16階に降りた時、何かいつもと違う雰囲気を感じた。
何が違うかは分からないけど、なんとなく…空気が違う?そんな感じがした。
何とも言えない空気の中探索を開始するが、違和感がベッタリと背中にくっついてる感じがして何だか気持ち悪い。
それでも探索を続けるが、不思議な事に今日は一切魔物を見かけない。
普通ならマップ上に光点が見えてもおかしくないくらいの距離は移動したはずなんだが…たまたまか?
拭いきれない違和感と共に探索を続けているとようやくマップに魔物を表す光点が映った。
(お、ようやく出てきたか…?あれ、光の色っていつもこんなだったっけ?)
マップに映る光点は、普段映る物よりも大きく、その色もより濃いように見える。
魔物がいるであろう方向に顔を向けると、そこには遠目からも分かる程の威圧感を放つ、1匹の動物が見えた。
(まだ能力は見えないけど…、向こうは完全にこっちに気付いている…か?)
距離はかなり離れているはずなのだが、どうもこちらにゆっくりと向かってきている気がする。
何だか様子がおかしい気もするが、向かってきている以上逃げるのは無理だろう。
覚悟を決めてこちらも相手に向かって歩き出す。
少し進むと、いつものように魔物の能力が見えた。
【 草原の王 レオ レベル5 A1800 D1000 攻撃表示 効果モンスター 】
「なっ!!?(レベル5!?A1800だと!?)」
想像をはるかに超えたその数値に、思わず呆然と立ち尽くしてしまう。
(…無理だ、これは流石に…。せめて1000ぐらいなら何とかなるかもしれないが、1800…)
どう足掻いても超えることのできない数値に逃げることも忘れ、ぼんやりとその数字を見つめる事しか出来なくなる。
どのみちすでにロックオンされているので逃げることは不可能なのだが、頭の中は混乱し、何も考えられない状態となっていた。
そんな俺の様子に気付いたのか、圧倒的攻撃力を誇るそのライオンはその場で咆哮を上げ、こちらに向かって走り出した。
その声で我に返ったが、だからと言って何かできるわけでもない。
「……くっ…そ。どうせ、逃げられないん…だろ?…なら、もうやるしか…、くそ!やってやるよー!!!」
俺も奴に向かって走り出す。
互いに速度が上がった為、我彼の距離は一瞬で縮まる。そして
「(例え絶対に勝てないにしても、気持ちだけは負けねぇ!!)行くぞ、デュエル!!」
その距離が残り数メートルとなったところでお互いに足を止め、戦闘が開始される。
「俺のターン!ドローーッ!!」
手札:ボロット、スリープ・シープ、セイント・ハート・バード、弱き力の悪霊
初期手札3枚に先行ドローして計4枚。
勝ち目がほぼ無いといっても、決して負けたい訳ではない。何か勝利のための方法を見つけるため必死で脳を回転させる。
俺のカードで最大の攻撃力を誇るのは「風の魔躁士」の800。時点で「セイント・ハート・バード」の700だ。
モンスター効果を考えるなら、「レッサーワーウルフ」の効果で風の魔躁士をリリースすれば1200まで上がるし、「戦士の卵」も700以上にはなる。
しかしそのどれも、奴の攻撃力には届かない。
「ボロット」の装備効果で200アップ、「弱き力の悪霊」の効果で相手を150ダウンさせても、それでもまだ足りない。
(悪霊でダウンさせてウルフにロボ装備でもまだ250足りない…ん?まてよ?確かあのカード…)
どう足掻いても足りない火力を何とかして捻出しようと頭を悩ませていたが、ふと一枚のカードを思い出す。
(…確か邪蛇は相手を守備表示にする効果があったんじゃなかったか?)
11階で初めて手に入れたカード。当時は魔物が落とした初の効果カードだったが効果が微妙だった為ぬか喜びとなった記憶がある。
(雑魚戦では効果を使うことがなかったから詳細まで覚えてないけど、相手を守備表示にさせる効果だったのは確かなはずだ!)
最初に感じた効果の微妙さと、雑魚戦では使う必要がなかったこともあり、はっきりと内容は覚えていない。が、今の状況を何とかできるカードだということは確信した。
(なら今は耐え時だ。幸い悪霊が手札にあるし、相手が守備表示なら突破できるカードの組み合わせは何通りかある。これはワンチャン行けるぞ!)
希望という名の細い糸を見つけ出し、目には闘志が宿る。
「俺はモンスターをセット。ターンエンドだ。」
場にセットしたのはもちろん弱き力の悪霊。
ライオンは一瞬で距離を詰めセットモンスターに飛び掛かった。
裏向きでセットされていたカードがひっくり返され、モンスターが現れる。
相手はその鋭い爪で切り裂くが、
「この瞬間、モンスター効果発動!弱き力の悪霊は戦闘で破壊された時、破壊したモンスターの装備カードとなり、その攻撃力・防御力をダウンさせる!」
破壊されたはずの悪霊が自身を葬ったライオンに纏わりつく。
「グルルゥ…。」
【草原の王 レオ A1800→1650 D1000→850】
よし、ひとまず第一段階はOKだ。
再び俺のターンが回ってくる。
「ドロー!よし、俺はモンスターをセット。ターンエンドだ。」
今ドローしたカードを場にセットする。
先ほどと同じくモンスターをセットしただけの俺に対し、奴は若干の警戒心を持っているようにも見えるが、セットされたモンスターを破壊すべく、再びその鋭い爪を振るう。
「セットモンスターは雑草魂!このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない!!」
雑草魂 A200 D300
切り裂かれても雑草はまたそこから芽を出し成長する。
奴は倒せるはずだったモンスターが倒せなかったことに苛立ちを感じている様子で、俺の回りをウロウロしている。
そしてまた俺のターン。
「ドロー。(く、まだ蛇は引けないか…。それにこのターンは…。)」
引いたカードは風の魔躁士。
「モンスター(スリープ・シープ)をセット。ターンエンド。」
キーカードになるであろう邪蛇のカードがドローできず、守備表示モンスターを並べ時間を稼ぐ。
しかしこのターンは守備表示モンスターを出し続けて3ターン目。
俺がターンの終了を宣言した瞬間、ライオンの頭上に見える増援バーのゲージが満タンになってしまった。
(増援に出てくるモンスターの能力がどれ程かで、先の展開は大きく変わるな。)
もしこのライオンと同レベルの増援が出てきた日には、もう完全に思考放棄して諦めるしかなくなる。
そうならないことを願いつつ様子を見ていると、奴は予想外の行動に出た。
「グルゥ…グルオォオオ!!!!」
空に向かい大きな雄たけびを上げた。
羊の時も鳴き声で増援が来ていたので、今回もそうだろうと思って見ていたが、なんだか少し様子がおかしい。
確かに増援は現れた、ちっさな子ライオンだった。
【子獅子 A500 D500 攻撃表示 通常モンスター】
思ったより能力が低いことに安堵するのもつかの間。まだ俺にターンが回ってきてないこと、そして奴の頭上に見える増援ゲージが0に戻っていないことに気づく。
(え?どういう…)
答えが出る前に、再びライオンは雄たけびを上げる。
するとさらにもう1匹の子ライオンが場に現れる。
(まさか!?召喚能力を持ってるのか!?)
そう気づいたとき、ライオンの能力表示に変化が現れた。
草原の王 レオ 星5
A1650(1800) D850(1000)
攻撃表示 効果モンスター
①1ターンに1度、「子獅子」を場に特殊召喚できる。この効果を使用したターンこのカードは攻撃できない。この効果で特殊召喚された子獅子は、召喚されたターンは攻撃できない。
(まじか…。相手が効果を使用したから詳細が分かるようになったって事か?)
実際に人間同士のデュエルでは、知らない効果のカードは場に出た時点でお互いに説明・確認をするだろうが、アニメなどではその効果を発動するまで説明がされないことも多い。
今は人対人ではないので、こういう形になったのだろう。
でも今まで戦った効果モンスターではこんな表示は無かったような…?
まあいい、これは後で管理人に確認だ。
しかし、これで相手の場には一気にモンスターが3体になった。
予想外の効果に動揺するが、俺にできる事はデッキを信じてカードを引くことだけだ。
効果を使用したため相手のターンが終了し、こちらのターンとなる。
「俺のターン、ドロー! っ!」
邪蛇 星2 爬虫類族/効果
A300 D300
このモンスターが攻撃を行ったターンのエンドフェイズ時、攻撃を受けたモンスターが破壊されなかった場合、そのモンスターは守備表示となり表示形式を変更できない。この効果は次の自分のスタンバイフェイズまで続く
ついに待ち望んでいたカードを引いた!
そしてその効果をよく確認すると、ピンポイントすぎじゃね?と思えるほどのメタ効果だった。
(これなら…お、ひょっとしてこのまま勝てるんじゃね?)
例えばこのカードを召喚し、レオに攻撃を仕掛けた場合、邪蛇は破壊され俺自身もダメージを受けるが、その代わり、次の自分のターンが終わるまで奴は守備表示のままとなる。
これなら、弱き力の悪霊の効果で能力ダウンしている今、ボロットの能力アップ効果を合わせれば手札のセイント・ハート・バードで倒せる!!