死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん   作:ちぇんそー娘

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活動報告にて見たい番外編のシチュをお募集しています。
募集に色々書いて高評価と感想と日光と水を与えると番外編が生えてきます。すごい。








クソレイド最終決戦!

 

 

 

 

 

「──────ありゃ、気のせいか?」

 

 シンガポールの一角にて、大神は不可思議な感覚に首を傾げていた。

 

 山の神性である大神は、古来よりあの世とこの世の境の番人として神でありながら不死者としてこちらの世界に存在していた。

 そんな彼が感じた違和。知覚できる最小単位以下のほんの僅かな刹那の時。()()()()()()

 

 死という概念は不死者以外の万物に存在し、それは星とて例外ではない。ほんの一瞬ではあるが、彼の超感覚には星が死んだという情報が流れ込んで来ていた。

 しかし、今こうして自分が立っている大地は確かに生きていて死の世界を検索しても地球が死んだという情報は存在しない。逆に、ゾンビ達が次々と死に絶えていっているあたり、ブラドの作戦が成功したのだろう。もとよりオケアノスか凛花辺りが協力するなら失敗する理由が存在しないが。

 

 

 

 ……強いていえば、地球ごとぶっ壊される可能性はあったが、こうして自分が地球の上に立っているのがそうならなかった何よりの証拠だ。

 

 

 

 不死者になると、あまり物事を深く考えないようになる。

 だって、深く考えてもむだなことって世の中多いし。そんなことに時間を使うなら、楽しいことに時間を使うべきだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれアルカ。まさかお前が本当にちゃんと仕事してくれるとは思わなかったぞ。正直、もう地球も終わりかと諦めていた」

 

 目を覚ますと目の前では疲れの取れた柔らかい笑みを浮かべているブラドの生首が転がっていた。

 おかしいな。確か新しく産んだアダム・エヴァちゃんが勢い余って星の核を噛み砕いて、そのまま地球が爆散したものだと思っていたのだが。

 

「ふふ……ブラド。それはもしかしてアルカに対する侮辱ですか? ねぇ、聞いていますか?」

 

「落ち着くのだ凛花。ブラドとアルカは貴様よりも古い仲だ。それ故に一件侮辱に聞こえる言葉にも色々とだな……」

 

「侮辱に聞こえるなら侮辱じゃないですか殺しますよ? 異界領域────『沙羅結界涅……」

 

「やめろ。ここで我と凛花が争えばせっかく救った地球が塵になるぞ」

 

「ねぇ、これもう終わったの? 私重力嫌いだからさっさと帰りたいんだけど?」

 

「かぐや何もしてないじゃん。マジで何しにきたんだよ」

 

「お前だって何もしてないだろショタコン」

 

 

 ……まぁ、なんか知らんけど何も無かったっぽいからヨシ! 

 そもそも冷静に考えたら俺がミスとかするはずないもんね。だって俺だし。なんか地球の核をぶち壊したと思ったのは、多分幻覚かなにかだろう。

 

 

「あれ、そういえば最新の魔女は?」

 

「なんか『嫌な予感がするのでお腹の子に危険が及ぶ前に移動させてもらいます』って行ってどっか行ったよ。それじゃ、私はもう用がないから帰るねー」

 

 それだけ言い残すとかぐや姫は逆さのままふわふわと風船のように浮かんで空の彼方へと消えていってしまった。

 

 それにしても、最新の魔女が嫌な予感がすると言っていたとは。確かあの子、限定的な未来予知能力あったな。まぁ、俺がミスとかする訳ないし何か別の案件が起きるのだろう。こんな更地とかしたニューヨークで何が起きるのか分からないが。

 

 

「それはそれとして……アルカ。今回はちゃんと作り出した獣は処理したんだろうな」

 

「…………処理?」

 

「お前の獣はお前が手綱を握ってるか、殺すかしないと消えないだろう。まぁ放っておけば地球の核に噛み付いたりして正常に戻った防衛機能で灼かれるだろうから心配する必要は無いかもだが」

 

 えー、そんなの必要だったかな? 

 ……マジで、マジでそんなの必要だっけ? バンシーの時、久しぶりに使ったやつはなんか勝手に自爆してくれたし……領域閉じた後勝手に消えるもんじゃなかったっけ? 

 

 でも俺なら! 過去の俺ならきっと後処理をやってくれたはずだ! 記憶にはないけれど! 

 

 

 

 

「ああ。もちろんちゃんと処るえ────

 

 

 

 

 突如、俺の体が成層圏から思いっきり地面に叩きつけられたような衝撃と共に上空へと打ち上げられた。

 地上を見下ろすと、驚くみんなの顔……は見えずに双頭の蛇と目が合った。

 

 亜霊長類神秘目 アダム・エヴァくんですね。しかもなんだか俺が見た時よりも随分と逞しく育っているような気が────

 

 感慨に浸る暇もなく、強靭な2つの顎で体が食いちぎられ、咀嚼され、別れたパーツがアダム・エヴァくんの胃で合流して再び俺の形になる。

 うわ、真っ暗で何も見えねぇ。しかも胃液が強すぎて再生と融解の速度がほぼ同じで動くことも出来ないし。と言うかもしかしなくてもこの子もう俺より強いね。

 

「おいおい……あの馬鹿! またなんてものを生み出しやがった! 軽く見積っても空劫級だぞコイツ!」

 

「どうする? 予測ではあるが、あれは我単身では勝てなさそうだぞ。一体何がどうしたら特定惑星疾病異星体という雑魚相手にアレを生み出すのだ?」

 

「なんでもいいですよ。アルカを傷つけた時点でゴミなんですから。異界領域────『沙羅結界涅槃園』」

 

 俺程の超感覚があれば、聴覚の情報だけで視覚とほぼ変わらない情報を得ることが出来る。

 どうやら外では凛花が異界領域を開いたようで、辺り一面がお花畑に変化している。前も凛花は俺が生み出した獣相手に戦って、初手に手を抜いたせいで痛い目を見たので最初から全力ということだろう。

 

 いくら結構自信作のアダム・エヴァくんでも、凛花の全力の異界領域を喰らったらもうあとは植物になるだけだろう。勝ったなコレは。ガハハ! 

 

 

 

 …………

 …………

 ……

 

 

 

 おかしいな。いつまで経っても俺が解放される気配がないんだが? コイツの胃液、かなり分解性能が強くてさすがにちょっと痛いから早いところ助けて欲しいんだよなー。

 

 

「……凛花。念の為に聞いておくが、全力か?」

 

「はい。アルスノヴァの時と同じ轍は踏まぬとばかりに、全力で仕掛けました」

 

「凛花の異界領域の全力が、耐えられたか……」

 

「ねぇこれやばいよね? 絶対やばいよね!?」

 

 アダム・エヴァくんが咆哮を轟かせると、空間がひび割れて世界が砕け散る。いつの間にか辺りは元の更地と化したニューヨークに戻ってしまっていた。

 

 え、ちょっと待って。

 凛花は間違いなく俺達の中ではケツァルコアトルに次いで強い。両方に全力でぶちのめされた経験がある俺が言うのだから間違いがない。その凛花の全力の異界領域が無効化された。

 

 普通にやばくね? 

 

 だが俺はまだ冷静な思考を失ってはいない。

 そもそも、凛花の異界領域は相手の戦意を消失させる効果であり攻撃力で言えば切断の概念領域のパンゲアには及ばない。単純にマウント取ってぶち殺すだけならば俺の方が上まである。

 ならば俺が領域を開いて、今度は手綱を握った上でアダム・エヴァくんガンメタの獣を作り出せば……

 

 

「ギャー!? いた、アッツッッッッッッ!? 溶け、溶けてる! すごい速度で溶けてる!」

 

 

 そんなことを考えていたらアダム・エヴァくんの胃液が急に成分を変更して全力で俺を分解しにきやがった。

 しかもこの分解速度、完全に俺の再生能力を上回っていやがる。なにか対策を、とか考える暇もなく俺は1度完全に分解されてしまった。

 

 一瞬何も認識出来ない闇に落ちたと思えば、今度は一転して世界がひかりに満ち溢れた。

 

 

 

「ッ、アルカ……お前、ホントお前ってやつは!!! この……バカ! バーカ!」

 

 

 

 俺に対してブチ切れている生首ブラドが見えたので、さすがに罵倒されるのは気分が良くないから何か物申してやろうと思ったが上手く口が動かない。

 それどころか体が全く言うことを聞かない。せいぜい動かせるのは首くらいなので何が起きたかを確認しようとしたら、なんか俺の手足が白色の壁に埋まっていた。

 より正確に言えば、俺の体は上半身の一部を除いて完全にアダム・エヴァくんの体に埋め込まれていて、それの影響もあってか全く力が入らない。しかも服が無くなってるので全裸でだ。今更恥ずかしいとかはないけど、知り合いの前で胸が丸見えの状態で手足を壁に埋め込まれた無様な姿を晒されるとか中々酷い状態だな。

 

「オケアノス。アレはどのような状態なのか分かりますか?」

 

「恐らくアルカのことを完全に取り込んだのだろう。あの蛇の放つ気配がアルカのものと混ざっている。アルカの性質を取り込んだ故にアレは完全に不死の領域に至った上に、分離は難しいだろうな」

 

「なるほどなるほど。……不可能じゃないなら死ぬまで切り刻めば吐き出すかもしれませんね。やってみましょう」

 

 なんか、その……。

 もしかしてこれって、だいぶまずい感じの状況だろうか? 

 

「凛花、オケアノス、ヴィヴィアン! 現状の戦力では封印ですら難しい! 今すぐに全員を呼ぶから時間を稼いでくれ!」

 

「マジで私実戦は向かないから! 武器はあげるから2人がどうにかしてね!」

 

「いいですけど……間違ってもアルカごと封印だなんて判断はしないでくださいよブラドさん」

 

「それは時と場合による! 全員聞こえるか! コード:ブラッド! 『アルカがやらかした!』全員強制集合だ!」

 

 

 ブラドが号令をかけるまでの間に、オケアノスと凛花がそれぞれ38回と42回致死の攻撃を受けた。

 数千トンはくだらない量の水が音速で射出され、見たこともないような攻撃的な進化をした植物が空間を切り裂きながらこちらへと迫ってきたがアダム・エヴァくんってばなかなか狂った再生力をしていて足止めにすらならなかったが、凛花が体を巨木に変化させて肉壁ならぬ植物壁に変化してほんの僅かな時間を稼ぐことに成功した。

 

 

 

 ブラドの号令から1秒経たずして、いつの間にか多くの人影が辺りには集結していた。

 

 

 

「あの馬鹿がやらかしたって聞いて急いできたけど……何コレ? 普通にシャレにならないじゃん。さっきまでのゾンビ達よりよっぽど地球の危機って感じ」

 

 巫女服に狐耳。呆れる程に二次元な雰囲気を纏った、事実()()()()()()()()()()()()()()()をした陰陽師は呆れた様子でそう呟いた。

 

「えぇ……なんですかアレ。どう考えても星害指定じゃないですか……」

 

「これはちょっとまずいかも……徐福、アンタは逃げないと死ぬよりも酷い目に遭うかもしれないわよ」

 

 死者よりも白い氷のような髪と肌をした少女と、何故か彼女にお姫様抱っこをされていた中華風の美青年は恐怖を隠しきれない様子で、強く手を握り合いながら大蛇を睨みつけていた。

 

「アルカがやらかしたって聞いて研究全部ほっぽり出してきたけど、コレ、ケツァルコアトル無しじゃ無理だろ。……どんな中身してんのかは気になるけどな」

 

 浅黒い肌の死霊術師は諦念の混じったため息を吐き、その口振りとは裏腹に新しい玩具を見つけた子供のように目を輝かせていた。

 

「アイツのやらかしだからとすっ飛んできてみれば、やはりギリシャごとこの星が消し飛ぶ案件だったか。……ケツァルコアトル無しでは少し厳しいかもしれんな」

 

 炎を纏った3mはあろうかという巨漢は額に汗を浮かべながら冷静に状況を判断していた。

 

「ちょっとこれはまずいね。あちこちで生死の概念が揺らいでる。存在してるだけでこの世の理をねじ曲げかねない、生きた異界領域と言っても過言ではない生物だよコレ」

 

 狼のような耳を頭頂部に付けた和装の剣士はヘラヘラと笑いながらも、しっかりと大蛇を自らの間合いに入れぬように意識を張っていた。

 

「……なんだこりゃ? ちょっと記憶が飛んでたが、こんなの見せられたら退屈どころか冷や汗まで出ちまうな……」

 

 溶岩のように流動する髪の毛を持った褐色の少女は、不敵な笑みを浮かべつつも生まれて初めての感覚に戸惑っていた。

 

「なーにーあれ? あ、アルカだ! えへへ、下半身が怪物に埋まってて私みたーい♡────最悪の気分なんですけど。アルカごとアレをぶち殺せばいいんですか?」

 

 下半身が多頭の獣と蛸の触腕で出来た美女は苛立ちを隠す様子もなく大蛇を含めてこちらに殺意を向けていた。

 

『あー、あー、マイクテスト。こちら蓬莱山。全武装照準完了。いつでも撃てるよー』

 

 遥か空より聞こえてくるその声は、月の光のように全てを照らし、消し去る準備をしていた。

 

 

 

 最新の魔女とケツァルコアトルを除いた現在ブラドと連絡の取れている不死者全員がこの場に揃った。中には初めて直接会う奴らもいて、こんな見た目をしてたのかーと思うと同時にあることに気がついた。

 

 そう言えば過去に一度もこれだけの数の不死者が集まった事ってなかったな。基本的にブラドが不死者と連絡を取って、有事の際は呼び寄せる係をしていたから、ブラドが呼んだ不死者の数が実質的な問題の脅威度を示すものであった。

 そして、もう一度言うが過去には一度も不死者が全員集合したことは無かった。

 

 

 

 

 もしかして、これって過去1で地球の危機な感じ? 

 

 

 

 

 そう考えたと同時に、アダム・エヴァくんが咆哮を上げて世界を塗り替えた。

 現れた領域は緑色の粘液で覆われた、それ以外は何も存在しない()()()()()()()()()だった。

 まぁ端的に言えば俺の異界領域『万魔屍山無明郷』だよね。そう言えばオケアノスがコイツは俺を取り込んだって言ってたし、もしかして俺の全能力、アダム・エヴァくんに取られちゃったとかかな? 

 いやそれ以上だね。原初の緑の量が半端ないわ。どう見ても俺の完全上位互換です本当にありがとうございました。

 

 

 恐る恐る、かろうじて動く目をブラドの方に向けてアイコンタクトで会話を試みる。

 

 

 

『もしかして、これってヤバいやつ……?』

 

『もしかして、じゃない。もしかしなくても地球最大の危機だよクソ野郎が。お前マジで永久封印されても文句言うなよ?』

 

 

 

 …………その、あの、はい。

 

 

 

 

 

「凛花ッ! クソ、凛花がやられた! 全員あの緑には触れるな! 触れたら終わりだと思え!」

 

「異界領域の押し合いでは勝てない! 全員領域を身に纏って最低限の自己防衛に徹しろ! あと徐福は邪魔だから帰れ!」

 

「わ、私の事は気にしないでください……それより時間を……『植物園』を開けば数秒止められる可能性があります。5秒だけ、私から奴の意識を切り離してください」

 

「聞いたな全員! 5秒だ! お前達の無駄に長い生涯の全てを懸けて、あの怪物から5秒を奪い取れ!」

 

 内側から全身を蛇に食い破られ、体を構成することもままならず解けて植物の姿に半ば戻りかけながらも立ち上がる凛花。

 数多の魑魅魍魎を調伏して繰り出す晴明、逃げ惑う徐福、水圧で原初の緑を押し返すマリン、絶対零度以下の低温を更新し続け原初の緑を適応させずに凍らせ尽くす雪女、原初の緑と解析合戦で相手の上を取りにかかるヴォドゥン、触れた原初の緑を片っ端から完全に機能停止させていくプロメテウス、捕まって取り込まれかけてる徐福、ただの刀でアダム・エヴァの肌を僅かに切り裂き傷を与える大神、片っ端から武器を射出して敵味方関係なく吹き飛ばしているヴィヴィアン、生首で爆撃に巻き込まれて吹っ飛んでるブラド、近づく全てを燃やし視線の全てを斬り裂くパンゲア、語るもおぞましい姿に変形してアダム・エヴァの片方の頭とお互いの肉を貪り合うスキュラ、天から空を埋め尽くす光線を撃ちアダム・エヴァの放つ光と拮抗するかぐや姫、雪女に助けられて半べそかいてる徐福。

 

 神話すらも超えた頂上決戦。1秒の1000分の1ですら経過する前に異界領域内じゃなければ何度地球が滅んでいたかも分からない衝撃が迸り、余波で外の世界では天変地異が引き起こされているのが簡単に予想できる。

 ついでにみんなの攻撃がたまに俺に当たるから超痛い。さすがに不死者の攻撃は超痛い。

 

 世界を砕く吐息を深海の領域で防ぎ、生み出される魑魅魍魎を本物の百鬼夜行で迎え撃ち、あるものの肉が千切れ飛びあるものの体が粉微塵になる。

 

 

 激戦の中でふと、吹き飛ばされて転がっていたブラドの生首と目が合った。ほとんど何も出来ないもの同士、何となく暇で居心地が悪いのである。

 

 

 

『アルカ。私達に何か言うことないか?』

 

『えーっと……みんな頑張って!』

 

 

 

 

 

 ブラドは穏やかなアルカイックスマイルを見せて、それから生首に出せる最大の音量で叫んだ。

 

 

 

「全員聞け! やっぱコイツ封印した方がいいぞ! 全身全霊で封印しろ! て言うかもう殺せ! ホントバカ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、地球のどこかでやばい戦いが繰り広げられている。

 ケツァルコアトルはそれは理解していたが、駆けつけることはできなかった。未だに彼の体は再生能力を取り戻すことが出来ず、まともに動くことさえ叶わなかったから……では無い。

 彼にとって、そんな状況よりも驚くべき事態が目の前で起きていたからだ。

 

「ふぅ……少し他のゾンビよりは手こずりましたが、なんてこともありませんでしたね」

 

 目の前でただの人間であるアンナがゾンビを小さな立方体に変形させて殺した。それだけならおかしくはあるがいつも通りのことであるが、ケツァルコアトルが驚いた理由は2つあった。

 

 まず1つ、アルカが病原体そのものを殺したのかゾンビ達はこの地球から次々と消滅していっていた。そんな中で自らの前に現れたゾンビは、病原体の最後っ屁とばかりに変質、変容していてそれなりに強い個体になっていたが……ただの人間であるアンナは特に意識することなく淡々と殺してしまった。

 

 そしてもう1つ。

 多分アルカが凡ミスをやらかしたのだろうが、地球が滅んだ。星の核を壊され、存在を保つことが出来なくなり木っ端微塵に消し飛んだ。

 そう、確かに1度この星は完全に消滅したのだ。不死者を除くこの星で生きるものはみな死滅したはずだったのだ。

 

「全く……()()()()()()()()()()()()、今度は変なゾンビですか。お姉様と私の時間を邪魔しようとは、全くどこの誰の仕業でしょうか」

 

 地球が破壊された瞬間、アンナがその結果をこの宇宙の別の惑星へと()()()()()

 端的に言えば、地球が壊れる代わりに別の生命が根付く星を木っ端微塵にしてしまったのだ。

 

 ようやくケツァルコアトルは自分が何故再生も異界領域も使えなくなってしまったのかを理解した。

 全て、全てアンナによって封じられていたのだ。星の命すら容易く左右することの出来るほどに進化した目の前のただの人間が、神である自分を完全に封じてしまっていたのだ! 

 

 

「……ッ、また別の蟲が騒いでますね。ま、こっちに来ないなら知ったこっちゃありません。心配しなくてもいいですよお姉様。私は何があってもお姉様()()は守ります。この世界からあらゆる生命が消えても、お姉様()()は絶対に守られるので安心してくださいね」

 

 

 人間って怖い。

 ケツァルコアトルは改めてそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、アルカの反応が……消えた?」

 

「────照香、それは本当なのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい! いい加減晩飯の支度を俺だけに任せてないでお前らもだな……って、葵と照香の奴どこ行きやがった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








次回か次々回くらいが最終回です多分。



・『植物園』
凛花の体の中にある植物の概念空間。あらゆる植物が内部で繁栄、進化を繰り返していてその全容は彼女自身も把握していない。基本的な彼女の攻撃手段はこの中から植物を出すことであり、中には彼女自身よりも強力な植物も居たりする。

・亜霊長類神秘目 アダム・エヴァについて
アルカが生み出した4体目の空劫級星害指定。アルカがリミッターをつけ忘れた&異星体を食べた&星の核の光に晒された&アルカが制御を手放した&アルカが後処理をしなかったせいで暴走した。めちゃくちゃ強い。

・最新の魔女ちゃんなんでいないの?
身重なので危険なことはできません。




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