俺はターンを終了した瞬間戦慄した。
それは自分のプレイングミスに気付いたからではない。
なんと、羊の頭上に見える増援タイミングが分かるバーが……MAXになっていたのだ。
(おいっ!おいおいおいっ!嘘だろ!!?)
何度見直しても見間違いなどではなく、確実にゲージは一杯になっている。
実はこの増援システム。プレイヤー側が守備表示をして動きがなければ溜まりやすくなっており、さらに先ほどのターン、カードの成長に気を取られて気づいていなかったが、なんとターン開始時点でゲージが半分まで溜まり、守備表示モンスターを出しターンエンドしたことによって、残りの半分のゲージが溜まってしまったのである。
ただ、今の時点ではプレイヤー間で情報は出ていないことだが、プレイヤー側から攻撃を仕掛けることによって、(千日手状態にならないように行動を起こすことで※こちらの攻撃と相手の防御が同数値の場合は除く)増加量が緩和される為、先ほどのプレミさえなければ、増援バーも溜まることなく、羊たちを倒しきることができていたはずなのである。
いくら毒づいても羊は待ってくれない。
まずA400の羊が修行中の見習い天使を攻撃。
「メーッ!」
「!!」
見習い天使の防御力は300の為破壊されてしまう。
次に増援で現れたA500の羊。
どちらに攻撃するか考えているようだったが…
「メーッ!」
「ォォォ…」
選ばれたのは弱き力の悪霊。こちらも防御力は300の為破壊される。
「この瞬間、弱き力の悪霊の効果発動!このカードを破壊したモンスターの装備カードとなり、その攻撃力・防御力をこのカードの攻撃力・防御力の数値の半分ダウンさせる!」
【 スリープシープ A500→350 D800→650 】
当初の目論見通り、A500の能力を下げることはできたが…。
攻撃終了後、2体の羊はまた空へ向かって鳴き始めた。
メ~メ~。メ~メ~。
…ェ~、メェ~。
【 スリープシープ A600 D800 】
どこからともなく鳴き声が聞こえてきて、気が付けば2体の羊のそばにもう一体の羊が。
(攻撃力600!?また上がりやがった!)
せっかく弱き力の悪霊の効果を発動したのだが、それ以上に攻撃力の高いモンスターに出てこられては意味がない。
(このままじゃ…、いや、まだだ!まだ諦めん!!)
「俺のターン!ドロー!!」
さらに悪化したこのピンチ。だが最後まで諦めるつもりはない。
ボロット 星1 機械族/効果
A300 D300
自分の場のモンスター1体を対象に発動可能
手札のこのカードを対象カードの装備カードとして場に出すことができる
このカードが装備されたモンスターの攻撃力・防御力は200アップする
「(来たっ!!)俺は、手札よりボロットの効果発動!対象は戦士の卵!」
するとフィールドにボロットが現れ、日曜朝の特撮系番組に出てくる合体ロボットのごとくその体を変形させ、まるで鎧のような姿となり戦士の卵にガシンッ!と装備された。
【 戦士の卵 A500→700 D200→400 】
「よし!戦士の卵で攻撃力600の羊を攻撃!!」
「!!」
手に持った剣を羊に振り下ろし見事撃破。
「モンスター(恐竜ベイビー)を一体セットし、ターンエンドだ。」
これで戦況が動き始めた。
攻撃を仕掛け撃破したことにより、このターンは増援ゲージはほんの少ししか増えることはなかった。
これならいける!と思っていた俺の目の前で、2体の羊は守備表示となる。
いくら戦士の卵の攻撃力が700まで上がったとしても、結局は守備力800を突破しなければ倒しきることはできないのだ。
このままでは再び千日手状態となり、増援が追加されてしまう。おそらく今度はA700まで上がるだろう。
しかしそんなピンチにも俺の心は落ち着いていた。
(状況はよくないかもしれない。でも今は流れが来ている。今ならきっと!!)
羊が表示形式を変更したので俺のターンが回ってくる。
「(これで、決める!)ドローッ!!!」
レッサーワーウルフ 星1 風 獣戦士族/効果
A400 D200
1ターンに1度、自分のバトルフェイズ時に発動可能。
自分の場のこのカード以外の表側攻撃表示モンスターを一体墓地へ送る。
このカードの攻撃力は、この効果で墓地に送られたモンスターの元々の攻撃力分、バトルフェイズ終了までアップする。
「俺は、レッサーワーウルフを攻撃表示で召喚!そして戦士の卵で、弱き力の悪霊が装備されたスリープシープを攻撃!」
攻撃力・防御力ともに150ダウンしているため、戦士の卵の攻撃でギリギリ倒せる。
「そして、レッサーワーウルフの効果発動!戦士の卵を墓地に送ることで、その元々の攻撃力である500ポイント分このカードは強くなる!」
【 レッサーワーウルフ A400→900 】
戦士の卵の力を受け継ぎ、レッサーワーウルフはその体を巨大化させた。
その大きさは元のサイズの約2倍。
「とどめだ!レッサーワーウルフで攻撃!!!」
「ワオーーーン!!」
「メェェ……」
巨大化した狼の攻撃を受け、羊は霧となって消えていった。
「………っ。」
3体の羊がすべて倒されたのを見届け、少し気が緩んだ俺はその場で後ろに倒れこむ。
心地よい風が頬を撫でる中、傍で静かに佇む自分の大切な仲間たちの姿を見て「勝ててよかった…」と思う。
流石に今回は危なかった。
思い返すと完全なプレイングミスもあったし、タイミングよくカードたちが成長してくれなければ決して勝てない相手だっただろう。
それだけカードたちからは信頼してもらってると考えると嬉しく思うが、裏を返せばまだまだ自分は実力不足だということだ。
カードたちの期待を裏切らないように頑張らないとな。
しばらく寝転がったままで芝生のベッドをしっかりと堪能した俺は、羊たちが落としたカードを回収し、一旦拠点へ帰ることにした。
入手カード
スリープシープ 星2 獣族/通常モンスター
A400 D800
2枚
くちばし鳥 星2 鳥獣族/通常モンスター
A400 D700
1枚