本日2話目です。
深夜に投稿してその上まだ1話だけなのにめっちゃユニークアクセス来てて割と驚いてます。Спасибо!
感想とか評価……くれても、いいのよ?
とかまあ言っても、まだ2話程度じゃ評価のしようもないけど。
挨拶を済ませた後のこと、但野2佐と2人きりで艦長室に移動し、情報のすり合わせを行っていた。
おかげで、この世界について色々と知ることが出来た。
まず、夕立が立っていた地点は横須賀沖150キロ程の距離にある太平洋であり、比較的陸地には近かったようだ。
ただ、何故比較的南方の海であるレイテ沖からこんなところまで飛ばされてしまったのか、これがよく分からない。
俺としては気が付けばあそこに立っていたから分からなかったけど、横須賀基地側からは海にいきなり光の柱が立ったと思えば、突然近海にごく小さなレーダー反応が現れたから確認のためにやってきたら、俺が居たらしい。
羅針盤も持っていなかったわけだしおかげで助かったというのはあるが、艦これ世界では艦娘は電探に反応しなかったのにこっちでは反応があったのには不思議である。
もしかしたら、これが現代技術の力なのかもしれない。
また、明言はしていなかったものの俺が夕立とバレたのもまあ頷ける。
俺が居た世界通りであるならば、艦これと海上自衛隊はコラボもやっていたはずだからだ。
それに、どうやらこの但野2佐自身も艦これのプレイヤーだったらしく、護衛艦はるさめの乗員にもそれなりにプレイしている人は居るらしい。
さっきの反応はそういうことか、と苦笑を浮かべる。
正直、最初の邂逅がまだ艦これに理解のある自衛隊であって本当に良かったと思う。
旅客船とか漁船とか、民間の船と鉢合わせていたらきっととんでもない騒ぎになっていたに違いない。
更に話を続けていくうちにこの人は信用出来ると判断した結果、俺は但野2佐にだけ異世界転生する前から夕立として生きてきた艦娘生まで、全ての事情を話すことに決めた。
転生、などと荒唐無稽なことを信じるかどうか、いい所半信半疑で留まるだろうと思っていたのだが、事のほかすんなりと信じてくれた。
なんでも、そもそも艦娘という明らかにファンタジーな存在が今ここに居るのだから、転生も有り得ない話ではないだろうというのが彼の言。
それもそうか、と納得した。
「そういえば、君の語尾にもゲームの夕立と同じく、ぽい、というのがついているが、これはいわゆる役なのかな?」
そう言われた自分の顔はきっと真っ赤だったことだろう。
実のところ、まだ夕立になったばかりの当初から、ここまでしっかりと板についた夕立の挙動をしていたわけではない。
最初の頃はまだ語尾の「ぽい」は多少意識すればなくても会話は出来ていたし、なんなら男だった頃のような話し方だって出来なくはなかった。
ここまで挙動が夕立になってしまったのは、ひとえに、練度が上がってより夕立としての完成度が上がっていったのと、何より「改造」を受けたことが最大の要因だった。
言ったわけでもないのに何故だか自分の事情を知っていた妖精さん曰く、「夕立になった頃はまだまだ人間だった頃の魂の名残が残っていたが、改造を受けたことで魂が艦娘の器としての身体により定着してしまったことで、魂そのものが艦娘のものに近くなってしまった」からだという。
確かに改造前はまだ男としての自覚が残っていたのにも拘らず、一度目の改造後にはもう女としての振る舞いにも不自然さはほとんど残っていなかったし、更にはあくまでゲームキャラとして認識していたはずが、改造したことでかつて大戦時に駆逐艦だった頃の記憶まで一部引き継いでしまっていた。
改二改装まで至った今ではもう魂の9割9分が艦娘になっているらしく、大戦時の記憶は全て完全に
ただ、だからといって前世の自分が他人のように見えるようになったとか、そんなわけではなく、あくまでも「自分は昔は男だったが、今は夕立である」という意識が根強いというだけなので、そこは安心してもいい。
ただ、男だった頃は物静かとは言えないものの馬鹿騒ぎするほどやかましい性格じゃなかったのに、今では子供のようにはしゃいだり、やたらと甘えたがったり、戦闘になると「狂犬」なんてあだ名が付けられるほどに暴走してしまうようになったのは、正直今でももの恥ずかしいものである。
さて、これまで但野2佐と互いに色々な話をつつきあって、ひとつ違和感を感じてしまった。
それはこの国の首相……総理大臣の名前を聞いて思ったこと。
現在の総理の名前は
前世の日本……自分が男だった頃に生きていた首相の名前と、全く同じだということに。
いや、そんなまさか……。
なんて思ったものの、万が一ということもあったためそのことを但野2佐に尋ねてみると、確認を取ってみるから名前を教えて欲しいと言われたので答えられるだけのことは答えていった。
ちなみに、前世の俺の名前は
ちょっと珍しい名前だけに、すぐに答えは見つかった。
「喜べ夕立。君が居たという痕跡が見つかったぞ」
「全くもって喜べないっぽい……」
但野2佐の持っていた携帯端末で軽く調べて見たところ、3年前に俺と同姓同名の男子大学生が神隠しが如く行方不明になったというニュースがあったらしく、俺が異世界に転生したのも3年前だったということもあり、見事にここが俺にとっての本当の故郷であることが証明されてしまった。
ついでに異世界とこの世界の時間の流れが同じだったという事実も分かったが、そんなことは普通にどうでもいい。
「夕立には、家に帰ってみたいって気持ちはないのかな?」
「うーん、無いわけでは無いっぽい……」
正直言うなら、帰りたい気持ちは少しだけある。
ただ、それ以上に、あまりにも恥ずかしすぎるだけなのである。
普通に女の子になっただけならまだ半歩ほどは譲って気恥しい部分は大分緩和出来ただろう。
だが、よりにもよって存在するゲームキャラ……しかも、一部ユーザーからは馬鹿っぽいキャラ、甘えたがり、などなどどう考えてもかつて男子大学生であった自分には受け入れ難いキャラになってしまっており、しかもまさに今の自分の性格や挙動がそれであることを自覚しているからこそ、家族や友達には今の姿を見られたくはなかった。
家族や友達の前でぽいぽい言って笑われるのは勘弁がすぎる。
それに、もう一つ懸念点がある。
俺の左手の薬指にはめられている銀色の指輪。
そう、艦これユーザーなら誰でも理解出来るであろうそれ……「ケッコンカッコカリ」の指輪だ。
自慢ではないが、俺の練度は
とにかく、それだけの高練度なだけあって、俺の練度は既にケッコンカッコカリが出来るほどに高くなってしまった、というわけだ。
ということは、その指輪を渡してきたのも必然的に提督さんであるというのは当然のこと。
そしてうちの提督は……男である。
家族から見たら、きっとこんな風に映ることだろう。
「息子が行方不明になったと思ったら娘になって、しかも異世界の男と結婚して帰ってきた」と。
恐らく、友人達も総じて爆笑することだろう。
……間違いではないだけに、余計に腹立たしくなってきた。
「いいじゃないか、今の君なら首輪がついてても皆納得出来ると思うぞ」
「余計なお世話っぽい。というか、首輪って言わないでほしいっぽい」
さっきからしきりに指輪に目が行っているのを目敏く見られていたのだろう、ニヤニヤした表情でからかわれてしまった。
ここで取り付く島もないとばかりに流せたら良かったのだろうが、ど正直と言ってもいいこの身体では頬を膨らませて反論してしまう。
これのせいで、提督さんにはいつも頬を指で突かれながら笑われたものだった。
案の定、但野2佐にも苦笑いされてしまった。
「一体この様を見て、本当に前世が男だったなんて信じられんな……おっと、どうやら港に着いたようだぞ。ほら、ついて来なさい」
反論しようとしたが、但野2佐はとりあう前に誤魔化すようにして立ち上がった。
本当に着いたのか? とも思ったが、つい先程無線が入っているのも確認していたため、嘘ではないのだろう。
悪運の強い男である。
仕方がないので着いていこうと思い立ち上がったら、但野2佐はふと思い出したかのように「おお、そうだ」と呟いたかと思うと。
「君の親友の一人、
とんでもない爆弾を落としてきた。
「……っぽい!?」
但野2佐の言う日野壮馬とは中学生の頃から常につるんでいた親友で、軍事的なもの……特に軍艦のことが好きな、俗に言う軍艦オタクであり、そして俺に艦これを勧めてきた元凶にもなったやつである。
もしや、あいつがあそこまでに軍艦に傾注していたのはこの叔父である但野2佐のせいではなかろうか……そういえば、この人も艦これプレイヤーとも言っていたし。
それよりも壮馬の艦これの熱中具合は本当に半端ではなかった。
聯合1位を取ったこともあるくらいのガチガチの廃人だったあいつに、今の姿で会うのは正直やばすぎる気がしてならない。
せめてもの救いは、
いずれにせよ、あいつのことを考えるのは会った時の自分に丸投げすることにしよう。
今は考えたくないだけ、とも言う。
搭乗口へとやってくると既に架橋がかかっており、確かに到着していたようだ。
昔、友人達と共にちらと遠目で見た時と変わらぬ横須賀軍港の様相に、やはり現代の日本に帰ってきたのだと改めて実感させられた。
港へと下り立つと、敬礼をとりながら整列する自衛官達と、どこからどう見ても重鎮であろう2人の老人が列の前に立っていた。
彼らの姿を認めるなり、但野2佐も敬礼を返したので、俺も慌てて返礼をとる。
どういうこと? と内心パニックになっていると、老人達が微笑みを浮かべて近寄ってくる。
「君が件の子、夕立君だね? 私は
「朝凪大臣の仰った通り、柚原徹です。よろしくお願いしますね」
「し、白露型4番艦、夕立です! よろしくお願いしますっぽい!」
まさに重鎮中の重鎮、大本営で言うなら元帥と大将の来訪にどうしようもないほどの緊張が身体を走る。
そのせいで震える声を張り上げるように挨拶を返してしまうが、どうやら無礼にはとられなかったようで、むしろ彼らには笑われてしまった。
それには、少しだけ安堵することが出来た。
ほんの少しだけど。
「そこまで硬くならなくたっていい。この国、日本国は基本的に身分は平等を謳っている。自衛隊こそ上下関係には厳しくしてはいるが、君は軍属ではない。君と私に、上下の関係など一切ないのだよ」
「そうですよ。そもそも、規律にも無礼打ちなんてものはないですから、別に法律の範囲内であれば何をしようと私達に君を罰する権利なんてないんですから」
そうは言われても、やっぱり異世界の経験のせいで、緊張を解くことなんて出来そうもない。
あの世界の元帥や大将は……なんというか、怖い人が多かったし……。
縋るように隣に立つ但野2佐に視線を向けてみるが、無理だとばかりに小さく首を横に振られてしまった。
あまりに階級が違いすぎるためどうしようもないとは分かっていたが……小刻みに肩を震わせて笑ってるのを、俺は見逃さなかった。
あとで演習仕様のペイント弾の的にでもなってもらおうか……。
そのためにも、今は目の前にそびえ立つ雲の上の存在と言うべき御二方からの
仕方ないか、と肩を竦める朝凪大臣と依然変わらぬ微笑を浮かべる柚原幕僚長。
しかし、どう反応すればいいのかと途方に暮れるしかなかった自分に、朝凪大臣からふと、呟くようにしてひとつの提案を出された。
「ふむ、そうだな。折角横須賀に来たのだから、但野2佐とショッピングに行ってはどうかね?」
「ぽい?」
威厳を感じさせられる老人の口から放たれた意外な提案に、緊張も忘れて目を丸くしながら、ついいつもの口癖が出てしまうのだった。
ちなみに自分は
高練度も大体駆逐艦に偏ってます。
まあ、海防艦に偏ってるよりはまだましだよね……。