死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん 作:ちぇんそー娘
あんたはここでアルカと死ぬのよ(スワヒリ語で最大限の侮辱の意)
あと、自分の活動報告で番外編で知りたい過去や設定を募集しているのでなんか見たい人は感想だと規約に引っかかりますのでそちらに。
「……ブラドが指定した目的地って、ニューヨークじゃなかったか?」
「ふふ、惚けた顔も可愛いですねアルカ。ここがニューヨークですよ。どこからどう見ても」
「どこをどう見たらここがニューヨークなんだよ。摩天楼どころか起伏がなくなってんだが?」
俺にはどの角度から見ても見渡す限りの更地にしか見えないんだが?
正確に言うと凹凸すら存在しない真っ平らな大地に、たまーに公園っぽいものだけが残ってるめちゃくちゃ不可思議な光景だ。
「遅かったな。いや、来ただけマシか」
そして指定された場所には生首が転がっていた。
さすがにその生首が古馴染みのブラドであることはわかるが、遅かったと言う割には周囲にはあまり人影、もとい不死影は無い。
まず黒と黄色のふわふわとした羊毛のような髪の毛に覆われた生首はブラックドックことブラドでいいだろう。
そしてその隣で宗教画にでも出てきそうな透明感のある美しさを汚ねぇ笑い方で台無しにしているのは湖の乙女ヴィヴィアン。
何も言わず正座しているやたら顔の良い魚人は海の精霊オケアノス。
宙に浮かびながらこちらを見下ろす十二単を纏った美少女は、直接面識はなかったので分からないが多分かぐや姫だろう。
うん。
少なくね? 俺を除いて16人の不死友の居場所がわかってたはずなのに、全員集合と言われて来ているのが俺を含めて6人だけしかいないぞ。地球の危機に半分も来ないとか集まり悪すぎるだろ。
「それじゃ、早速だが本題に入るぞ……」
「いや、ブラドこれでいいの? 6人しか来てないぞ?」
「ご安心ください。私も居るので合計では7名です」
いつの間に背後に現れた無機質さを感じられる無表情の女性は、喋り方と雰囲気からして多分最新の魔女ちゃんだ。前会った時は機械をひたすらにくっつけたゴツゴツしたボディだったが、新しく作った有機体ボディとやらは随分と人間に近い。
そして抱えている赤子は噂には聞いていたドリスちゃんだろう。まさか本当に子育てをしているとは、不死者と言えど変わる人は変わるもの…………
「あの、最新の魔女ちゃん。一つ質問いい?」
「? 構いませんが、何か?」
「そのお腹の膨らみは一体……?」
「妊娠しました」
うん。
うん?
はい?
「えーっと……おめでとうございます? お相手は……?」
「プライバシーの侵害になるのでノーコメントです」
なんだろう。明らかに突っ込まなきゃいけない話だし絶対に何かおかしいけれど、聞いてもまともな返答が帰ってくる気がしない。
この子、まだ生まれて間もないから結構突拍子もない思考で動いて行動が読めないんだよな。永遠に人が生きた証を残すために今の人類を皆殺しにしようとした子だしホントわからん。
「魔女の妊娠については詳しく聞くな。私もわからん。そしてアルカの質問には答えよう。なんでこんなに集まりが悪いのか、なんて集まりが悪いからとしか言いようがない」
めちゃくちゃ腹立たしそうな顔をしながら、ブラドは髪の毛で器用にスマホを操って送られてきたものであろうメッセージを読み上げていく。
『ごめーん♡ちょっと私生理が来ちゃったから今回はパス。本当にごめんねー♡ぴえん。 春ノアキラ』
あのクソネカマ陰陽師、肉体改造した偽女子だから生理来ねぇだろ。
『移動途中に徐福がゾンビ達に囲まれて攫われちゃったので助けに行ってきます。別に徐福が心配とかそう言うことでは無いので決して勘違いしないでください。雪女より』
徐福……アイツ一応不死者なのにあの程度のゾンビ達に負けたのかよ……。まぁ、異界領域使えないから異界領域持ちのゾンビ達に囲まれたら手こずりはするかもだが、それでも攫われるか普通?
あと、雪女はなぜ勘違いしないようにと念押ししているんだ? アイツ、他人の心配するような性格してないから勘違いする要素はないんだけどな。
『監禁されていていけません。ごめんなさい。ケツァルコアトル』
お前を監禁できる存在がこの世界に存在してたまるか。そっちの方が地球の危機だわ。
『面倒臭い。研究データは送るので勝手にやってください。 ヴォドゥン』
遂に言い訳すらしてこなくなったぞ。
『ギリシャ周辺のゾンビ達の行動が活発化したので行けません。申し訳ない。 プロメテウス』
めっちゃまともな理由でそれはそれでツッコミに困る。
『ごめん、オフ会には行けません。私は今、シンガポールにいます 大神』
いや来いよ。
アイツの足ならシンガポールからアメリカまで1時間かからないだろ。なんでシンガポールにいるのが来れない理由になるんだよ。
『ある、あるか! あー、ママ!』
せめて文章を送ってくれ。
『お腹が減りました スキュラより』
だから何?
「…………以上の理由により、今回集まったメンバーは私達だけだ。ないものねだりしても仕方がない。私達で今回の案件は片付けるぞ」
「ブラド、それでいいの? 納得してる?」
「仕方ないじゃん! アイツらが説得とか聞くタマじゃないのはアルカだって知ってるだろ! あと、普段はお前向こう側だからな!? 自分が原因の案件にも腰が痛いとかぬかして来なかったくせに常識人ぶってんじゃねぇぞアホ!」
だいぶストレスが溜まっているのか、生首状態のブラドはバチバチと電気を奔らせながら髪の毛を振り回している。やっぱり何者にも縛られない不死者を監視し纏める立場というのは疲れるのだろう。俺だったら絶対やりたくないし、手伝う気にもなれないが。
「来ないやつのことを考えてもしょうがないでしょー。さっさとやることやろうよ。あ、私は見てるだけだけどね」
「申し訳ありませんが、私も手伝うことは出来ません。これからドリスがおねむの時間なのです」
……かぐや姫と最新の魔女は居るだけで手伝ってくれる訳では無いそうだし、ゆっくりと化したブラドはさすがに何も出来ないだろうから実質今回集まったメンバーは俺、オケアノス、凛花、ヴィヴィアンの4人ということになる。
地球の危機に集まるメンバーの数じゃねぇだろ。4分の1ってなんだよ。深夜にスマ〇ラの部屋作った時の方が集まったぞ。
「安心してくださいアルカ。クソの役にも立たない有象無象なんて居なくても、アルカが居れば解決したも同然です」
「どうせならパンゲアも欲しいところだが、凛花の言う通り地球を救うだけならば我と凛花とアルカさえいれば事足りる。もっと言えばアルカが居なくてもどうにかなる」
「え、じゃあ俺なしでやってよ。俺やりたくないことやりたくないし。今は
「はーい、ここで突然だけど教えて! ヴィヴィアン先生のコーナーだよ〜! 良いショタのみんなは先生に注目してね〜」
帰ろうとする俺の前にヴィヴィアンが滑り込んできて、何故か女教師風の服に着替えてどこからか黒板まで持ってきて解説を始めた。
そういえばコイツ、ショタと触れ合う為に教師やってたこともあったな。まぁマジで手を出して1日でクビになったらしいけど。
「前もネットで語ったけど、今回のゾンビ騒動の原因、『特定惑星疾病異星体』は簡単に言えば星がかかる病気。星の核に取り付いて星の意志を捻じ曲げ、生態系の頂点を自らの支配下にすり替えてしまうのだ!」
「ならばどうするかと言われれば、概念的に星の核に近づける惑星製の精霊である凛花、パンゲア、ヴィヴィアン、アルカ、そして我の誰かが星の核に潜む病原体ごと叩けば良いのだが……」
オケアノスが言葉を詰まらせると、それにつられて凛花が深刻そうな顔を浮かべ、全員が押し黙ってしまった。
そう。俺もこの深刻な問題についてはネットで既に聞いていたから知っている。不死者の中でもケツァルコアトルを除けば最強に近い凛花やパンゲアがこの問題を解決出来ない単純な理由。
「我らでは……手加減できなくて多分星の核ごと砕く……」
「私も手加減とか出来ませんからね……アルカ以外の有象無象に私の力を抑える理由なんてありませんし」
この2人、強すぎて地球ごと壊しちゃうのよね。
ヴィヴィアンもアホだから多分星の核に爆弾撃ち込んでぶち壊すし、俺以外の奴が行ったらマジで地球が滅ぶ可能性があるのがなー。
「……わかったよ。俺が行けばいいんだろ。さすがにブラドが困ってるのを見過ごすほど俺も腐ってないさ」
「嘘つくなよ。お前気分が乗らなきゃ普通に見捨てるだろ。……まぁ、今回はいい。頼むぞ。人類の、ひいては地球の未来はお前に託された」
「はーい! アルカ会議始め! 今回の議長は俺! テーマは『如何にして責任を逃れるか!』」
「マジかー……翡翠の様子からわかってたけど、マジで妾翡翠に負けたかー……やる気なくすわ……」
「朕もう生きていないわー。自死を選びます」
「翡翠ィ……お前、今回は絶対殺してやる。絶対殺してやる……」
「はーい! 騒いでないで会議してね! お前達も俺ならわかるでしょ!?」
ブラドの一言で俺の精神が激しく揺らぎ、結果このクソみたいなイベントが始まってしまった。
理由は簡単だ。俺は責任という言葉が大嫌いだ。地球の未来とか、そんなクソ重いもの背負いたくない。なので他の自分に押し付けようというとても合理的な思考をしたのだ。
「ほら、俺の異界領域ってたまに暴走するじゃん? なら紅葉とかの異界領域の方がいいでしょ? なんか逆転するやつ、絶対適任だって! お前だって
「は? 確かに奴らが死ぬのは面白くないが、妾の領域だって下手したら星の核巻き込んで星を自死させるし? それなら琥珀が適任だろう。病原体に死ねといえば終わりだ」
「そう言うけどさー。朕のアレも対象絞るのが結構めんどくさくてさー。下手したら星ごと殺しちゃうんだよねー。こう言うのは触手でちまちま攻撃できる蒼海向けだと思うんだけどなー。それに、地球が滅びたら人間はまだしもパンダも消滅だぞー?」
「汚い……パンダを盾にするなんて……。確かに私はみんなみたいに不器用じゃないし、狙いも正確だし、肝心なところでミスをしない完璧で可愛いから、そりゃ私に任せたくなるよね……ごめんね、私が完璧で」
「はー? 俺の方が完璧なんだが? 前回俺に負けた雑魚がイキるのやめて貰えます?」
「4000年ずっと黒星だった雑魚が何言っているのだか。最強は妾だ。運勝ちした程度で調子乗るなクソザコ」
「ん? 最強は朕でしょ? 朕の言うことが正しいんだからー」
「それじゃあここは公平にじゃんけんで負けた奴に押し付けようか……安心して。もうこの空間に『縛り』を作ったからじゃんけんで負けたら絶対に責任からは逃れられないよ。あ、私はパー出すね」
「汚ぇぞ心理戦に持ち込むのは! とりあえず行くぞ! 最初はグー、じゃんけん────」
アルカ会議は時間の存在しない俺達の魂の共通認識空間にて開かれる。
故に外の世界ではこの間に1秒とて時間は経過しない。故に、俺達のじゃんけんは死ぬほど長引いた。
「パー出すって言っただろ!? 大人しくチョキ出せ眼球疲労充血女!」
「目ん玉腐敗緑に言われたくないわ! そんなに終わらせたければ貴様がグーを出せ! 妾のパーで呑み込んでくれよう!」
「朕がさぁ……チョキ出すって言ってるのにパー出すの、そなた達馬鹿?」
「本当に可哀想……なんで私の言うことを信じてチョキ出さないの? もしかして言葉通じてないのかな? ごめんね、猿に言葉を理解させるなんて難しいこと強要して」
忘れていたけど、コイツらは全員『俺』なのだ。
そして『俺』であるが故に皆責任は負いたくないし、ジャンケンで出そうとする手が必ず同じ思考から導き出される。
────千日手! 永遠に終わらない! 不毛過ぎる戦い! ただのお手手の見せ合い! しかも全部同じお手手じゃん!
「だいたい妾達はブラドとか言う奴と関わりないし、頼まれたならお主がやるべきじゃないのか?」
「馬鹿野郎! 例え親友からの頼みでも責任は負いたくないだろ!?」
「至言過ぎて朕もぐうの音もでんわー」
「クソザコのくせに正論を……」
「もういい! 殴り合いだ! 殴り合って負けた奴が強制的に全責任負わされる縛り作るぞ! やはり暴力こそが正義だ!」
◆
『ちょっと地球がやばいらしいから友達のところ行ってくるわ。すぐ帰ってくるからご飯でも作って待っててくれ』
アルカがそう言って突然現れた和服の女性と一緒に何処かに消えてから実に26分。葵の心配は限界に達していた。
常に自身の近く範囲周囲580mに存在していたアルカの存在を知覚できないことが、ここまでのストレスになるとは思ってもいなかった。禁断症状で脇腹から腕がもう一本生えてきそうな程の不快な気分。
「葵……剛が夕ご飯作るから手伝えって言ってる」
「照香はなんで耐えられるんだ……俺はもう指が6本に増えそうだぞ……?」
「だって、アルカが帰ってくるって言ったんだから絶対帰ってくる。あと私の髪の毛括りつけておいたから何処にいても存在を知覚できるし」
「聞こえてるぞ。それ、俺にも出来ないかな?」
「練習すれば多分出来るよ。まずは髪の毛を動かして……」
「うーん……こうか……?」
「そうそう。筋がいい」
こんなにも精神が辛いのは、単純に既に30分もの間アルカを知覚できないのもあるが、もう一つだけ理由がある。
何かとてつもなく嫌な予感。それが葵の胸の内で這いずり回って仕方ないのだ。
具体的に言うと手が滑ったとか言ってアルカがとんでもないことをやらかしそうな、信頼しているが故の不安が。
◆
気がつけば目の前にはとんでもない熱量の塊があった。
凛花とオケアノスが物理的、概念的にこじ開けた星の中心への穴を通って星の核に辿り着いたのだ。
そして、今こうして俺の体を操っているのが俺だということは、まぁそういうことだろう。一応他の魂にコンタクトをかけて見るが、一方的にシャットアウトされてるし。
「────ん? なんだあの黒いか」
言葉が終わる前に首から上が吹き飛んだ。
星の核に纒わり付く黒いネバネバ。多分アレが特定惑星疾病異星体とやらの本体だろう。
うん、改めて見たけど大した事ねーわ。
今の一撃で完全に解析は済んだし、あとは星の核を壊さないようにぶち殺せば良いだけ。
「異界領域────『万魔屍山無明郷』」
原初の緑を纏い、改めて標的を確認する。
あとはいつも通りに生き物を作って、特定惑星疾病異星体の本体だけを殺してもらえば良い。
……大丈夫、だよね?
俺本当にこう言う責任負うような仕事したくないし、こういう時に限って手を滑らせたりするんだよな。
落ち着け。さっき凛花から『食べると集中力がすごくすごくなってついでにトリップする草』も食べさして貰ったし、そもそもこれに失敗したら葵くん達も死ぬと考えるのだ。
よーし! 失敗する気がしねぇぞ!
よくも俺達の星でむちゃくちゃやってくれたな黒ネバめ! 今ぶち殺してやる!
「解析完了────人類神話再顕、亜霊長類神秘目 アダム・エヴァ」
両腕が溶け合いながら変形し、多頭の蛇へと変形する。
黒いネバネバが最後の抵抗とばかりに俺へと向けてネバネバを伸ばしてくるが、それら全ては俺以前にアダム・エヴァに到達する前に全て塵へと消えてしまう。
「命令だ。食っていいぞ」
命令を終えると同時に、アダム・エヴァは猛スピードで星の核へと突っ込んで行き、纒わり付く特定惑星疾病異星体のみを的確に狙って食い滅ぼす。
人類をほぼ滅亡へと追いやった特定惑星疾病異星体は、たったそれだけでこの世界から消滅した。
あれ、もう食い終わったのになんか止まらないわ。全く制御利かんし。
なんかおかしいと思ったら、成長リミッターつけるの忘れてたわ。惑星外来生命食ったせいで変な方向に成長しちゃったし、これもうどうしようもないねあ、星の核噛んじゃダメそれ壊れたら地球が壊れ────
その日、この宇宙から惑星が1つ消滅した。
ふふ、惑星滅んだわ