ダンジョンカードバトル   作:ノジー・マッケンジー

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11話

転移機能を使用して5階へと飛び、マップを確認しながら戦闘を避けつつ階段を下っていく。

サクサクと進み、危なげなく10階へと続く階段にたどり着いた。

この先のことを考え少し緊張しながら階段を下りていく。

降りきった先は4畳半ほど?の小さな部屋で、壁に大きな扉がついている。この先にボスがいるのだろう。

 

ここまで道中で避けられない戦闘もあったため、ある程度デッキ枚数が減っているが、先駆者たちの情報によると、扉の中に入ったら自動的に墓地のカードは全て山札に戻りシャッフルされるそうだ。

つまりデッキ消費なしの状態で戦える。

 

気が付けば手にじっとりと汗をかいていた。

 

(大丈夫だ。やれるはず!)

 

自分にそう言い聞かせ扉に手をかける。

大きな見た目に反して扉は簡単に開き、中の様子が目に映る。

拠点よりも少し広いぐらいの部屋で中には今のところ何もない。ここまでのダンジョンと同じく岩壁で囲まれている。

 

意を決して中に入ってみると、後ろで扉が自然に閉まり開かなくなってしまった。

 

「ボス戦が終わるまでは出られないってことか…。」

 

ゆっくりと中央に向かって進む。

するとある程度進んだところで、部屋の中央に黒い靄のようなものが現れた。

それはウネウネと怪しく動き、そして徐々に人の形を模りだした。

真っ黒な人の形をした何か。そう呼ぶのがぴったりな物体。その左腕には同じく真っ黒のデュエルディスクのようなものが。

こいつが10階のボスで間違いないんだろう。

 

様子を見ていると、不意にその黒い人型(ボスと呼ぼう)はディスクにセットされたデッキからカードを引き始める。

 

(そうか、デュエルだ。)

 

俺も同じようにデッキからカードを2枚ドローする。

引いたカードを左手に持ち、お互いに相手を見据えて宣言する。

 

「デュエル!!」   【ボスLP1000  俺LP1000】

 

ボスは喋ることができないようなので、室内に響いたのは俺の声だけだ。

ディスクにチラッと目をやるも、先行表示は出ていない。

 

(相手の先行か。)

 

そう思っているとおもむろにボスはカードを攻撃表示で召喚した。

 

「………。」

 

黒機械Lv1 星1

A200 D300

 

モンスターが実体化し、相手の場に現れる。

相手はしゃべれないが、何となく言わんとすることは分かる気がする。多分今のは「モンスターを攻撃表示で召喚」という事だろう。

どうやらこのターンはそれだけらしく、俺にターンが回ってくる。

 

「俺のターン、ドロー!よしっ、俺は電気子ネズミを召喚。黒機械Lv1にアタックだ!」

 

電気子ネズミ 光 雷族/通常モンスター

A400 D100

 

俺の場に黄色い体に赤いほっぺの特徴ある形のしっぽを持ったネズミ?が現れる。

…見るたびに思うが、これ著作権的にいいのか?

まあ今はそんなこと気にしている暇はない。

電気子ネズミの攻撃で相手のモンスターは倒れて消えた。

 

【ボスLP800】

 

「ターンエンドだ。」

 

再びボスのターン。

ボスはモンスターを一体守備表示でセットしターンエンド。

何で最初のターンは攻撃表示で召喚したんだろうか?

 

「俺のターン、ドロー。」

 

竜の赤子 光 ドラゴン族/通常モンスター

A300 D300

 

「俺は竜の赤子を攻撃表示で召喚。バトルフェイズ!まず電気子ネズミでその伏せモンスターをアタック!」

 

黒魔法使いLv1 星1

A300 D300

 

セットモンスターは破壊される。

 

「続けて竜の赤子でダイレクトアタック!」

 

【ボスLP500】

 

「ターンエンド。(よし!手ごたえありだ。)」

 

今まで多くのプレイヤーたちを苦しめてきたこの10階のボスであるが、実は条件を満たせばデッキレベルが緩和され、A200などの弱めのカードも使用してくるようになる。

さらに先程の様に攻撃力が低めのモンスターを、守備表示ではなく攻撃表示で出してくることもある。

大概のプレイヤーはここぞとばかりに高攻撃力カードで押し切ってクリアしたようで、俺もここまでの流れからこのまま押していけば勝てると思い込んでいた。

 

しかし次のターン。カードをドローしたボスが召喚したのは

 

「………。」

 

黒戦士Lv1 星1

A500 D300

 

(なっ!?攻撃力500!?)

 

「…………。」

 

黒戦士Lv1の攻撃で電気子ネズミが倒され、その衝撃が俺を襲う。

 

「くぅっ!!」【俺LP900】

 

「くっそ!俺のターン、ドロー!!」

 

この局面をどうにかできるカードは俺のデッキの中には1枚しかない。祈るようにカードを引く。

 

「!!よっしっ!戦士の卵を召喚!」

 

戦士の卵 星1 地 戦士族/通常モンスター

A500 D200

 

「(ここは相打ちで相手のA500を倒しておくべきか…、すまん、戦士の卵!)俺は戦士の卵で戦士Lv1を攻撃!相打ちだ!そして竜の赤子でダイレクトアタック!」

 

【ボスLP200】

 

何という幸運。望んでいたカードを一発で引き当てた俺はすぐさま召喚し、心の中でカードに謝罪しつつも攻撃を仕掛ける。

ここで攻撃せずにお互いの場にA500が残った場合、次の相手のターンで運悪くA400出も出てきてしまったら目も当てられない。

相打ちにしておけば、自分の場にはモンスターが1体残り、相手の場は空になる。攻撃力が低めのカードも出しやすくなるし。

 

普通ならばこの流れ、確実に勝利が近づいてきていると思うだろう。

なんせ相手の高攻撃力カードは倒れ、残りLPは200。

代わりに俺の最高攻撃力カードも相打ちになってしまったが、相手が低い攻撃力のカードを攻撃表示で出してくれれば、一気に残りライフを削りきることも可能だ。

 

しかしこの時俺は、ある一つの可能性を見落としていた。

普通ならおそらく気付いていただろうが、事前に掲示板で情報収集をした弊害か、完全にあり得ないと思い込んでしまっていた。

 

目前に迫った勝利に、ついつい緩んだ顔を見せた俺の目に映ったのは

 

黒小竜Lv1 星1

A500 D400

 

「………、は?」

 

 

絶望だった。

 

 

 

先ほどまでの緩んだ顔が一瞬でポカーンとした表情に変わる。

 

「……。」

「くっ!?」

 

そんな俺にお構いもなく、ボスは召喚した黒小竜Lv1で、竜の赤子を攻撃する。

 

【俺LP700】

 

おいおいおいっ!条件を満たしたら相手のデッキが弱くなるんじゃなかったのかよ!

なんでA500が2体も出てきてんだよ!!

というか、俺の唯一のA500はすでに墓地。…これ、ひょっとして詰んだんじゃね?

誰だよ条件さえ満たせればボスはあんまり強くないって言ったの!?

 

嘆いても喚いてもこの状況は変わらない。

勝手に、相手のデッキに入っているA500モンスターは1体だけと決めつけてしまっていたのは俺なんだから。

 

「くそっ!ドロー!!」

 

もろ石 星1 地 岩石族/通常モンスター

A200 D400

 

いくらデッキ内最高値の守備力を持ったカードでもこの状況は覆せない。

手札にある他の2枚のカードも、この状況ではどうすることもできない。

 

魔物の骨 星1 闇 アンデット族/通常モンスター

A200 D100

 

ミニマジシャン 光 魔法使い族/通常モンスター

A200 D200

 

「…モンスターを守備表示でセット。…ターンエンド。」

 

もうこうなってしまっては刻一刻と迫る敗北をただ待つことしかできない。

掲示板でも似たようなことがあった(条件を満たしているのに理不尽なデュエル展開になった)人が数人いたようが、まさか俺もそのうちの一人になるとは…。

 

俺の心境を知ってか知らずか、ボスは淡々とデュエルを進める。

 

「………。」

 

黒ネコLv1 星1

A300 D400

 

黒小竜Lv1の攻撃でもろ石が倒され、黒猫Lv1のダイレクトアタックを食らう。

 

「ぐうぅっ!」 【俺LP400】

 

どうしようもできない。諦めの表情になった俺は最後のドローをすべくデッキに手をかける。

 

(しかたないんだ。ほかのプレイヤーにも同じ状況の人はいた。たまたま俺もそうなっただけ。たまたま相手のデッキの回りが良かっただけなんだ。次やればきっと勝てる。大丈夫、別に負けてもまた挑戦すればいいだけだ。別に一回ぐらい負けても…)

 

頭では抗いようのない現実に諦めようとしている。デッキ内にはもうA500に対抗できるカードは入ってないんだから。それでも手はプルプルと震え、中々カードを引くことができない。

 

(ここまでたまたま上手くいってただけなんだ。もうどんなカードが出てもここから逆転は無理なんだ。それは分かってる、分かってるんだけど…)

 

胸に熱いものがこみあげてくる。

今まで一度も負けることなく失敗することも無くここまでやってきた。

でもずっと勝ち続けるなんて無理だろう。いつかは負けることだってある。

たまたまそれが今回で、思わぬ形で突如現れたから心の整理ができてないだけで…

ここで何のカードを引いても同じこと。それは分かっている。分かっているけど…

 

「それでも…、それでも悔しい!!」

 

子供じみてるとは思う。駄々を捏ねてるだけなのは分かっている。そうしたところで未来が変わりようもないのも分かっている。でもこの時は、何故かそうしないといけない、そうする事こそが正解だという考えが頭を占めていた。

 

「俺は主人公なんて柄じゃない。良くてたまに出てくる脇役だ。でも、今は、今だけは言わせてくれ。今だけでいい。この瞬間だけでいいんだ!奇跡を!デッキよ、俺の思いにこたえてくれ!!ドッ、、ロー!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして奇跡は起こった。

 

 

ベビー・バード 星1 風 鳥獣属/効果(・・)

A200 D300

 

 

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