まどマギ見たことねえんだけど、どうやら俺は主人公らしい   作:東頭鎖国

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最終話

 ぱちり、と目が覚める。寝覚めバッチリだ。

 身体中に力が満ちている。

 

「まどか、大丈夫なの!? それに、その姿は……!」

 

「ああ。ほむちゃんの友達に会ってきた。そんで、ちょっと助けてもらった」

 

「友達って、まさか……『まどか』!?」

 

『うん。久しぶりだね、ほむらちゃん』

 

 かんちゃんが俺の口を借りて言葉を紡ぐ。ほむちゃんは信じられないといった様子で目を見開いている。

 それと同時に、ぽろぽろと涙を流していた。

 

「まどか……ごめんなさい、ごめんなさい! あの時、あなたのことを信じきれなくて。魔法少女になるのを目の前で見ただけで、諦めて逃げてしまって!」

 

『謝る必要なんてないよ、こうやって会えたから。今の私は全ての私が一つになった存在だから、ほむらちゃんが辿ってきた全ての時間を知ってる。だから言わせて。ありがとう、ほむらちゃん。ほむらちゃんは私にとって最高の友達だったんだね』

 

「まどかっ……まどかぁ!!」

 

 ほむちゃんはまるで子供のように泣きじゃくっている。

 なんか、良かった……って思う。しかし、喜ぶのはまだ早い。

 最大の障害はまだ健在だ。

 

「キャハハハハハハハハハハッ!!」

 

 ワルプルギスの哄笑が響き渡る。うるせえ! 

 でもこいつもよくよく考えてみれば、キュゥべえの犠牲者だ。

 下手に強かったせいで、誰にも退治されず……呪いから解放されないまま、ずっと長いことこの世界を彷徨っていた。

 いい加減、終わりにしてやらなきゃなるまい。

 

「いくぜ、かんちゃん!」

 

『えっ!?』

 

 俺は吹き荒ぶ豪雨に逆らって走り出し……思い切り跳躍した。

 すげえ、めっちゃ高く飛べる! 飛んでくる瓦礫を次々と足場にして飛び移り、ワルプルギスの夜と同じ高さまで飛び上がる。

 

「うおりゃあああああああっっっ!!!」

 

 ワルプルギスの頭に思いっきり拳骨をくれてやる。

 ガギィィィィン! と硬質な金属音が響き渡り、ワルプルギスが悲鳴を上げる。

 

「ギャアアアアアアアッ!?」

 

「うっわ、硬ってえ~!?」

 

 俺はスタッと着地しつつ、ヒリヒリする拳を撫でる。

 こんなの何回も繰り返したら、拳のほうが砕けそうだ。

 

「いてて……どうしよう。このまま素手で倒すつもりだったんだけど、ちょっと硬すぎる」

 

『とつぜん突っ込んだからビックリしたよ……身体能力が上がるのはあくまでもオマケだからね? 私の本当の力はこれ』

 

 かんちゃんがそう言うと、俺の手の中に木の棒が現れる。先っぽには桃色の蕾がついている。

 

「すげえ! これでぶん殴ればいいの?」

 

『ち、違うよ! あの子は呪いが強すぎて、ただ力でやっつけるだけじゃ駄目。それだと、助けてあげられないの。あなたは、あの子も助けてあげたいんでしょう?』

 

「うん、できるなら解放してあげたい。長いことずっと呪ったり呪われたりするだけの存在って、きっと凄く悲しくて寂しかっただろうから」

 

『だったら、少しじっとしててね』

 

 言われたとおりじっとしていると、蕾が開き、大輪の花を咲かせる。

 それと同時に木の棒の形も湾曲していき……光の弦がぴいんと張られた。

 これって……もしかして、弓? これでアイツのことを撃ち抜けって事? 

 

『そのまま、右手を掲げてみて』

 

「こ、こう?」

 

 言われるままに右手を掲げてみると、俺のソウルジェムから色とりどりの光が迸り……俺の手の中に収束していく。これは……みんなの祈りが、希望の力が集まって光の矢になっている! 

 

『これが、この世界の魔法少女全てが抱いた希望そのもの。倒すための力じゃなくて、救うための力。これをあの子にぶつけてあげて』

 

「でも俺、弓なんて射ったことないし……当てる自信ないぞ?」

 

『大丈夫。絶対に当てられるよ』

 

「え……?」

 

 弓を握る俺の手に、誰かの手が重ねられる。

 ほむちゃんだ。ほむちゃんが俺の狙いを支え、一緒に弓を構えてくれていた。

 

「狙いは私がつけるわ。まどかは私が合図したら、迷わず矢を放って!」

 

「りょーかい! 心強いぜ、ほむちゃん!」

 

 俺自身の腕前は不安でも、ほむちゃんなら信じられる。

 ほむちゃんが照準をつけてくれるなら、絶対に当たる。

 だって『鹿目まどか』が矢を放つ光景を世界で一番多く見ていたのは、間違いなくほむちゃんだから。だから……ほむちゃんのナビに間違いはない! 

 

「……今よ!」

 

 ほむちゃんの合図とともに、俺は矢を放つ。

 光の矢はワルプルギスめがけて真っ直ぐに駆け抜けていき……空を覆う暗雲ごとその身体を貫いた。ワルプルギスの身体は真っ二つになったのち、粉々に爆散する。

 その影響で、ワルプルギスの夜に内包されていた膨大な量の穢れが弾け出てくる。

 でもそれは拡散する前に、俺の放った希望の光に相殺されてどんどん小さくなっていく、

 

『もう……いいんだよ。もう誰も恨まなくていいの。誰も呪わなくていいんだよ』

 

 かんちゃんが俺の身体から出ていき、ワルプルギスから出た呪いの残滓を抱きしめる。

 その姿はまるで聖母のようだった。同じ顔なのに、俺とえらい違いだ。

 呪いの塊は完全に浄化され、霧散する。一瞬、その中に安心したような顔で微笑む女の子の影が見えた気がした。

 そっか……ワルプルギスの夜も、解放されたんだな。よかった。

 これで……全部、終わったんだな。

 

「ありがとう、かんちゃん……かんちゃんが来なかったら俺、なんにも出来なかった」

 

『ううん、いいんだよ。それより、お礼はほむらちゃんに言ってあげて。ほむらちゃんがずっと頑張ってきてくれなかったら、私はこの願いに辿り着くことはなかった。私は、あなた達のことを見つけることが出来なかった。だから……ありがとう、ほむらちゃん。今までよく頑張ったね』

 

「あぁ……あぁぁっ……私は、私はっ……そんな、褒められる資格なんて、ないっ……!」

 

 ほむちゃんは大泣きしながらその場に崩れ落ちる。

 ほむちゃん、さっきからずっと泣いてばっかりだな……無理もないけど。

 さっき俺のサポートをしていた時も、必死に涙を堪えていたんだろう。

 

『泣かないで、ほむらちゃん。私は……ほむらちゃんが笑っていたほうが嬉しいな』

 

「……!」

 

 かんちゃんがほむちゃんの涙を指で拭う。

 今は余計な口を挟まずに、二人にしてやろうと思った。

 ……それはそれとして。

 

「おいキュゥべえ、どこ行くつもりだよ」

 

 視界の端に映った白いナマモノの背中を掴み、問い質す。

 ルールをぶっ壊した今、こいつも役割を失ったみたいだけど……一体、どうなるんだよ。

 

「行く宛なんてないよ、誰かさんのせいでね。全く、とんでもないことをしてくれたものだよ! 宇宙の寿命はもう数億年もないというのに!」

 

「数億年って滅茶苦茶長くない……? 俺たちに全然関係ないじゃん」

 

「数十年程度しか生きられない人間の一個体にとってはそうなのかもしれないね。それでも時間は有限なんだ。君の選択はその大切な時間を縮めてしまったんだぞ!」

 

「そんなこと言われたってなあ」

 

 キュゥべえは俺の手の中でもがいて暴れる。いくらなんでも遠い未来の話すぎて実感できない。それに……人間は成長して、進化する生き物だ。それこそ数億年が経過した頃には、宇宙の寿命問題なんて屁でもなくなる新技術が誕生しているかもしれないし、なんなら今の宇宙を離れてさらにその先の世界(そんなのがあるのかどうかは分からないけど)に足を進めているかもしれない。

 そもそも、人類は今の時点でもう月に行くことに成功しているのだ。何億年もあったなら銀河の果てまでひとっ飛びだろう。俺はそう信じている。

 

「女の子のお尻ばっかり追っかけ回してないでさ、もっと人間の色んなところを見てこいよ、キュゥべえ。そうしたら感情ってやつもちょっとは理解できるかもしれないぜ?」

 

「今理解できたって遅いんだよ! 馬鹿なのかい君は! 怒りすら覚える!!」

 

「おいおい、早速感情的になってるじゃん。そんなにショックだった?」

 

「あ、え……今、僕は……何て言った?」

 

「怒りすら覚えるって」

 

「う、嘘だろ……? 僕にとっては感情なんて極めて稀な精神疾患のはずだ。実際、今まで僕の中には存在しなかったじゃないか。なぜそんなものがいきなり芽生えた? なんで? 一体? どうして?」

 

 キュゥべえは今までにない様子で混乱している。というか、冷血野郎だと思ってたけどマジで感情持ってなかったんだなコイツ。よっぽどショックだったらしい。

 もしくは……魔法少女のルールが存在しなくなったことが関係しているのかも。人並みの感情が存在するなら、何も知らない女の子をだまくらかして地獄に叩き落とすようなマネをライフワークにできないだろうから、意図的に感情を消した……もしくは消された可能性も考えられる。まあ、真実を知る術はないし全部ただの想像だけど。ぶっちゃけどうでもいいし。

 そういや、あの二人はどんな話をしているんだろう。

 

 ・・・・・・

 

 ──暁美ほむら

 

「まどか……」

 

 ずっとずっと、ずっと逢いたかった。私の知っているまどか。正確にはまどか個人ではないかもしれないけど、その全てが内包されているまどか。

 

『久しぶりだね、ほむらちゃん』

 

「ええ、本当に……久しぶり」

 

 おかしいな。話したいことが山程あったハズなのに、胸が詰まってしまってなんにも出てこない。でも、これだけは言っておきたい。絶対に言っておきたいことがあった。

 

「まどか……私は、あなたに出会えてよかった。あなたのおかげで私は変われた。あなたが生き抜く力をくれた。あなたがいたから……頑張れた……だから、今までありがとう、まどか」

 

『うん……ありがとう、ほむらちゃん。これでやっと……』

 

『「ちゃんと、お別れを言うことができるね」』

 

 まどかと私の声が重なる。そう、大原則として死んでしまった人間は生き返らない。

 今目の前にいるまどかも、厳密には鹿目まどかその人ではない。この出逢い自体が奇跡そのもの。その奇跡の時間は、後悔のないものにしたかった。

 そしてまどかも、それは承知しているようだった。

 

『私も、ほむらちゃんに会えてよかった。私のことをすごく想ってくれて、私のためにすごく頑張ってくれる友達に出会えて……私は幸せだった。今度は、ほむらちゃんが自分のために幸せになる番だよ』

 

「私が?」

 

『うん。好きなんでしょ? あの子のこと』

 

「あの子って……もしかして、ここのまどか!?」

 

『えへへ、見てればわかるよ。ほむらちゃんがあの子に向ける感情は、私に向けるものとはちょっと違ってたから。ほむらちゃんは私のこと、最高の友達って思ってくれたけど……あの子とは友達のその先になりたいって思ったこと、あるでしょ?』

 

「な、ないわけじゃ、ないけど……よく、わからないの。あなたに対する想いも入り混じっていると思ったから」

 

「おーい、ほむちゃーん、かんちゃーん! そっち一段落ついた? ちょっとかんちゃんに相談あるんだけどさー!」

 

 遠くからまどかの呼ぶ声が聞こえる。声のする方を見ると、まどかが何故かキュゥべえを掴んでぶら下げながらこちらに歩いてきていた。

 

『噂をすれば、だね。大丈夫だよ、どうしたの?』

 

「いや、キュゥべえのやつが感情をゲットした上に無職になっちゃったみたいだから今後の扱いを相談しようと思って」

 

「人聞きが悪いな君は!」

 

「詐欺師よりマシだろ。これを機会に次からはもっと人のためになる仕事でもしな!」

 

「なぜ僕が人類なんかのために働かなければならないんだ! もう利用価値のなくなった家畜のために!」

 

「なんだとー! まだそんなこと言ってんのかオメー!」

 

「うわァーッ! 僕の身体を振り回すのはやめるんだ! 暴力反対!」

 

 ぎゃあぎゃあとキュゥべえ相手に口喧嘩するまどかを見て、『まどか』は笑う。

 

『ふふっ、やっぱり凄い子だね。感情が芽生えたばかりのキュゥべえと、もう仲良くなってる』

 

「仲良いの、あれ……?」

 

『少なくともキュゥべえを憎んだりしないでちゃんと喋れるのは、あの子くらいだと思うよ。全ての元魔法少女が真実を知った今、キュゥべえ相手にちゃんと喋ろうとする子は誰もいないだろうから』

 

「確かにそうね……」

 

 ソウルジェムは、私の身体から既に消えていた。巴マミも、佐倉杏子もまた同じだ。

 まどかの影響で世界中の魔法少女は、もはや魔法少女ではなくなった。

 そして、ソウルジェムが消えると同時に……魔法少女の成り立ちからその真実、そして魔女化の末路までの情報が流れ込んできたのだ。私にとっては既知のものだったが、何も知らず魔法少女になっていた者たちにとっては衝撃的な真実だっただろう。

 キュゥべえの所業を知った今、ヤツの味方をするものはもはや誰もいない。

 

『わかった、キュゥべえはこっちでなんとかするよ』

 

「ちょっと、なんでまどかが二人いるんだい!? 僕に一体なにをするつもりだ!?」

 

『せっかくだから私の宇宙でいっぱい働いてもらおうかな。それじゃ、先に行っててね』

 

「ちょっ、せめて説明を……!!」

 

 全て言い切る前に『まどか』の手によってキュゥべえは消えていった。

 

「今までことごとく説明責任を果たしてこなかったやつの最期の言葉が『せめて説明を』っていうのは皮肉なものね……」

 

『いや、死んでないからね? ただ私の宇宙に送っただけ。これからは、ちゃんと魔法少女のために働いてもらうから安心して』

 

「とりあえず、これで一件落着かな……って、かんちゃん。身体が透けてる!?」

 

『あはは……もうそろそろ、時間切れみたいだね。出会えて嬉しかったよ、ほむらちゃん。それと……まどかちゃん。ほむらちゃんのこと、よろしくね』

 

「おう、任された!」

 

『それから、これを二人に』

 

 そう言ってまどかは自らの着けている二つのリボンを解き、ひとつずつ、私とまどかに手渡す。

 

『私はもうここに来ることはないけれど……これを見て、たまには思い出してくれると嬉しいかな。私の宇宙の人は、私のことを認識できないから。これは私のちっちゃなワガママだけど……受け取って、くれるかな?』

 

「うん……うんっ! 絶対に忘れないっ!!」

 

 駄目だ、どうしても涙が溢れてくる。お別れの時は泣かないって決めていたのに。

 やっぱり、我慢できない。まどかは私とは対照的に、快活な笑顔でリボンを受け取っていた。

 そして自らの髪を結んでいる赤いリボンを解き、『まどか』に手渡していた。

 

「かんちゃんも俺のこと、たまには思い出してくれな! なんたって、もう友達だからさ!」

 

「私も……受け取って、まどか」

 

 私もそれに倣って、自らのカチューシャを外して手渡す。

 魔法少女になる前からずっと着けていたから、自分のトレードマークのつもりだ。

 私のことを一番思い出してくれそうなものといったら、これくらいしか思いつかない。

 

『二人とも……ありがとう。もう時間だから、行くね。さよなら……元気でね』

 

「うん……さよなら、まどか」

 

「また会おうぜ、かんちゃん! 今度はこういう切羽詰まったときじゃなくてさ、余裕がある時一緒に遊ぼう!」

 

『あははっ……それは楽しみだね。それじゃあ、さよならじゃなくて……『またね』って言わなきゃね。ばいばい、二人とも』

 

『まどか』はそう言って消えていった。それと同時にまどかの変身も解け、私達の手元には白いリボンだけが残っていた。

 まどかは能天気だからまた会えるって信じて疑ってないけど……おそらく、二度と逢えない。

 でも……それでも大丈夫だと思えた。私の中には『まどか』がいて……『まどか』の中には私がいるから。

 それ以上に望むことはなんにも無かった。

 

「まろか~!」

 

 舌っ足らずな声がする方を向くと、まどかの家族が駆け寄って来ていた。

 声の正体はまどかのお父さんに抱かれている弟のものだった。

 

「お父ちゃん、お母ちゃん、タッく~ん!! 俺やったよ! 無事に終わった~~!!」

 

「びっくりしたよ、空が急に晴れたから。あれはまどかがやったのかい?」

 

「うん、もうできないけど!」

 

「心配かけやがって、馬鹿娘がっ……!」

 

 熱い抱擁を交わす母娘を見ていると、私にも声がかけられる。

 

「全く、かなわないよ。美味しいところ全部持っていかれちゃったじゃないか」

 

「結果的に、また鹿目さんに助けられることになってしまったわね。不甲斐ないと言うか、なんというか」

 

「佐倉さん、巴さん。目が覚めたのね。怪我は大丈夫?」

 

「ああ、さっきまでボロボロだったのが信じられないくらいピンピンしてるよ。その代わり、ソウルジェムもきれいさっぱり無くなっちまったけど」

 

「まさか、キュゥべえに騙されていたとは思わなかったわ……まさかソウルジェムが魔女を産むなんて。今までずっと人を助けるために戦ってきたのに、最期は人殺しの怪物になってしまうなんてもっと早く知っていたら、私……どうなっていたか」

 

 巴さんが身震いする。実際にそれを知ったせいで仲間と心中を図った世界線を知っているだけに、非常に複雑な気分になる。そうならなくてよかったと心底思う。

 

「まあ、そうならなくてよかったよ。しかし、これからどうすっかなあ……」

 

 今まで魔法少女の力を使って生計を立てていた佐倉さんは、これからどうするのだろう。

 おそらく、平坦な道のりの人生ではないだろう。これからは魔法少女として魔女と戦うのではなく、人間として自分の人生と戦わなければいけないのだ。

 無論、私も。もう時間は止められない。遡ることも出来ない。

 

「みんな~~!! 無事で良かった! すっごく心配したんだからね!」

 

「美樹さん……ええ、みんな無事よ。全て終わったの。ワルプルギスの夜も、魔法少女としての戦いも、全て」

 

「え、それってどういう?」

 

「続きは……祝勝会のときにでも話そうかしらね」

 

「もちろん、さやかのオゴリでな!」

 

 佐倉さんがご機嫌な様子で美樹さんの肩に手を回しながら、口を挟んでくる。

 美樹さんも満更でもない様子を見せながら抗議していた。

 

「ちょっ、冗談じゃないわよ! そんな金あるかー!」

 

「心配しないで美樹さん。私がとびっきりの料理を作ってみんなにご馳走するわ」

 

 巴さんがニコニコしながらそう言うと、佐倉さんと美樹さんも喜んで飛び上がる。

 

「マジかよ!」

 

「やっぱマミさん、最高~!」

 

「あの、巴さん……そのお料理、私も参加していいかしら。まどかに……いえ、みんなにも食べてもらいたいの」

 

 私が控えめに呟くと、巴さんは凄く喜んでくれた。

 練習に付き合ってくれた美樹さんも喜んでくれた。佐倉さんもご機嫌だ。

 

「ええ、もちろん! うれしいわ、暁美さん! 二人で頑張って美味しいもの、たくさん作りましょうね!」

 

「ほむら、ついに本番だね! 頑張りなよ!」

 

「あたしはうまいもんが食えればなんでもいーけどさ、期待してるよ?」

 

「なに、ご飯の話!? 俺も混ぜて~!」

 

 耳聡く聞きつけたまどかが駆け寄ってくる。まどかの無垢にはしゃぐ笑顔を見て、私もまた笑顔になる。

 もう、時間は止められない。遡ることもできない。

 その代わり、未来に時を刻んでいくことは出来る。

 なくした未来を、もう一度見ることが出来る。

 ここにいるみんなと、大切な友達と……大好きな人と一緒に、同じ時を歩んでいきたい。

 

 私はまどかの手を握る。まどかは一瞬驚いたような表情を見せたけど、すぐに笑いながら私の手を握り返してくれた。もう、この手を離さない。離れたって、何度でも繋ぎ直す。

 

「ほむちゃん、手汗すごいよ?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「大丈夫、イヤじゃないから」

 

 ……とりあえず、手を繋いでも緊張しないように頑張ろう。

 それが私の……当面の戦いだ。




キャパオーバーしたので感想返しは無しです、ご了承ください
でも全て目は通してます
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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