ダンジョンカードバトル   作:ノジー・マッケンジー

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117話

奴をどうにかできるのは現状俺しかいない。

そしてその方法は、俺自身を人柱にして奴と共に封印されること。

 

急展開に頭がうまくついて行かず固まる俺を見て、覚悟を決めたような顔で管理人が言った。

 

「………いや、でも君にばかり負担を掛けるつもりはない。こうなったのも僕たちの管理の甘さが原因だ。だから、、、僕は、この命を使う。」

「「っ!!!!?」」

 

え…?ど、どういうこと、だ…?

 

「だ、ダメだ!それだけは駄目だ!!」

「そ、そうだ、そこまですることは…。」

 

管理者たちが口をそろえて諫めようとしているが、俺からしたらチンプンカンプン。

命をつかう?使ったらどうなる?

 

「いや、それくらいの覚悟は必要だよ。前の時だってそうだ。僕たちは他人によって作られた平和の上に、胡坐をかいて座っていただけなんだから。」

 

分かるように説明してほしい。

 

「っと、ゴメンね、君には理解できない話だった。さっきは奴をどうにかする方法は君に頼むしかないって言ったけど、実は他の方法もあったんだ。それが僕たち管理者の命を使うという事。僕たちは自分で言うのもなんだけど、非常に強い力を持っている。その力を持って色んな世界の管理をしてたりするんだけど、今回は僕の命を使う、つまり死ぬことによってその力を純粋なエネルギーに変えるんだ。そのエネルギーを他の管理者に託すことで奴に対抗しうる力を手に入れることができるはずなんだ。」

 

そ、そうなのか。だが管理人が死ぬということは…

 

「だ、だがお前が消えれば、お前が管理していた世界はどうなる?いくら力を託してもそれが発揮できるのはこの戦いだけだぞ!?」

 

俺が聞きたいことを管理者が問うてくれる。

 

「残った人に任せるかなぁ…。もしくは、そういう運命だったと思って消えてもらうかなぁ…。」

「もし世界が1つでも消滅すればそこに又厄災のような奴がやってくる!その時はどうするつもりだ!?」

 

まじか。さらっと言ってるけど管理人が消えることで世界への影響が莫大じゃないか。

 

「………でも…、僕たちが知る限りこの厄災以上の奴はいない。たとえ他の厄災がやってきたとしても、今の管理者の力なら何とかなるはずでしょ?なら僕は、今ここでこいつを封じる事を優先する。」

「くっ…!だが、我々とて自分の管理する世界がある。すぐに向かうことは不可能だぞ!?」

 

話が平行線…と言うよりは、管理人が全く折れるつもりがなさそうだ。

このまま放っておけば勝手に自分の命を絶ってしまいそうだ。

 

 

俺は…

 

 

顔を上げれば向こうでは、他の管理者達が必死に厄災を押しとどめている。

視線をずらせば展開について行けず、又はどうしたらよいか分からず動けない他のプレイヤー達。

そして、覚悟を決めた顔の管理人と、それを止めようとする管理者。

さらに視線を下に落とせば、俺の腕のディスクに収まるカードたち。

 

 

 

 俺は…、俺は……

 

 

 

目を閉じ天を仰ぐ。

そしてそのまま数秒。

脳裏に浮かぶのはここに連れてこられてからの日々…

 

 

 

 

 

 

 

 ………うん…、そう、だよな…。

 

 

 

 

心の中である決意を固める。そして

 

 

「なあ、ちょっといいか?」

「………なに?」

 

俺の声色に、これから何を言うつもりなのかを感じ取ったのだろう。

困ったような表情で聞き返す管理人。

 

「俺…やるよ。封印…。」

「ダメだ。君がそこまで責任を負う必要は無い。」

 

予想通りすぐさま止められる。

だけど…

 

「…とりあえず、聞いてくれないかな?俺だってやけになって言ってるわけじゃなくて、一応考えて決めた事だし。」

 

その言葉に渋々ながら聞く体制をとる。

 

「あのさ、俺、ここに来てから色んなことがあったけど…、正直、楽しかったんだ。そりゃ最初は大変だったけど、それでも自分が頑張れば頑張っただけ生活はよくなって、努力が報われてるって感じがして…。それになんだかんだ言って、俺も元々ゲーマーだし、カードゲームだって好きだったしさ。だからこいつらが初めて実体化した時なんか本当に感動したし、ここまで一緒に戦って、共に過ごしてきた時間っていうのは俺にとって本当に大事な、最高の時間だった。」

 

ディスクに収まるデッキを撫でながら続ける。

 

「…元の世界ではさ、楽しい事なんてほとんどなかった。もうあんまり覚えてないけど、両親を事故で亡くして、唯一の家族の兄さんも今は遠くで一人暮らしして、会う事なんかめったにないし。だから正直元の世界よりもこっちでの生活の方が楽しかった。…勿論元の世界の方が便利な部分もあるけど、でも俺の人生の中で何が一番だったかって聞かれたら、『ここでの生活』って自信もって答えれる。それほどまでここでの体験は俺の中の大部分を占めてるんだ。」

 

管理人の顔をしっかりと見ながら俺は続ける。

…実はこの管理人にもかなり感謝している。ま、口にも態度にも出すつもりはないけどさ。

 

「元の世界に未練はほとんどない…。それに、もし永遠に封印って事になっても、…こいつらと一緒ならいいかな…って、思ってさ…。」

 

共にここまで戦ってきたカードたちを思い浮かべる。

 

「たとえ俺の代わりにあんたが犠牲になってこの場を納めたとしても、その後のしわ寄せが俺の世界に来ないとも限らないわけだし。」

 

そこが一番の問題でもある。

この管理人を犠牲にして元の世界に帰れたとしても、その後すぐに厄災に似た別の奴の影響を受けるようなことでもあれば、何も意味が無いから。

 

「俺一人が犠牲になるだけで収まるのなら…、俺は人柱になっても良い。……ソラには謝らないといけないけどね…。」

 

ソラならきっとわかってくれるはず。

それとも、何故自分も連れて行かなかったかと怒るかな?

 

 

俺の心を聞いて管理人は

 

「……うん。君の気持ちはわかった…。」

 

そう理解を示すも、

 

「…でも、これは譲れない。君が犠牲になる必要なんてこれっぽっちも無いんだから。」

 

頑なに自分の意見を曲げない。

そこに

 

「危ないっ!!!」

「「「「っ!!!??」」」」

 

 どごぉぉ!!!

 

厄災を抑えている管理者から警告が飛ぶ。

その一拍後、厄災の攻撃がこちらへと飛んできた。

 

「くっ!今はここで揉めてる場合じゃない!どちらにせよ早く何とかしなければ!」

「だから僕が!」

「いや、俺がやります!」

「あー!!もぅどちらでもいいから早くしてくr「どぉーん」ひいぃぃ!!!」

 

段々苛烈になる厄災の攻撃。

一向に決まらない話し合い。

厄災に対応している管理者達にも疲労の色が見え始める。

 

 

 

「…こうなったら仕方ない。」

「えっ…?」

 

管理人が呟くと同時に、急に体の自由が利かなくなる。

まるで全方向から体を押さえつけられているような感覚。

 

「結構力消費しちゃうからあんまり使いたくは無かったんだけどね…。」

 

おそらく管理人が何らかの力を使ったのだろう。

 

「ま、まてっ!!」

 

かろうじて動く視線を横にずらせば、管理人に向かって手を伸ばす前回優勝の管理者の姿。

だがその動きが緩慢になっていることから、彼も俺と同じように動きを制限されているのだろう。

 

「…ごめんね…。でも、僕はもう二度と君たちを犠牲にはしたくない。だから…!」

 

そう言って、ゆっくりと厄災の方へ向かい歩を進め始める管理人。

 

(くっ…!だ、ダメだ…)

 

何とか止めようとするも、体が自分の物ではないかのように一切動かすことができない。

 

(くっそ!動け!動けって!!!)

 

どれだけ力を込めても体は一向に動かず、喋る事さえできない。

流石に管理者の動きを完全に封じ込めはできないようだが、それでも緩慢になった動きでは管理人を止める事はできない。

 

 

このまま管理人がその命を散らすのを指をくわえてみているしかないのか…。

そう思ったとき、俺の左腕にはめられたデュエルディスクが一瞬光り

 

「…ちょっと待てよ。それじゃあ困るんだよ。」

 

俺のすぐ隣から、聞こえるはずのない声が聞こえた。

 

 

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