死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん   作:ちぇんそー娘

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作品が実る木がお病気にかかって収穫が遅れました。
元々あまり長く書く予定はなかったので、そろそろぼちぼち畳み始めます。





不死友(ふれんど)死体

 

 

 

 

 

「アルカ……そいつは……」

 

 

 葵くんの表情も声色も普段の彼からは想像できないくらい冷たかった。

 何が何だか分からないがとにかくやばい。なんかわかんないけど誤魔化さないと徐福が死ぬ。死なないけど。

 そんな嫌な予感がしたので、急いで徐福とアイコンタクトで会話を行った。

 

 

『徐福! なんかやばい! 何がやばいかわかんないけどやばい気がする!』

 

『見れば分かりますよ! 一体彼に何をしたんですか! 何をしたら初対面の人間にあんなおぞましい殺意を向けるようになるんですか!?』

 

『知らない! 何もしてないのに壊れたの!』

 

『人間は何もしなければ壊れないんですよ!』

 

 そう言われても俺本当に悪いことしていないし。葵くんがなんでこんなになっちゃったか本当に心当たりがないのだ。

 

『多分あれは嫉妬……それも恋慕の類の感情です。心当たりないんですか?』

 

『しっと……れんぼ……誰に? 葵くんって同性愛者なのかな?』

 

『アンタ馬鹿なんですか!? 4000年生きてきて脳みその中に綿菓子でも詰め込んできたんですか!?』

 

 なんか徐福くんやたら口が悪いなぁ……。ネットで会ってた時は礼儀正しい好青年って感じだったのに、凛花並にネットとリアルで差があるけど、実際みんなこんなもんなのかな? 

 

 とりあえず俺は馬鹿では無いので(重要)、すぐさま徐福くんとアイデアを出し合ってこの場を乗切る策を練り出す。

 

『いいですか。今から僕は偶然人類の生き残りであるアルカさん達に出会った同じ生き残りです。もしも設定に矛盾が生じそうになったらその度に要相談です』

 

『おけまるだ!』

 

『…………本当にわかってるんですよね? それじゃ、今からアルカさんに話しかけます』

 

 この間実に0.098秒。

 不死者のアイコンタクト会話術は人間のソレとは比較にならないのだ。

 

「アルカさん……この方は……?」

 

「先程言っていた私の仲間です。葵さん、この人は……じょ、丈一郎さんです。偶然ここを通りかかった他の生き残りの方です」

 

「へぇ……そうなのか……いきなり威嚇してすまなかった。アルカがそう言うならそうなんだろう。俺は琴吹葵だ。よろしくな」

 

 葵くんは徐福へと向けていた銃口をゆっくりと下ろし、いつもの朗らかな笑みを浮かべた。

 

『怖っ……生きた心地しませんでしたよ。不死者なのに殺されるかと……彼、本当に人間ですか?』

 

『ちょっと水の上走ったり壁を走れたりするけど多分人間だよ』

 

『一般的にそういうことをできる方を人間と言わないと思うんですけど』

 

「丈一郎さん、だったか? こんな状況で生き残りに会えるなんて……。とりあえず詳しい話を聞きたいから、俺達の拠点に行かないか? そこのスーパーを今は使っているんだ」

 

『アルカさん。僕はこの混乱の中ではぐれてしまった妹を探しているという設定でいきます。なので一旦離れて、また色々とちゃんと話したいことがあるので、機会を伺って近づきます』

 

『わかった。つまり今はお前を引き留めずに、多分引き留めてくる葵くんを説得すればいいんだな?』

 

『アルカさんの割には理解が早くて助かります』

 

『おい待て今絶対馬鹿にしただろ』

 

 とりあえずいきなり徐福が現れて、そこに葵くんが現れた時はどうなるかと思ったが何とかなりそうだ。

 

 

 …………なんて考えていた俺の考えは甘かった。

 不死者というものは常に気まぐれで時に恵となり時に災いとなるということを! 

 

 

 

「徐福ーッ! アンタ……アンタどこ行ってたのよ! この私がわざわざオーストラリアまで出向いてやったのにいないとか……痕跡を辿ってここまで追ってくるの本当に大変だったんだからね! 謝って! 私に謝って!」

 

 

 なんか来た。

 落ち着け。あのThe・雪女って感じの服装と全体的に肌も髪も真っ白な姿の女の子は不死友の1人の雪女だ。なんで、なんでこんな所に? 

 いや、今はそんなことよりも考えなければいけない問題がある。

 

 

「……おいお前。今あの女の子がお前のことを『徐福』と読んだが……何故アルカには丈一郎と名乗ったんだ」

 

 

 再び葵くんが殺意を纏った眼光で徐福を睨みつけながら銃を構えている。マジで銃撃つ5秒前、みたいな雰囲気だよコレ。不死者の徐福を殺せるんじゃないかってくらいやばい。

 

「その……これには深い訳がですね……」

 

「アルカに嘘をついたことに釣り合う理由があるなら聞いてやる。話せ」

 

『アルカさんアルカさん! なんなんですかこの人! 本当に人間ですか!? 怖い……今僕泣きそうなんですけど……』

 

『多分……人間……だと、思う……。とりあえず俺に任せろ。葵くんとはなんだかんだ長い付き合いだ!』

 

 まずは葵くんを沈静化させ、それから雪女を抑え込みどうにかこの場を収める! 完璧な作戦だ! さすがIQ200超えの天才である俺だ! 

 

 

「あ、お姉様! お姉様までここにいるなんて! たまには徐福もやるじゃない! お姉様ー! 私ですよー! 雪女です!」

 

 

 ファッキンクソスノーガール! 

 マジでどうすんだよ!? 葵くんが俺の方に「知り合いなのか?」って感じの目線送ってきてるよ! 

 

「あのですね葵さん……彼女は……」

 

「お前は黙っていろ。信用出来ない」

 

「アッハイ……すいません……」

 

 徐福! 

 そこはもうちょっと粘ってくれよ!? お前不死者だろ! 

 しかしマジでどうする。葵くんの徐福への信頼度は現在ぶっちぎりでマイナス。雪女の方に至っては今すぐ発砲されそうな勢いだ。

 

『雪女! 雪女! このアイコンタクトわかる?』

 

『はい? どうしたんですかお姉様。そんなに慌てて』

 

『事情はもう省くけどとりあえず今は俺達の話に合わせてくれ! お前はとりあえず俺たちの言うことをだいたいYESって答えればいいから! まじでちょっと黙っててくれ!』

 

『任せてください!』

 

 わかってなさそうな気がするけど、まぁ多分大丈夫だろうからヨシ! とにかくまずは爆発五秒前の爆弾と化している葵くんの処理だ。

 

 

「アルカ。そこの2人は一体何者なんだ……?」

 

「この2人は…………実は私の生き別れの弟と妹です……」

 

「そうか……アルカがそう言うならそうなんだろうな」

 

 さすがに苦しすぎる嘘だったか。いくら葵くんでも信じてくれるわけが……

 

 

「え?」

 

「え? アルカの弟と妹なんだろ?」

 

「あ、うん。じゃあそういうことで」

 

 

 さっきまでの殺意が嘘のように俺の自分で言うのもなんだが無理のあるクッソ下手くそな嘘で納得してくれた葵くん。

 マジでなんだろう。葵くんの判断基準が分からないけれど、とりあえず今は窮地を脱出できたと考えても良いだろう。

 

 

 

「え、お姉様の妹はともかく、徐福と兄弟の設定とか嫌なんですけど」

 

 

 

 ファッキンクソスノーガール!!! 

 YESと言えと言ったではないか!? 

 

 

「お前……アルカがそう言ったんだからお前はそこの奴と兄弟なんだよ!」

 

 

 葵くんも怒るとこ違うと思うよ!? 

 なんでそんなに俺の発言を信じてくれるの? 信頼してくれてるなら嬉しいけどね!? 

 

 しかしこれマッジでどうしよう……なんかもうめんどくさいな。いくら葵くんでも雪女と喧嘩になったら死ぬだろうし、だからと言って脳みそがかき氷で出来てるっぽい雪女を今からどうにかするのは無理だろうしなぁ……。

 

 

 

「あー……『止まれ』」

 

 

 

 そんなことを考えていたら、なんか徐福が喉に御札を貼り付けて一言呟いた。

 一瞬、体が動かなくなったがすぐに動くようになる。何をしたのかと思ったら突然葵くんが時間でも止まったかのように固まってしまっていた。

 

「魔術の一種の言霊術です。さすがに不死者には一瞬しか効きませんが、人間なら僕が解除するまでは止められるはずです」

 

「徐福……最初からそれ使えや」

 

「なるべく穏便に済ませようと思ったんですよ……」

 

 

 とりあえずまずは雪女に事情を説明し、大人しくしてもらった。

 

「えーっと、状況は相変わらずよく分からないけど、ごめんなさい。何かやらかしましたよね……? ちょっとお姉様に久しぶりに会えて浮かれていて……」

 

 まぁ、誰にだってミスはあるし浮かれていたなら仕方ないよね。反省できているなら偉い。次に同じことをしなければ大丈夫。

 そして次は葵くんの記憶処理を徐福が行う。俺もやろうと思えばできるけど、魔術とかそっちの領域は徐福の方が上手だし。

 

「……徐福? さっさと済ませてくれよ」

 

「いや、アルカさん。この人、さっきから止まってるはずなのに僕のこと目で追っていません?」

 

 …………まさか、ね。

 さすがの葵くんでもそんなことあるわけが無い。徐福の言霊術は人間なら意識まで完全に停止する、限定的な時間停止に近い。そうでなければ心臓とかが止まって死んじゃうし、逆に言えばそこまでしっかり止めているんだから目で追ってきたりするような事はありえない。

 

「気の所為だよ多分。ちゃちゃっと記憶の処理しちゃっといて」

 

「……わかりました」

 

 そして徐福くんが記憶処理の為に葵くんに手を伸ばすと、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「徐福? 何であんた術解いてるの?」

 

「解いて、ないんですけど……」

 

「何かの間違いだよ徐福……多分……」

 

 確認の為に徐福が葵くんの前で手を振ってみると、葵くんの目はそれを追うように確かに動いた。

 

「…………」

 

「…………徐福、がんばれー」

 

「嫌です!!! マジで怖いですよこの人、なんですか!? なんで人間が僕の言霊術普通に破ってるんですか!? 本当に人間なんですよね!? アルカさんなにかしました!?」

 

「してないよ! 何もしてないけど葵くんがなんか勝手に壊れたんだよ! 早く直してよ!」

 

「ほら早く治しなさいよ徐福! お姉様が待ってるでしょ!」

 

「嫌だ! 触れた瞬間僕の頭握りつぶしに来ますよこの人! いや、人じゃない! 絶対人じゃないですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。困りましたね」

 

 最新の魔女は静かに、冷静に思考する。

 ドリスと名付けられた幼子を育て始めてからあっという間に月日は経ち、恐るべきほど動き回る元気な子に育っていった。

 データとして育児の方法は知っていたが、実際にするのは未知の出来事の連続。仮初の有機体ボディは本来疲れを感じないはずなのに、一日が終わりドリスが寝る時には思わずため息が溢れるほど精神が疲労しきっている。だと言うのにそれを嫌だと思わない、むしろ満足感すらある不思議な状況。

 

 名前のわからない未知の刺激が、常に胸の内側から湧き出てくる。

 

「人間の成長に欠かせないもの……ズバリ、外での遊び……これは困りました」

 

 現在、『外』と呼ばれる場所の全てはゾンビが徘徊する死の世界であり、かつては多くの人で栄えたここニューヨークも例外ではなかった。

 探せば遊び場自体は存在するだろうが、幼子を遊ばせるにはゾンビ達が危険すぎる。

 

 

 …………つまり、ニューヨーク周辺のゾンビを消し飛ばしてしまえば何も問題ないのでは? 

 

 そこまで考えて最新の魔女は冷静さを取り戻す。

 自分にゾンビだけを消し飛ばす器用な真似はできない。異界領域を最大展開すれば、遊び場にちょうど良い公園()()()()()を一定範囲──ニューヨーク周辺に限れば消し飛ばせるが、それをやればかつて人間が築いた建物達も丸ごと消し飛ぶ。

 そもそも、不死友内の約束事として過度な現環境への干渉は禁じられていて、相手がゾンビとはいえそんなことをすればルールに抵触する可能性が高い。

 

 

 最新の魔女は電子生命体。

 あくまで物事を客観的、合理的に判断して最善策を導き出す。

 

 

 

 

 

「ドリスの健全な成長が最優先事項ですね」

 

 

 

 

 

 この日、ニューヨークは周辺の数カ所の公園を除いて全てが消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……困ったなこれは」

 

 ニューヨークへ着いたブラドは、何故かいきなり異界領域の世界革命に巻き込まれていた。

 空一面が0と1に覆われたこの領域は間違いなく最新の魔女のものだということは分かる。しかし何故異界領域を使ったのかが分からない。

 もしかして最新の魔女が育てている幼子がゾンビ達に襲われ、咄嗟に……なんてことも考えたが、常に冷静沈着な彼女がそんなことをするとも考えにくい。

 

「おいヴィヴィアン……って、分断されたか」

 

 しかも異界領域の対策として連れてきていた湖の乙女ヴィヴィアンは、ちょうど異界領域の展開の外側に居たらしく周囲に気配がない。

 異界領域を持たない自分では、外に出る手段は解除されるのを待つしかない。

 

 

「……ん、なんだアレ」

 

 

 そんなことを呑気に考えていたら、空が青色に光り出した。

 あの光のエネルギーは、恐くは最新の魔女の異界領域によって生み出された無限のエネルギー。彼女の異界領域は時間さえあれば無限にエネルギーを生み出すことが出来、それを貯めることも出来るので理論上は無限に威力を増強できる。あれ程のエネルギーがあれば、ニューヨーク一帯は更地に出来るだろう。

 

 

 そのエネルギーが。

 空から落ちてきている。

 

 

「ちょと待て。おい、待て待て待て待て! さすがにアレを喰らったら私もやばいぞ!? 死なないにしろ、しばらく動けなくなる!」

 

 事の重大さに気が付いて行動しようとしたがもう遅い。領域内に安全な場所は無く、領域の外に出ることは出来ない。

 そもそも最新の魔女がこんな凶行に及んだ理由も分からない。一度人類を滅ぼそうとはしたが、その時に説得されて過度な干渉は控えるように言っておいて、素直に聞いてくれたはずなのだ。そんな彼女が何故ニューヨークを消し飛ばそうとしているのだ!? 

 

 

「待て、待って待って! 本当に待って! これ私消し飛ぶから! ちょっ、ヴィヴィアン助けて! マジで! これヤバ──────」

 

 

 

 ニューヨークの消滅に巻き込まれ、ブラドは一度塵一つを残してこの世界から消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、徐福の頭が握りつぶされたり徐福の腕がもぎ取られたり徐福の内臓がぶちまけられて雪女にかかったりなどちょっとしたトラブルはあったものの、何とか葵くんの記憶処理には成功した。

 

 徐福はなんか俺に用があったらしいけど、「ちょっとマジで葵さんがトラウマなんで彼らの寿命が尽きてからにしますね……」と雪女と共にどっかに行ってしまった。マジでなにしに来たんだろう。特に雪女。アイツ事態をややこしくしただけじゃね? 

 

 ……しかし、言われて気がついたけどそうか。葵くん達って人間だから死ぬんだよな。特に剛なんてこんな医療機関も崩壊した世界じゃ長くてもあと40年。葵くんと照香も60年くらいで絶対に死ぬ。そもそも明日にはゾンビに食われてるかもしれない。

 

 なんか、やだな。

 いっその事俺が不死者だってことを明かしてしまってもいいかもしれない。みんな良い奴だし、俺がバケモノ程度じゃ別に嫌ったりしないだろう。そもそも、葵くんと照香だってよっぽど人間離れしてるし、そんなことを笑って受け流すような剛が今更俺が不死な程度で驚くとも思えない。

 

 

 よし、決めた。

 1週間後だ。1週間後、全部葵くん達に話そう。元々銃をバカスカ撃てるついでにちょっと人間で遊ぼうと思ってただけなのに、こんなセンチな気分にされてしまっては仕方がない。

 拒絶されたら全員殺して、受け入れてくれたら加護を残してさっさと退散だ。どうせこんな世界じゃ人間は滅ぶだろうし、あんま入れ込むとなんか嫌な気分になる。

 

 

 あと1週間、せいぜい人間(オモチャ)で楽しく遊ばせてもらおう。そしたらイギリス辺りに行ってブラドに会って、アイツならネット環境復活とか出来るかもしれないし、そしたら…………

 

 

 

 まぁ、ゲームとかして暮らすか。

 

 

 







・なんでアルカ会議でわざと負けてあげないの?
全員4000年もののクソ高いプライドと他者を嘲笑うクソみてぇな精神を備えたアルカだからです。翡翠が同じ立場でも同じことします。あと地味に翡翠の異界領域が厄介なのでみんなでタコ殴りします。戦うことじゃなくて勝つのが好きな不死者達です。クソだね。

・翡翠、紅葉、琥珀、蒼海について
翡翠&アルカ(肉体)が『横』の世界にあるとしたら、その他の魂は『縦』の世界にあります。要は別レイヤーにあります。
普段はレイヤーが違うけど重なっている他の魂の状況を知覚することしか出来ませんが、翡翠の魂が揺らぐとそこに割り込んでアレコレできます。前世の記憶は翡翠のみが持っていたので、昔の翡翠はメンタルがぶっ壊れるまで結構入れ替わってました。

・翡翠メンタル
ぶっ壊れてます。しかしクソ。




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