ダンジョンカードバトル   作:ノジー・マッケンジー

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常識

扉を出て、先ず俺を出迎えてくれたのは眩しい太陽の光だった。

手を顔にかざしつつ辺りを見渡すと、そこはビルが立ち並ぶオフィス街のような場所だった。

俺が今出てきた建物も、振り返ってみれば中々に大きなビルで、さらに非常によく目立つ巨大な看板が掛かっていた。

 

【 異世界ゲートはこちら!! 】

 

うん、確かにこれだけ同じようなビルが並んでたら迷いそうだもんね。

ご丁寧に、そのビルの前に立っている大きな看板には周辺の地図が載っていた。

 

「ふむ…、ここが大体中心地で、こっちが住宅街、で、こっちに店が並んでる感じか。」

 

頭の中に地図を叩きこむ。

こんなところで迷子になんてなりたくないしな。

 

 

さて、とりあえず周辺をウロウロしてみる。

といっても、先ずは最重要のカードショップを目的地としようと思うので、その道中の探索ということになる。

 

 

大通りに出ると、俺の元いた世界の様に、舗装された道路にたくさんの車が走っている。

またよく見てみると、あちこちに少し開けた場所が何ヵ所も有る。

どうやらあそこがデュエルスペースとなっているようだ。今現在もその場所でデュエルを行っている人が何組かいる。

 

その様子を横目に、大通りから脇道を抜けてカードショップへと向かう。

本当ならデュエルの様子を見学しておきたいんだけど、いかんせん今はカードがないからな…。

左手に嵌っているデュエルディスクを見ながら思う。

これはこの世界に来る前に管理人が新しくくれたものだ。前のはドッペルゲンガーが持って行ったからね…。

なので今の俺は、見た目はディスクを嵌めたデュエリストだけど、実際はカードを持っていない為デュエルが出来ない状態である。この状態で他のデュエリストに絡まれるのも嫌だからね。

 

まぁ、それを何とかする為に今こうやってカードショップへと向かっている訳だが。

 

 

 

 

 

ウロウロキョロキョロしながら道を歩き、カードショップへとやって来た。

建物にかかっている看板を見ると

 

 

 【 デュエル総合管理センター 】

 

 

うん、間違いないな。

受付のお姉さん曰く、ここは俺の世界で言う役所、ファンタジーで言うなら冒険者ギルドみたいなところらしく、この世界の色々な事務手続きはここで行うらしい。

で、カードショップもこの中に併設されているらしく、俺がデッキを持っていない事を告げると、ここで相談してほしいと言われた。

 

 

扉を開けて中に入ると、確かに雰囲気は役所に似ている。

しかし、そこに張られたポスターや幕には

 

【ワールドデュエルトーナメント開催まで あと○○日!!! 】

【今月の人気カード!】

 

みたいなことが書かれており、何となく違和感というか、なんだか不思議な感じがした。

 

 

とりあえず入り口にあった館内マップでカードショップの位置を探し、そこへ向かう。

【カードショップ こちら→】といった表記があちこちにあったので迷うことなく到着。

 

 

「お?いらっしゃい。…見ない顔だな、ご新規さんかい?」

 

店に入ると、40~50台ぐらいの良い声をしたおじさんが声をかけてくる。

 

「あ、はい。今日この世界へ来たばかりで…。」

「そうかいそうかい、ならじっくりしっかりと見ていってくれ。おっと、俺はここの店長をしてるもんだ。欲しいもんがあったら俺に言ってくれよな。」

 

店長さんだったようだ。まぁ、今のところ他に店員さんは見当たらないけど。

店長に促され、ガラスケースに入った商品を見て回る。

 

 

【ブースターパック 10枚入り 500DP】

【ランダム1枚パック 50DP】

【魔法パック 5枚入り 500DP】

【ブースターパック⑩ 20パック入り 9500DP】

 

 

ケースの中にはカードのパックと思しきものがズラーっと並んでいる。

 

「皆が良く買うのはこのブースターの10枚入りだな。魔法パックは5枚中3枚は確定で魔法カードが入ってるんだ。ランダム1枚パックは何が出るか分からないけど、たまに超レアカードが出ることもあるぜ。それから…。」

 

ほかに客がいなくて暇なのか、聞いてもいないのに色々と説明をしてくれる店長。

そのイケボを聞きながら今度はシングルカードのコーナーを覗く。

 

【ブラッドタイガー 星4 A1700 D1400  5000DP】

【古の魔剣士 星4 A1800 D1200  8200DP】

【装備カード 伝説の剣  10000DP】

 

 

 

…ん?置いてあるのはレベル4の通常モンスターと装備魔法カードばっかり…?

しかも結構高額だぞ、これ。

 

頭に?マークを浮かべた俺に、嬉しそうな声で話しかけてくる店長。

 

「お?いいだろそのカード。攻撃力が1800だぜ。すげぇだろ?他の店じゃあ中々ないぞぉ。」

 

自慢げに話す店長に俺の中の違和感が膨らむ。

 

レベル4のバニラと装備魔法しかないシングルカード

攻撃力1800を自慢するカードショップ店長

そして街中でチラッとだけ見えたデュエルの様子

 

…俺は意を決して店長に聞いてみた。

 

「あの…、他のカードは無いんですか?」

「あん?他のカードって…悪いがこれ以上攻撃力の高いカードなんて、シングルで出る事なんかまず無いぞ?」

 

勘違いしている店長に訂正を入れる。

 

「あ、いや、そうじゃなくて…。例えば効果モンスターとか、罠カードとか…。」

 

すると店長は「何言ってんだこいつ?」みたいな顔で俺を見る。

 

「罠カードって…そんなもん置いてあっても売れる訳ねえだろ?」

 

罠カードが…売れない…?

 

 

その後もお互いに噛み合わない話を続けることで、俺にとって驚愕の事実が判明した。

 

先ず第一に、この世界の人間、又他世界から来た人たちですら、カードのテキストが読めないらしい。それはモンスターだけに限らず、罠や魔法カードも全て。

カードに書かれている言葉がどの世界でも使われていない物だそうで、1部の研究者が日夜解析をがんばっているらしいが、未だに成果は出ていないらしい。

幸い、攻撃力・防御力の数値は読めるので、デュエルとして形にはなっているみたいだが…。この世界の人間はそれが当たり前なので、何の違和感も持っていないらしい。

なのでこの世界では、高攻撃力のモンスターで殴っていくという脳筋デッキが主流となっている。

 

だが、たった一人だけ、その世界の常識が通用しない人物がいる。

それが『デュエルキング』と呼ばれる人。

 

実は、ワールドデュエルトーナメントの決勝トーナメントで優勝しても、それで優勝賞品が貰えるわけではない。

優勝者はその後、このデュエルキングと戦い、勝った方が真の優勝者となる。

つまり、トーナメントの優勝者はそのデュエルキングとの対戦権を得る。というのが正しい表現である。

そして、ここ数年、挑戦者が優勝したという記録は残っていない。

なぜならば、このデュエルキングが強すぎるからである。

 

他のデュエリストが知り得ない筈のカードの効果をどんどん発動させ、相手を一方的に叩きのめす。

まるで彼だけがカードテキストを読めているかのようなカード捌きに、対戦者は絶望し、観客は熱狂する。

そして彼が使用したカードが、彼のデュエルを見て初めて効果を理解した一般デュエリストたちによってデュエル界に浸透していくのである。

 

「キングの使用したカードが店に並ぶことなんてまず無い。」とは店長の言葉。

確かに一般デュエリストからしたら、キングの使用カード=強いカードだもんな。

 

また、装備カードが人気なのは、テキスト内で唯一数字だけは読めるので効果を想像しやすく、又、実際にデュエルで使用してみることで効果を確かめやすいから、割とその効果が知られている物が多い為。との事。

さらには、大会中キングが放った一言。

 

「これ(装備カード)を装備した俺のモンスターには、貴様らの低レベルモンスターがいくら束になろうと勝てん!」

 

それにより、装備カードは爆発的な人気を誇ることになったんだって。

 

 

 

…これは思ったより重症かもしれないぞ、デュエルワールド…。

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