そろそろ自分が別サイトで書いてるオリジナルの方も更新しないとなので、もしかしたら2、3日に1回がデフォルトになるかもしれないですが、そこは了承いただければ……。
彼女との直接の関わりは高校1年生からだが、偶然にも彼女の親しい友人の中に
壮馬はあれで非常に頭がいいが、その妹である要ももれなく秀才と言わんばかりの頭脳を持っていた。
俺が大学1年生の頃だったか、その頃小学4年生だった彼女の家庭教師を務めたこともある。
小4で家庭教師って……なんて、当時の俺は顔を引きつらせて渋々承諾したものだが、要ちゃんは恐ろしい程に理解力が良く、面白くなって次々に色々なことを教えてしまったのは良い思い出と言える。
現況はどうかは知らないが、今の年齢は確か丁度高校1年生くらいだったはず。
目の前に居る要ちゃんは面影だけを残して当時あった如何にも少女然とした幼さはほとんどなくなっており、女性らしいメリハリのある美少女にまで成長していた。
感慨深くなってぼうっと眺めていると、壮馬が俺の頭に手を置くなり。
「おいおい、夕ちゃんが喜人に似てるって? 確かにあいつはチビでガキっぽい顔はしてたが、流石にこんな女っぽくはなかったし、ここまで可愛くもなかったぞ?」
「……!? 頭から手を離すっぽい!」
チビでガキっぽい顔で悪かったな、と内心で毒づきながら壮馬の手を振り払う。
てか、ここまでってどういうことだ。
もしかして、前世の俺は多少なりとも可愛かったってか?へこむぞ流石に。
要ちゃんの目はそんな俺を何処か興味深そうにしながらも、ふぅんとだけ声を漏らした。
「ま、いいけど。あ、でも後で夕ちゃんちょっと貸してね? なんか面白そうな子だし、色々喋りたいからさ」
「おいおい……俺、叔父さんから直接夕ちゃんの付き添い頼まれてるんだぞ? そんなの、頷けるわけが……」
「そういえば、お兄ちゃんのパソコンのネットショッピングの履歴のことなんだけど」
「しょうがないな。夕ちゃん、大丈夫か?」
「簡単に売ったっぽい!?」
最初は苦言を呈した壮馬だが、何やら要ちゃんが不穏なことを言い出すと、一瞬にして手のひらを返してきた。
こいつ、妹に弱み握られてんのかよ……てか、めっちゃ顔青いんだが一体ネットショッピングで何買ったんだよ。
俺もめっちゃ気になるんだけど……どの道要ちゃんとの対話はほぼ確定的だろうし、どうせなら後で彼女に聞いてみたら教えてくれたりとかしないだろうか。
「やった! あ、お兄ちゃんはこの後何か用事ある?」
「あ、まあ、夕ちゃんに職場を見せようと思ってな……」
「おっけ! じゃ、私はお兄ちゃんの寮で待っとくね!」
それじゃ、と手を振って立ち去る要ちゃんは、まさに嵐のようであった。
黙って見送った壮馬は「なんで知ってんだあいつ……」と呟いた後、何処か疲れきった表情で「よし、行くぞ」と力のない声で言った。
そんな様子に俺もからかう気も起きず、哀愁漂うその背中に合掌すると、その後を追うのだった。
まあ、後でさっきのことを要ちゃんに聞くことは辞めるつもりはないんだけどな。
俺達が入ったのは、何の変哲もない、何処にでもあるようなビルだった。
会社、というからには至極普通なことだとは思うが、壮馬が変人と言うのだからきっと突拍子もない人達ばかりのとんでもないところなのだろうと思っていた。
とんだ風評被害である。
社内も大した特徴もなく、意外と普通な会社なのかもしれない。
強いて言うならあちらこちらで恐らく何かのゲームキャラだろうと思しきイラストが飾ってあったりしているが、ゲーム会社であるならそれも普通に有り得ることだと思う。
とはいえ、俺はゲーム会社なんて当然入ったこともないので全部憶測でしかないのだが。
受付へと向かうと、身なりの整ったビジネススーツの美人女性が居た。
壮馬は社員証らしきものを彼女へと渡し俺の事を伝えると、受付の女性はにこりと微笑むと俺に向かってボードに止められた一枚の書類を渡してきた。
「貴女が同伴の子ね? じゃあ、これにお名前、住所、連絡先を書いてくれる? 場所はこことここ、ここね……」
そう言われたので受け取り、きっちり必要事項を記入していくのだが、途中で問題が発生。
住所と言えば、俺の住んでいる場所は海上自衛隊横須賀基地であるのは言うまでもない。
が、肝心の基地の住所を、俺は知らなかった。
どうしようかと、不安になりながら壮馬の顔を見上げると、壮馬はぎょっとしたながらも書類を見て、ああ、そういうことかと住所の欄だけ代筆してくれた。
そういうわけで無事手続きを終えた俺はネックストラップのついたゲスト証明カードを貰い、ようやく社内に入ることが出来た。
とはいえ、やはり廊下も特筆しておかしい所もなかったため、内心では拍子抜けしていた。
壮馬と遙真の担当部署は上にあるらしく、先に遙真の担当するプログラム管理部門から回るらしい。
「このエレベーターを上がった先が遙真の職場だ……驚くなよ?」
なんて言われたが、正直どういう意味で言っているのか全く理解出来なかった。
だが、エレベーターに乗って上がった先で、俺は絶句することとなる。
「ほら、着いたぞ。ここが……」
「おい吉田ァ! てめえ、この部分しっかりデバッグしたんじゃないのか!」
「ちゃんと!詳細に!言っただろうが! お前が聞いてなかっただけだろ!?」
「……ここが、遙真が担当してる職場だ」
「ええ……」
エレベーターのドアが開かれた先……そこに見えたのは、2人の男が怒鳴り合いながら殴り合っている姿だった。
周囲も我関せずと黙々と仕事をしているかと思いきやたまに野次を飛ばして煽てており、もはや仕事どころではない。
え、停めなくていいの?と思って見ていたが壮馬は表情も変えることなく飄々としており、これが日常茶飯事で見慣れていることを窺わせていた。
そんな中、ふと、遠くでその様子をあわあわと慌てて心配そうに喧嘩を見ている人が居た。
壮馬もそんな彼の姿を認めたようで、俺達は一緒に彼……遙真の元へと歩みを進めた。
「よう……相変わらずカオスだな、ここは」
「あ、壮馬! なんでここに? 今日は仕事休みじゃなかったの?」
「ま、そうなんだけどな。夕ちゃんの為だよ。色々と顔繋ぎさせておきたくてな」
「夕ちゃんって……て、本当に連れてきたんだ。こんにちわ、夕ちゃん。グループではたまに喋るけど、顔合わせはあのデパートぶりだね」
「こんにちわ、っぽい!」
遙真はぽい?と呟いて首を傾げて壮馬を見るが、壮馬が首を横に振ると、なるほど、と何かを察したようにそれ以上聞いてくることはなかった。
誰も彼も、察しが良すぎる奴らである。
「まあ、見学するなら壮馬が許可を出した範囲で自由にね。良くも悪くも、ここの人達はおおらかだから……」
「おおらかってより、人格的に隙間がガバガバ過ぎるんじゃないのか? そのくせ、実際は隙だらけに見えて日本屈指の技術力を持つ奴らしか居ないからセキュリティ面でも万全なのがタチが悪い……」
「はは……」
遙真の苦虫を噛み潰したような表情を見て、遙真も苦笑を浮かべるのみでなにも返さなかった。
遙真から変人とは聞かされていたが、まさかここまでやばいところだとは思っていたため正直俺も未だに現状を飲み込めていない。
気付けば殴り合いは終わっており、先程殴り合っていた彼らは床に倒れ伏していた。
なお、周りはそんな彼らに視線を向けることすらせず、むしろ時には無視して談笑している姿すら見受けられる。
会話の内容としてはあのゲームキャラの胸は大きくて素晴らしい、だとか、いやいやあの子の慎ましやかな胸こそ正義、だとか、ロリhshs……などなど。
どこかしこも会話の内容は下劣極まりなく最低であり、やはり本当に壮馬とは勝るとも劣らない変態達の巣窟であると俺は確信した。
そして最後の奴は絶対に俺に近付けないようにしよう。
そんなことを内心で固く誓っていると、いつの間にか、倒れている2人の視線が揃って俺の方へと向いていた。
疲れて草臥れていた2人は一転、目を輝かせて立ち上がると、勢いよく俺へと近寄ってくる。
「おお……いい! いいぞ! なあ君、良かったらこの後俺と一緒にぶっふう!?」
「どうして君みたいな可愛い子がこんなところに? ほら、こんなゴミの掃き溜めみたいなところに居るのはよくないからあっちにへぶう!?」
「「おおう……」」
「主任方、殴りあってる暇あるのならさっさと仕事してくれません? まだまだバグは多いんですよ?」
いきなり詰め寄ってきた彼らをグーパンで制したのは、なんと遙真であった。
ニコニコと微笑みながらもさりげない怒気を漂わせる遙真の姿は、俺や壮馬をしてつい背筋が伸びてしまうほどのものだった。
そして、そんな剣呑な空気を漂わせる遙真の怒りの矛先が次に向けた先は、先程まで野次を飛ばしまくっていたチームメンバー達であった。
「皆もですよ! そんなふざけたことを言いながら仕事を疎かにしたら……わかってますよね?」
「「「い、イエスマム!」」」
「マムじゃない!」
「「「イエッサー!」」」
何処の軍隊だここは、と俺はまるで
「ごめんなさい。僕はまだ仕事があるのでこれで……ほら、主任方も起きてください。行きますよ」
「いてえし、誰がやったと……あ、いや、何でもない。分かった分かった」
「いや本当、怖すぎだよね……さっきはごめんね? 名前も知らない子。多分、壮馬君の付き添いの見学者だよね? 俺はデバッガーチームのチームリーダーの
「おっと、俺も謝らないとな……さっきは済まなかった。俺はプログラマーチームの主任、
「本当、ごめんね? じゃ、僕も行くね……」
そう言って、最後に一礼してから彼らはそれぞれの持ち場に戻って行った。
吉田さんだけは部署が違うようで、彼だけ隣の部屋のようだった。
「ま、こんなもんだろ。吉田さんとも顔繋ぎ出来たのは予想外だったが……言った通り、変人ばっかだったろ?」
「確かに、壮馬と負けず劣らずだったっぽい」
「まだ言ってるのかそれ……流石にへこむぞ? ま、いい。次は俺の部署だ。上の階だから、またエレベーターで上がるぞ」
「ん」
用の済んだプログラマーチームの部屋を後にすると、次に向かうは壮馬の職場であるエンジニア達の部署のある部屋。
エレベーターで上がって、次はどんな修羅場を見せられるのかと身構えていたが、いざドアが開くと何事も無かったので、ひとまずは安堵した。
さっきのプログラマー達はとてつもなくうるさかったが、エンジニアの部屋はいい具合にうるさくも静かすぎてもおらず、中々和気あいあいとした雰囲気であった。
至る所にパソコンや複雑に絡み合った線に繋げられた機械が置かれているため仕事をする場所であるのは分かるのだが、正直、雰囲気だけで見れば仕事場というより何処ぞの家庭のようにしか見えない和みっぷりである。
そんな何処かほのぼのとした空気に包まれるエンジニアチームだが、壮馬は構わずその集団達へと歩み寄った。
「チーフ、仕事も変わりないようで良かったです」
「あらら、壮馬君……今日は仕事は休みでしょ? どうしたの、そんないきなり皮肉なんて言って……それと、その子は?」
チーフと呼ばれた人は、驚いたことに少しだけ熟年の雰囲気を漂わせながらも非常にやり手そうな長身の美女であった。
彼女は何故ここに、と言わんばかりの大袈裟なリアクションで壮馬を見て、次に面白そうに俺へと視線を向けた。
「ま、確かにそうなんですけどね。今日はこの子、うちの叔父さんが訳あって預かってる子なんですけど、但野夕って言います。折角だしこの子、夕ちゃんの顔繋ぎに来たって訳ですよ」
「但野夕っぽい。よろしくお願いします!」
至る所からよろしく、といった声が聴こえてくる。
プログラマーチームも人数的には多くなかったが、壮馬の他にも休みの人が居る可能性も無くはないがエンジニアはもっと少ないようで、壮馬とチーフと呼ばれた女性も合わせて6人しか居ない様子。
そんな中、チーフと呼ばれた女性は少し考える素振りを見せた後、不敵な笑みを浮かべた。
「ふむふむ、なるほどねぇ……夕ちゃん、いや、夕立ちゃんって言った方がいいかな? 今はまだこの子を世間に出せないから正体は明かさないでおきつつ、顔繋ぎがてら
「チーフ、今のでよくそこまで分かりますね……まあ、明言はしません。ただ、この子のことは夕、と呼んであげてください」
「大丈夫、分かっているさ。さて、夕ちゃん。私は
「は、はいっぽい……」
さらっと正体をバラされた挙句、所々知らないところもあったものの、思惑まで片っ端からバラされたものだから、俺はこの人の勘の良さは艦娘以上と判断した。
けど、俺が気になったのはそこではない。
「この人、チーフは日本経済でもトップ層に君臨する峰倉グループの令嬢でね。この人と仲良くなっておくと、いざという時本当に頼もしいから顔を合わせることに損は無いよ。というか、俺が本当に顔繋ぎしたかったのはこの人だし」
そう言われて、やはり、と俺は思った。
壮馬は俺が異世界出身だと思っているため知らないと思っているのだろうが、峰倉グループのことはよく知っている。
何せ、俺のかつての両親が共に働いていた場所がある峰倉グループの総本社だったのだから。
更に言うなら両親はたまに試供品やらを持って帰ってきていたため、ある意味では、うちにとってはものすごく近しい企業でもあった。
「そういうことは本人の居る前で言うことじゃないよ……まあ、夕ちゃんは可愛いし、色々と面白そうだから困った時に助けてあげることも吝かではないがね」
まさに言いたいことを隠そうともしない壮馬に峰倉さんは苦笑しながらも、特に怒った様子もなく、むしろ許容しているように見える。
令嬢と言う割には親しみやすく、個人的にはかなり好印象を持てる人だ、と俺は思う。
ただ、それだけ凄い人がなんでこんなところで働いているのか、と正直それが疑問と言わざるを得ない。
「夕ちゃんはなんで私がここに? と思っているようだね」
心が読まれた?と思って驚いていると、峰倉さんは「君は分かりやすいね」と笑った。
「簡単な話、ここの社長と私は個人的な知り合いでね。それに、彼、壮馬君がどうやらうちの社員の息子と親密な関わりがあるようだが、そんな息子さんがいきなり行方不明になったって言うじゃないか。あの部下……蒲原夫妻にはうちによく貢献してくれていてね。これは私も捜索に手伝わなければ、といつでも連絡がしやすいようにここに異動してきた、というわけさ」
なんと、ここでもまさかの俺の話題が出てきたのだった。
それも、今回もしっかり俺が直接理由になって人が動く理由になっていた。
人の繋がりというものは意外と身近に密接しているもんなんだな、と改めて思わせられた。
それにしても、うちの両親、まさか社長の娘である人にまで名前を覚えられていたとは……本社勤めの時点で凄いとは思っていたが、ここまで凄いとは思わなかったから、逆に現実感が湧かなくて実感がないな。
それから、今度は他のエンジニアチームのメンバー達とも自己紹介をしつつ、彼らの役割について色々と聞かせてもらった。
この会社のエンジニアはいわゆるなんでも屋であり、ゲームについてのプログラム欠陥の捜索や修復から、セキュリティ面の構築・点検、更にはゲーム外の会社のあらゆるセキュリティ面など、他にも色々細かい仕事を担当しているらしい。
仕事が多くて大変なのではないか、と思ったが実はそうではないらしくて、エンジニアチームは基本的に緊急的な案件にしか出張ることはないらしい。
会社の機械に関する事柄は普通に考えて緊急案件なんて滅多にあるはずもなく、ゲームに関してもなまじ下のプログラマーチーム達があまりにも優秀すぎるために相当な案件でもない限りは、むしろ暇だということだった。
なんて、仕事に支障がない程度に当たり障りのないことを聞いたりしていると、不意に、壮馬のスマホが振動し始めた。
一言断って壮馬だけ席を外し、そして暫くした後に戻って来ると。
「すまん、夕。ちょっと想定より早いが、今から寮に行かないか?」
と、そんなことを言った。
この作品、今のところ視点が主人公オンリーになってますが、ところどころに別視点の話も入れる予定です。
誰の視点になるかは……ご想像にお任せします。