とりあえず現状の把握はできた。
…納得したかは別として。
「ごめんね、色々と頼りっぱなしで…。」
「…いいよ、もう。ここまで来たら何があっても同じだ。」
もう何とでもなれ。
「…にしても、君には本当に最初から最後まで驚かされっぱなしだよね。」
管理人が話題を変えてくる。
露骨な話題転換ではあるが、もうどう足掻いても変わらないなら暗い話ばかりするのは精神衛生上よろしくない。
あえてその話に乗る。
「最初からって…どこからだよ?」
「ん?最初は最初だよ。」
って事は、ここに来てすぐのころからか?
…俺なんかしたっけ?
「と言っても僕も、確信したのは途中からだけどね。」
えーっと?何の事だ?
「その様子だと君は気付いてないだろうけど、実は最初から君はある人物によって守られてたんだよ。」
ある人物…?
全く思い当たらない俺の表情を見て、管理人は薄く微笑みながら続ける。
「…少し昔話をしようか。今から何回か前の大会の時の話。あの時は今回みたいに厄災が~なんて事は無かったから、ごく普通に始まって、ごく普通に終わったんだ。」
昔を懐かしむように喋る管理人。
「その時のプレイヤーの1人にね、ちょっと変わったお願いをした人がいたんだ。彼は優勝はおろか、決勝大会に出場する事も出来なかったけど、でもそれなりに攻略は進めて絆エネルギーも沢山持ってたんだ。だから、元の世界に帰る時に何か追加で願いがかなえれるよ、って言ったら、…彼、何て言ったと思う?」
…なんだろう?
お金?特殊な力?それとも共に過ごしたメイドさん?
「ふふっ、その時彼はこういったんだ。『もし今後、俺の弟がここに連れてこられるようなことがあった時には、俺を弟の守護霊にしてくれ。』ってね。」
弟の、守護霊…?
「他にも彼が言ってたのは、自分の両親はすでに他界していて、家族は遠く離れて暮らす弟が一人だけだから、弟に何かあった時には守ってやりたいんだ。って。」
それって…もしかして…
「ま、とは言え、中々難しい注文だったからね。形としては、彼がここで過ごした記憶を全て忘れる代わりに、その記憶をもとにした霊体を作り、彼の弟が現れた時に自動で憑りつくようにしたんだ。ただ、いくら頑張ったからと言っても彼の貯めていたエネルギーだけでは、弟くんや他の人、物に干渉できるような力は付与できなかったから、本当に後ろについて見守るだけの存在になった訳だけどね。」
思わず後ろを向いて確かめる。
…俺の目には何も見えないけど、…そこにいるのか?…兄さん。
思わずそう呟いた瞬間、まるで頭の中にあった霧が一気に晴れたような、そんな感覚を感じた。
…そうか…。何度か見た夢の中で出てきたあの人は…。
兄さんが見守ってくれてたんだね…。
「もうわかったと思うから言っちゃうけど、彼、君のお兄さんなんだよね?最後まで君の事心配してたよ。まぁ、今君に憑いているのは、今言った通り彼の記憶をもとに作られた霊体だから、君のお兄さんであってお兄さんでは無い存在なんだけど、君が大切だという思いは一緒なんだと思うよ。」
嬉しい気持ちと照れ臭い気持ち両方が心にこみあげてくる。
「ただ、それが原因…っていうか、僕にとっても予想外の事が発生してね。それが君の異様なまでのカードとの親和性。本来ならあんなに早くカードの成長が発現する事なんてないはずないんだけど…、君にお兄さんが憑いていることによって、カードたちの…簡単に言えば好感度が最初から高くて、上がりやすくもあったみたい。」
そうなのか。確かに最初の頃は俺以外に成長が発現したプレイヤーがいなくて、掲示板でもガセ扱いされてたもんな。
「君のお兄さんも、カードの事はとても大切にしてたからね。当然と言えば当然なのかもね。でも君がここまでやってこれたのは、そのお兄さんの力だけじゃなくて、勿論君自身の力の方が大きいからね。お兄さんはきっかけを与えただけに過ぎないから。」
そう言ってもらえるなら、ここまで頑張ってきたことも報われる。
「とはいえ、僕にも彼が見えてるわけじゃないからさ。ふとした瞬間に彼の事を思い出して、そう言えば君が彼に何となく似てるなーって思ってたら、色々と共通する部分が出て来てさ。これは間違いないと思ったよ。…あ、君の私生活はちょこちょこ覗かせてもらってたからー。ねー。」
そう言いながら、ある方向に視線をやる管理人。
その視線の先には……、ソラ…?
……いや、その視線は困惑した表情のソラの向こう、家の扉に向かっている。
すると
…ギイィ…
「ひっ!!?」
と、扉が勝手に開いた!!??
「ぷぷっ…ゴホン、ごめんね、彼女は僕の配下なんだ。彼女が見聞きしたことを僕に報告してもらっててさ。あ、勿論見られたくない所は見るつもりなかったよ。例えば二人の初めての夜の事とk「「ゴホンゴホン!!」」……若いねぇ。」
丁度同じタイミングで咳払いをして誤魔化した俺とソラを見て、ニヤニヤした表情を見せる管理人。
「ま、黙ってたのは謝るけどさ、こっちの立場上必要な事だったと思って許してね。」
ぱちこんっ☆とウインクを決める管理人。
とりあえず無言で叩こうとしたら避けられた。
「っと、危ないなあ。ま、お互い今さらでしょ。今後は彼女にも帰ってもらうから、思う存分二人でいちゃいちy「(ギロリ…)」…はいはい。」
要らんことは言うな。このあと気まずくなるだろうが。
「じゃ、とりあえず話はこんなところかな?他に聞きたいことある?」
正直まだ頭の中で整理が出来ていない部分もある為、少しゆっくり考える時間が欲しい。
「…今のところは大丈夫、だ。」
「OK。まぁ何かあればすぐに言ってくれたらいいから。あ、そうそう、もう一つ忘れてたけど、君にあげるものがあるんだった。」
くれるもの?
「君は気付いてないかもしれないけど、大会が終ってダンジョンには入れなくなってるんだ。だからここで君が生活する為にDPを上げる。今回のお詫びも兼ねてると思って。」
そうだったのか。確かにダンジョンに入れなければDPが稼げないし、DPが無ければ生活が難しくなってくる。
…ダンジョンに入れたとしても、カードが無いけどな…。
「一応君たちが不自由しない為に、かなり多めのDPを入れておくから自由に使って。じゃ、今日はこの辺で帰るね。お茶とお昼ごちそうさま。」
そういって管理人は帰って行った。
管理人の話で、理解できたこと、できなかったこと、納得できたこととできなかったこと。色々あったけど、一つ言えるのは、今朝まで感じていた体のしんどさが少しだけ軽くなったような、そんな気がした。
説明回その2&フラグ回収