「バトルフェイズ。ホワイトマジシャンで、サンダーストーンを装備したエレキビーストに攻撃!ホワイトマジック!!」
ホワイトマジシャンが手に持つ白い杖をエレキビーストに向けると、そこからエネルギーが打ち出される。
ギャウウゥゥゥン…。
「ぐあぁぁあ!!」
相手LP4000→3200
その余波で吹き飛ばされる金髪。
「「あ、あにきぃ!!」」
その様子に取り巻き2人は駆け寄ろうとするも、今展開されているフィールド内には戦っている人間以外入ることはできない。
「ターンエンドだ。」
吹き飛ばされてうつぶせのまま動かない金髪に、俺はターンエンドを宣言する。
「あにき…。」
しかし一向に動く気配のない金髪。
いくらこのデュエルをリアルに感じるシステムとはいえ、人体に直接ダメージが入るわけでは無い。闇のゲームじゃあるまいし。
であるならば、奴が立ち上がらない理由は、立ち上がる気力を失ったからに他ならないだろう。
あれだけ散々見下して、馬鹿にしていた相手に此処までの反撃を食らう。それは彼にとってありえない事で、到底理解できるものでは無かったのかもしれない。
「…そのまま動かないのなら『戦う意思無し』と判断して、お前の負けになるぞ。」
だがそれでも、俺は手を緩めるつもりはない。
何故なら、俺はこれから先、いくらでもこのレベルのデュエリストと戦って行く機会があるからだ。
そのたびに相手の心がへし折れたのを気遣っているようでは、この世界の常識を変える事なんて到底不可能だから。
だから、たとえそれで相手の心を粉々に砕こうとも、それを辞めるつもりはない。
それにもし、その敗北から這い上がってくる奴がいたとしたら…。
それはこの世界を変える大きな1歩と成り得る。
俺の言葉にピクッと反応し、よろよろと立ち上がる金髪。
しかしその眼には闘志のかけらも宿っていない。ただ僅かに残っていた、負けたくないというプライドによって立ちあがっただけに過ぎない。
「…俺のターン…、ドロー…。」
力なくカードを引く金髪。
「あ゛、あにぎぃ~…。」
その姿に涙を流す取り巻き。
…意外と信頼関係はあるみたい?なのか?
カードを引いた金髪は、ゆっくりとした動きでそれを手札に加える。
そしてしばらく手札を眺め………?少しずつ顔色が戻ってる?
「くくっ…、くっくっく…。」
「あ、あに…き…?」
突然笑い出した金髪に取り巻きが不安そうな表情をする。
だがそんなものには目もくれず、金髪は1枚のカードを手に取る。
「俺はカードを1枚セット。クックック…、ターンエンドだ。」
この世の終わりのような表情をしていた金髪が、今度は急にニヤニヤ笑いだした。
その様子に、ついに頭がおかしくなったのかと心配し出す取り巻き。
(…普通に考えて、なんか良いカード引いたんだろうな。あの感じだと罠カードか?)
まぁ、その考えはほぼ筒抜けなんだが。
「なら俺のターンだな。ドロー。」
カードを引いて相手の様子を見る。
相変わらずニヤニヤした顔でこちらを見る金髪。
このタイミングで何もしてこないって事は、攻撃に対するカウンターだろうか。
まあいい、何にしても結果は変わらないし。
「バトルフェイズ、ホワイトマジシャンでエレキビーストに攻撃。ホワイトマジック!!」
俺が攻撃を宣言した瞬間、奴はその口を大きく三日月形に歪め
「はっはっはー!!ばーかっ!罠カード発動だぜ!!」
俺の想像通り、罠カードを発動させて来る。
「あ、兄貴の罠カード!?」
「すげぇ!すげえぜ兄貴ぃ!!」
先程までのお通夜ムードはどこへやら。一気に盛り上がる相手陣営。
「っへっ!聞いて驚け!!このカードの名前は『聖なるバリアミラーフォース』!あのデュエルキングが使う、超強力最強レアカードだぜぇぇえ!!!」
「やべぇ!まじやっべぇ!!」
「兄貴最強すぎるぜぇぇ!!!」
既に勝ちが確定したかのような大盛り上がりである。
「こいつはなぁ!俺が全財産はたいて手に入れた自慢の超絶レアカードなんだよぅ!!これでお前の攻撃モンスターは全て破壊だ!!!!」
奴の目の前に光り輝くバリアが現れる。
「はーっはっはっはー!!残念だったなぁぁあ!!!」
…いや、残念なのはお前の方だよ。
「この瞬間、ホワイトマジシャンの効果発動。1ターンに1度、手札を1枚捨てることで相手の発動した魔法・罠・モンスター効果を無効にして破壊する。」
俺の宣言に、今まさに攻撃をしようとしていたホワイトマジシャンはその動きを止めて、手に持つ杖を掲げた。
「ホワイトアウト。」
そして杖に嵌められた無色透明の玉から白い霧が広がる。
「な、何だ!!?」
一瞬の出来事。
このデュエルエリア内が一瞬白で包まれる。
そしてその場に色味が戻った時、奴の発動した聖なるバリアはその姿を消していた。
「…は?え?えっ…?」
状況を理解できない金髪に、現実を突きつける。
「ホワイトマジシャンの効果で聖なるバリアミラーフォースは無効化した。改めて、エレキビーストに攻撃だ。」
ポカンとした表情の金髪を他所に、ホワイトマジシャンの攻撃は放たれる。
ギャウウゥゥゥン…。
相手LP3200→1900
エレキビーストが破壊されたことでその余波が金髪を襲うが、彼の表情は変わらず、まるで自分のモンスターがやられたことにすら気付いていないようにも見える。
「さらに、俺はリバースカードオープン。速攻魔法『シンクロ解除』。」
シンクロ解除 速攻魔法カード
フィールドのSモンスター1体を対象として発動できる。そのSモンスターを持ち主のEXデッキに戻す。その後、EXデッキに戻したそのモンスターのS召喚に使用したS素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を自分フィールドに特殊召喚できる。
よくこんなカードが都合よく落ちていたと思うよ。
「これにより、場のホワイトマジシャンはExデッキに戻り、シンクロ素材となった3体のモンスターを墓地から特殊召喚する。」
傀儡子 A600
シンクロマジシャン A1000
シンクロサポーター A300
これで攻撃力はピッタリ1900。
「3体のモンスターでダイレクトアタック!!」
傀儡子の操る人形が、シンクロマジシャンの魔法が、シンクロサポーターの体当たりが、それぞれ金髪を襲い、
金髪LP1900→0
ビーーーーー
デュエル終了が告げられる。
「「あにきぃ!!」」
何が起こったのか分からない。そんな表情の金髪。
そしてそんな彼に駆け寄る取り巻き2人。
「………お、れが…、まけ…た……?」
「「あにきっ!!」」
膝から崩れ落ちる金髪を2人が支える。
…うーん…、どうしようか、これ…。
取り巻きの1人は必至で金髪に呼び掛けており、もう一人はものすごい顔でこちらを睨んでいる。
麗しきかな、舎弟との絆。
ただこの1場面だけ切り取ってみると、完全に俺の方が悪役に見えるんだけど。
…ま、いっか。
俺は悲劇のヒーロー、又は悪役にやられた主人公みたいな雰囲気を作り出している3人へ近づく。
「!な、何だよお前!!」
「そうだそうだ!これ以上兄貴に近づくな!!」
金髪を庇うように行く手を阻む二人。
「お、お前ら…。」
別にもうその金髪君に何かしようとは思ってないっての。ただ…
「……ん。」
「…?な、何だよ?」
無言で手を出す。
「そいつのデッキ、貸して。最初に言ったよな?俺が勝ったらカード貰うって?あ、心配しなくても全部は取らんっての。可哀想だし1枚だけにしとくから。」
彼らの目には、俺の姿が鬼か悪魔の様にでも見えた事だろう。