赦なく剥奪されるデアール……その先がどうなるかなど、言うまでもないデアールな?」
特待生、すなわち特別な待遇が約束された生徒、しかし全ての物事には対価があるのは世の常識。
入寮初日だけでも専用のデュエルスペースと最新式のAIを組み込んだデュエルロボを専用の相手として準備され、さらにはデュエルモンスターズのカードデータをわざわざ資料室に向かわずとも寮ですぐに確認できる専用データベース。そして豪華絢爛な寮で何不自由なく勉強に集中できる環境。
この待遇の対価として彼らはこのデュエルアカデミア全ての学生の模範にして目標として君臨する義務が課せられる。
もしもそれが出来ないのならそれはこの待遇を与えるだけの価値がないという意味も同然、その資格が剥奪されるのも道理である。
そのプレッシャーに対し、三人はただ微笑を以て返す。その意味を理解したのかナポレオンもうむと頷いた。
「これ以上は吾輩からは何も言わないデアール……では吾輩はこれで失礼するデアール。君達が特待生としての重圧に負けず、良き学園生活を送れるよう祈っているデアール」
そう言ってナポレオンは去っていき、それを確認してから優介が亮と吹雪を見た。
「これからどうする?」
「歓迎会というのが行われるそうだが、それまで暇だからな……」
「アカデミアに行ってみようよ。歓迎会まで暇なのはきっと皆一緒だしさ」
優介の問いかけに亮が歓迎会までの時間潰しをどうしようかと考え、吹雪が提案。だがアカデミア校舎から特待生寮まで車でそれなりに時間がかかっており、それを今から徒歩となると歓迎会に間に合うかと二人が不安そうに吹雪を見た。
「心配ないよ。さっきメイドさんに教えてもらったけど、朝夕は車での送迎が出るけどそこ以外の自由時間にも生徒が自由に移動できるように自転車が用意されてるらしいから。ちょっと来て」
学生の移動は基本徒歩だというアカデミア内で車での送迎だけでも大層だというのに自由移動まで自転車という特別待遇が準備されているらしい。
それよりもいつの間にかメイドから情報収集をしている抜け目ない吹雪に二人は苦笑しつつ、玄関近くにいた使用人に「ちょっと出てきます」と伝えて外に出る。そこにはたしかに自転車が人数分置かれていた。なお車に乗せる事も想定しているのか折り畳み式である。
「ここにPDAをかざせば電子ロックが外れるようになってるんだって。あと自転車にGPSがついてるからどこにあるかはPDAを見れば分かるそうだよ。えーと、これが僕ので、これが亮の、これが優介のみたいだ」
自転車そのものは同じものでそれぞれ亮が青色、吹雪が黄色、優介が赤色にペイントされているくらいしか違いがない。恐らく入学主席が亮、次席が吹雪、そして三番目が優介だからだろうか。
あらかじめ説明を受けていたらしい吹雪が試してみて開錠したのを真似て亮と優介も自転車の鍵を開錠、三人は自転車に跨ってアカデミア校舎へと向かう。
そして三人は校舎にやはり特待生用なのかあるいは来客が来る際に使うのか分からないが設置されている駐輪場に自転車を停めると校舎内に入ると、自分達と同じ青色を基調とした制服以外に黄色、赤色を基調とした制服を着た生徒が新たな生活に目を輝かせながら校舎内を探検しているのを見て優介達はフッと微笑んだ。
「彼ら全てが俺達の学友にしてライバルというわけか……腕が鳴るな」
「うん。彼らの模範だとか目標だとか、そういうのも大事かもだけど……それよりも彼らと楽しく戦いたいよね」
「実は結構戦闘狂だよね、二人とも……」
亮と優介がうずうずとした様子で呟くと吹雪が呆れ気味に声を漏らす。
どうやらイエロー寮の生徒は中等部を卒業して高等部への進学を希望・合格した生徒の中でもブルー寮に入れる程の成績は取れなかった生徒が大半を占めている──残るは外部受験組の成績優秀者で、レッド寮は外部受験組の中での成績優秀者以外だそうだ──ようで、何人か黄色の制服を着た顔見知りを見かけて軽く挨拶しながら、彼らはデュエリアリーナへと足を運んだ。
「ここがデュエルアリーナ……やっぱり中等部と比べても規模が段違いだね」
「ソリッドビジョンも最新式だ」
「早速誰かにデュエルでも挑んでみようか」
吹雪が中等部以上の規模の設備に驚き、亮もソリッドビジョンまで最新鋭になっていると分析、優介が我慢できないとばかりにデュエルディスクにデッキをセットして対戦相手を探し始めようとする。
「うわああぁぁぁっ!!」
突然聞こえてきた悲鳴に反応した優介が声の方を見る。
そこにはイエローの制服を着た男子生徒が悔しそうな顔をしながら、目の前でニヤニヤと笑っているブルーの制服を着た男子生徒を睨んでいる光景があった。
「あれはたしか……」
「渡邊君、大丈夫!?」
見覚えがあるのか吹雪が呟くがそのピンと来ないというような表情的に名前までは覚えていないらしく、優介が咄嗟にというように声をかけて駆け寄った。
「ああ、そうだ。
「優介とはデッキタイプが似ているからとよく話していたな……それよりも吹雪、対戦相手を見ろ」
「ん……? って、うへー、こりゃ入学早々面倒くさいことになったなー」
亮の促しに吹雪は面倒くさいという顔を見せるが、親友を放っとけるわけがないというようにデュエルディスクにデッキをセットして歩き出す。軽薄そうだが意外と情に厚い親友の姿に亮も控えめに笑みを浮かべると自分も同じくデッキを準備して歩き出した。
「一体どうしたんだい、渡辺君?」
「いや、この人がいきなり“レッドのクズやラーイエローの凡人がエリートである俺達ブルーに近づくんじゃねえよ”って喧嘩売ってきてさ……ちょっとカチンって来ちゃったから……」
優介がイエローの友人──渡辺に話を聞き、その対戦相手であるブルーを睨みつける。
「……って、あんたは
「よお、生意気な藤原に、丸藤と天上院か。相も変わらず三人でつるんでるんだな」
ニヤニヤとした笑みを浮かべた沼瀬なる男子生徒に嫌そうな表情で先輩をつけて名前を呼ぶ優介。どうやら中等部時代の先輩らしく、沼瀬もフンと鼻を鳴らして三人を睨んだ。
「デュエルアカデミア中等部開校以来の天才トリオだとか呼ばれていい気になりやがって、ここでも特待生だとか言って調子に乗る前に先輩として洗礼を浴びせてやるよ。そこの凡人の雑魚みたいにな」
「いいだろう。あなたの言動、そしてデュエルには相手に対するリスペクトがないと気になっていた。俺が相手に──」
「待ってよ亮。友人がやられたっていうのに敵討ちのチャンスを取らないでよ……僕がやる」
「僕はどっちでも……なんならその間暇だし、暇潰しにそこの取り巻き連中を相手してあげててもいいよ?」
沼瀬に対して亮がデュエルを受けようとするも優介が横入り、吹雪は肩をすくめて自分は沼瀬とここでデュエルをする気なしと表明しつつも、彼の後ろにいる取り巻き二人(もちろんブルーだ)の相手になると答える。
そして亮も沼瀬の相手は優介に譲って吹雪と共に取り巻き二人をそれぞれ相手すると決め、互いにデュエルアリーナで向かい合う。特待生の噂は有名なのか「ブルー二年と特待生の一年がデュエルをする」という噂はあっという間に駆け巡って観客が大勢集まってくる。
「「デュエル!!!」」
しかしそんな事関係ない、というように優介は声を張り上げ、彼のデュエルアカデミア最初のデュエルが幕を開ける。
「うふふふふ……見ぃつけた」
そんな彼の姿をアリーナの入り口で見つめ、赤色の瞳を宿す美しい目を細め、形のいい唇を湿らせるようにぺろりと妖艶に舌なめずりをしている者がいるなど、彼は気づくことはなかったのだった。