12時5分 連合艦隊付近上空
「楽な任務だな」
《ですね、隊長》
連合艦隊左舷側から接近しているベルカ空軍攻撃隊の一つである隊の隊長がそう話しながら連合艦隊に接近していた。
本来であれば、既に艦から放たれる長距離対空ミサイルで撃墜されてもおかしくない距離だが、事前にハンス粒子とチャフを撒いてため、連合艦隊のレーダーとミサイルは無力化されている。
その変わり、こちらも対艦ミサイルの命中率がガタ落ちしているため、無誘導爆弾による近距離攻撃をしなければならない。そうなると、敵の直掩機が一番厄介な敵であるが、今の所はこちらの直掩機が全て撃退してくれているため、こちらの損害は無かった。
《しかし、隊長。向こう側は苦戦しているらしいです》
向こう側と言いうのは艦隊右舷側から接近しているもう一つの攻撃隊の事である。こちらとは違い苦戦しており、撃墜機も出ていた。
「あぁ。何に苦戦しているだ向こうは?」
《無線を聞いている限りだと、どうもレーゲン隊とグリューン隊を落としたウスティオの傭兵が居るみたいだ》
「レーゲン隊とグリューン隊を落とした傭兵が!?」
ここ最近ベルカ空軍のエース級部隊がウスティオの傭兵部隊に二回連続で撃墜される事態が起きている。
撃墜された、レーゲン隊に至ってはベルカ空軍内でもトップ5の実力を持っている。
そのエース部隊を墜としたウスティオの傭兵がこの戦場にいる。そう思うと隊長はゾッとした。
「向こう側じゃなくて良かった…向こう側だとこんなにも楽に行かなかっただろうな」
もし、向こう側の攻撃隊に編入されていたら無事に艦隊にたどり着けていただろうか。隊長はそう思う再び体がゾッとした。
《そうですね、隊長》
「あぁ」
隊長は改めてこちらの攻撃隊でよかったと思い、連合艦隊へと接近する。そして、連合艦隊を目視で確認できる距離まで到達する。
「見えた!敵艦隊だ!」
《凄い大艦隊だ!》
「まったくだ…情報以上だぞ、この規模は」
彼らに事前に知らされていた規模は空母1、駆逐艦6隻、イージス艦4隻、巡洋艦2隻の艦隊と聞いていたが、それより多かった。
さらに、彼らが驚く物あった。
《隊長!空母の前に居る奴は!》
「あぁ…間違いない、戦艦だ!」
戦艦。もはや時代遅れになってしまった海の王者が艦隊の中にいた。そして、その主砲はこちらに向けられていた。
《隊長!敵機が離れていきます!》
「何!?」
こちらに向けられた主砲。離れていく敵機。間違いない。撃ってくるつもりだ!隊長はそう思い咄嗟に叫ぶ。
「全機ブレイク!」
《敵戦艦発砲!》
隊長が叫ぶと同時に敵戦艦も発砲。攻撃隊は一斉にブレイクし、隊長も急降下し、急いで低空へと退避する。そして数秒後、砲弾が炸裂する。
「のぉぉぉぉ!」
爆発の衝撃波で機体が激しく揺れ、コックピット内にアラート音が鳴り響く。隊長は隊長のダメージを確認するため、後ろを振り返ると、信じられない光景が目に入った。
《くそぉぉぉ!レバーが利かん!》
《キャノピーが飛ばない!誰か、助けてk――――…》
《主翼が…主翼が無い!…駄目だ!墜ちる!》
先程まで一緒に飛んでいた味方機が次々と火を吹きながら墜ちていく。そして、彼が搭乗しているSu-25も両主翼が穴だらけになり、片方のエンジンから火が吹いていた。
「くそ!操縦桿が利かん!」
隊長は出火しているエンジンを停止させ、機体を水平にしようとしたが操縦桿がゆうことを聞かない。
両主翼が穴だらけになったせいで、油圧系統
がやられたのである。
「駄目か!ベイルアウトする!」
隊長は機体を立て直すのは不可能だと判断し、イジェクトレバーを引き機体から脱出するのであった。
12時00分 連合艦隊右舷付近上空
《野犬狩りだ》
《敵機護衛機を片付けるぞ》
それぞれ4機ずつの赤いタイフーンとSu-37の編隊は一斉にブレイク。味方機に襲い掛かる。その機動は間違いなくエース級の物であり、次々と味方機が撃墜されていく。
その片方の部隊。赤いタイフーンを見たギリアムは直ぐにあるエース部隊を思い出した。
「赤いタイフーン…赤いツバメ。ロト隊か!」
《厄介な奴らが出やがった》
赤いツバメ。通称ロト隊。主に宣伝として使われている隊であるが、その実力はかなり高いものであり、オーシア空軍に大きなダメージを与えた隊の一つでもある。
一方、もう一つの増援部隊であるSu-37の機動を覚えていたウスティオ機がいた。
《ディアブロ1!あのSu-37の機動は!?》
《間違いない。俺たちを墜とした奴らだ》
ディアブロ隊の2人はSu-37の機動を見て、あの憎い奴らを思い出した。開戦したあの日、哨戒任務中のディアブロ隊はあのSu-37によって撃墜されていた。
《ディアブロ1!奴らを堕としましょう!あの時の借りを返す時です!》
ディアブロ2はそう言いうが、1はそうは思っていなかった。
《それは駄目だ、ディアブロ2。見ろ奴らの機動を。俺たちが勝てる相手ではない》
既にあのSu-37によって5機以上の味方機を食っており、その機動は無駄が無い。とてもじゃないが、今のディアブロ隊に勝てる相手ではない。
《俺たちがあいつらに墜とされ無事に味方と合流した後、俺はあいつらについて調べた。そうしたら、レーゲン隊に鍛え上げられた隊の一つだ。実力もレーゲン隊と互角。そんな相手に今の俺たちが勝てるか?》
そう言い、ディアブロ1はあのSu-37の機動を見る。その動きは全く無駄が無く、次々と味方機に襲い掛かる。どう見ても、今のディアブロ隊の腕では勝てない相手である。
《ですが!》
《何度も言わせるな!今の俺たちじゃ堕とされるのがオチだ!それに俺たちに与えられた任務は何だ!艦隊を護衛することだ!それを忘れるな!いいな!》
《…了解》
ディアブロ1の怒鳴り声で冷静になったディアブロ2はSu-37のことを諦めた。
《よし。あいつらは相手できるガルム隊とオーシアのブレイカー隊に任せよう。俺たちは攻撃隊を仕留めるぞ!》
《ディアブロ2了解!》
ディアブロ隊はエース級部隊のSu-37、グラーバクを無視して、ベルカ攻撃隊に向かう。しかし、それを見たグラーバク3はすぐさま、グラーバク1に伝える。
《グラーバク3からグラーバクリーダーへ。敵機2機が攻撃隊に向かっています》
《攻撃隊をこれ以上やらせるわけにはいかん。各機やるぞ!…!?》
グラーバク隊は攻撃隊を護るため、ディアブロ隊を墜とそうとしようとした時、グラーバク1のコックピット内にロックオンアラートが鳴り響く。グラーバクはすぐさま、右急旋回し、ロックを外す。
《クソ!ロックが外れた!》
《焦るなブービー。どのみち撃った所で当たらん》
グラーバク1をロックしたのはブレイカー隊のブービーだった。
《だが、あいつらを放置するわけにもいかん!ブレイカー隊各機、全力で相手しろ!》
《《《了解》》》
《グラーバク1!敵機来ます!》
《仕方ない…各機、あのF-15は後回しだ!先にあのF-14をやるぞ!》
《《《了解》》》
そしてグラーバク隊は襲ってくるブレイカー隊と応戦を開始。ベルカ空軍エース部隊とオーシア空軍エース部隊が交戦を開始したのであった。
その一方もう一つのエース部隊、ロト隊は次々とオーシア軍機を撃墜していく。
《どうした?連合軍のパイロットはこんなものか?》
《サイファ―。赤ツバメの相手は俺たちがしないと、味方の損害が増える一方だ》
「そうみたいだな。」
《あぁ!》
その機動を見ていたガルム隊はロト隊の相手は自分たちじゃなければ駄目だと判断し、これ以上味方機の損害が増える前にロト隊を押させることにした。
「行くぞ、ピクシー!」
《了解!》
ラリーは降下し、ギリアムは上昇し、ロト隊に向かって行き、上下から同時攻撃を仕掛ける。
《ロト3、下から敵機≫
《ロト2!お前もだ!上から敵機!》
ロト3、2は上下から突っ込んで来るガルム隊に気付き、ブレイク。それと同時にギリアムとラリーはトリガーを引きバルカン砲を撃ち込むが、寸前の所で回避された。
《ファーストアタックは失敗か》
「やはり、エース部隊だな。だが、これ以上味方に損害を出すわけにもいかない」
ギリアムはそのままロト3の背後に回り込み、追撃に入る。ロト3はどうにか振り切ろうと、必死だがギリアムはそれに付いていく。
「腕はなかなかだ。だが!」
ギリアムはこの戦争で既にエース部隊を2回撃墜している。一人一人が強いレーゲン隊。戦場を見渡し、直ぐに戦局を読むグリューン隊。この2隊と戦ったギリアムは知らず知らずの内に戦った2隊の機動を取り込み、自分の機動と混ぜて使っていた。そのため、ギリアムの強さはこの短期間にかなり上がっていた。
「レーゲン隊よりは弱い!」
ギリアムは再びトリガーを引き、バルカン砲を撃つ。今度はタイフーンの両エンジンに命中。火を吹きながら墜ちていく。
《ロト3が食われた!≫
《何!?》
《ロト4からロト1へ!ロト3をやったのは例のウスティオの傭兵です!》
《こいつらが…ロト1から各機へ。ウスティオの傭兵を仕留めるぞ!》/font>
ロト1は素早くギリアム機の後ろに付きロックオン。ミサイルを発射する。だが、ハンス粒子が散布されている中でギリアムがミサイルに命中する筈も無く、バレルロールしながらフレアを射出し、ミサイルを回避。そのまま、エンジンの出力を落とし、エアブレーキを展開。ロト1をオーバーシュートさせようとする。
《舐めるな!》
ロト1も直ぐにエンジンの出力を下げ、エアブレーキを展開。一瞬、オーバーシュートするが、すぐさま、ギリアム機をオーバーシュートさせ、後ろを取り返す。
「やるな」
ギリアムは先程撃墜したパイロットより腕が高いことに舌を巻き、回避機動を続ける。
ロト1はギリアムの回避機動について行き、隙さえあればガンを撃ち、ギリアム機を撃墜しようとする。
「ちぃ!」
ギリアムはフルスロットルし、急上昇。一気に高度を上げる。
体に掛かるGに耐えながら後ろに振り返り、ロト1のタイフーンが追って来るのを確認したギリアムはある程度まで高度を上げ勝負に出る。
エンジンの出力を一気に下げ、エアブレーキも全開に開く。先程のオーバーシュートとは違い機体を完全に失速させる。失速したギリアム機は機首から傾き、落下を始める。
《何!?》
突然、失速し、落下を始めたギリアム機のF-15Cを見たロト1は撃墜しようとしたが、衝突する可能性が高いため、追撃を中断。ギリアム機から一旦離れる。そのことを確認したギリアムはすぐさま、エンジンの出力を上げ、機体を水平に戻る。
「振り切ったか。ここからどう…!?」
ギリアムはあのタイフーンをどう堕とすか考え始めようとした時、大きな爆発音と少し遅れて来た衝撃波で機体が少し揺れる。
「なんだ!?」
一体何が起きたのか思いギリアムは周りを見渡すと、艦隊の反対側の空中に巨大な爆炎が上がっていた。
《何が起きた!あれは一体!?》
《敵の攻撃なのか?》
《反対側の攻撃隊との連絡が途切れた!これは連合軍の攻撃だ!》
戦艦パトリオットが発射した三式弾は爆発を始めて見た敵、味方のパイロットは爆発に気を取られ、機動が単純化する。
《…とっ!貰った!》
いち早く、戦闘に気を戻したラリーは未だに爆発に気を取られている、ロト4の後ろとり、トリガーを引き、バルカン砲を撃ち込む。
《ハァ!しまっ―――…》
ロト4は後ろを取られたことに気付き、回避機動を取ろうとした時は遅かった。ラリーが放った25mm弾はエンジンとキャノピーに直撃。さらに、燃料に引火し、空中で爆散する。
ロト4の機体が爆散でパイロットは一斉に戦闘に気を戻し、機動を再開。再び空は激し戦闘が繰り広げられる。
「…見つけた」
戦闘に気を戻したギリアムはロト1のタイフーンを発見。すぐさま、後ろ取り、ロックオン。コックピット内に電子音が鳴り響き、ミサイルを発射する。
《後ろを取られた!この俺が!?》
ロト1はフレア、チャフを射出しながらインメルターンすることでミサイルを回避する。その後、右急旋回しながら減速し、ギリアム機をオーバーシュートさせようとするが、ギリアムはそれに気付き、減速。オーバーシュートせずに済む。そして、減速したロト1のタイフーンを完全に捉えたギリアムはバルカン砲のトリガーを引こうとする。
《サイファ―上だ!》
「何…ちっ!」
《当たれ!》
ラリーの叫び声と同時に上を向くと、ラリー機に追われながらもこちらに突っ込んで来るのを確認。すぐさま、右急旋回。その直後に上から来たタイフーンが放ったバルカン砲が機体下部に掠れる。ラリーの警告がなければ撃墜されていただろう。
「くそ見失った!」
どうにか攻撃を回避したギリアムであったが、ロト1のタイフーンを見失い、周辺を探す。
そして、正面から突っ込んで来るロト1のタイフーンを。
「ヘッドオンか!」
ロト1とギリアムはヘッドオンの状態になり、ロト1はギリアム機に狙いを定め、トリガーを引こうとする。そして、僚機がすれ違う寸前にギリアムが勝負に出る。
「くっ!」
《何!?》
ギリアムはすれ違う寸前にハイGターンで機種を180度反転。それと同時にロト1のタイフーンはギリアム機の前に出る。
ツバメ返し。すれ違う直前に機体を180度反転し、相手の後ろを取る機動。1つでもタイミングを間違えれば、蜂の巣になるか、衝突する可能性がある。しかし、ギリアムはそれを決め、ロト1の後ろを取る。
「チックメイトだ」
ギリアムは直ぐにトリガーを引き、バルカン砲をロト1のタイフーン命中。両エンジンから火を吹き、右主翼も穴だらけになり、油圧毛糸にも致命的なダメージを受け、ほぼ操縦不能になる。
《傭兵如きに!》
ロト1は直ぐにイジェクトレバーを引き、機体から脱出する。
《ま、まさか俺一人!早く増援を!》
《もらった!》
残ったロト2もラリーがバルカン砲で仕留める。エース部隊を仕留めたギリアムは機体の状態を確認。ダメージは無し。弾もまだ余裕があるが、ロト隊との激しい空戦のせいで燃料がビンゴになっていた。
「ガルム1からガルム2へ。燃料がビンゴだ。そっちは?」
《こっちもだ。一度補給だな》
「そうだな。ガルム1からイーグルアイへ。燃料がビンゴだ。補給のため一時撤退求む」
《了解したガルム1.ガルム隊の撤退を許可する》
「了解。ガルム2.一度戻るぞ」
《了解》
ガルム隊は後退の許可を貰い一度、補給のため後退した。
戦域攻勢作戦計画4101号まだ続くのであった。