あれ? 勇者ってこういうのだっけ   作:みども

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第4話

 保身と出世が大好き部隊長が戦死したせいで、その原因を作った陰険部隊長の指揮下に入ることになりました。

 どうも、現地時刻はまだおはようございますの時間帯です。無名の魔族こと、戦車兵(チャリオット・ライダー)です。略して『チャラいダー』と呼んでください。

 

 痩せた世界で滅亡することを拒み、豊かな人間達の世界を手に入れるために開始された魔王軍の侵略戦争。

 その緒戦となるリングル王国の侵攻戦にて、私は給料目当てに兵士として参加しています。

 ところがどっこい、魔族内の出世争いに巻き込まれ所属していた部隊がいきなり壊滅し、戦車も破損しました。

 やったのは王国軍の魔法攻撃だけど、実質後ろの味方にやられたようなものです。証拠ねえけどな! 

 まだ王国軍の兵士1人も轢き殺してないのに……。

 

 現在は魔王軍と王国軍が衝突し、平原の各地で戦闘が繰り広げられています。

 まあ、ここは戦場の端っこなので全体の戦況なんてわかりませんけどね。

 

 

「戦車はどうしたのだ?」

「壊れました」

 

 

 暫定指揮官となったローミア隊長の側近の魔王軍兵士に聞かれ、ぶっ壊した……じゃなくてやむなく破壊することとなった戦車を指し示す。

 それを見た兵士は一瞬額に青筋を立てたように見えたが、怒鳴り散らしても体力と時間の無駄にしかならない考えたのか、一息置いてからこちらに目線を向けた。

 

 

「ローミア隊長の命令だ。貴様は魔物とともに王国軍の陣を突破し、後背に控えているリングル王国軍の本陣を急襲しろ」

 

 

 臨時で配属早々に部隊長から命令が来ました。

 あの隊長、幻影魔法で張り切りすぎたのか魔力すっからかんになったというのに、疲労をうまく装いつつも剣を片手に飛び出していった。

 おかげで部隊の魔王軍の士気がうなぎのぼりである。

 幻影魔法で疲労困憊だというのに、それでもなお剣を片手に前線に立つ姿に鼓舞されているのだろう。

 嵌められたこっちの部隊の生き残りまで心酔してやがる。

 ……絶対疲れてないよね、まだ存分に戦えるよね。それ演技だよね。こうすれば後々の評価が上がるという点を的確に抑えているよね。いちいち演技しなきゃ気が済まないのか? 

 

 まあローミア隊長はこの際どうでもいいや。あの方が戦死したとしても私に不利益があるわけじゃないし。寧ろスカッとしますわ、ざまあ見ろってね。

 

 新しい命令ですけど、私の今世の家族であるサイの魔物達とともに敵陣を強行突破して本陣に奇襲をしかけろとか言われました。

 戦場の端っこなので王国軍の陣を貫くのは難しくないけど、あの本陣にはまだリングル王国最強の剣技を駆使する騎士団長と彼の率いる精鋭部隊が無傷でいますよね? 

 確かに討ち取れればリングル王国には取り返しのつかない大打撃を与えられることになると思うけど。

 そんな敵の主力が集う巣窟に1人で突撃しろってか? 

 パワハラだろ! ローミア隊長、やっぱり性根腐ってる! 

 

 ……あ、狙いわかったぞ。騎士団長を本陣から引きずり出して指揮系統を混乱させ、その隙に自分たちが手薄になった本陣を潰す算段なんでしょう。

 中央で黒騎士殿が暴れているからって、そんなに手柄が欲しいのかよあの陰険魔族。

 もう女狐って呼ぼう。外見は狐って感じしないけど、内面は完全に狐だよね!? 

 

 しかし命令とあれば仕方がない。

 こうなったら私がリングル王国最強の騎士団長を討ち取って1番の大手柄を個人で立ててやる。

 

 

「了解しました!」

 

 

 というわけで、ローミア隊長の命令に従い家族たちとともに戦場をかけることにしました。

 三頭の魔物のうち、戦車では中央で引く役目を担う1番の力持ちである長男の背中に乗り込み、残る2頭を連れて槍を片手に走り出す。

 走り出したら簡単には止められねえぞ! さっき止められた上に戦車をひっくり返されたけどな! 

 

 

「止めろ!」

「槍衾を組め!」

 

 

 王国軍が陣の突破を試みる私の動きに反応し、すかさず即席の対騎兵用の槍衾を組み始めた。

 けどさ、馬ならともかくサイの魔物である私の家族にそんな即席防御が通用すると思ってんのか! 

 

 

「邪魔じゃ退け!」

「「「ぎゃあアアァァ!?」」」

 

 

 一撃粉砕。

 私の家族達の突進により、一瞬で足止めしようとした王国軍の騎士達を跳ね飛ばした。

 この子達にかかれば、歩兵の槍衾なんぞ道端の石ころほどの障害にもならないね。

 

 このまま向こうの予備戦力も突破して、リングル王国軍の本陣の裏手に回るとしよう。

 最前線の乱戦地帯を強行突破する。

 

 

「ぎゃあ!?」「止められない!」

「バカ俺は味方だ!」

「と、とにかく槍衾を!」「止められるわけないだろバカ!」

 

 

「邪魔だどけオラァ!!」

 

 

「「「ぎゃあアアァァ!?」」」

 

 

 私にとっては突破できるなら敵も味方も関係ない。

 乱戦の中、立ちふさがるリングル王国軍とそれに対峙していた一部の魔王軍も跳ね飛ばしつつ、前進する。

 文句ならオタクらの部隊長に言ってください。先に味方を罠にはめたのあの方ですから。

 

 

「魔法で仕留めろ! 放てぇ!」

 

 

 王国軍を撥ねまくりながら爆走していたら、魔法攻撃部隊から大量の魔法が降り注いできた。

 槍衾で止められないなら穴を掘るか魔法で止めるしかないのだろう。穴掘る時間なんぞないし、そういう意味では王国軍のこのやり方は正しい対応と言える。

 

 ただし、こちらも100人の一部隊丸ごとならともかく、家族達を降り注ぐ魔法攻撃から守るくらいには防御の魔法も使える。

 それに王国軍がまだ近場に多数いる中で攻撃を仕掛けるとか、よほど追い詰められている証拠だ。

 

 というわけで、家族達に雷魔法を駆使した防御用の結界を作り出し王国軍の魔法攻撃を防いだ。

 

 

「うわぁ!?」 「や、やめてくれ!」

 

 

 結果、私は無傷だったけど対応の遅れた王国軍に味方からの攻撃で多数被害が出た。

 まさかの王国軍側でも同士討ち発生である。

 混乱する戦場では同士討ちというのは発生しがちな現象だけど、実際目の当たりにすると酷いね。

 いくら種族が違うと言っても敵味方の識別は混沌とする戦場においては容易なことではない。同士討ちに発展してしまうのも、この混沌とした戦場ではしょうがないかもしれないけどさ。

 味方も撥ね飛ばしたお前が言うな、とか言われそうだけどね。

 

 さて、この魔法攻撃でできた土ボコリを煙幕代わりにして前線地帯を突破するとしよう。

 仕留めたと思っているのか、王国軍側からさらなる魔法攻撃は飛んできていない。

 

 だがしかし、私はともかく戦場の空気に当てられた家族達に隠密行動というのは難しかったようだ。

 

 

「「「ブオオオオオォォォォォ!!」」」

 

 

 三頭揃えての大合唱。戦場の端っこからでも響き渡る咆哮を上げ、雷鳴を轟かせた。

 ついでに土ボコリの煙幕も晴れちゃったよ。

 この子達の雷の魔法の威力、私より強いんじゃないだろうか。

 

 

「嘘だろ!? あれを食らって生きているなんて!」

「と、とにかく魔法を打ち込みまくれ! また走り出したら止められないぞ!」

「中央から増援を呼べ! 予備軍も限界までつぎ込むんだ!」

 

 

 やべ、完全に見つかった。

 すぐさま魔法攻撃が再開され、雨あられと多様な魔法攻撃が降り注いでくる。

 急いで家族達を守ろうとすると、この子達も攻撃されていることに反応したらしく王国軍の魔法部隊が集結している陣目掛けて突進を始めた。

 

 

「待って! あんなところに突撃したらあああぁぁ!?」

 

 

 あんなところに突撃しかけたら、敵地のど真ん中で孤立しちゃうよ! 

 私の制止を遮るように、家族達は一気に加速していく。

 だめだ頭に血が上って興奮している。これじゃあ落ち着くまで言うこと聞いてくれない。

 

 ローミア隊長が援軍送るとは思えないし、こうなったらなすがままに突進させて、前線を押し上げているはずの中央の部隊との合流を目指そう。

 家族達にとって危険になるだろう魔法攻撃だけ最小限の動きで直撃を防ぎつつ、私たちは王国軍の魔法部隊が集結している陣地に向けて突撃をしていった。

 

 

 

 

 

 

 ……いっぽうその頃、中央の戦場では異変が起きていた。

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