死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん   作:ちぇんそー娘

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感想と高評価と水を沢山貰ってたけど日光が足りなくて遅れました。日光さんにはもっと頑張ってもらわないと困りますね。
今回は主人公が全く出てきません。





番外編:不死者達の非日常

 

 

 

 

【お知らせ】

 

 不死友ネットは運営(私)が疲れたのでちょっとの間メンテナンス時間に入ります。

 この間、私の影響で繋がっていたネット環境は全て途切れるので注意してください。

 

【管理人 ブラドより】

 

 

【追記:全員の位置把握の為になるべくスマートフォン等の持ち運びのできる電子機器を電源をオンにしてお持ちください】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────ッ、ふぁぁ……」

 

「お疲れブラド。やっぱ運営って疲れるの?」

 

「ん、別にそこまで疲れはしない。あくまで人間の使ってたネット内の余剰スペースを使ってた以前と違い、一からこちらで構築しなければならない点が多くて面倒なだけだ。……それに加えて、お前がこっちにちょっかいかけてくるのが強いていえば疲れるなヴィヴィアン」

 

「ヤダー! その名前で呼ばれるの久しぶり! でも妖精なんてイタズラしてなんぼだから許してブラドちゃん♡同じ妖精の誼でね? ほら、お骨あげる。ブラック『ドッグ』を名乗ってお墓の番人なんてやってんだから好きでしょ?」

 

 今すぐこのクソみてぇな妖精の首根っこ引っ掴んで電気檻に顔面擦り合わせて紅葉おろしにしてやりたいという感情をブラドはぐっと抑え込む。

 余波で漏れた電気が空間を焼き切り、目の前でゲラゲラ笑っている妖精の左半身を炭化させたがまぁこれは事故だから仕方ない。事故と言ったら事故なのだ。別にこの程度の怪我、不死者なら1秒とかからず治せるのだし。

 

「しっかしブラドちゃんってばこんな人類が滅ぶ瀬戸際でネット弄るような子だと思わなかったなー。もっとこう、ゾンビ共を雷でズバババーって」

 

「環境を激変させる干渉の禁止を提案したのは私である手前、そんなことはできん。そして私だって何も遊びたいからネットを使っているのではない。むしろ人類が滅びそうな時こそ、他の不死者の()()()()には気を配らなければならない」

 

 ブラドの脳裏に浮かんだのは何人かの不死者の顔──特にパンゲアやかぐや姫、バンシー等の厄介なタイプの奴ら。

 アイツらはちょっと退屈だからだなんて理由で人間を殺したり狂わせたりすることもあるし、なんなら最悪普通に人類を滅ぼしに動く可能性もある。だからこそ、ネットを使う事で退屈を感じさせなかったり、最低限の行動の監視をしたりしている。他のメンバーでも不死者との会話等で精神が安定しているならまだしも、娯楽文化に浸かりきった彼らが現在の人類が滅びかけの娯楽の供給がない状態が続き、ちょっと気が変わった程度で人類へダメ押しの攻撃をされては非常に困る。

 ブラドにとって、ネットの管理は現在最も人類の保護へと直結する行為なのだ。

 

「ふーん、本当にブラドは真面目だね。私は別にイケメンとイケショタが生き残ればそれで良いし。この程度の災害で死ぬようなイケメンは守備範囲外だしー。せめてランスロットくらい強くなれっての」

 

「あの人外じみた強さの騎士レベルを普通の人間に求めるな。それに、パンゲアとかが暴れたらどの道その騎士レベルでも死ぬだろ。アトランティスの時を思い出せ。アイツレベルがその気になれば、現実を空想の存在に変えてしまうような大災害になる」

 

「ハイハイっと……んで、そんな荷物纏めて何処に行くつもり? と言うか何その荷物? 墓石?」

 

「色々調べたいことがあるし、最新の魔女の奴の様子を見にアメリカまでな。来るか?」

 

「結界解いちゃうんでしょ? ならついて行くしかないじゃん」

 

 ブラドは墓の周囲に張っていた結界を解く。

 案の定、結界の周りには大量のゾンビが蠢いており、中には人型にまで変化している個体もいた。

 

 

『¥々♪ =(……:☆の☆3……4○・(°2。♪ 9「61^7#……2(%……・(も9☆7°』

 

「おい、アレ地球中枢語だろ。私にはさっぱりだから解説しろ」

 

「猿の言葉に耳を貸す意味は無いよ。話を聞くなら爪を全部剥ぎ取ってからが本番ね」

 

 人型ゾンビの咆哮と共に、2人は異界領域の中へと引き摺りこまれる。

 その瞬間、2人の左半身が消滅したが、特に気にすることなく会話は続く。

 

「世界革命を使うという話は本当だったか。とりあえず領域対策は頼む。あと、武器を貸してくれ。できるなら日本刀。お前がやると加減が効かないだろ」

 

「まぁね。話を聞きたいなら消し飛ばしちゃう私よりはアンタの方が適任だわ。……んで、なんで日本刀? いやあるけどね? ブラドって日本刀使ったことあるの?」

 

「…………居合切り、やってみたかったの。かっこいいじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あーっ! つまんないつまんない! やっばネットがなきゃつまんない!」

 

 不死友ネットがメンテに入ってからたった5分。

 バンシーの退屈は既に限界に達し、彼女は薄暗い部屋の中で藁人形を抱いて転がっていた。

 

 現代の引きこもりの部屋のように改造されている異空間は、本当に一見すれば狭くて薄暗い一室程度の印象であるが、強いてそこが『異空』である点を挙げるとすれば、それは部屋の床や天井、至る所に貼り付けられた写真だろう。

 

 その写真に写っているモノを端的に言えば、裸の女だった。

 そしてもう1つ、その女は全てが死体だった。状態の差異こそあれど同じ顔の女が様々な死因で絶命している写真がざっと数えただけでも数百枚はくだらない数、()()()()()()()()()()()の写真が貼り付けられている。

 

「久しぶりに会いたいなぁアルカ……体の相性はもちろん、アルカの死に方ってすっごく綺麗なんだもんなぁ……。本当に、アルカを作ってくれた地球には感謝してもしきれないよ。無限プチプチみたいに、何度殺してもアルカを殺せるんだから最高だよぉ……」

 

 恍惚としながら写真を見るバンシーの瞳は、何の比喩もなしに無限に続く暗黒への入口になっている。それでも、写真が瞳の中に映り込んでいるように見えるほど彼女は写真を凝視し、舐り、あろうことか自分の腹へと差し込み、それを前後して内臓を傷つけることによって快感を得ようとしていた。

 

「やっぱ足りないなぁ……。人間も殆ど滅んじゃって『実験』できないし……ブラドとの約束があるけど……まぁいいか。別にルールを守ってやるような義理はないし」

 

 異空間を圧縮し眼窩の暗黒に収容し、彼女の視線は遥か遠くの海を越えた島国へと向けられる。

 かつて日本と呼ばれていた場所。より正確に言えば、そこに居る1人の不死者へと向けて。

 

 

「人間見つけたらリハビリ代わりにとりあえず殺してー。ゾンビに会ったらとりあえずバラそ。んー! 楽しみだなー! アルカに会ったらとりあえずまずはレズセして、それからぶっ刺して脳みそ開かせてもらお!」

 

 

 無邪気に、そして淫蕩に。

 形を持った死が笑いながら歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究というものに自分が向いているということに気がついたのは、不死の薬を作ったあたりの時だった。

 あの時は本当に追い詰められていて、めちゃくちゃ頑張って作ったらなんかできたし、作ってる間の時間経過なんて完全に忘れていた。そして寝ぼけたまま薬を飲んでしまった時は冗談抜きに1回自分を呪い殺した。

 

 とにかく、自分が1度集中するとそれ以外のことが頭に入らなくなるタチであることを徐福はこの2000年で嫌というほど理解していた。

 だから今回も万が一に備えて今まで守っていた人間達の集落を離れて思考に耽っていた。一応、結界は張ったので大丈夫だろう。

 

 

 気になっていたことと言えば、アルカの異界領域についてだった。

 自分と雪女だけが皆と違う領域の名前を出していて、自分と雪女とアルカのみで会っていることが1度だけある。

 そう言えば、アルカはあの時のことを『よく覚えていない』と口にしていた。そしてそのことを口にするアルカの雰囲気は明らかに過去に会った時の雰囲気とは違っていた。

 ネット上で何度か話した時も、もりもりと凛花の様なキャラ変えではなく、根本的な思考回路から違うような違和感があったし、何よりも前にアルカに言われた言葉。

 

 

『お主、次会ったら絶対ぶち殺すからな? 妾にここまで屈辱を味わわせたのは有史以来貴様だけだぞ? 顔覚えたかんな?』

 

『えー……俺そんなこと言った? 全然覚えてないわ。気の所為じゃない?』

 

 

 本当はもっとやるべき事が沢山あるのはわかっている。

 今先決すべきはこの星に起きている異常事態の原因の究明だ。

 

 …………でも、1度気になることができるとそれ以外に手をつけられなくなる自分の悪い癖は、徐福自身が1番理解していた。

 

 

「オーストラリアから日本まで……まぁ、行けなくはない距離ですね」

 

 

 そして、徐福は意外と行動派であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっとアルカさん! 何やってんですか! そこに流し込んだらヤバいってさっき言いましたよね!?』

 

『何ィ!? お主さっきから言っとることがよく分からん! 妾にわかるように説明しろ! そうしないとこの童、本当に暴走するぞ! 妾はこやつを助けると決めたのだ! しっかり手伝え!』

 

『だからそちらの魔力連携炉心にβ状態の魔力を地霊脈の鼓動に合わせて流し込むんですよ! タイミングと位置はこちらが指示するので言われた通りにやってくださいよ!』

 

『何故妾が貴様のようなクソザコの命令を聞かねばならん』

 

『だからこの子を助けるためでしょう! アルカさんも了承しましたよね!?』

 

『は? 言っとらんが? 殺すぞクソザコ』

 

『なんなんですかこの人! なんなんですかこの人!?』

 

 

 その2人は本当に何の前触れもなく現れて、私の話も何も聞かずに助けてくれた。

 

 

『なぁ……やっぱコイツ放っておいても……』

 

『何言ってんですかここまできて!? このまま暴走してこの子が星害指定になったら、もう永久封印するしかなくなるんですよ!? ずーっと意識のある状態で暗闇に封じ込められるんですよ!? 同じ不死者ならその恐ろしさが分かりますよね!?』

 

『ぐぅ……妾にクソザコ如きがこんな偉そうに命令なぞ本来なら万死に値するが……自由に動けない辛さを引き合いに出されては何も言えん。だが、お主絶対に事が済んだら殺すからな? 絶殺ぞ?』

 

『ええどうぞ殺してくださいよ! だから今は手を動かす! 僕は頭フル稼働させて解決策見つけますので! 絶対に指示に従ってくださいよ!』

 

 そう、アルカお姉様のおかげで今も私は自由にこの世界に存在することを許されている。

 ……あと、ついでに徐福。あくまで徐福はオマケ。オマケのはずなのだ。

 

 

「…………あー!!! もう! あのバカ! アホ! クソザコ! 意気地無し! ビビり! ヘタレ! バカ!」

 

 

 徐福の顔を思い浮かべながら、雪女は貧相としか言いようがない語彙力を駆使して可能な限りの罵倒の言葉を吐き出す。彼女が現在いる場所は南極。もちろんその声を聴く者はどこにも存在しない、一面の銀世界。

 

「別にアイツのことなんか考えてないし? 考えてませんけどー!?」

 

 にも関わらず、彼女は誰かに言い訳するような言葉を叫びながら、何度も何度も雪に頭を埋める行為を繰り返す。

 確かに徐福は自分にとって恩人である。そしてそれなりに整った顔立ちをしていて他の不死者と違って気配りもできるし、何より優しい。冷静に考えたら自分のタイプど真ん中であることは雪女とて理解している。

 

 ……だが、だが! 

 自分よりも弱い上にメンタルもクソザコの徐福にそんな気持ちを持つようなこと、何となくあってはならないような気がするのだ! 

 

「……確かアイツ今オーストラリアにいるって言ってたわね」

 

 これは決して徐福に会いにいくとか、そういう訳では無い。

 オーストラリアは一度も行ったことがなかったし、コアラとかカンガルーとかパンダとか珍しい動物を一度生で見てみたかったし、エアーズロックとかグレートバリアリーフとかイエローストーンとか、人間が居なくても見所のある場所がいくつもある。

 

「別に徐福に会いにいく訳じゃないし? べっっっっっっつにアイツの事なんか全く考えてないし???」

 

 誰に届く訳でもないその言葉と彼女の足取りはとても軽やかなものだった。

 行先に目的の人が既に居ないとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太平洋のど真ん中。

 本来なら見渡す限り海だけのその場所に、突如として()が1つ現れた。

 

「ふむふむ。射角よし、風向きよし、俺の気分も良し!」

 

 まだ固まっていない溶岩の上に立ち、天に向けて手を翳す女は嬉しそうに何かを確認すると、その手に熱を集め始めた。

 火山の噴火にも匹敵するエネルギーが、一見普通の女の手に集まり凝縮され、ある方向へと向けられる。

 

「人間が滅びかけならこれくらいやっても多分怒られないよねー。()()()()()1()()、消し飛ばしたところで誰も怒らないでしょ」

 

 女────パンゲアにとってそれは遊びであり暇つぶしであった。

 周りの不死者などにはやらないようにと言われてきたが、その程度で抑えが効くようなマトモな人格なぞ発生した時から持ち合わせていない。

 そもそも、大地の概念である彼女にとって大地を消し飛ばすことは自傷行為にも似た行為であり、自分の体をいくら削ろうが誰かにとやかく言われる筋合いは無いし、()()()()()()()()()()がどうなろうが知った話ではない。むしろ垢を纏めて吹き飛ばす様なその行為には快感すら覚える。

 

「準備完了。発射──────」

 

 発射された火焔球はパンゲアの計算通りの軌道を描き、水平線の向こうにある島国を塵一つ残さず焦土に変える……はずだった。

 

 火焔球を遮ったのは、これもまた一瞬にして現れた大樹。

 ただの樹木ならばその高温の前に触れずして焼かれ容易く灰となり邪魔にすらならない。だが、その大樹は蔦を、葉を、枝を伸ばし炎を包み込み完全に鎮火してみせた。島国1つを焼き滅ぼす熱量を持った火焔をだ。

 

 

「さてと、なんで俺の邪魔をしたのかなユグドラシル。ブラド? それともプロメテウスの差し金?」

 

「その名は捨てました。今は凛花の名でお呼びください、パンゲア。何をしようとしているんですか?」

 

「質問してんのはこっちなんだけどなぁ……まぁいいや。何って暇つぶしだよ暇つぶし。ゲーム出来ないし、暇だから大地をちょっと削ろうかなって。ついでに殺戮をちょっと。でもアンタそう言うのに怒るタイプだっけ?」

 

「質問を変えましょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「はぁ? だからちょっと日本を消し飛ばそ────」

 

「『常世斬草』」

 

 パンゲアは言葉を吐き終わる前にその場から全力で飛び退いた。

 それでも間に合わず左腕が抉り取られ、延長線上に存在していた海が聖人の通り道がごとく裂ける。

 

「今、日本にアルカがいるのは知っていますよね? その上で日本を消し飛ばすと? 本気でそう言ってるんですか?」

 

 凛花の左肩を突き破り植物が生えている。

 彼女の体内という特異点の中で繁殖、進化した植物はこの世界のどんな生き物よりも獰猛で暴食。そしてどんな兵器よりも強靭である。太陽面爆発すらも耐える表面を持ち、0.0001秒未満の世界にも対応し、ミクロの世界を捉え、容易く星の表面を穿つ。最早植物と呼んで良いのかも分からないソレを、凛花は体内に無限に繁殖させている。

 

「別に消し飛ばせんなら日本でもチューゴクでもアメリカでもどこでもいいが……気が変わった。何がなんでも日本を消し飛ばす」

 

「……本当に最悪ですよ。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も貴方にはアルカの素晴らしさを伝えているのに、それを全く理解出来ず未だに否アルカでいるなんて。────草も生えぬ腐った土壌のようなその面を今すぐ消してあげましょう」

 

 何もしないよりは破壊の方が楽しい。

 破壊よりは蹂躙する方が楽しい。

 蹂躙よりも血湧き肉躍る戦いの方が、何千倍も楽しい! 

 

 凛花は間違いなくバケモノだ。

 不死のバケモノである自分から見ても、『否アルカ』とかいうよく分からない概念を語り、時に一方的に何かを決めつけて相手を蹂躙する姿は完全に頭がおかしいと思っている。

 だが強い! とにかく凛花という存在は強い。パンゲアも一度戦い、敗れている。パンゲアは戦うのは好きだし勝つのも負けるのも好きだ。だが負けっぱなしでいるのは性に合わない。

 

 

「全力出すには地球(ココ)は少し窮屈だ。宇宙(オモテ)に出ろ」

 

「あらあら。随分と辺鄙な所にお散歩に行く趣味をお持ちですね。お一人でどうぞ、お土産は月の石でお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 西暦──年─月─日。

 現地時間午前11時28分14秒。

 太平洋沖にて原因不明の爆発発生。不可思議なことにこれによる津波等の現象は見られなかったが、爆発により()()が大気圏外へと吹き飛ばされる。

 

 同15秒。

 全長2万mを越す植物が発生。同じくこれによる被害は見られなかったが、()()が大気圏外へと押し出される。

 

 同18秒。

 地表より9万8000m地点にて空間震の発生を確認。この揺れにより南アメリカ大陸のアマゾン川流域の一部が消滅。

 

 

 尚、この記録を観測した人類は存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吾輩はケツァルコアトルである。名前もケツァルコアトルである。

 

 なんか気が付いたら人類が滅んでたのでちょっとそこら辺を歩いていたら、ゾンビだらけの世界に何と幼女を見つけた。

 昔はこれでも主神みたいなポジションをやっていたし、見捨てるに見捨てられず助け、そのまま親代わりになることとなった。

 さすがにいつまでも一緒にはいれないので1人でも生きていけるように生き延びる手段を教え、親恋しい年頃だろうから寂しくないように抱いて寝てやり、常に一緒に居てやった。

 さすがに世界革命を使った時は驚いたが、これだけ強ければもう自分が居なくても大丈夫だろうとも思った。なので、人間の生き残りの集落を自分だけ追い出されてしまった時も、この集団も彼女も問題ないと思いそのまま二度と関わるまいと思っていた。思っていたのだが……。

 

 

 

 

 

「お姉様、ただいま戻りました」

 

 扉が開かれ、真っ暗な部屋に僅かに光が差し込むと同時に煌めく銀髪を持った少女、アンナが部屋に入ってくる。彼女の手には恐らく人型ゾンビのものであろう生首が握られていた。

 

「今日も異界領域でしたっけ? それを使うゾンビが現れましたが、私一人でしっかりとぶち殺すことが出来ました! 褒めてくださいお姉様!」

 

 どうしてこんなバイオレンスな子に育っちゃったんだろう? 

 今までそんな様子の一切ない、すごく優しい子だったのに。まさか俺に対して石を投げただなんて理由だけで生き残りの人間全員をその場で圧殺し、俺をもう危険な目に遭わせないためだのどうだと言って手足を潰して監禁までしてくるとは。

 

 子の成長は早いと言うが、ちょっと急すぎやしないだろうか? 

 子はいつか親を養うとも聞いていたけど、まさか手足を潰して無理やり養いに来るとは予想していなかった。

 

「お姉様は何も心配しないでください。ここには私が何も近づけません。あらゆる害をお姉様が感じ取る前に叩き潰し、磨り潰し、消してみせます。だからお姉様は私の事だけを思い、ここで待っていてくれればいいんで────」

 

 めちゃくちゃ怖いこと呟いているアンナの体の動きが止まる。

 そして目付きが変わり、虚空を睨みつけながら独り言を呟き始める。

 

「また貴方ですか。地球の意思だかなんだか知りませんが、私の全てはお姉様の為にあり、私はお姉様の手足です。……はぁ、五月蝿いですね」

 

 アンナは持っていたナイフの刃先を自身の頭に向け、なんの躊躇いもなく突き刺した。

 普通の人間ならこの時点で絶命しているはずだが、アンナは何事も無かったかのように平然としており、そのまま何度も何度も自分の頭へとナイフを突き刺し続ける。

 

「お姉様の美しい吐息が聞こえないでしょう。黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい」

 

 何度も何度も自身の頭を抉り、ようやく『声』とやらが聞こえなくなったのかナイフを放り出したアンナの頭部には傷一つなく、人間ならば即死するべき傷は既に完全に治癒していた。

 

「見苦しいところを見せましたねお姉様。私がお姉様以外のモノになるなんて有り得ないのに、惑星意志だかなんだか知りませんが偉そうだと思いませんか? まるで自分が1番であるかのような偉そうな口ぶり……この世界にお姉様を超えるものなんて存在するわけがないのに」

 

 

 …………わかんないね。人間、本当にわかんないなぁ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







アンナちゃんは異界領域も持ってるし半ば不死化してるけどちゃんと人間です。
人間ってよくわかんなくて怖いね。


・なんか○○級みたいなのって何?
成劫級、住劫級、壊劫級、空劫級の四段階で表される対象の危険度。ざっくり言うと前3つが人類で対処できる範囲で一都市範囲の被害〜国単位の被害という指標であり、空劫級は人類では対処不能、空劫級の中でも星害指定になったものは星そのものを滅ぼす可能性があり、大抵は殺すことも出来ないので永久封印される。

・翡翠弱くね?
反応が送れたのもありますが、他3人は翡翠の異界領域の効果もバッチリ知ってますし対策ができてる上に、特に紅葉の領域に対して翡翠の領域はめちゃくちゃ相性が悪いです。なのでアルカ会議の殴り合い、最初から翡翠がめちゃくちゃ不利です。
純粋な強さ的には蒼海がちょっと強くてあとはトントンです。




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