死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん 作:ちぇんそー娘
割とすぐに生えてきた番外編。
洞の乙女がまだ壊れきってない頃のクソと出会った話です。
クソレズフォレスト 1
『私』が生まれたのはずーっと前。
気がつけば私は海の中を揺蕩っていた。
自分がこの星に産み出された精霊であること。
それだけを星から伝えられてただ揺蕩うこと数万年。偶然にも私は同じような境遇の精霊と出会った。
私は彼に聞くことにした。
「私はどうすればいいのですか?」
最近、海に増えてきた生き物と似た顔立ちをした彼は言った。
「成すべきことは何も無い。我はこの海を揺蕩い、眺め、ただ生きる」
気がつけば私は陸に上がっていた。
陸に上がって出会った精霊にも私は聞いてみた。
「私はどうすればいいのですか?」
精霊は面倒くさそうに答えた。
「楽しいことをして生きりゃいいんだよ。何が楽しいか? 知るか自分で考えろアホ。……そうだ、私と1回殴り合わないか?」
殴り合い、というものを提案してきた精霊を地面に埋めてから私は空を飛んでみた。
陸にも、海にも、そして空にも
どこに行っても
私は死んでみることにした。
初めに首を切ってみたが死ななかった。その後は溶岩に飛び込んでみたが熱くて苦しいだけで死ねなかった。空の向こうの宇宙にまで行ってみたけれど死ねなかった。
全身を裂いて毒に漬けて酸素を消して機能を抉り存在を剥ぎ野を焼き腐海に沈み体を捨てて朽ちるのを待ちそれでも星が
なんなんだ、なんで生きてるんだ。
どうして星は私に意識を与えたのだろう。泳ぐ必要のない生き物にヒレを与えるような、歩く必要のない生き物に足を与えるような、光の必要ない生き物に目を与えるようなあまりに残酷な所業。
知りたいものはありません。
欲しいものもありません。
なりたい自分もありません。
理由もないのに、目的もないのにどうして生かすんだ。命というものは儚くて脆くて、必死に使命を果たそうとするから美しいものなのだろう。
私は命ではない。私はそこに在るだけの空でしかない。だからいいでしょう。私は在る理由がないのだから。お願いだから私に
だからどうか終わりをください。
無為に生きる時間ほど、苦しいものはありません。
「ブラちゃん! ほにゃにゃちわー!」
「キャラと合ってないからやめろアルカ。頭でも打ったか?」
羊のようなモコモコの黒髪に黄色のメッシュ……というか電気が流れて黄色に光る髪の毛がチャームポイントのブラックドッグのブラドは割とゴミを見る目で俺を見てきていた。
もう1000年くらいの付き合いになるのにブラドちゃんってば冷たい。
「近頃会う度にキャラを変えてるが……なんなんだそれ?」
「なんかなー。最近『俺』ってのがなんなのかわかんなくなってきててさー。1秒前の自分と1秒後の自分が同じに感じられないというか、少しずつ何かが削れて俺が壊れてる気がするんだよ。……だから、強烈なキャラ付けで自己を保とうと思ってな」
「馬鹿。不死者の自己が崩れることなんて絶対にありえない。いらない心配はするな。……私は、飾らないお前が好きなのだからな」
「あ、なんか言った?」
「ッ、お前の耳なら聞こえてただろっ! 聞こえるように言ったんだからな!」
マジでちょっと意識が飛びかけて聞こえてなかったんだけど、ブラドはぷんすこと音を立ててビリビリしながらそっぽを向いてしまった。弁解しようにも、拗ねるとブラドは普段のぶっきらぼうさが割増になってろくに話も聞いてくれなくなるので少し面倒だ。ここはお仕事の話でもして時間が経つのを待たせてもらおう。
「ブラドー。今回はなんでこんな森の奥に俺を呼び出したんだよ」
「ヴォドゥンが不死者の反応を見つけたって言ってたからな。お前もわかってる通り、私達は単身で全人類を滅ぼすくらい普通にできてしまうからな。まぁ、新しく生まれたやつでもない限りそんな心配する必要も無いだろうが、一応な」
「つまり新入りがなにかやらかす前に唾付けに行くってことか」
「なんか独特な言い回しだが……多分そういう事だ」
ブラドは墓守として墓に埋められた身寄りの無い少女が精霊化した『ブラックドッグ』。故に彼女の本質は墓の、ひいては人類の守護である。
本質と言うよりは『存在理由』とも言うべきそれ。やらなくてはいけないのではなく、やらないという選択肢が取れない。
……なんとも可哀想な不死性だと思わなくもない。不死になってまで何かに縛られているなんて。俺なんて、一応体は星から生まれた人間の概念精霊らしいのでたまに地球からの命令が聞こえるけどガン無視してるし。
「しかしこんな森の奥に住んでるとかそいつも物好きだな。半ば異界化してるじゃん。人嫌いなタイプかね?」
「情報を統合するとオケアノスやパンゲアの言っていた『植物』の概念精霊という可能性もあるな」
「えー……アイツら並に強いなら俺だけじゃ止めるの多分無理だよ?」
「それに関しては大丈夫だ。私はお前を信じてるからな」
信頼で現実が変わるなら異界領域は苦労しない、と言おうとしたところで周囲の雰囲気が変わった。
どうやら適当に歩いていたら結界を抜けたようで、気がつけば開けた場所に出ていた。日光が良い感じに差し込んで、まさに精霊がいるとなるとお手本のような幻想的な空間の中心に彼女はいた。
まず最初に言っておくと、その精霊は裸だった。
一応、人間の女性……と言うよりは少女の体つきをしていたが、もう1000年も生きてるので興奮したりとかはしない。むしろその逆だ。
曲がりなりにも不死者の1人を前にしているというのに恐怖もなければ、絶世の美少女と言うべきその姿を見て微塵も湧いてくるものがない。あんなに美少女なら性欲こそ湧かなくてもちょっとくらい変な気が湧きそうなのにだ。
「アルカ……」
「わかってる。ブラドの方が可愛いから安心しろ」
「は、はぁ!? 急に何言ってんだお前!? それよりも私が聞きたいのは、
何処って……改めて目の前を見るが胸もアソコも丸出しで大事じゃないところを植物のツタで隠した美少女がぼーっと岩の上に座り込んでいる。確かにちょっと影が薄くて、なんだか風が吹いたら消えてしまいそうな儚さはあるけど確かにそこにいるはずなのに。
……まさか、いや間違いない。
俺にははっきりと見えているのに、ブラドには見えていないということはそういう事だろう。
「ブラド、視力落ちた?」
「は? 不死者の視力が落ちるわけにゃ」
気が付いたら視力どころかブラドの上半身が吹っ飛ばされてミンチとなって地面に落ちてしまっていた。
確認する必要も無いが、ブラドがそんな風になるだなんて火山の噴火をマトモにでも浴びない限りはありえない事だろう。ならばなぜ、穏やかな森の中でそんなことが起こったのか?
「……一応聞くけど、敵意とかある感じか? 俺達は話し合いに来たんだけど」
「1544○.・¥……59ころ35¥8」
「くっそ、いきなり頭吹き飛ばしやがって……アルカ、なんて言ってるかわかるか?」
使われた言語は地球中枢言語。音として成り立っていない言葉の意味が直接脳内に叩き込まれる感覚が嫌いなので俺はあまり使わないが、これを使ってくるということは相手は以前オケアノスが語っていた、現地球上で最強の精霊、植物の精霊ユグドラシルとやらで間違いないだろう。
うん。勝てないわ。
噂によるとオケアノスじゃ勝てないって言ってたけど、俺じゃまともにやったらオケアノスに勝てないから無理ゲーなんだよね……。
「ま、逃げる気はないんだけどな」
「アルカ……やるのか? ちょっと私は逃げた方が良いと思うぞ。あの不死者、冗談抜きに
珍しく弱気になっているブラドの頭の上から『原初の緑』をぶっかけて黙らせる。ついでにこれで万が一にも巻き込まれて消し飛ぶだなんてことは無いだろう。
相手の結界内とは言えこんな簡易的なモノなら簡単に抜けられるし、その気になれば振り切ることもできる。
話に応じる前に攻撃してきたことと発言から考えて、話し合いに応じる気はなさそう。ならば戦力を確保して改めて数で潰しに来るのがベストだと、俺のIQ500はくだらないであろう頭脳は導き出した。
「でも異界領域の実験とか色々やってみたかったしぃ? 何よりさ……
「こ○9+02|こと6(・(65%・$4(3☆」
俺のカッコいいキメ台詞を聞く素振りも見せず、植物の精霊は自らの体に空いた孔から植物を産み出した。
『
殺到する音速の刃。
本当に植物なのかも疑わしい時間を埋めつくし、空間を喰らいながら進む葉刃は時空間のあらゆるプロセスからの回避を許さず、光速で俺の体を36514分割せんと迫り来る。
だが焦る必要は無い。たかが植物誕生から今までの間圧縮された時空間の中で異常発達して、単体で不死者と同等にまで成り果てた植物の群体に襲われる程度のことどうということは無い。
あくまでそれは、この世界、または奴の中の世界の法則に従って進化した生き物だ。
「異界領域────『万魔屍山無明卿』」
世界が緑に沈んでいく。
無限に思えた植物は、全てが俺に到達する前に枯れ果ててしまった。
「知ってるか? 淡水魚ってのは海水じゃ生きていけないんだ」
「……%*・☆|,4(2(.5#(¥372(そ……5こと~と♪-」
結構大技を見せてやったというのに反応の薄い植物の精霊は、言葉の内容までもが淡白でおしゃべりbotとでも会話でもしてるかのような味気なさだ。
ともかく、自分を研究するようなことがなかったのかそれとも強くなる理由がないほどに強かったのか。植物の精霊はこの技術を知らないようだ。
「己の法則で世界を塗り替える精霊の秘奥義、世界革命。俺の世界は適応の世界だ。俺に合わせられない奴から死んでいくし、俺に合わないやつは全員殺す。というかムカつくやつは全員殺す。そういう訳でお前はいっぺん死んでもらうが、文句あるか」
「%……ァ、うぁ……」
植物の精霊はその言葉に対して、初めて生き物のような反応を示した。
口を少しだけもごもご動かして、
「殺せるものなら殺してくれ。ヒトの精霊」
「アルカだ。ヒトの精霊なんてダサい名前は500年以上前に捨ててきた。……適応できなきゃ死ぬだけだ。適応しちゃうなら……ちょっと無理なんで他を当たってくれ」
この短時間で俺の話していた言葉を完全に習得したバケモノとかどう考えても俺の領域の適応を上回ってくる気しかしないけど、今更相手が異界領域使わないなら多分勝てるからヨシ!!!
大丈夫、だよな?
この頃のアルカはまだやる気がある頃のアルカなので普通に本編の時より強いですし、本編の時より物事を考えて動く本編アルカの上位互換です。
語る場所が無さそうだからここで語っちゃうアレ
・アルカVSオケアノス
両方とも無限進化の領域だが、アルカのは性格には無限の成長、適応でありオケアノスの方が進化というのが正確。オケアノスの領域の生命はアルカの生み出すものと比べ特異性はないが、とにかく数と種類と生産速度が尋常じゃない。アルカが戦うと原初の緑が解析を終える前に物量でゴリ押され、ついでに原初の緑も喰われて負けます。
・ガラティアさんって誰?
ググればだいたい出てくると思いますが、彫刻系アイドルの不死者です。神の加護で不死化した物品なので付喪神に近い子です。本編の間はずっと土の中で昼寝してました。