まどマギ見たことねえんだけど、どうやら俺は主人公らしい   作:東頭鎖国

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20話

 そして翌日。休日も終わり、2日ぶりの登校だ。

 休み明けの月曜日ってなんでいつもより起きるのが億劫なんだろう。

 そんなこんなで、今日も今日とて寝坊である。

 

「遅刻遅刻~ッ、と、セーフ! 遅刻じゃなーい!」

 

 いつものように全力疾走で教室に滑り込み、チャイムが鳴ると同時に席につく。

 無遅刻無欠席記録にまた一つ、数字が追加された瞬間だ。

 朝のHRは例によって早乙女先生の元カレの愚痴だったので適当に聞き流す。

 

「まーたギリギリだったねまどか。ほんといつも変わんないんだから」

 

 HRが終わると同時に、さやちゃんが俺の席にやってくる。

 

「おはよ、さやちゃん。あのさ……ジョーの件どうなったか聞きたいんだけど」

 

「ん、あー……あんまり周りに聞かれたくない話だから、お昼にまとめて話すわ」

 

「わかった」

 

 そんな会話を交わしたのち、他の友達と喋ったりなんだりして。

 授業時間を利用してぐっすり英気を養ったりもして。

 日常の時間はいつもと同じように過ぎていった。

 一月後に町ごと壊滅する危機が迫っているとは思えないくらい、それはもう平穏に。

 

 ・・・・・・

 

 そして、昼休み。俺はさやちゃんと二人きりで屋上で話をする。

 ……つもり、だったのだが。

 

「なんでほむちゃんもとみちゃんもいるの?」

 

「私は最近仲間はずれにされがちで寂しいので。それに、あながち無関係というわけでもありませんのよ?」

 

「へぇ。ほむちゃんは?」

 

「美樹さんに誘われたの。『あんたも事情知ってるんだし、一人でお弁当食べるのもなんでしょ? せっかくだから来なよ!』って言われて」

 

 二人ともいつの間にか仲良しになっていたらしい。良いことだ。俺も嬉しい。

 友達同士が仲良くしているとこっちもほっこりするからだ。

 

「私もこの機会に暁美さんとお近づきになりたいですわ。よろしくお願いしますね?」

 

 とみちゃんはほむちゃんに握手を求めて手を差し出す。ほむちゃんは少し戸惑った様子を見せつつも、おっかなびっくり握手に応じる。

 

「……よろしく」

 

 微笑ましい光景だ。とみちゃんはああ見えて気さくで話しやすいやつだから案外すぐ仲良くなれると思う。ほむちゃんもちょっと前までの人を寄せ付けない雰囲気はだいぶ緩和されてるし、さやちゃんとも仲良くなれたみたいだし。

 

「それで、本題なんだけど」

 

「そうだね、それじゃあまずは──」

 

 ・・・・・・

 

「……つまり、さやちゃんは告白して玉砕したけど、とみちゃんもジョーのこと好きで……ワンチャン狙って諦めてないってことね」

 

「ええ。今はまどかさんの事が忘れられなくて恋愛どころではない様子でしたけど、一年後、二年後はどうなっているかわかりませんわ。ですから私はチャンスを待つことにしましたの。それこそ、何年でも」

 

 すげえな、とみちゃんは。根気強くてめちゃくちゃタフだ……俺だったら絶対に真似できん。いや俺じゃなくても真似できる人そんなにいないと思う。

 

「まどかのことが忘れられなくて!?」

 

「あ、ほむらには言ってなかったっけ? あたしが恭介にフラれた原因、まどかのことが好きだったからなんだよね。まあ、それだけじゃないだろうけど……」

 

「俺は二年前に『男は恋愛対象にならないから』ってキッパリ断ったんだけど、まさか未だに引きずってるとは思わんかった」

 

「一途なのはいいんですけど……皮肉なものですわね。私かさやかさんがその対象だったらこんなに困らなくても済みますのに」

 

「なんかいい手ないかなあ……」

 

 うーん、とみんなで頭をひねる。三人寄れば文殊の知恵って言葉があるが、四人いてもなかなか考えがまとまらない。俺は色恋沙汰に関してはさっぱりだし、他の三人も別に恋愛経験があるわけじゃないしなあ……。

 とみちゃんと俺がラブレター貰ったことあるくらいで、別に特定の誰かと付き合ったことあるわけじゃないし。直接告白する根性のない奴はバサッと断ったらそれ以降諦めるんだけど、ジョーに関しては例外だったからな……。

 

「その……まどかは、男性を恋愛対象にすることが出来ないのよね?」

 

「うん、人間として嫌いじゃなくても生理的に無理なんだ」

 

「……それってつまり、女性ならいいのよね?」

 

「そ、そういう単純な問題じゃないんだけど、男よりは大丈夫かな……って、なんかほむちゃん、顔近くない?」

 

 ほむちゃんが話しながらどんどん俺に向かって身を乗り出してくる。

 なんか熱が入ってて、ついついたじろいでしまう。

 ほむちゃんが俺の手をぎゅっと握り、こう言った。

 

「私にいい考えがあるわ、まどか」

 

「……は、はい」

 

 ほむちゃんの妙な熱気に押されて、俺は首を縦に振るしかなかった。

 その後ろでとみちゃんが『キマシ……』といった謎の声と一緒に鼻血を出しながら倒れ、さやちゃんがなんとも言えない顔で苦笑いしていた。

 

 ・・・・・・

 

 ……というわけで、俺はジョーのいる病室まで来ていた。

 ほむちゃんも同伴している。今回の作戦のためだ。

 ホントにいいのかなぁ……? と思いつつも、俺は病室のドアを開ける。

 

「よっ、久しぶりだなジョー!」

 

 俺は努めて明るく声をかけると、ジョーは嬉しそうな顔で出迎える。

 その直後に、横にいるほむちゃんを見て不思議そうな顔をする。

 

「……まどか! 来てくれたのかい!? 久しぶりだね。ところで……横の人は?」

 

「最近転校してきた、暁美ほむらよ。私が来たときにはあなたは既に入院していたから、面識がなかったわね。よろしく」

 

「はぁ、どうもよろしく……それで、その暁美さんがなんでここに?」

 

「単刀直入に言うわ。まどかのことはすっぱり忘れてちょうだい。まどかは私の恋人だから」

 

「こ、恋人ぉ!?」

 

「うん、つまりそういうやつなんだ……いやーははは」

 

 そう、これが今回の作戦である。もしかしたら男は恋愛対象外だということに懐疑的かもしれないので、実際に女であるほむちゃんと恋人のフリをしてきっちり諦めをつけてもらおうという作戦である。

 

「ほら、こうやって手だって握れる。男の人の身体には触れないけど、ほむちゃんなら大丈夫」

 

「ぐ、うう……!」

 

 ジョーが辛そうな顔をしている。事前に想像していたより心苦しいぞ、これ。

 ほむちゃんも慣れてないせいで手汗めっちゃかいてる。俺も心臓バクバクいってる。

 ……ああーもう! やっぱりこういうの、性に合わん! 

 

「ごめーん! やっぱり恋人っていうの嘘! ジョーのこと完全に諦めさせるためについた嘘ー! ごめんほむちゃん、やっぱこういうのダメだわ俺!」

 

「ま、まどか!?」

 

 罪悪感に耐えきれなくなってほむちゃんの手をパッと離す。せっかく協力してくれたのに申し訳ない。

 俺、心理戦とか一生出来ない気がする。

 

「こんな小細工するよりも、やっぱ言いたいことはストレートに言ったほうがいいよな。ジョー、さやちゃんから色々話は聞いてるぞ。今の医療技術じゃ腕が治らないって言われてヤケ起こしたってな」

 

「……そうさ、僕の腕はもう治らない。さやかには申し訳ないことをした」

 

「ジョーはさ……さやちゃんの事フッたんだよな? ああいや、責めてるわけじゃないぞ? さやちゃんも大丈夫って言ってたし」

 

「ああ、フッたよ。さやかはいい友達だけど恋愛対象として見ることは出来なかったし、何よりまどかのことが頭から離れなかったから」

 

「そういう理由でフッたんなら、今の俺の気持ちもよく分かるはずだぞ」

 

「……わかってる、わかってるさ。でも……でも、僕は」

 

「いつまでも女々しいんじゃい!」

 

「あだっ!?」

 

 俺はジョーの頭に拳骨をくれてやる。病人相手だから手加減してるけど、喝の気持ちは思い切り込めた。

 

「何するんだよ、まどか!」

 

「俺のことといい、腕のことといい。それで腐ってたってなんもなんないだろ! なあジョー、お前は腕がちょっと動かないだけでバイオリン諦めちまうような男じゃないだろ! 俺にフラれたくらいで折れるやつじゃないだろ!」

 

「ちょっとじゃない! 今の医療技術じゃ治らないって言われてる怪我だよ! どうしようもないんだよ!」

 

「『今の』だろ! 一年後、二年後になってどうなってるかわかんないじゃないかよ! 今よりも医療技術が発展して治るようになってるかもしれないだろ! 諦めんなよ!」

 

「そんな……そんな無責任なこと言わないでくれよっ! 僕の気持ちも知らないで!」

 

「わかんねえよ! わかんないけど、このままいても何も良くならないってのはわかる! なあ、なんかしようぜ! 今バイオリン弾けなくても出来ることはあるはずだ! それこそ曲聞いて勉強するとか、思い切って作曲してみるとかさ! いつかもう一回弾けるようになった時のために!」

 

 そう叫ぶと、ジョーはハッとしたような顔をした。

 俺の言いたいこと、なんとか伝わったか!? 

 

「もう一回、弾けるようになったときのために……」

 

「そう、諦めなきゃいつか良いことある、かどうかは分かんないけど……でも、何もしないよりよっぽど良いと思う! だから──」

 

「あの、病室では静かにしてくださいね~?」

 

 熱が入ってきたところを、ニコニコ笑顔で乱入してきた看護婦さんにクールダウンさせられる。

 声色は穏やかだが目が笑っていない。これは逆らわないほうがいいと本能が理解した。

 

「す、すいません……」

 

「いえいえ、次からは気をつけてくださいね~」

 

 看護婦さんが出ていく。なんだか空気が冷めてしまった。ここが潮時だろう。

 

「ごめんな、色々勝手言って。それじゃ、俺は帰るけどさ。折れんなよ、ジョー! あと、付き合えない俺に未練残すよりもちゃんとお前のこと見てる人のことを見ろよな。言いたいことはそれだけ。じゃ!」

 

 ジョーの返事を待たずに、俺はほむちゃんの手を引きながら病室を出た。

 言いたいことは全部言った。これからジョーがどうするかは、アイツ次第だ。

 でも……あいつの目は死んでいなかった。だから、腕が今後どうなるにせよ悪いことにはならないと思っている。

 

「あ~、これでスッキリした。ごめんな、ほむちゃん。俺の個人的な事情に付き合わせちゃって」

 

「いえ、私こそごめんなさい、変な作戦を考えちゃって……やっぱり、嫌だったわよね」

 

「全然! ほむちゃんのことは好きだし、別にイヤじゃなかったよ」

 

「す、好きって!?」

 

「あ、ええっと、親愛的な意味でな! 恋愛とかよくわかんないし」

 

「そ、そう……」

 

 沈黙が訪れる。ああもう、なんだこの変な空気は。

 なんか今日は変だ、俺。なんなんだ一体。こういうの、ホントらしくない。

 そもそも、どこからが友達で、どこからが恋愛なんだろう? 

 その辺のボーダーが曖昧すぎてわかんない、今生に関しては性別のボーダーも曖昧だし。

 ほむちゃんは俺のことどう思ってるんだろ。

 

「ほむちゃんは、その辺どうなの?」

 

 思っていたら、うっかり口に出してしまった。

 ほむちゃんは「あ、う……」って呻きながら顔を背けると、そのまま話し始めた。

 

「私、私も……わからない。まどかのことは大切だと思ってる。でも恋愛みたいな意味で言ったら……自分の気持ちがホントのものなのかわからない。あなたに対して持ってる想いに今までの『まどか』の影響がないかと言われたら嘘になるから」

 

 なんだ、お互いその辺わかんないってのに変な空気になってたのか。変なの。

 まあ俺とほむちゃん、実は知り合ってそんなに時間が経ってないしな。そういうのは時が経つにつれて分かってくるのかもしれない。

 

「おーい、まどか、ほむらー!」

 

 遠くから俺たちを呼ぶ声で、思考は中断される。

 さやちゃんだ。横にはとみちゃんもいる。

 

「あれ、二人も来てたんだ?」

 

「今着いたところですわ。それで……どうでした?」

 

「まあ、言いたいことは言った。あとはジョー次第だけど、多分大丈夫だと思う。それよりさ、カラオケ行こうぜカラオケ! 今思いっきり叫びたい気分なんだよ」

 

「あたしはいいけど……ほむらと仁美は?」

 

「行きますわ。私も思いっきり叫びたい気分なんですの」

 

「私も行くわ……初めてだから、よくわかっていないけど」

 

「それじゃ、決まりだな! よーし、喉枯れるまで歌うぞ~!!」

 

 ・・・・・・

 

「あ~、楽しかった」

 

 俺は心地よい疲労とともにベッドに飛び込む。三時間も歌ったせいで喉もお腹も痛い。声なんてちょっとハスキーになってしまった。

 ジョーにも言いたいことは言ったし、お父ちゃんの作る晩ごはんは今日もおいしかった。

 今日もいい一日だった……俺の部屋に、不気味な白いナマモノさえいなければ。

 

「……どっから入ってきたんだよ、お前。勧誘ならお断りだぞ」

 

「なぜだい? 君ならどんな願いでも叶えることが出来るというのに」

 

「その結果が、死ぬか魔女になることだろ? なんで事前に説明しねえんだよ、そういうの」

 

「聞かれなかったからね」

 

 こいつ、ぬけぬけと……! 

 ほむちゃんもマミ先輩も杏子もこいつに陥れられたと思うと、怒りが募ってくる。

 

「……おまえ、罪悪感とかないわけ?」

 

「逆に聞くけど、君は家畜に対して引け目を感じたりするかい? 彼らがどのようにして食卓に並ぶのか、そのプロセスを知らないわけではないだろう?」

 

「知ってるよ。んで、それが一体なんなんだよ」

 

「彼らは人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している。君たちは皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか」

 

「おめーは人間騙して破滅させてるだけだろ! な~にが理想的じゃい!」

 

「どうやら納得してもらえないようだね。それじゃあ、見せてあげよう。インキュベーターと人類が共に歩んでいた歴史を」

 

 きぃん、と高い音が頭の中に響き、それと同時に映像が頭の中に直接叩き込まれてくる。

 なんだこれ……女の人? 周りの風景からして、随分昔の人のように見える。

 十年百年単位じゃなくて、もっと昔の……それこそ紀元前とかそんなレベルの。

 その女の人の手には、ソウルジェムが握られていた。

 

「僕たちはね、有史以前から君たちの歴史に干渉してきた。そんな中で数え切れないほどの少女が僕らと契約し、希望を叶え、そして絶望へとその身を委ねていった」

 

 さっきの女の人のソウルジェムがグリーフシードに変化し、魔女へと変貌していく映像が頭の中に流れ込んでくる。この人もまた、キュゥべえの犠牲者。その後も次々と同じようなビジョンが映っては、消えていく。何千年もの間こんなことを何度も繰り返してきたのか、こいつは。

 

「中には歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージに導いた娘たちもいた」

 

 映像が切り替わる。旗を持ち、鎧を着た一人の少女。彼女は軍を率いて並み居る敵を打ち倒していく。彼女自身も率いる軍たちも、常軌を逸した身体能力を発揮していた。おそらく、魔法少女の力だろう。それが普通の人に向けられた場合、どうなるかは明白だった。

 彼女の軍は圧倒的な勝利をもたらし、民衆からの喝采が彼女に向けられた。

 

「しかしその願いが条理にそぐわないものであるかぎり、必ず何らかの歪みを生み出す。やがてそこから災厄が生じるのは当然の節理だ」

 

 再び映像が切り替わる。彼女は磔にされていた。彼女は火をかけられ、生きたまま火炙りに……思い出した。彼女はジャンヌ・ダルク。フランスを救ったっていう歴史上の偉人だ。

 たぶん彼女はキュゥべえに願ったんだ。『フランスを救いたい』って。その結果がこれなのか? 救おうと思っていた人々に裏切られ、処刑される……それが願いの結果だっていうのか? 

 

「ふざけんな……こんなの、なんにもならないじゃないかよ。全部無駄じゃないかよ!」

 

「無駄? 君には本質が見えていないみたいだね。彼女たちの犠牲によって君たちの歴史は紡がれてきたんだよ?」

 

「……それじゃあ何か。あんな悲しいことがいっぱい起きてなきゃ今の俺たちはいなかったって言いたいのか?」

 

「そうだね。僕たちはずっと君たちの文明に寄り添い、見届けてきた。もしも僕たちがいなければ君たちは今でも裸で洞穴に住んでいたんじゃないかな」

 

 ……ふざけてる。そして、こいつらは人間をナメすぎている。

 

「それは違う。お前たちがいなくても、人類は自分の力でここまで発展できる」

 

「認めたくないのかい? 事実として技術的なブレイクスルーのきっかけは殆どが魔法少女の願いによるものだった。僕たちがいなければ今の君たちもないんだよ」

 

「違うっ! 魔法少女じゃなくったって、頑張ってる人はたくさんいた! 偉業を成し遂げた人だってたくさんいた! いや……偉業なんてしてなくたって、必ず誰かが誰かに影響を与えてきた。今まで生きてきた全ての人たち、一人ひとりがみんなで歴史を作ってきたんだよ!」

 

 キュゥべえがいなくたって、魔法少女がいなくたって……願いを踏みにじられて悲しむ人たちがいなくたって発展していった世界を俺は知ってる。俺が前に生きていた世界には、奇跡も魔法もなかった。なかったけど、人間の歴史は止まることなく前に進んでいた。

 魔法少女がいなけりゃ人類は発展していなかったなんていうのは、こいつの傲慢だって知っている! 

 

「まあ、信じたくないならそれでもいいだろう。ただ、僕たちがやっていることが人類にとって利になっていることは純然たる事実だ。僕の本来の目的も、長い目で見れば人類にとっても得のあるものだしね」

 

「本来の目的?」

 

「ああ。僕たちは魔法少女が希望を抱き、そこから絶望する際に生まれるエネルギーを回収してこの宇宙の寿命を伸ばす為に充てているんだ。君の頭では理解できないと思うから、詳細は省くけどね」

 

「なんかイラッとくる言い方だな……それじゃ何かい、宇宙のためなら魔法少女が何人残酷な死に方したって問題ないって言いたいのか?」

 

「そういうことになるね。約70億もあるとされる人間のうち、ごく少数の人間が犠牲になったところでなんの問題もないだろう?」

 

 俺は黙った。こいつの事ぶん殴ってやろうとも考えたが、いくらでも代わりがいるこいつにそんなことをしても何にもならないし、怒るだけ無駄だ。

 

「まどか。いつか君は最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になることだろう」

 

「らしいな。知ってる」

 

「暁美ほむらから聞いたのかい? それなら話は早い。この宇宙のために死んでくれる気になったらいつでも声をかけてくれ。待ってるから」

 

 そう言ってキュゥべえはいなくなった。何しに来たんだ、あいつ。嫌がらせか? 

 あんなこと言って俺が契約する気になるとでも思ったのか? やっぱり何考えてるか意味分からん。

 でも……ああ……弱ったな。今のやり取りのせいで、

 俺が魔法少女になるとしたら()()()()()()()()()()()()

 もっとも、俺が魔法少女になるのは本当の本当にヤバい時だけだってのは変わらない。出来ることならそんな時は来てほしくない。魔女にならない自信はあるけど、実際どうなるかは賭けだし。

 ただ、ワルプルギスの夜とかいうめっちゃヤバいやつが来るのが決まってるんだよなあ……でも、みんななら大丈夫。ほむちゃんたちなら、絶対に勝てる。

 ……もし、そうならなかったら。どうしてもダメだったなら、その時は──

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