があ、があ、というカラスの声が、外から聞こえてくる。
夕日が差し込んで真っ赤になった寝室には、わたしと、うたが居る。
これで、200人目。
何人のうたと出会っても、何回うたを見つけ出しても、最期の時はいつだって変わらない。
二人だけの世界で、年老いたうたに子守唄を歌い、うたはそれを心地良さそうに聴く。
少しだけデュエットになって、それもすぐに終わる。
うたを抱きしめ、泣き顔を見せない為にお面を被る。
何度も、何度も繰り返してきた。
決して慣れない心の痛みと、脱力感、そして絶望。
カラスが鳴き止み、山に帰って行ったとしても、わたしはその場を離れることができない。
悲しさに浸る中、わたしは、うたの亡骸をまさぐる。
二度とこの悲しみを味わいたくないからこそ、死なないうたを産まなくてはいけなかった。
生気を失い、ピクリとも動かない、それでもなお美しい喉に手を伸ばし、指を突っ込み、赤黒くて甘ったるい匂いのする液体とともに、喉骨を引きずり出した。
うたの、病的に白い肌に、彼岸花が咲く。
何度でもこの世に戻って来られるように、道標として。
うたの遺体を埋葬した。
小さな喉骨を握りしめながら、わたしは墓標をあとにした。
月明かりが差し込む、わたしの部屋。
人間の骨格標本みたいなのが、中央に鎮座している。
これが、うただ。
わたしの目の前でうたが死ぬたびに、わたしはうたの骨を抜き取り、呪いをこめて組み立てるのだ。
「死ぬなんて、つまんないよ。」
永遠にわたしと遊び続ける呪い。
永遠に死ねない呪い。
わたしが死ねないのと同じ、本当にたちの悪い呪いだ。
それでも、わたしは、うたを一生幸せにする自信がある。
永遠は苦痛じゃない。うたと一緒に、ずっと楽しく、一緒にうたい続けられるのだから。
そろそろ、呪いが完成するらしかった。
わたしは、わたしの体をまさぐった。
まだ、少しだけ、骨が足りない。
わたしの手には、血の滴る恥骨が握られている。
下腹部には違和感と、少しの喪失感。
けれどきっと、その痛みは、うたと一緒に居れば失くなって行くのだろう。
赤黒い液体がべったりとついたスカートが、足に絡みつく。
「ね、うた。今度は居なくならないで。」
ひとつ積んではわたしのために。
うたがうたうところを、ずっとそばで見ていたいだけ。
ただそれだけ。
ぎゅっと、うたを抱きしめる。
月が子守唄をうたうように、春の太陽が優しく包み込むように。
これでいつだって、うたと一緒におうちに帰れる。
いつだって、うたの声を聴くことができる。
かーえろ