転生者夕立、現代ニ帰還ス   作:香月燈火

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遅くなったぜ……実は深い深い、大切なわけがあってな……。


原神やってました。
誠に申し訳ございません(素振り)。

追記:9/30 忙しすぎて今日もできません……ごめんなさい……明日は絶対に書きますので、是非待っていてくださいをさ。、


夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

 朝食を食べた後、基地内散策を切り上げて街へと繰り出すことにした俺は、大した身支度も必要なかったので、部屋を出るとそのまま基地の外へと向かった。

 前に但野2佐にショッピングモールへと連れられた時にも見た門衛さんへと外出証を見せると、気を付けるんだよと言われながら送り出された。

 

 

 ひとまず基地を出てきたは良いものの、この周辺ともなれば店はおろか、騒音の問題があるため、ないわけではないが、一般市民に配した住宅もかなり少ない。

 ただ、横須賀駅が割とすぐ近くにあるので、とりあえずは駅で何処かへと向かおうと思う。

 しばらく歩いて横須賀駅へと到着すると、路線図を見て何処へ行くか決める……が、正直俺は男だった頃も神奈川には横須賀か精々横浜や鎌倉でちょっと降りたことがあるくらいしか知らなかったりする。

 前のデパートも車で行ったためにそもそも何処にあるのかも分からないし……。

 まあここで悩んでも時間の無駄だし、ひとまず横浜へと向かうことにした。

 

 

 というわけで行き先の決定した俺は早速切符を買うと、電車へ乗り込んだ。

 しかし電車に乗ったはいいが、時間的にも通勤ラッシュとまるっきり被ってしまったせいで、思いのほか人が多い。

 座ることが出来たから横浜までの長い距離を立ちっぱなしにならずに済んだのはよかったが、おかげで、かなりの人から凝視される羽目になってしまった。

 居心地の悪さを感じながらも、気を紛らわせるために入れたばかりのSNSを開こうとすると、何件か通知が入っていることに気が付いた。

 すぐに確認してみると、送り主は但野2佐と壮馬のようだ。

 時間的にも送られてきたのはどうやら基地を出てからのことのようで、とりあえず先に送られてきた但野2佐の方を確認してみることに。

 

 

『どうせ君のことだから、宛なんてないんだろう? 丁度、今日は壮馬の仕事が休みのようだから君を誘うように声をかけておいたら、快く了承してくれたよ。君が良かったら、一緒に行動しなさい』

 

 

 あまりに神がかったアシストに思わず涙が出てしまいそうだ。

 提督さんといい、俺の周りの大人の男達の気の回りようがあまりにも的確な人が多すぎる。

 もし男だった頃の俺が大人になったら同じことが出来ていただろうか……いや、ないだろうな。

 今は人目がつくので心の中で感謝から拝みながら、ありがとうございます、とだけ送ってから次の通知……但野2佐に言われて送ってきたであろう壮馬の個人チャットへと移る。

 

 

『叔父さんから聞いたんだけど、今から外に出るんだろ? 俺も丁度今日は仕事も予定もなかったし、良かったら一緒に何処か行かないか? 夕ちゃんとも色々と直接話をしたかったし、色々と奢らせてもらうよ。まあ、嫌なら無理に誘わないけど……とりあえず、見たら返事が欲しい』

 

 

 壮馬にしては意外に紳士的な内容だった。

 軍艦に関して言えば常にハアハアしてるレベルのド変態が一体どういう風の吹き回しで……いや、よく考えたらあいつ、異性に対しては割と健常的な思考だったっけ。

 それならおかしくはない、か?

 けど俺も今は艦娘だし、あいつのことだからもう既に確信してそうな気がしないでもないが、バレたらどんな反応するだろうか……。

 というか、あいつに関してはもはや軍艦に人生注いでるレベルだからやっぱまともじゃないな、うん。

 誘ってくれてありがとう、是非ともお願いしたいけど、いいの? と送ってみると、数秒で既読がついた。

 返事は『よっしゃ! じゃあ、どこで待ち合わせする? 横須賀に行けばいいのか?』と返ってきたので、そういえば俺は今移動中だったことを思い返し、電車で横浜へ移動中、確認されたしと旨を送ると、『了解。俺の家が横浜だから丁度良かったな。着いたらまた連絡してくれ』と来たので再度了解と送り、そのままSNSを閉じた。

 

 それからはネットニュースを覗いてみたりして努めて依然変わらぬ周囲の視線には気にしないことにした。

 そして数十分が経過した時、ようやく目的地……横浜へとやってきたのだった。

 ただ、来たのは良いのだが、やはり人の目は避けられない。

 別に変装しているわけでもないし、人もやはり横須賀や電車内よりも遥かに多いのだから当たり前ではあるのだが、やはりこの視線は相変わらず落ち着ける気がしない。

 

 

 急いで改札口を通り抜けてからSNSで壮馬に連絡を入れると、不意にスマホが震えだした。

 

 

「ぽいっ!?」

 

 

 

 あまりに突然だったこともあり、相変わらずの声で驚いてしまったが、スマホの画面を見てみると、SNSを通話がかかってきているようだった。

 送り主には、壮馬とある。

 そういや通話ってこんなだったな、と思いつつ通話に出ると、向こうからも喧騒の音がマイクを通して聴こえてきた。

 

 

「もしもし、っぽい」

『もしもし、って、ぽいって……あー、そうだったな。俺ももう横浜駅に居るんだが、何処の改札口が近い?』

「んー、多分西口っぽい」

『お、それなら俺も近くだな……いたいた。やっぱ凄い目立ってるな……』

 

 

 改めて周りを見ると、確かに壮馬が少し離れたところで手を振っていた。

 電話を切り駆け寄ると、よお、と壮馬は軽い口調で言い放った。

 

 

「壮馬、おはようっぽい!」

「ああ、おはよう……前は取り繕ってたような気がするが、今はいいのか?」

「うん、但野さんが壮馬だけになら明かしてもいいし、外でも自然体にしていても良いって言ってたっぽい。むしろ、正体を明言出来る証拠がないくらいに自然体にしてこいって」

「へえ、なるほど……てことは、名前は今は夕、って呼べばいいんだな?」

「お願いっぽい!」

 

 

 そう言うと、壮馬は元気がいいこった、と言いながら俺の頭を乱暴に撫で回してきた。

 こんなことをされても俺の髪質は柔らかいからすぐ戻せるからいいものの、大抵頭が少しフラフラしてしまうからもっと軽くやってほしい……別に、悪い気がしていないとか、そういうわけではない。

 どれだけ頭をいじられても水で髪を濡らしてならしても、最終的に犬の耳みたいな癖毛だけは戻らないのが本当に不思議である。

 前白露型ほぼ全員に言えることだが、改二改装前はこんなのはなかったのにな。

 

 

「さ、行こうか、お嬢さん?」

 

 

 なんて、おどけながら紳士ぶって手を差し出す壮馬。

 そんな壮馬の姿を見て、俺は。

 

 

「え、なにそれ」

 

 

 ドン引きしていた。

 表情を引き攣らせたまま固まる壮馬の姿についやっちまった、と思ったが、それ以上にあまりにも俺の知る壮馬の中身とギャップがありすぎたせいで、どうにも拒否反応を起こってしまっていたらしい。

 確かに壮馬は見た目で言うなら結構整っており、見た目だけで言うなら非常に()()()()には見える。

 が、俺はこいつとは高校も同じだったからよく知っている。

 こいつが女子に告白されたりしていたのは新1年生になって数ヶ月の間だけで、それまでは彼女なんて一度も出来ていなかったし、高校でもしばらくして女子達がこいつの中身を知った途端に告白どころか、むしろかなり遠巻きにされて結果告白どころか業務連絡以外はほとんど女子と関わりがなかったことを。

 何しろこいつ自身が色恋なんて全く興味がなかった上に、もしこいつの琴線に触れてしまえばひとたび男女問わず恍惚とした表情で軍艦語りを始めるものだから、女子の恋も急速に冷めていくのが俺ですら分かったくらいだ。

 そんな壮馬が、3年経って落ち着いたというのか……多少ならまあ、有り得なくもない。

 けど、女子の心知らずの擬人化とも言うべきこいつがかつての本性を失ってしまったのか、というと、それはもはや有り得ないと思っている。

 結論、さっきの夢だったか、もしくは疲れているに違いない。

 

 

「大丈夫、さっきのは見た目だけはかっこよかったっぽい。普段からそんなことが出来たら、多分モテるっぽい」

「夕ちゃん、その慰めは流石に俺もダメージが酷いからやめてくれ」

「あ、でも夕にはもうやらないでほしいっぽい」

「夕ちゃん、さてはわざとやってるな? そうだよな?」

 

 

 壮馬の呟きを無視して、早く行こうと背中を叩いて急かしてやると、項垂れたまま壮馬は深く溜め息を吐きながら、ようやく歩き出した。

 かと思いきや、いきなり止まったかと思うと、振り向いて手だけを出してくる。

 

 

「ほら、手を繋ぐぞ。じゃないと夕ちゃん、迷子になりそうだからな」

「むっ! 夕は子供じゃないっぽい!」

 

 

 いやいやどう見ても子供だろ、と苦笑する姿に、今の自分の姿を鑑みて、渋々その手を取った。

 

 

「んで、どこ行く? てか、行きたいところとかあるか?」

 

 

 壮馬からそんなことを言われるが、ぶっちゃけ何も考えていなかったわけで、当然そんな場所があるはずがなかったり。

 まず、横浜自体が3年以上前に来たっきりで、それからは艦娘として外出もほとんどせずに戦ったっきりだったから、何があったのかも全く覚えていない。

 

 

「壮馬にお任せするっぽい!」

 

 

 そう言うと、やっぱりなと呆れた顔をされた。

 向こうにも分かっていたようだ。

 

 

「ま、夕ちゃんは横浜来たことないだろうしな。じゃあ折角だし、そうだな、俺が住んでるシェアハウスにでも来てみるか? 職場も近くだし、もしかしたら、仕事の見学も出来るかもしれないぞ」

「いや……でも、それは流石に迷惑じゃないの?」

「どうかな……むしろ、うちの職場は変人ばっかだからな。そんなことは気にしないだろうし、むしろ喜びそうだ」

「壮馬がいっぱい居るっぽい!?」

「どういう意味だよ!?」

 

 

 だって、当時の俺だけでなく遥真や磬も揃って変人を通り越して変態だと認定していた壮馬にすら変人と言わしめるって、相当な人なのでは?

 壮馬のことを知ってる人なら全員俺でなくても同じ反応すると思うぞ。

 

 

「……なんだ、その目は」

「……なんでもないっぽい。でも、それならなんで寮まで行くっぽい? ……もしかして、壮馬はロリコンだったっぽい!?」

「なんでそうなるんだよ! 部屋に子供連れ込んでいかがわしいことしようとしてる怪しい男みたいなこと言うんじゃねえ! ほら見ろ、周りも変な目で見て……ってちょっと待ってください!? 本当に、本当に違うんで通報だけは勘弁を!」

 

 

 どうやら通りがかった通行人が事案であると思い込んだのか、本当に通報しかけていたようでこのままでは不味いと流石に俺も加わって色々と説明してようやく事なきを得た。

 ただ、ここでまたさっきのようなコメディをやるとまた同じことが起きかねないので、近くにあるらしい壮馬達(親友3人)行きつけの喫茶店へと立ち寄ることにした。

 

 

 壮馬に連れられてやってきた喫茶店は、外観からはそれほどの特徴はみられなかった。

 

 

「前から思ってたけどさ、なんか夕ちゃんの俺のイメージ偏ってない? なんでそんな変なイメージ持たれてんの?」

 

 

 さあ入ろう、といった時に、そんな疑問が壮馬から投げかけられる。

 俺からするとイメージじゃなく事実なんだが……周りも概ねそんな感じだったし。

 

 

「え? だって、壮馬って軍艦好きが高じて異性にも興味を持たなくなったどうしようもないピー野郎って」

「おい待て! なんだそれ……もしかして、あの2人だな!? なんてこと言ってるんだあいつらは!」

「但野さんから聞いたっぽい」

「叔父さあああん!?」

 

 

 なんで叔父さんまで、と今までで一番の落ち込みようを見せる壮馬の腕を引いて、ようやく店に入るに至った。

 時間も時間なためまだそんなに人は居ないようだが、中々落ち着きがあって安らぐ。

 

 

 店員に案内されて席に座ると、立ち直った……とは言い難いが、とりあえずは大丈夫らしい壮馬からメニューを差し出された。

 

 

「ほら、俺が奢るから選べよ。モーニングセットがオススメだぞ」

「夕立、朝ごはん食べたっぽい」

「なんだよ、要らないのか?」

「貰うっぽい」

 

 

 ひったくるようにメニューを奪い取りあらかた中身を確認すると、さっき言われたモーニングのAセットを頼むことにした。

 コーヒーとサンドイッチ、そしてゆで卵とサラダがついたオーソドックスなものだ。

 壮馬は何かを思いついたかのように、いきなり悪戯な笑みを浮かべる。

 

 

「おいおい、夕ちゃん。子供なのにコーヒーが飲めるのか? 紅茶とか、なんならジュースとかの方が良かったんじゃないのか?」

「ふふん、こう見えても夕はコーヒーが好きっぽい。なんなら、自分でもコーヒーもよく淹れたっぽい」

「は? 夕ちゃん自身でか?」

「そうっぽい。金剛さんが秘書艦になった時は紅茶を淹れてたみたいだけど、夕が秘書艦の時は提督さんにコーヒーを出したっぽい。提督さん、いつも美味しいって言ってくれたよ!」

「……マジか」

「マジっぽい」

 

 

 こんな会話を展開している中、先程とは違う店員さんがやってきた。

 艦娘とも引けを取らないほどに綺麗な容姿をしており、おっとりした雰囲気はどこか赤城さんに似ている。

 

 

「どうしたんですか? 壮馬さん、こんな時間から珍しい」

「美菜さんか……ああ、ちょっとこいつの付き添いにな……」

 

 

 驚いたことに、この女性は壮馬の知り合いだったらしい。

 驚いたのは自分だけではなかったようで、美菜さんと呼ばれた女性も目を瞬かせて俺を見ている。

 

 

「え? えっと、よく分からないんですが、その子は?」

「た、但野夕です! よろしくお願いしますっぽい!」

「夕ちゃんは俺の叔父さんが今世話している子でな。かなり訳ありなんだが、まあ、仲良くしてくれ」

「あら……そうなんですか。私は高田美菜(たかだみな)です。よろしくお願いしますね、夕ちゃん」

「はい!……えっと、壮馬、さん? とはどんな関係っぽい?」

 

 

 不躾な直球の質問だが、美菜さんはニコニコしたまま変わらない。

 すると、壮馬からいきなり爆弾が投げ込まれてきた。

 

 

「慣れないさん付けすんじゃねえ……この人はだな、ほら、あのデパートに居た一人、遥真が居るだろ? あいつの彼女だよ」

「え……?」

 

 

 今度は俺が目を瞬かせる番だった。

 

 

「ぽいぃぃぃ!?」

 

 

 思わぬところで、俺は壮馬からの反撃を食らうのだった。




明日更新するかしないかは貴方次第……(9/29追記 今日はわけあって更新なしとします。)

うちに神風居ないので7-3やる気が出ない……別に居なくても最短通らなくなるだけだけどなんというか……。

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