シリアス系はこんなに書くつもり無かったんだけど……次回からしっかりほのぼの入ります。
食堂についたら既にかなりの数の自衛隊員が揃って食事をとっているようで、休暇であるからか、普段よりもやはりかなり人が多い。
稼業中は基本的に艦艇内で食事をとる自衛官も多いためか、普段は今と比べると本当に少ない人数しか居ないのだが、今日は俺が最初に世話になった護衛艦「はるさめ」以外の隊員達もかなりの人数が居るようだ。
俺が入ると、途端にこちらに視線が集中するが、中には、逆に目を逸らした人も何人かいた。
というよりも、つい今朝に見た顔である……例の、写真争奪戦の渦中に居た人達である。
そんな彼らの視線などは気にせず、俺達2人は適当な、かつがらがらに空いている席へと座った。
今日の献立は唐揚げ定食のようだ……自衛隊の食事は意外と絶品なので、俺はこの時間が結構好きだったりする。
いただきます、と食事をとろうとすると、不意に隣に誰かが座った気配がした。
誰だろう、と思いつつも気にせず食事を進めていく。
そんな俺に痺れを切らしたのか。
「あ、あの」
恐る恐るといったようなどもった声が、件の隣の人物から聴こえてきた。
流石に無視をするわけにはいかないので一度食事をやめてそちらの方を向くと、なんと隣に座ったのはさっきの写真争奪戦で見事打ち勝っていた……それも、俺が最初にデコピンをした男だった。
あの悶絶具合からしても相当だったろうに、よくもまあ、自分に痛みを負わせた相手に恐怖を抱かず近付けるものだと関心する。
いや、内心では怖がっているって線が濃厚かな……あれだけ必死に写真を手に入れようとしていたわけだし、好奇心が勝ったってところか。
というか、そろそろ相手が焦れているように見える……返事しないと。
「ん、どうしたっぽい?」
と返してやると、彼はおお、と何かに感動しているようだった……何なんだ、一体。
「あー、えっと、ですね。ほら、こんな機会じゃないと中々コミュニケーションをとる暇がないじゃないですか。だから、この機に色々喋りたいなと……」
そう言いながら視線を右往左往させる彼……何故そんなに恐る恐るなのか、そう思いながら彼の視線の行先に気が付き、やっと合点がいった。
俺は隣で黙々と話を聴きながら食事を取っていた但野2佐へと視線を送ると、但野2佐もそれに気付き、はあ、とひとつ溜め息を吐くと。
「まあ、いいぞ。確かに、夕立はまだ俺、朝凪大臣、柚原幕僚長、加えて甥やその友人達以外とはまだほとんどコミュニケーションを取っていなかっただろう。この際に色々と話し合うといいさ」
「よっしゃ!」
我が意を得たり、とばかりにガッツポーズをする男。
一連の様子を見ていた周囲が、ざわざわと騒ぎ出した。
「あ、ずるいぞ!」
「ちょっと待て、それなら俺も!」
結局、あれやこれやと俺の周りに集るように人が集中してしまった……と、どうしようかと困惑していると、突然、ガタンと誰かが勢いよく立ち上がった音が聴こえてきた。
それの正体は、何も言わず物静かに、しかし何処かプレッシャーを漂わせながら立ち上がっている但野2佐であった。
途端、周囲は空気が凍りついたかのように静寂が覆い、まるで時間が止まったかのように喧騒が止まる。
但野2佐は一度じろりと周囲を見渡してから。
「質問は一度に一回。一定ごとに交代で、だ……分かったな?」
「「「はっ!」」」
そう言い放った。
その他自衛官達はまるで重大な任務を引き受けたかのような真剣な表情で敬礼をし、その様子を見た但野2佐はようやく何も言わずに席に座るのだった。
その時、直接言われた訳でもない俺ですら、周囲の人達が尽く安堵したことに気が付いた。
うちの提督も、普段は穏和だというのに怒ったらとてつもなく怖かったことを思い出し、もしかしたら、成り上がるためには怒ったら怖い人であることも条件に含まれているのだろうか、とつくづく思わされた。
それからは、代わる代わるに質問が飛んでくるようになった。
最初は、俺の隣に座ることでこの場を作りだした功労者……名前は
バッジからして曹官であることは分かっていたが、細かい区分の違いは分からなかったため、2等海曹かその辺だと思っていたから、素直に驚いてしまった。
話をしてみると結構軽快な人柄だっただけに、口に出すと本人は本気で気を落とすだろうから言うつもりはないが。
最初の方の質問は、大体俺の艦娘の能力に関係することばかりだった。
具体例を挙げるならば……。
「主に使ってた装備は?」
「基本的に12.7cm連装砲C型改二と水上電探がメインで、夜戦を前提とした戦闘ではたまに六連装酸素魚雷も使ったっぽい。あとは、仕方なく対潜哨戒要員で出撃した時とかは爆雷や三式ソナーとかも持っていったりもしたっぽい。けど、夕立は対潜戦闘が苦手っぽい……」
実際、対潜戦闘は皐月やサムに任せることがほとんどだった。
一応、俺も対潜改修は終わっているから、やろうと思えば出来なくはないんだけど、やっぱり砲雷撃戦こそが俺の本分だと思う。
あ、改修と言っても、ゲームとは違って艦娘を使うのではなく、建造や海域ドロップをした際、何故かひとつの鎮守府では同じ艦娘が生まれてくることはなく、代わりに艤装が出てくるから、それを素材として使うだけだからそこは安心だったりする。
「練度って分かったのか? それなら、夕立ちゃんの練度は?」
「夕立は分からないけど、提督さんは確認出来るらしいっぽい! 確か、今の練度は168っぽい。鎮守府の一番が長門の171で、夕立が二番目っぽい!」
うちではケッカリ艦が自分も含めて3隻しか居ないことを考えれば、この練度は群を抜いていると言えるだろう。
実際は既に練度99に達している艦はかなりの相当数存在しているのだが、提督さんはこれ以上指輪を渡す相手を増やすつもりはないらしいし、艦娘の方も受け取ろうとはしないようだ。
俺にはよく分からなかったが、何かしら事情があるのだろう。
「所属していた鎮守府は?」
「舞鶴っぽい! 提督さんはまだ先代さんから引き継いで3年目の新人だけど、凄く優秀っぽい。ちょっと前、戦果発表で聯合1位にも載ったっぽい!」
向こうの世界には、ゲームの中に存在したランキングのような、戦果に応じた褒賞制度が存在していた。
その中で舞鶴鎮守府は一度だけ1位を取り、元々一般人の覚えのよかったこともあって記事になったこともあった。
おかげで、大本営も余計に口出しが出来なくなったのは本当に僥倖だった。
「鎮守府で仲が良かった艦娘は?」
「うーん、特に仲が良くなかった艦娘がそもそも居ないっぽい。けど強いて言うなら、特に北上さんと川内さんとは仲が良かったっぽい!」
そういう問題は全て提督さんが尽力してくれるおかげで、うちで特筆して仲の悪い艦娘は居ないと言ってもいい。
精々相性が悪い相手とはあんまり基本的に直接関わりに行くことはほとんどないというくらいで、同じ艦隊に入るとしっかりとしたコンビネーションを取ってくれるし、作戦会議でも反発し合うこともない……ああ、でも加賀さんと瑞鶴だけはよく喧嘩しているのを見かけるな。
ただ、あれは仲が悪いというよりむしろ喧嘩するほど仲が良い、といった感じがするが……大体が、素直になれない加賀さんが心配するのを物凄く遠回しに嫌味じみた言い方をするものだから空回りして瑞鶴が起こる、というのがもはやテンプレと化している。
「それってケッコンカッコカリの指輪だよね? これって、認識は結婚しているってことでいいの? というか、夕立はその提督のことが好きだったのか?」
「それに関してはノーコメントっぽい」
まず、提督さんがどういう意識をもって指輪を渡していたのかが正直分からなかった。
俺の時はなんでもないというように渡されたし、かと言ってこれ以上増やしたら失礼だとかなんとか言って3人よりは増やそうとしない。
全く意識していないのか多少でも意識しているのか、それすらも分からない。
俺の方は……まあ、好ましいとは思っている。
が、本当は正直よく分かっていない。
結局、自分のことも提督さんのことも分かっていないということなのだ。
ふと、神楽坂曹長が何かを思い出したように呟いた。
「そういえば、俺達が君を拾った時、なんだってあんなところにいたんだ?」
「実はよく分かってないっぽい。大規模作戦の攻略に成功したと思ったら、気付けばあそこに居たっぽい」
「大規模作戦って?」
「捷一号作戦っぽい」
「捷一号作戦? それって、艦これの一期の締めくくりになったイベントの作戦名と同じだな」
まさかの、ゲームのイベントと同じ作戦であったらしい。
内容的には違いがあるのか、と思って試しに色々と聞いてみたが、ゲームでも相当な難易度を誇ったイベントだったらしく、ギミック解除や最後に倒したボスとも言うべき敵旗艦……深海鶴棲姫までもが同じだったようだ。
そしてそのイベントがあったのが大体1年前……俺が向こうでその作戦に参加したのがつい先日のことであったが、一応ゲームの方が先行しているらしい。
実際に体験している俺からしたら予言としか思えないのだが、こっちではゲームだしな……謎である。
にしても、一期って何だ?
艦これにそんな期分けなんてあったっけ?
こちらも聞いてみると、どうやら一期が終了したことで、大幅に仕様が変更されたらしく、主な変化が経験値獲得システムが変わったことで、通常海域でのレベリングが以前よりも難易度が上がってしまったとのこと。
これ、まさか俺が居た世界にも適当されたりしないよな?
「そろそろ時間もいい。質問は次で最後だ」
今まで傍観を決めこんでいた但野2佐が時計を見ながらそう言うと、彼らはまだ物足りなさそうな表情をしていたが、確かに結構時間も経過しているのもあって、特に何か言うこともなかった。
「じゃあさ、これはなんというか、無神経な質問になっちゃうから答えなくてもいいんだけど……」
彼らの中からそんな声が聴こえてきた。
が、次の質問は俺を凍らせるのには充分であった。
「仲間の轟沈って……その、見たことある、のか?」
そう言われて、俺はひとつの記憶を思い出していた。
紅い海に続く激戦。
疲弊していく艦隊に、俺は皆のために頑張ろうと奮闘していた、あの時。
気を抜いてしまった隙をついて、ひとつの砲撃が飛んできて……。
「おい、大丈夫か?」
「え? あ、うん、大丈夫っぽい」
呆然としていたらしい俺を我に返らせたのは、但野2佐だった。
普段から仏頂面の多い彼だが、今は特に額に皺が寄っている。
怒ること自体はいつもそれなりに見かけるが、今のは少しだけ怒りの種類が違っているようだ。
「いいか。俺達、敵勢力から国を防衛し、また時には人を助けに飛び回ったりもする。が、彼女はれっきとした軍人だ。仲間の死が身近にある戦場が当たり前と言ってもいい。もしかすれば仲間が居なくなることにも慣れている可能性もなくはないが、それでも良い記憶にはならないだろう。そういう手の質問はするべきではない。分かったか?」
「は、はい。その、夕立ちゃん、ごめんなさい!」
「あ、うん、大丈夫っぽい」
質問した彼も相当に無神経であることに気が付いたのか、血の気の引いた顔で何度も頭を下げていた。
但野2佐も怒ってくれたし、その姿を見て俺も流石に何かを言う気にもなれなかったので、素直に謝罪は受け取っておく。
ただ、質問には答えてあげようとは思う。
「夕立は……一回だけ、仲間が沈むのを見たことがあるっぽい。うちでの、唯一の轟沈艦っぽい」
「夕立?」
但野2佐が訝しげに俺を見ている。
周りの彼らも、何かに絶句しているように目を見開いて固まっている。
別に、質問されたから答えただけなんだけどな。
「じゃあ、これでもう質問は終わりでいいっぽい?」
「あ、ああ……その、夕立ちゃん、顔が青いけど、本当に大丈夫か?」
自分では平気なつもりだったけど、相当に顔が青ざめていたらしい。
なるほど、それで周りがこんなに固まっていたのか……心配されてしまっていたようだ。
少しだけ心が軽くなった俺は、少しだけ噴き出してしまった。
周りも、空気がほんの少しだけ軽くなった。
「うん、本当にもう大丈夫っぽい。えっと、ありがとね」
そう返すと、皆一様に顔を逸らして明後日の方向を向いている。
だけど俺には見えている、彼らの頬が少し赤らんでいるのが……照れているようだ。
うん、やはり夕立の可愛さは万人共通だな。
「よし、じゃあ、皆食事は終わったな? では、解散だ」
但野2佐の言葉に皆頷き返すと再び敬礼し、それぞれ皿を返しにいくと、思い思いに戻って行った。
俺も皿を返すと、そういえばと但野2佐にとあることの許可を貰いに来たことを思い出した。
「夕立、街に出たいの。大丈夫っぽい?」
「うん? ああ、街か。それならこれを持っていけ」
と、彼が懐から出したのはカードのようなもの。
「これは外出証だ。外に出る時、または中に入る時に門番に提示してもらえれば出入り出来るようになっている。ただ、外泊はするなよ? それと、夜の点呼までには帰ってくるように」
「分かったっぽい! それじゃ、またね、但野さん!」
但野2佐からある程度の説明を受けると、俺は足早に部屋へと戻った。
そして貰い物のポーチバッグと
向かうは基地の外……横須賀市だ。
書き溜めがないから毎日執筆生活……今のところいけてるけど、流石に予定によっちゃ毎日更新はきつい時もあります。
次回からはやっと街に繰り出します。
実質説明回もこれで終わりです。
にしても、WG42あと8個くらい欲しい……(強欲)