1995年5月12日 0500 ウスティオソーンス・オルトゥス付近上空 オーシア第122航空隊所属 C-130機内
オーシア第101空挺師団。オーシアに数多くある空挺師団の中でもトップクラスの能力を持っている兵士を集めたエリート空挺師団である。
そんな彼らに今回与えられた作戦はウスティオ首都ディレクタス解放の足掛かりにするため、ベルカに占拠されているソーンス・オルトゥスをウスティオ空軍の支援の下で解放することである。
また、この作戦にはオーシアが未だにウスティを見捨てていないこと周辺諸国と国民にアピールすることも含まれていた。
《機長から空挺部隊へ。まもなく、降下予定ポイントに到着する。降下準備に入れ》
機長からの言葉を聞いた1人の兵士は手に持っている銃を強く握りしめる。
この兵士は先週配属されたばかりの新人であり、この作戦が彼の初作戦であった。
「どうした?ビビっているのか?」
彼が銃を強く握りしめていることに気付いた仲間が声を掛けた。
「バカ言うな!あれだ、ノースポイントで言う武者震えて言うやつだ
「へっ!よく言う。着地に失敗するなよ!」
「わかっています」
二人はそう会話しながら装備の最終確認入る。特にパラシュート念入りに確認する。
そして、装備の確認を終えた兵士はその時を来るのを待つ。
《目標ポイントまであと僅か。ハッチオープン…くそ!ロックオン警報か!》
輸送機がハッチを開き、降下の最終段階に入る。しかし、それと同時にロックオンされた。
機動力が無い輸送機がミサイルに狙われたら、撃墜はほぼ確実に決まる。しかし、機長は冷静であった。
《慌てるな。『ハンス粒子』散布開始。フレア、チャフいつでも行けるようにしろ≫
オーシアもまた、ハンス粒子の効果を認め、軍の正式採用を決定した。
幸いにもオーシア領でもハンス粒子が執れることがわかり、採用から僅か3日で軍全体に行き渡った。
もちろんこの輸送機にもハンス粒子を搭載しており、散布を始める。
《ミサイルアラート!》
《フレア、チャフ射出しろ》
ハンス粒子を散布開始から数秒後、ロックオン警報からミサイルアラートに変わり、フレア、チャフを射出する。すると、直ぐにアラートが消えた。
《凄いものだな。このハンス粒子は…おっと。降下予定ポイントに到着。合図を出せ!》
ハンス粒子の効果に驚く暇もなく、降下予定ポイントに到着。機内にあるランプが赤から青に変わった瞬間、兵士たちは声を出しながら走りだし、輸送機から飛び降りていく。
「GO!GO!GO!」
「俺たちが1番手だ!行け!」
「ペイパックタイムだ!」
「うぉぉぉ!」
そして、彼もまた声を出しながら輸送機から飛び降り、大空を舞うのであった。
そんな彼らをキャノピー越しから見ている存在があった。それはウスティオから護衛機として出撃していた、ガルム隊とディアブロ隊であった。
「始まったな」
《見たいだな》
《護衛機へ。こちら第122航空隊。これより作戦を開始する中を空にするまでは帰還できない。よろしく頼む》
《まずは第2次空挺部隊に位置する対空砲を攻撃しろ》
「了解。ガルム1エンゲージ」
《ガルム2エンゲージ》
《ディアブロ1エンゲージ!》
《ディアブロ2エンゲージ!》
ガルム隊とディアブロ隊は空挺部隊を掩護するため、編隊を解き、対空砲の攻撃に移る。
ギリアムは早速一つの対空砲を見つけ、一度フライトパス。その後、インメルターンで高度を上げながら反転。
そのまま機体を降下させ、対空陣地をピバーに捉えた瞬間、爆弾を投下する。
《敵機爆弾投下!》
《退避!退避!》
《ダメだ!間に合わない!伏せろぉぉぉー!》
爆弾投下に気付いた兵士たちは急いで、対空陣地から離れようとするが、一部は間に合わないと察し、その場で伏せる兵士の姿あった。
そして、爆弾はSAMに命中。誘爆を起こし、SAMの近くにあった固定対空砲や兵士が吹き飛ぶ。
《こちら第8対空陣地!敵機の攻撃で対空火器は全滅!負傷者も多数!》
《俺たちの首都解放が掛かっているだ!必ずこの作戦は成功させる!》
《ディレクタスを解放させる!そのためにも!》
《ディアブロ隊、気合が入っているな。首都解放が掛かっているだけはあるか》
ギリアムに続き、ディアブロ隊、ラリーも爆弾を投下。他の対空陣地に損害を与える。
特にこの作戦で首都解放掛かっているウスティオ空軍正規パイロットであるディアブロ隊はいつも以上に士気が上がっており、攻撃的であった。
《第4、第6対空陣地も攻撃を受けた!損害不明!》
《こちら第12対空陣地!敵爆撃で被害甚大!こっちの航空機はまだ来ないのか!?》
《今だ!行け!》
《俺たちなんだ!飛ばなければ価値が無い存在だ!》
《俺たちナンバーワン!》
ガルム隊、ディアブロ隊の空爆によって、一瞬だが敵の目が輸送機から離れ、その隙を逃さず、空挺部隊は次々と輸送機から飛び降りていく。
《勇気だけが彼らのとりえだ》
「あぁ。だからこそ彼を護るぞ」
ギリアムは別の対空陣地に爆弾を投下。2基の対空火器を無力化。さらに、ラリーも追撃で爆弾を投下。残っていた対空火器を破壊し、対空陣地を沈黙させる。これで、ベルカの対空陣地は既に5割沈黙した。
《輸送機を狙え!敵機は後でいい!》
《無理だ!敵機が強すぎる!》
《こちら第1対空陣地!敵空挺部隊の攻撃を受けている!救援を!》
残っている対空陣地は輸送機ではなく、こちらに狙いを定めて来た。先程からの攻撃を見た兵士たちは反撃しなければ、直ぐにやられると判断したのだ。
さらに、空挺部隊も対空陣地に攻撃を開始。このまま行けば、全対空陣地が沈黙するのも時間の問題であった。
そかし、ベルカもここが落ちれば、戦況が不利になることはわかっており、この程度で終わるはずが無かった。
《こちら本部。IFV1両が救援に向かった。持ち堪えろ》
《了解!》
《こちらB-2エリア。多数の敵の効果を確認。敵が再編成する前に一気に叩きたい。戦車部隊をこちらに送ってくれ!》
《こちら本部。了解した。第3戦車部隊がそちらに送る》
ベルカ軍は戦車、IFVが一斉に動きだし、反撃を開始。兵士たちも空挺部隊が再編成する前に潰すため、一気に動き出す。
《ベルカ戦闘機部隊の機影を確認。ガルム隊迎撃せよ》
さらに、ここに来てベルカ空軍も到着。もちろん彼らの狙いは輸送機だろう。
《ベルカの鳥たちの相手は俺たちがしよう》
「あぁ。ディアブロ隊。対地は任せた」
《了解!》
出撃する前にディアブロ隊、ガルム隊は話し合いで、敵機はガルム隊が迎撃することになっており、そのため、ガルム隊の装備は爆弾2発だけであり、他は全て対空ミサイルである。
逆にディアブロ隊は短距離ミサイルが2発だけであり、他は全て爆弾である。
「行くぞ、ピクシー」
《了解》
ガルム隊はディアブロ隊と別れ、敵機の迎撃に向かうのであった。
ガルム隊が敵機の迎撃に向かった頃、地上では空挺部隊とベルカ軍防衛軍と激しい戦闘が繰り広げられていた。
その戦場の中にももちろん彼の姿があった。
「くそ…だいぶ風に流されたか」
彼は、一緒に降下した隊と合流しようと周辺を注意しながら進んでいた。
本来の予定であれば既に合流できているはずであるが、風の影響を受け、着地予定ポイントから大分外れてしまい、未だに合流できていなかった。
「早く合流しないと」
どのみちにしても、一刻も早く味方と合流しなければならない。
一人で行動しているときに敵に見つかったら、その時点でアウトだ。彼はそう思いながら歩くスピードを上げようとした時だった。
何かの音がこちらに近づいてくるのがわかった。
「…この音は…マズイ!」
その音の正体に気付いた、彼は急いで近くの狭い路地裏に身を隠し、様子を見る。
やがて、音がはっきりと聞こえるようになり、その正体を現す。
「(戦車!)」
その正体はベルカ軍主力戦車レオパルド2であった。そして、その周辺に5~8人の随行兵の姿もあった。
「よし。ここで網を張る。周辺警戒を怠るな」
しかも、戦車隊は彼の近くで停止し、周辺警戒し始めた。それを見た彼は焦り始める。
「(マズイ。マズイ。今の装備でどう戦車と戦うだ!)」
彼が今、装備しているのはM416とグレネードが2発しかない。どうあがいても、戦車に勝てる装備ではない。
「(別ルートから行くしかないか…)」
このルートが戦車に塞がれた今、別のルートを使い、味方と合流するしかない。そう思い、この路地裏を使い移動しようとした時だった。
「っ!」
後ろに気配を感じ、急いでM416を構え、後ろを振り返る。
「バカ。味方だ」
その声を聴いてハッとした。
後ろにいたのはベルカ兵ではなく、降下する前に会話をした兵士と他2名がいた。
味方だとわかり、彼はホットしてM416を下す。
「何だ、お前か。脅かせやがって」
「驚いたのはこっちだ。戦車から逃げ回って、やっとこの一本道を使って逃げて切った先にお前がいるからよ。
味方と合流して安心した彼であったが、その兵士から出た言葉にそれは一気になくなった。
「おい。お前らから来た道の先に戦車がいるのか?」
「あぁ。この一本道しか逃げ道がなかったからな」
「嘘だろ…」
仲間たちもまた、戦車から逃げて来ていたのだ。しかも、この一本道の路地裏を使って。
つまり、この一本道を使って逃げることはできない。
だが、路地裏から出ると、あの戦車に見つかってしまう。
「おい。どうした?」
「…すぐ近くに戦車が展開しているだ。それから逃げて、この路地裏に」
「なっ!」
彼の言葉を聞き、仲間たち驚く。そして、仲間の一人がゆっくりと顔出し、敵を確認する。
「…展開していやがる」
「数は?」
「戦車が1。随行兵が6人以上だ」
「なんてこった」
逃げてきた仲間も彼の言葉を聞いて、唖然とした。
逃げた先にも戦車がいた。唖然とするしかない。
「逃げ道が完全になくなった…」
味方来た方向芋にも戦車。こっちにも戦車。逃げ道がない。
「…ここで味方が来るのを待つしかない」
「バカ言え。味方が到着する前に、見つかってやられている」
味方が来るまでここで隠れるのも手であるが、随行兵は戦車を奇襲させないために、周辺を歩きながら警戒している。
ここが見つかるのも時間の問題であった。
「ヤバい!こっち来るぞ!」
そして、一人の随行兵が彼らが隠れている路地裏に近づいてくる。
ここまでか。
全員そう思い、諦めようとした。
その時だった。
「!?」
上空からジェット音が近づいて来ることに気付き、上を見ると1機のF-15が降下し、爆弾を投下。この先にいた戦車と随行兵を吹き飛ばした。
「上空支援だと!聞いていないぞ!」
「味方機は対空陣地の破壊と輸送機の護衛だけの筈だ」
彼らが作戦前のブリフィーングでは味方機は対空陣地の破壊と、輸送機の護衛だけで、上空支援はないと聞かされていた。だが、その答えはすぐにわかった。
「対空砲火が止んでいる?」
空を見上げると第3次降下部隊が降下を開始しているが、対空砲火が上がっていない。つまり、既に対空陣地は全て沈黙したことになる。
「対空陣地もう全て無力化したのか」
「早すぎだろ…だが」
対空陣地を短時間で無力化したことに驚く、一方で敵部隊を見ると、先ほどの空爆で戦車が破壊され、随行兵も4~6人吹き飛ばされていた。
無傷の随行兵も混乱している。
今なら容易く突破できるだろう。
「今なら突破できる」
「3、2、1で一気に突破するぞ。いいな?」
彼がそう言うと、他の皆も頷き、M416を構える。
「よし、行くぞ。…3、2、1、GO!」
彼の合図で一斉に路地裏から飛び出し、一気に突破するのであった。
《ガルム隊。まもなく、敵機が中距離ミサイルの射程内に入る。交戦に備えろ》
敵機の迎撃に向かったガルム隊は、既に交戦に備えていた。
「…捉えた」
《目標ロック!》
敵機が中距離ミサイルの射程内に入り、コックピット内にロックオンを告げる電子音が張り響く。
「ガルム1交戦!FOX3!」
《ガルム2交戦!FOX3!》
イーグルアイの電子支援もあり、こちらがロックオンされる前に4AAMを発射。4AAMはそれぞれも目標へと突き進む。
《ミサイル!ブレイク!ブレイク!》
《避け切れない!うわぁぁぁl―――…》
《ガルム1。1機キル!》
ハンス粒子濃度が低いため、4AAMの命中力は本来の性能のままであり、チャフ、フレアを射出しても4AAMは目標を逃がすことなく、ガルム1が放った4AAMが敵機に命中。1機撃墜した。
「ガルム2。敵機が体制に整える前に、ドックファイトに移るぞ」
《了解だ。サイファ―》
ガルム隊はフルスロットルにし、敵機が体制を直す前に一気に距離を縮め、ドックファイトに入る。
「居た…ガルム1FOX2!」
《ガルム2。敵機キル!》
ギリアムは敵機を目視で確認し、すぐにロック。AAMを発射する。未だに体制を整えていなかった敵機のSu-27は突然のミサイル警報対応できず、AAMが直撃。機体は一瞬にして砕け散り、空に散った。
さらに、ラリーはもう1機のSu-27をバルカン砲で仕留め、撃墜に成功する。
《ビット2、3がやられた!》
《この短時間でもう3機食ったのか!?》
《ビット1!敵機は噂のウスティオの傭兵だ!》
短時間で半数撃墜された敵は混乱が起き、もはや連携など取れていなかった。
それを瞬時に気付いた、ガルム隊はすぐさま追撃を仕掛け、ギリアムはSu-27の真後ろを取り、ガンサイトに捉える。そして、トリガーを引く、バルカン砲が放たれた。
Su-27は回避もできず、右主翼に直撃。翼の下にあったAAMも誘爆を起こし、機体は爆散した。
《もらった!》
ラリーはSu-27とヘッドオン。両機共にAAMを発射。ラリーはバレルロールしながら、フレア、チャフを射出し、AAMを回避。
しかし、Su-27は未だに中距離ミサイルを抱かれたまま。それが仇になった。
中距離ミサイルの重みで回避機動が遅れ、ラリー機と一緒でバレルロール回避しようとしたが間に合わず、真正面から直撃。爆散した。
《化け物どもが!》
最後に残ったSu-35は中距離ミサイルを全て放棄し、ギリアム機の後ろに取ろうとするが、ラリーが真上からバルカン砲で攻撃を仕掛け、それを阻止する。
Su-35はラリー機の妨害に合い、回避機動を取った結果、ギリアム機とラリー機を両機とも見失う。
《くそ!どこいった!》
Su-35は必死になって探すが、雲が多く、AWACSの支援が無い中では発見するのは苦労が掛かる。
「もらった!」
しかし、ガルム隊にはAWACSの支援があり、敵機を見つけるのは容易い。ギリアムはSu-35の後方にある雲から飛び出し、バルカン砲のトリガーを引く。
バルカン砲はSu-35のキャノピーを貫き、コックピット内を血に染めた。
パイロットを失ったSu-35は力なく地上へと墜ちていった。
《敵機の全機撃墜を確認!》
「意外と早く済んだな」
《後は地上部隊だけな》
敵機を全て撃墜し、制空権を確保し、再び編隊を組み直す。
制空権を確保した今、ガルム隊の役割は完了した。
後は地上部隊仕事を終わるのを待つだけである。そして…
《作戦司令部より入電。『降下作戦は成功』ソーリス・ルトゥス付近の敵戦力を一掃された。後は降りた奴らの仕事だ。ガルム隊、ディアブロ隊帰還せよ》
《ディアブロ隊了解!》
「ガルム隊了解」
「第三地区制圧完了」
《第五地区制圧完了》
「生き残った」
他の部隊から次々と制圧完了の知らせが入る中、彼はこの作戦を生き残ったことを実感した。
「無事だったか新入り」
そんな彼に話しかける人物がいた。
「隊長!」
その人物は彼が所属する部隊の隊長であった。
「初めての作戦がこの大規模作戦だったから心配したが…生き残ってよかったよ」
「いえ。運がよかっただけですよ」
「運も実力の内さ。それに今回の作戦で確信した。お前は大物になるぞ」
「いえ。自分はそんな大物なりません」
「そう言うな。もっと自信を持って…おっと。後始末がまだ残っているから。これからの活躍、期待しているぞ」
そう言い、隊長は去っていたった。
この時は彼を含めて誰も知らなかった。
彼が隊長の言う通り、15年後、旅団長を殴ってでも、亡霊たちを支援することになるとは思っていないだろう。
1995年 5月12日
この日、空挺降下作戦。ヴァーシティ作戦の成功により、ソーリス・オルトゥス付近がベルカの手から解放された。
これにより、ウスティオ首都ディレクタスに続く最後の門が開かれた。
これを受け、連合軍地上部隊はソーリス・オルトゥス付近へ移動。首都ディレクタスの奪還準備が開始された。
ウスティオの解放がすぐ近くまで来ていたい。