緋弾のアリア~裏方にいきたい男の物語~   作:蒼海空河

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長くなってしまったので二つに分けました。


双子と愚者と少年と

 雲が多い深夜の東京。

 ポッカリと合間をぬって月の柔らかな光が注いでいる。

 ギィィィィ……

 ガラスの割れた扉が開かれる。

 重々しい金属音。

 パラパラと零れおちる錆から長期間、使用しれていない廃工場だと判る。

 身体を滑らせるように内部へと侵入した。

 そんな彼を追いかけてキンジ、ライカ、陽奈もやってきた。

 

「埃が多い……草や蜘蛛の巣も張っているけど、ここにいったい何があるんだ?」

「……来なくていいのに」

 

 拒絶するような雰囲気に少しムッとした少女が反論する。

 

「犯人が――」

「アタシ、判らないですけど犯人がいる可能性があるんだし、一緒に居た方がいいんじゃないですか?」

「…………言われたでござる」

 

 しょぼーんとする陽奈はさておき。

 ケイは真っすぐ歩き始める。

 無警戒に進む姿に本当に大丈夫なのか? と誰かが疑問に抱いても仕方ないほど隙だらけだった。

 暗闇を照らすのは月明かりのみ。

 奥は見通しが利かない。だがドアがないが、奥行きはある。部屋がありそうだ。

 ベルトコンベアやボロボロになった箱が積み上げられている。

 漁業関係だろうか?

 ケイを除いた三人は左右後ろと拳銃を向けながら慎重に進む。

 暴走気味の一名が全てを台無しにしているが。

 部屋の中央でおもむろに立ちどまった。

 

「どうしたケイ?」 

「……おめぇ」

「ん……?」

「拳銃……いらねえや。マガジンも……渡しとく」

 

 ひょいっと放りなげてキンジに渡す。

 思考が読めない。

 だが気配だけは鋭く、息のつまるような威圧感だけは強くなっている。

 後ろの少女たちは怖がってか、気持ち後ろに下がっていた。

 振り返っていたケイは再度前を向き直そうとする。

 キンジが注意しようとした。

 

「それじゃ丸腰だ――」

 

 ――と言おうとしたとき、

 ドンッ!

 しまった! それがキンジの最初の感想だった。

 不意打ちを警戒しなかったわけじゃない。

 しかし周辺一帯には武偵のチームが幾つも存在し、行動している。

 その中でKチームはかなり外れの方に位置していた。

 後悔先にたたず。

 高速で回転する脳は回避動作――否、間に合わない。

 拳銃は構えたまま。

 ならば撃ち落とすのみ。

 コンマ数秒の間で判断し、ベレッタで狙いを定める。

銃弾撃ち(ビリヤード)……いけるか……ッ!?)

 亜音速を超えて、凶弾迫る。だが――

 カキィン!

 火花が散り、金属音が室内に木霊する。

 

「ケイ!?」

「……うるせい……」

 

 ふらりとキンジの前に出たのはケイだった。

 横を向いたまま後ろに動き、背中に背負った十手で銃弾を弾いたのだ。

 一際険しい表情で前を見つめる。

 奥から片言の日本語が聞こえた。

 

「トマレ!」「ブキヲオロセ!」

 

 女性、そして幼いのか甲高い。

 同じ声なのに二か所から聞こえる。

 スピーカーを使っているのか?

 それとも犯人は最低二人いるということか?

 キンジは近くのベルトコンベアの後ろに隠れた。

 後ろには陽奈。通路を挟んで反対側にはライカ。

 

 そしてケイは……前に進み始めた。

 

「先輩なにやってんですか!?」

 

 半ば悲鳴をあげるようにライカが叫ぶ。ケイの行動は無謀など生ぬるい。敵の射線にさらされてなお自分の身体を晒すなど自殺志願者が狂人の所業だ。

 ガリガリ……ガリガリ……

 背中からおろした十手を右手にぶら下げ、地面を引き摺る。

 猫背気味に前に突きすすむ姿はまるでゾンビだった。

 犯人の声に焦りが混じる。

 

「ツギハアテルゾッ」「ブキヲオロセッ」

 

 その言葉に歩みを止めた。

 だが次に発したのは腹の底から響くような声。

 

「ぴ~ぴ~うるせえ……用事があるのはその先なんだ。どけ……ッ!」

 

 怒気を孕んだ声が潜んでいた敵の耳朶を叩く。

 淡々と、しかし激怒していると判る声音。

 

「ィ、イカセルカ!」「ウツゾ!」

「撃つ……撃つか……。ここってほとんど密閉空間だったな……」

「……?」

「そう人生が終わるな……暗黒時代だ……。風もない……全員、道連れにすることになる」

「……ナン!?」「ダッテ!?」

「ケイッ! まさか爆弾でも仕掛けたのか!?」

「爆弾!? 仲間も一緒にやるつもりですか先輩ッ」

 

 返事はない。

 だが犯人の目にはしっかりとケイの瞳が見えていた。

 血走り、正気の沙汰ではない。

 異常、異端、異質……。

 追い詰められた人間そのものだった。

 撃つか、撃たないか。

 迷いが生じたそのとき、ふっと月が雲に隠れた。

 そしてインカムを付けていた武偵たちの耳に不思議な声が聞こえた。

 

         ――私は、一発の銃弾――

 

 静寂な夜に乙女の歌が響く。それは祈り。純粋な少女の聖歌。

 

 

     ――銃弾は人の心を持たない故に、何も考えない――

 

 彼方から狙うは勝利の一撃。金属の銃弾はスライドされ、今はただ空を疾走するのを待つばかり。

 

 ――ただ、目標に向かって、飛ぶだけ――

 

 風が、凪いだ。

 

 

 

 ズドッッッン!!

 廃ビルの屋上から放たれたドグラノフの弾丸は工場の窓を貫き、ベルトコンべアにあたり跳弾し、まず一人の手に持っていた拳銃を弾く。

 

「アァ!?」

 

 ライフルの勢いは止まらない。絶妙な角度で弾丸は天井、壁を経由しもう一人の相手の拳銃を弾いた。

 その二人の背後から、

 ドンッ!

 

「カハッ!?」「テキ!?」

「麻薬密売は判らんけど、殺人未遂で逮捕ーってか!」

「おとなしくしてください」

 

 背後から一撃。

 武器もなく、体格で劣る犯人の少女たちは為すすべなく捕まり、手錠をかけられた。 

 姿を現したのはガッシリした体格の男と今も爽やかスマイルを浮かべている男。

 武藤と不知火だった。

 

「時間稼ぎサンキュ、ケイ!」

「インカムで会話は聞いてました。絶妙なタイミングでの狙撃でしたねレキさん」

『ん……』

「武藤、不知火、ひやひやしたぞ」

「え……あれ先輩たちいつの間に!」

 

 暗がりだ。

 暗視ゴーグルを使っていないのは判っていた。

 武藤と不知火は銃声とインカムから聞こえる会話から事態を知り、追ってきたのだ。

 そして密かに室内に侵入。

 遮蔽物も多いので犯人の近くまでは来たのだが、問題は揉み合いになったときの暴発。

 室内では跳弾や流れ弾の危険もあるし、時間稼ぎをしたらしいケイは敵の眼前に居て動けない。

 

「だけど、ケイがわざとらしく『暗黒』っていったからな。雲も多いし、次に月が隠れるのを待てってレキも判ってたんだな。さっすがリーダー」

 

 決めるねぇ、と笑いながら武藤が近づく。

 喜びを分かち合おうとケイの肩を軽く叩こうとしたが、

 スカッ

 最小限の動きで避ける。

 

「…………ただの偶然だっての」

「嘘つけ。にしても、今日のケイはホントにツレネエなぁ……」

 

 答えずにケイは前へと進む。

 進路上には二人の少女。

 月に照らされた彼女たちは幼いながらも独特の美しさを持っていた。

 12、3歳ほど。

 太陽の光を知らぬような真っ白な肌に純白の銀髪。

 ちょこんと飛び出した八重歯が親しみやすさ感じさせる。

 今はぐるるとうなり、来訪者を拒絶する犬のようにケイを睨みつけていた。

 

「クソッ、コノインポヤロウ!」「シネ、ニホンザル!」

 

 あくまで可愛いのは外見だけ。

 ぺっと唾を吐き、ケイの靴を汚す。

 

「…………」

 

 無言で手を上げる。

 殴られる……そう感じ、無意識に首を竦めた少女たちだったが、

 ポンッ

 暖かい……むしろ体温が高めの、大きな手が少女たちの小さな頭を撫でる。

 

「……?」

 

 すれ違いざまに二人の頭を撫でて去っていった。

 言葉は発しない。

 そして奥の部屋へ行く。

 見張りとして不知火と中学コンビが残り、キンジたちが後を追うと、そこは狭い部屋だった。

 鼻を摘まむような臭気がある。

 どうも魚をさばいていたのか、骨が散らばっていた。

 山があった。麻薬の山。

 巧みに偽装しているが、いつでも運べるようにキャスター付きの土台の上にあった。

 匂いは恐らく警察犬の鼻を誤魔化そうとしたのだろう。

 後ろから声がした。

 

「近くに無許可で停泊していた船舶がありました。おそらくこれを乗せて海に逃げようとしていたと思われます」

 

 レキも到着していたようだ。

 淡々と分析する。

 キンジが御礼を言う。

 

「レキか。ありがとう助かったよ」

「風の声を聞いただけです」

「ははは、なかなか詩的な表現だね」

「別に」

「おいおい、それより大手柄じゃねえか俺たち! たしか警察や武偵局の目的って、隠した麻薬のありかと、他組織との関係を洗うために逃がしたんだろ? 片方の目的を達成しちまったぜ!」

 

 武藤が歓喜の声をあげる。

 今回の麻薬組織の活動は入念な準備によるものだった。

 数ヶ月前から犯罪率を上昇させ、警察や武偵の余裕をなくし入り込む隙を作る。

 そしてバイヤーや暴力団関係者に自分たちの実力を売り込みをしつつ、ヤクを売りさばくのが目的。

 その手口でドンドン成りあがった組織なのだが、今回はなぜか手口が荒かった。

 怪しい素振りをしていた男を逮捕。

 尋問科が、法律に則って、丁寧に聞いた結果、判明したのが今回の事件だ。

 プロまで出し抜いて見つけたのだから、今回のメンバーには少なくない報奨金に単位も得られる。

 キンジも表情を緩め、頷いていると一人だけ暗い顔をした者がいた。

 

「…………くそが」

「ケイ?」

 

 Uターンして戻っていく。

 喜びなど一切ない。

 むしろ表情は険しくなる一方で、刺すような気配が最大限にまで高まっている。

 どこかと戦争をするつもりなのかというほどだ。

 コツコツと少女たちの側を通るとき、ケイは大声で嘆いた。

 

「……俺は……俺はこんなものの為にやったんじゃねぇ……!!」

「先輩……泣いて……」

「おい、ケイどうしたんだよ」

 

 ライカや武藤の声にも答えない。

 慟哭。

 見る者の心を揺さぶるほどの絶叫。

 ただただ涙を流し、俯く。

 熱のこもった叫びは周囲の者の口を挟めない。

 少女たちに一言、

 

「悪かったな……」

「エ……?」「ナンデ……?」

 

 やはり答えない。

 もう一度、頭を撫でたあと、振り向く。

 キンジに十手を渡した。

 十手は、とても熱かった。

 

「……キンジ、悪いけど拳銃と十手、今日は持って帰ってくれや……明日、登校するときに回収するから……」

「それはいいがケイはどうするんだ?」

「悪いけど、帰るわ……不知火はリーダーに、キンジはサブで頼む。じゃあな……」

「ァ……」

 

 哀愁の漂うゆっくりとした歩調でその場を去ろうとする。

 少女たちが呼びとめようと声をあげた。

 

「ァ……アノ……!」「マッテ、ワタシタチ……!」

「何も、言うなよ」

 

 言葉を遮るように金属の扉は閉められた。

 それから数分後、作戦の終了が伝えられた。

 

 

 

 

 

「警察がこっちに向かっているそうだ。もうじきに来るとさ」

「そうか……」

 

 犯人逮捕をしたのに一同は浮かばない表情を浮かべていた。

 ケイの事だ。

 あそこまで激情を露わにするなど始めてだ。

 特に気にしているのは、武藤だった。

 

「オレ、単純に喜んじまったんだが……軽率だったかなあ……」

 

 その言葉に不知火が慰めるように言う。

 

「とはいっても普段の彼とは別人のようだったから仕方ないよ。でも、彼は彼なりに熱い想いを持っているようだね」

「師匠……あの大石啓とはどういった御仁なのでござるか? 怖かったり、熱かったり滅茶苦茶でござる……」

「そう、だな…………ケイは奥の部屋を気にしていたよな」

 

 キンジの声に一同が頷く。

 ケイは奥の部屋を見たとで『こんなもののためにやったわけじゃねえ――!』と叫んでいた。

 ケイから渡された拳銃をみながら、

 

「もしかしたら、なにもないことを期待していたのかもしれない」

「……なにもないのを、でござるか?」

「ああ、そこのお嬢さんたち――」

 

 いきなり話題の中心になり身体をびくつかせる麻薬を守っていた少女たち。

 自分たちが組織の関係者なのは既に白状していた。

 

「幼い少女が麻薬売買に手を染める……そんな現実を嘆いたのかもしれないな」

 

 その言葉にライカが疑問の声をあげる。

 

「でも先輩だって武偵なら知ってるんじゃ……」

 

 凶悪犯罪が増加近年は犯罪者の低年齢化は進んでいる。

 武偵として長くいれば当然の常識なのだが、キンジは首を振った。

 

「彼は一般中学出身なんだ。犯罪が増えているのは知っていても、現実に目の当たりにしたのは初めてか、少なくとも多くない。先輩たちに連れられて凶悪犯罪ばかりこなしていたようだけど……もしかしたら犯罪者たちに思うところがあったのかもしれない。それなら、あの発言の意味も判る」

「甘いってことですか……」

「ああ理想主義者って奴かもね。でも――」

 

 キンジの声を被せるように武藤が叫ぶ。

 

「熱い、めっちゃ熱い奴じゃねえか! くそォ、カッコつけやがって……! …………オレ、アイツってどこかいい加減な奴だって思ってた。Sランクとかだって偶然じゃねえかって思ってた。オレもおちゃらけた人間だけど、少なくとも武偵としては上だって思ってた。でも、違う。アイツは凄く、真面目に武偵って職業に向き合ってたんだ。……内心で馬鹿にしてた自分が情けねえ……」

 

 壁を殴り、血がにじむ。だが足りない。武籐は拳を握ったままうなだれる。

 思えば簡単だったのだ。犯人の前に姿を晒し、命掛けで戦っていた。

 活躍したのにそんな自分を誇ろうともせず、犯人にすら涙を浮かべて現状を嘆く。

 さびしそうな後ろ姿が、やけに小さかった。

 自分の浅薄な考えが見抜かれていたのではないか?

 誰よりも純粋な男。胸が痛い。

 

 その心を撃ち抜いたのは彼だけではなかった。

 

「アノ……」「キイテホシイコトガアル」

「なんだ?」

 

 たどたどしい日本語で語られたのは少女たちの半生だった。

 

 ……それは幸せな家庭が墜ちていく物語。

 双子として生まれた少女たちはロシアの片田舎で生まれた。

 しかし、家は貧しかった。毎日必死に働く父親。

 寡黙ながら、大きく暖かい手で撫でられるのが少女たちにとって一番幸せだった。

 だが、母親の身体は弱く、病魔に侵される。

 治せないわけじゃない。

 しかしお金が足りない……圧倒的に。父親の出した結論は、麻薬……犯罪だった。

 どこにも非合法に手を染める人間はいる。僅かな手掛かりで裏の人間との繋がりを得て、バイヤーとして金を稼ぐ。

 

 でも、間に合わなかった。

 麻薬に手を染めて見た目は綺麗になった手で、妻を抱きしめながら……彼女は命を落とした。

 それから父親は自暴自棄になっていく。

 悪徳商売を嫌うどころか率先して行い、新興の麻薬組織まで立ちあげた。

 金に取りつかれたように稼ぎに稼ぐ。

 少女は油断されやすいと、娘である双子にまで犯罪を強要した。

 だが数ヶ月前に、突然自殺した。母親の墓標の前で自分の頭部を撃ち抜いて。

 疲れたような、シワだらけの顔を天に向けながら……。

 

 普通なら組織内部で抗争でも起きるものだが、意外と組員たちは争うことはなかった。

 しかも双子を祭りあげ、ボス扱いまでした。

 先代である父親の金払いがよかったからとか、人望があったとかではない。

 ただのスケープゴート。

 なにかあればトンズラする準備だけは影で行い、幼い少女たちを矢面に晒す外道たち。

 そんな少女たちが率いる組織ゆえに穴だらけの計画で日本を狙ったのだ。

 ばれないわけがない。

 

 双子の愚者ではない。

 双子と愚者――最後まで名前を改めることはなかった。

 

 

「それでここまで大胆な計画をできるくらい情報が集まったんだね……」

「ドーセ、イツカ、ジブンタチモ、ケサレル」「ダッタラ、イマキエヨウト、オモッタ」

 

 一息に話した少女たちはどこか憑きものが落ちたように晴れやかだった。

 だけど、その小さな花たちはしゅんと萎んだ。

 

「デモ……」「イキタイ……ッテ、オモッタ」

 

 沈む女の子をキンジが慰める。

 

「人間だからね、当然のことさ、だから――」

「アノオトコ」「オオイシ、ケイ」

「うん……?」

「ホンキ、デ……」「ワタシタチ、シンパイ、シテタ」

 

 思い出すのは暖かいより熱い掌。

 セピア色にかすんだ思い出。

 父親の優しい笑顔が、少年の泣き顔と一致した。

 まったく違うはずなのに……。

 でも大きな手は熱く、そしてわずかに震えていた。

 それが少女たちに痛いほど判った。この人は本気に自分たちを心配して、怒っているのだと。

 ……誰かに助けを求めていた。ずっとずっと声にならない叫びをあげていた。

 武偵の少年は、一度は放った銃弾を易々と受け流し、唾を吐きかけても、彼は少女たちの心を見つめていた。

 そして心の奥底から嘆いたのだ。

 こんな現実があってたまるか! と心で号泣する少年。

 少女たちにはそう見えた。

 

「モウ、イチド」「アイタイ」

 

 でも告げられたのは拒絶の言葉。「なにも、言うなよ」と。

 小さく、でもはっきりと。

 きっと汚い自分たちじゃ、まだダメなんだ。だったら――

 

「武偵になればいいんじゃないかな?」

「ブテイ?」

 

 優しくキンジは導く。

 今のキンジは女の子に世界で一番優しい。

 だからこそ未来へと道案内をすることにした。

 

「君たちは父親に犯罪を強要された。そしてまだ幼い。組織の長もただの身代わり人形とくれば、裁判所でも心象はよくなるだろう。司法取引をすれば条件付きで出所もできる。その一つがつまり」

「ブテイ、二……」「ナルコト?」

「そういうこと。裏の人間じゃなければ、知りえない世界もあるからね。そういう人材は意外と必要とされている。……そうすれば彼の隣へ行くことも容易になるよ」

 

 ささやかれた言葉を飲み込み。

 少女二人は頷き合う。

 武偵になりたいと、願う。赤いランプが近づく。警察だ。

 辛い現実がやってくる前に、少女たちは決意を言葉にした。

 

「ブテイニナル、ゴメンナサイ、ッテ」「ブテイニナル、アリガトウ、ッテ」

「イイタイカラ――」

 

 

 

 

 

 警察に連れて行かれた少女たち。

 キンジたちは武藤が運転する車に乗り、帰っていた。

 口は開かない。

 各々が心の内でなにを思うかは判らない。

 

 その中でキンジは後ろに流れていく街灯の灯りを眺める。

 手元にはケイの古めかしい拳銃がきらりと反射していた。

 

「……拳銃はなくても、彼は撃ち抜くことができるのかもしれない。犯罪者たちの心を……」

 

 

 

 大石啓――諜報科Cランク。強襲科顔負けのフロントマンの仕事を行うが、隠密を尊ぶ諜報科のランクは低い。

 しかし面白い記録がある。

 凶悪犯罪十二件解決中、内九件で逮捕した犯罪者たちは前向きに社会復帰を目指しているとのこと。

 それが判明するのはだいぶ先のこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇を男が一人歩く。

 顔は若く、まだ高校生といったところ。

 東京武偵高校の制服を身にまとう彼はなにかに耐えるようにゆっくりと進む。そっと歩く。

 ときおり横を通りすぎる車や、突風に舌打ちしながらも目的地へと向かう。

 見えるのは一つの灯り。

 日本各地にあるお店――コンビニ。

 

 まるでオアシスを見つけたようにその日始めて、歓喜の表情を浮かべる。

 

「やっと……やっと、ついた。やっと

 

 

 

 

 

 

 トイレに行ける…………ッ! そこら辺でするのは人間的にアウトだし、かといって緊張したからちょっとトイレ行くって可愛い子たちの前で言いだしづらいし……。ずっと我慢してたから辛かった……マジで……!」

 

 

 

 




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すいません悪ふざけが過ぎました。
駄目だったら即消しますので……。

         

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