「おぉふぅ…」
カードを確認して出た第一声がそれだった。
それもそうだろう。説明書にもあったが、出てきたカードは本当に最低ランクの物ばかりだったからだ。
ベビー・バード 星1 風 鳥獣属/通常モンスター
A200 D300
生まれたばかりの鳥
魔物の骨 星1 闇 アンデット族/通常モンスター
A200 D100
何かの魔物の骨
こんなカードばっかり。
で、一番強いカードがこちら。
戦士の卵 星1 地 戦士族/通常モンスター
A500 D200
まだまだひよっこにも満たない戦士
もろ石 星1 地 岩石族/通常モンスター
A200 D400
もろい石
最大攻撃力500の最大防御力400て…。
ちなみに魔法カードや罠カード、エクストラデッキなんてものは一切無い。
カードの枚数は20枚あり、全て違う種族。おそらく遊戯王カード初期の種族(ドラゴン族や魔法使い族等20種)が1枚づつのような感じがする。
まぁ、見て唖然とはしたが、流石にこんなデッキで最初から強敵と戦わされることは無いだろう…と思いたい。
もし初戦闘で攻撃力1900とか出て来たら管理者を呪ってやる。
気を取り直して、カードと一緒に出てきたデュエルディスクを左腕に装着し、デッキをセットする。
「カシャン」と小気味よい音をたててセットされたディスクを見て、デッキの内容に沈んでいたテンションが少し上がる。
「さて、じゃあとりあえず行ってみますか!」
両開きの白い大きな扉を開け、中に入るとすぐのところに下り階段がある。
それほど長くない階段を下りていくと、辿り着いた場所は洞窟のような場所だった。
所謂RPGで出てくる洞窟ダンジョンのような風貌で、火も無いのに中は丁度良い明るさになっている。
「…そうだ、先ずはカードを引くんだったな。」
改めて、異世界に来たんだな…と思いふけっていたが、先程の説明書に書いてあったことを思い出す。
・ダンジョンに入ったらまずカードを引く
・戦闘が始まったら、カードを1枚ドローできる
・魔物と出会ったら、モンスターカードをディスクにセットし、モンスターを召喚して戦わせる
・自分のターンになるとデッキから1枚カードをドローできる
・自分のターンになるとディスクが教えてくれる
色々と意味が読み取れない部分もあるが『試しにやってみればすぐに分かるよ☆』とも書いてあった為、とりあえず、なるようになる精神でやってみよう。
「カードを…ドロー!」
カードゲーム好きなら分かるだろうが、いざ自分がアニメや漫画の主人公たちみたいな事が出来れば、テンションが上がらずにいられるだろうか?いや無い!
1人ニヤニヤしながらカードを確認すると、
ベビー・バード 星1 鳥獣属/通常モンスター
A200 D300
生まれたばかりの鳥
「お前か…。まあしょうがない、とりあえず今回は頼んだぞ。」
出来れば攻撃力の高いカードに来てほしかったが、贅沢を言っても仕方ない。
カードを手にし、ゆっくりとダンジョン内を進んでいく。
分かれ道の無い曲がりくねった道を歩いていると、前から妙な音が聞こえてきた。
カラン… カラン…
何が起こっても良いように警戒を続けながら音の鳴るほうへと進むと、道の向うから現れたのは1体のガイコツだった。
「っつ!!!」
警戒はしてたものの、リアルなガイコツが動いているのを見て思わず後ずさる。
向こうもこちらに気付いているようだが、様子を見ているのか近づいてこようとはしない。
緊迫した空気に包まれる中、一向に向かってこないガイコツの様子を見て少し冷静さを取り戻す。
(…そうだ、戦闘に入ったらカードを引けるんだった。ということは…?今は俺のターンって事か?なら…!)
「俺の、ターン!ドロー!!!」
思いっきりデッキからカードをドローする。
引いたカードは
ミニマジシャン 光 魔法使い族/通常モンスター
A200 D200
簡単な魔法しか使えない見習い魔法使い
「っ!なら、俺は、ベビー・バードを攻撃表示で召喚!」
そう言いながら手札のベビー・バードをディスクにセットする。
すると俺の横に、カードの絵柄と全く同じ姿をした小さな鳥が現れる。
「ピィーーッ!」
その可愛らしい見た目に反して、やる気たっぷりの鳴き声を上げるベビー・バード。
「すげぇ…。」
カードが実体化する様を目の当たりにした事で、驚き、感動、興奮と様々な感情が混じり合い、思わず感嘆の声が漏れる。
だが今は戦闘中。視界の隅にガイコツを捉えたことで現状を思い出し、モンスターに指示を出す。
「ベビー・バードであのガイコツにアタックだ!」
「ピィーーーッ!!」
俺の指示に従い、ベビーバードはガイコツへ向かって一直線に飛んでいき、そしてそのまま体当たりすることでガイコツの頭部を弾き飛ばした。
頭部を弾かれたガイコツは、その身を霧のように変えそのまま消えていった。そしてガイコツがいた場所に1枚のカードが浮かんでいた。
初めての戦闘の余韻で少しぼんやりした頭のまま、そろりそろりとカードに近づき手に取ってみる。
ガイコツ 星1 闇 アンデット族/通常モンスター
A100 D100
元は何だったかわからない…
「……よわ。」
想像以上に弱いカードだったが、説明書きによると、このカードを拠点へ持って帰ればDPが手に入るはず。無くさないように服の胸ポケットにしまっておく。
ちなみに今の服装はこの世界に連れてこられる直前の格好のまま(ユ〇クロの胸ポッケ付き半袖・長ズボン)の為わりと動きやすい。
何はともあれ、戦闘については大体分かった気がする。両手で頬をたたき気合を入れなおして探索を続けていく。
再び洞窟を歩き出した俺の少し後ろに、宙に浮いたミニ・バードがついてきている。
一度召喚したモンスターは、倒されない限り約10分間は存在し続ける(カードはディスクにセットしたままの状態)らしい。そして10分経つと、カードは勝手に墓地へ送られ、実体化しているモンスターは消える。ただし戦闘中はその限りではない、とのこと。
つまり、一度モンスターを召喚したら、その戦闘後10分以内に次の戦闘に入ることができれば最初からフィールドにモンスターがいる状態から戦闘を開始できるということだ。
後ろを振り返ると、小さな羽を一生懸命動かし自分の後ろをついてくる小鳥。
「………。」
思わずなでくりまわしたくなるのを鋼の意思で抑え込み、歩を進める。
次の戦闘を有利にするために仕方ない…、仕方ないんだ!!
しかし、そんな我慢をしたにもかかわらず、10分以内に次の魔物に会うことはなかった。