まどマギ見たことねえんだけど、どうやら俺は主人公らしい 作:東頭鎖国
「奇遇だなあ、ほむちゃん。何してんのこんなところで」
ちょっとビックリしたが、努めてフレンドリーに話しかける。
なんか服も制服じゃなくて私服に着替えてるし、腕にはなんか盾みたいなのがくっついてる。
夢で見た時の格好とおんなじだ。もしかしてこれが、魔法少女の衣装ってやつ?
「あなたには関係ないわ」
「そういうわけにはいかないんだよな。なんたって名指しで『助けて』って言われたもんだから」
そう言って白いのをくいっと顎で指す。
ほむちゃんは硬い表情のまま、ぐっと拳を握りしめる。
「それで……ほむちゃんは、こいつをどうしたいわけ?」
「あなたが知る必要はないわ」
は、話が進まねェ~!
関係ない、必要ないの一点張りで取り付く島がない。
「言ってくれないんなら、俺だってほむちゃんの言うこと聞けないぞ。こいつのこと動物病院に連れてくからな」
「無駄よ」
「無駄って……息はあるし、犬猫だったらまだ助かる傷だぞ? なんで?」
「無駄なものは無駄なの」
「だからなんで!?」
不毛な会話が続く。ほむちゃん、全く説明してくれない上に譲らないから埒が明かない。白いのはさっきからずっと荒い呼吸をしていて忍びないし、何か、現状を打破してくれる変化がほしい……と思ってたところに、こちらに走ってくる何者かがいた。
「はぁ、はぁ……勝手にどっか行かないでよまどか……って、どんな状況!?」
「さやちゃん!」
俺のことを走って追っかけてきてくれたらしい。
さやちゃんは俺たちの状況を見て仰天していた。なんかケガした謎の生き物と、なんかオシャレな服着ながら変な盾つけてるほむちゃんと、その間に挟まれてる俺。
「えーっと、助けを求めてたのはそこの白いやつだった。そんで近寄ろうとしたら、ほむちゃんがあなたには関係ないから近づくなって」
「ほんとにどんな状況よ! 意味わからん! なんか転校生は変なコスプレしてるし、この白いのは新種の動物!? 転校生、あんたもここで何してんのよ! 何か、まさか密猟か!?」
「貴方には関係ないわ、美樹さやか」
「なにー!?」
「さっきからこの一点張りで、なんも説明してくれないんだよ……」
さやちゃんが来てくれたものの、結局会話が堂々巡りになってしまう。
そんな時……急に辺りの景色が霞み、歪み始める。
「なんだ、これ……?」
目を擦ってみる。いや、俺の目はおかしくない……現実に、景色がどんどん変わってきている。
味気なく暗い改装中のフロアから、ビビッドな色遣いの不思議空間に!
「な、なんじゃこりゃあ!?」
「まどか、あたしたち夢見てるんじゃないよね!?」
「くっ……こんな時に!」
三者三様のリアクションだ。その中でも、やっぱりほむちゃんだけはこれが何かを知ってそうな反応だった。
「ほむちゃん、これは一体なんなの! 流石にこれで無関係とは言わせないからな!」
「……どのみち、説明は後よ。危険だから私の側から離れないで、まどか」
「あ、あたしはどうすればいいのさ!」
「ついでにあなたも」
「あたしはついでかよッ!?」
ほむちゃんが危険だと言った理由は、すぐに分かった。上空から無数の鋏が降ってきて、ざくざくと地面に突き刺さる。
その後、鋏から茨が生えてきて……異形の姿を象った。
まんじゅうの髭男爵みたいな変なやつが俺たちの周囲を囲むように現れる。
手に持った鋏をしゃきんしゃきんと鳴らして、まるで威嚇してきているようだった。
……少なくとも、友好的な存在ではないらしい。
「な、何よあれぇ……」
さやちゃんが怯えながら俺の腕にしがみつく。
反して俺は、不思議と落ち着いていた。なんとなく、予想の範疇内だったから。それに、ほむちゃんがいるから大丈夫……根拠はないけど、不思議とそんな気がしていた。
ほむちゃんは周囲を見渡し、盾に手を掛ける。
その時だった。
ズドドドドドォン!!
突如、爆音が響く。それと同時に無数の銃弾が降り注ぎ、まんじゅう野郎共は瞬く間に全滅していった。驚くことに、俺たちが立っている場所には傷一つついていない。
ビビッドな不思議空間は歪んで掻き消え、元の景色に戻っていく。
「危ないところだったわね」
暗がりから誰かが歩いてくる。女の人だ……それも、かなりの美人さん。金髪縦ロールとかいう珍しい髪型な上に、コスプレ衣装めいた服を着てるけど……この人も、魔法少女か?
「その制服……私と同じ見滝原ね。それに──あら、貴女も魔法少女?」
「……」
その人は、ほむちゃんに向かって話しかける。ほむちゃんは沈黙したまま、何も言おうとしない。
沈黙が気まずくなったのか、さやちゃんが口火を切る。
「あのー、魔法少女って? それにこの白い生き物とかさっきのヤツとかって、一体なんなんですか?」
「白い生き物? ……あら、キュゥべえ! ひどい怪我……あなた達が助けてくれたのね」
金髪の人が白いのに手を翳すと、淡い光とともに白いのの傷がみるみるうちに塞がっていく。
「ふぅ……助かったよマミ。危うくそこの魔法少女に殺されてしまうところだった」
「そこの……」
「魔法少女?」
みんな一斉にほむちゃんの方を見る。ほむちゃんは依然、黙ったままだった。
「それじゃあ……何かしら? 貴女がキュゥべえを傷つけ、あわよくば始末しようとしていたってこと?」
「……」
「答えなさいッ!」
金髪の人がほむちゃんに向けて銃を向ける。
只の脅しではなく、本気で撃ちそうな雰囲気だった。
ほむちゃんは顔色一つ変えず、盾に手を掛けている。
「キュゥべえはね、私の大切な友達なの。貴女が何を考えているのか知らないけど、絶対に手出しはさせないわ!」
「そう」
「ま……待った待った待った!」
ほむちゃんを庇うようにして、二人の間に割って入る。
剣呑な雰囲気に耐えられず、思わず身体が動いてしまっていた。
「ちょ、ちょっと貴女!?」
「なんかよくわかんないけど、物騒なのはよくないと思う! ほむちゃんにも何かワケがあったのかもしれないし! 例えばこいつに噛まれたとか、もっとヒドいことされたとか……」
「キュゥべえはそんなことをする子じゃないわ」
「え!? え~っと……ほむちゃん! 実際のとこはどうだったんだよ……って、いない!?」
ほむちゃんはまるで最初からそこにいなかったかのように、忽然と姿を消していた。
隠れるような場所も時間もなかったはずなのに……一体どこに、どうやって?
「……逃げたみたいね」
「すいません。助けてもらったのにこんな、割って入っちゃって」
「いいのよ、あなた達も無事で良かった。ところで、あの子とは一体どんな関係なの?」
「それは──」
俺が口を開きかけた瞬間、さやちゃんがそれを遮るように話す。
「今日うちのクラスに来たばっかりの転校生ですよ。あたしたちもあいつのことはよく知りません」
「そうだったの……まあ、いいわ。キュゥべえもこうして無事だったことだし」
金髪の人は納得したのか、それ以上は聞いて来なかった。
その代わりに、白いやつが俺達に語りかけてくる。
「ふう、傷の方も落ち着いたみたいだ。助かったよ鹿目まどか、それに美樹さやか。君たちの介入がなければ危ないところだった」
「あたしたちの名前、知ってるの!?」
「そういえば俺も名前で呼ばれてた! でも、一体どうして?」
「それは君たちに魔法少女の才能があるからだよ」
「ま、魔法少女の才能ぉ?」
思わず顔が引きつる。俺、魔法少女になるの?
アニメって魔法少女がひどい目に遭う話だったよな、確か。それって、やばいんじゃないの?
今までそういう兆候なんにもなかったのに、この一日で色々起こり過ぎてないか?
「そ、そういえば聞いてなかったけど……あんたって、なんて人?」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私は巴マミ。あなた達と同じ見滝原中の三年生で……キュゥべえと契約した、魔法少女よ」
巴マミ
巴マミ
巴マミ
……く、首取れて死ぬ人だ~~!?