拠点に帰ってきた俺は昼食を済ませた後、改めてウサギが落としたカードを眺める。
占い師 星2 魔法使い族/通常モンスター
A400 D500
「やっぱり11階より弱い…。」
12階で手に入ったカードはこの占い師と角兎(A500D300)の2枚だが、どちらも11階で手に入ったカードより弱い。
普通は階が進むごとに強いカードを落としそうなものだけど…。
まあ、まだ12階全てがそうと決まったわけではないし、考えるのは後にしよう。
で、今回手に入ったこのカード。
試しに確認してみると、なんとレベルアップの素材として使えることが分かった。
レベルアップできるのは初期デッキに入っていた魔法使い族カード『ミニマジシャン』。
AD共に200なので使うことは少なかったが、レベルアップできれば使用頻度も高くなりそうだ。
早速レベルアップさせようとパソコンの画面を開くが、もう1枚のカードがないことを忘れており取りに行くことに。
ちなみにレベルアップの画面を詳しく見て分かったことだが、初期デッキの20枚のカードは全て、レベルアップ(レベル1から2へ)に必要なカード枚数が3枚で、その傾向も似ている。
自身のカードと、1~9階で手に入る自身と同種族のカード、そして11回以降で手に入るカードの3枚だ。
9階までで全種族1種類ずつ、しかも全てAD共に100のカードしか出なかったから、何かありそうだなとは思っていたけど、そういうことだったんだな。
嬉々として掲示板に書き込もうとしたが、すでにその情報は出回っており、ただ単に俺が見逃していただけだった。ガックシ。
気を取り直して、どうせ他のカードをレベルアップさせるときに必要になるだろうからと、この機会に1~9階で手に入るカード全種類を取っておくことにした。
あれからそこまで日にちは経っていないはずだが、妙に懐かしく感じる洞窟内を走り回り、目当てのカードを回収していく。
今更10階までの魔物に遅れを取ることは無いが、流石に1階から10階までとなるとそれなりに時間がかかった。
帰ってきた時にはすでに辺りは暗くなっていた…と言いたいところだが、ダンジョン内なので暗いも明るいも無い。
早速パソコンでレベルアップの画面を開き、ミニマジシャンのレベルアップをはかる。
ベビーバード(現セイント・ハート・バード)の時と同じように、カードを挿入し、ペカーっと機械が光った後1枚のカードが飛び出してきた。
風の魔操士 星2 風 魔法使い族/通常モンスター
A800 D800
(おお!ADがかなり上がってる。)
想像以上の上り幅に嬉しくなる。
これなら今まで使用頻度が低かった分、ガンガン使ってあげることができそうだ。
しかし、セイント・ハート・バードはAD共に上昇値は500だったが、この風の魔操士はそれぞれ600上がってる。
通常モンスターカードだからなのか、他に法則があるのか、それとも例の相性の問題なのか。
掲示板を見ても各プレイヤーごとにまたそれぞれ違うので参考にならない。
ま、そういうもんか。と思考を切り替えて明日のために寝ることにした。
次の日
DPで転移の羽(100DP)を交換し使用する。
するといつものフワッとした感覚の後、12階の階段の後ろ、昨日転移石を見つけた場所へと転移していた。
「おおー、ほんとに転移できた。」
これなら1階1階出し惜しみせず攻略ができる。
だが逆に考えると、最下層近くは1日かけても階段までたどり着けないほど広いフィールドになるんじゃ…と、一抹の不安を覚える。
ま、その時はその時だ。と未来の自分にすべて丸投げをして、今は目の前のことに集中!と、探索を開始する。
さて、昨日は階段近くのウサギと戦っただけで終わったが、今日は試しに真っすぐ突き進んでみようと思う。
11階と同じなら、どこかの方角にオアシスのような目印になるものがあるだろうし。
あと兎以外に出現するモンスターの確認もしたいし。
というわけで、まずは階段を下りてそのまま真っすぐの方角にひたすら歩いてみる。
道中ウサギが数匹出てくるが、早速レベルアップした風の魔躁士が活躍してくれて、問題なく倒して進めた。
ちなみにここまででウサギが落としたカードは、ウサギと占い師の2種類のみだ。
そしてしばらく歩き、11階ならそろそろ蛇エリアを出るころかな?って頃に、新しいモンスターがいるのを発見した。
遠めに見えるその姿は…
「…カンガルー?」
二本足で立ち、おなかには大きな袋を持ち、顔を上げてキョロキョロと当たりを警戒しながら、時折首をかしげている生き物。
完全にカンガルーだった。
【 カンガエルー A500 D500 】
「…ネーミングセンスぇ…。」
名前のインパクトに気を取られている間に向こうもこちらに気づいたようだ。
「クッ、面白い名前しやがって!デュエル!」
お互いに近づき戦闘開始を宣言。
「俺は水蛇を攻撃表示で召喚。さらに手札より、ボロットの効果を発動。これで水蛇の攻撃力は200ポイントアップだ!」
水蛇 星1 水 海竜族/通常モンスター
A400 D100
【ボロット装備効果によりA400→600】
「カンガエルーに攻撃!」
「シャアァ!」
水蛇はその大きな口を開け、カンガエルーに噛みついた。
途端カンガエルーは耐え切れず霧となって消える。
うーむ、あっけない。
現れたカードを手に取り内容を確認する。
カンガエルー 星2 水 獣戦士族/通常モンスター
A500 D500
獣戦士族か。レッサーワーウルフの合成素材であれば良いが…帰ってから試してみよう。
しかし、やはり12階の方が出てくる魔物が弱いな。
何か理由があるのか、それとも偶々なのか…。
考えても答えが出るわけではないが、何となくすっきりしない。
管理人に問い合わせようかとも思ったが、何となく納得する答えが返ってこないような気がしたから止めた。
(とりあえず、カンガルーとウサギに対抗できるカードがデッキにある内は探索。無くなったら帰還って方向でいいかな。探索方法は11階と同じで、何方向かに一直線に進んでみるって事で。)
答えの出ない自己問答はやめて、今後の方針を考える。
(できれば早いこと階段を見つけたいが…、時間がかかるようなら、いっそのことDP貯めてスキルのレベルアップするか?)
一旦退却(10階より前へ)も視野に入れ、俺は階段を求め歩き続けた。
???
某所にて
「ふむ、ではみな着々と準備は進んでおるようだな。」
黒いフードを被った集団が大きな円卓を囲んでいる。
「おう、もちろんよ!俺のところなんてすでに20階をクリアしたやつまでいるぜ!」
中でも一番の大柄な者が自慢げに言葉を発する。
「なんと!?もう20階まで?」
その言葉に周囲の者の反応は様々だった。
「へっ!今回の優勝は俺様がいただきだな。」
腕を組み、さも当然のような物言いをする。
「何をおっしゃる。まだまだゲームは序盤。これからいくらでも巻き返しは可能ですよ。」
対角の位置に座した者が反論する。
「ふんっ!口だけなら何とでも言えるんだよ!」
「なにっ!?」
お互いに口だけでは済まなくなりそうな雰囲気となったところで待ったがかかる。
「まあ落ち着け。今はそのようなことで争う時ではない。」
どうやらこの中では地位が高い者のようだ。
「では、他に何もないようならば今回は解散としよう。………特になさそうだな。では解散だ。」
その言葉に、集まっていた者たちは次々と音も立てずに消えていく。
「………。」
そんな中、最後までその場に残る者が2人。その片方は、たった今解散を宣言した者だ。
「…おう、どうだ?」
「ん?さっきも言ったろ?ぼちぼちだって、ね。」
二人のやり取りから、気心知れた間柄だということが感じられる。
「そりゃ建前だろ?で、本当のところはどうなんだ?」
先程とは打って変わって砕けた物言いで、彼の者がついた嘘を問いただす。
「……はあぁ、本当はあんまり君にも言いたくはないんだけどね。」
本当に渋々といった風に喋りだす。
「いるよ、一人。とんでもないのが…ね。」
その言葉に顔一面笑みを浮かべる。
「やっぱりいるんじゃねぇかよ!よっし、じゃああいつの思惑は潰せそうって事でいいんだな?」
「う~ん、まだ今の時点では発展途上って感じだけどね。」
「でも可能性は高いんだろ?なら全然問題ねぇよ。」
「まぁそうなんだけどね。ただ何となく、カードとの親和性が高すぎるのが気になってね。」
「ん?そりゃ良いことじゃねぇか。何が気になるってんだよ?」
小首をかしげながら質問するも、その姿は全く可愛くない。
「ん~……、勘?」
その答えに目を細める。
「お前の感はよく当たるからな…。ま、今は気を付けて見ておくぐらいしか出来ねぇだろ。」
「まぁ、ね。」
「うっし、じゃ次は来月の会議の時だな!…あんまり考えすぎると禿げるぞ。じゃまたな。」
「うるさいよ。…って、もう行っちゃったか。」
一人残された者はその場で大きなため息をつく。
「何かいやーな予感がするんだよねー…。ま、今は彼に期待して待つとしましょうか。」
そしてその者もその場から消え去り、場は静寂に包まれた。