ダンジョンカードバトル   作:ノジー・マッケンジー

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39話

それは本当に偶然だった。

 

ただ小さな偶然の積み重なりが奇跡的に繋がり、本当にたまたま(・・・・)この状況が出来上がった。

 

眼前に迫るは俺の背丈ほどもある大きな岩の拳。

 

「どうしてこうなった…。」

 

俺の嘆きは轟音に消し去られ、後に残ったのは、拳の形通りに穴を空けた地面と、その拳の主たる巨大なゴーレムのみだった。

 

 

 

 

時は遡り、22階にたどり着いた次の日の朝。

 

俺は昨日掲示板で見た内容に影響され、何か変わったことがしたい!という考えが大きく頭を占めていた。

とはいえ、すぐに思いつくようなことは誰かしらがすでに行っており、新鮮味に欠ける。

かといって、今までさんざん見てきたDPの交換リストを眺めていても、すぐに良い考えが出てくるはずもない。

諦めていつも通り探索を行えばいいのに…

もしこの場に他の誰かがいたならばそう思ったことだろう。

 

しばらくリストと睨めっこをしながらウンウン唸っていたが、やはり良い案?は思いつかず、苦し紛れに前から気になっていた『ジャンプ』のスキルを取った。

 

掲示板情報では、「ジャンプできる高さが増える」スキルらしく、某赤い帽子のおひげを生やしたキノコを食べれば大きくなる配管工の如く、自分の背丈以上のジャンプ力が身につくらしい。

 

今攻略中の山フィールドなら、山頂でジャンプすればもっと周りが良く見えるというメリットもあるし、このスキルは無駄にはならない!………はず。多分。おそらく。

 

 

ではでは早速スキルの効果の確認をしましょ。

転移機能で22階へ。

 

掲示板情報によると、スキルレベル1で約2m程ジャンプでき、レベル2では約4m、3では約8m、4で約15m、5で約30mと距離が伸びていくらしい。

勿論、着地耐性(で言葉あってるのかな?)もつくらしく、高い所から落ちても平気になるらしい。

そりゃそうだよな。着地もスキル補正がないと、ジャンプするたびにスプラッターな映像をお見せすることになってしまう。

 

今俺のジャンプスキルは2(必要DP300)なので、約4mジャンプできるはず。

4mって言ったら、元の世界の家(平屋)の屋根までは軽々飛び上がれるくらいかな?

 

周りに何もいないことを確認し、思いっきりジャンプしてみる。

 

「おおぉっ!!?」

 

例えて言うなら、絶叫系のアトラクションで下から上へと一気に引き上げられる感じ。

想像以上の体の動き、想像以上の景色の移り変わりに少し感動する。

頂点へと達した後は、重力に引きずられ落下。そして綺麗に両の足で着地。

 

「おおーー。」

 

1人でポーズを取って遊ぶ。

 

ひとしきり試して満足した後で、ようやく22階の探索を開始。

ここも21階と見た目は同じで、赤茶けた山肌が続く。

ちょいちょい加減したジャンプ(2mくらいの)を挟みながら進む。

 

しばらくしてマップ上に現れた赤い光点の元へ行くと、そこには21階に現れたのと同じ『アホウドリ』の姿が。

 

(22階は21階と同じ魔物が出てくるパターンか?)

 

攻撃表示だった為サクッと倒して先に進む。

しばらく進み、ゴロンゴロンと最近聞いたばかりの音が聞こえてきたので向かってみると、予想通り守備表示の『転がり岩』。

 

(手札にはレオ…。守備表示を倒すのが3枚目ドロップの条件って可能性もあるか…?)

 

試しに倒してみるが、手に入ったカードは『転がり岩』。

うーむ、ドロップ条件が分からん…。

 

 

そんなこんなで探索を続け、一つの山頂で一休み。

アイテムボックスから取り出した水分でのどを潤しつつ眼下を眺める。

 

…これって、山頂からジャンプしながら進んだら、かなり早く山の裾まで行けるんじゃ…?

 

ふと思いついたので、早速試してみることに。

多少勢いをつけて、山頂から斜め前に向けて…ジャンプ!

山頂から4m程高いところまで体が浮いたら、後は運動エネルギーに沿って斜めに落ちていくだけ。

 

…そういや着地の事考えてなかったけど、大丈夫…だよな?

 

斜めに落ちる事しばし。段々地面が近づいてきて、ついに足裏が地面に触れる。

 

 

 ずざざざざああぁぁぁぁあああ!!!

 

 

砂埃を巻き上げ、無事着地?する。

振り返れば山頂はかなり遠く。前を見れば山の裾までもう少しだ。

 

「…こりゃかなりのショートカットになるぞ。」

 

きちんとスキルが働いてくれたみたいで問題なく着地。

ただ靴底にかなりのダメージが入ったもよう…。

 

しかしそこに目を瞑ればかなり有効な移動方法になるぞ。

 

 

一旦今の山を降り切って、次の山へ進む。

そこから山頂方面に向かってせーのでジャンプ。

ぴょんっと斜めに飛び上がり、一番近い地面へ着地。

下を見ると大体4m。

ジャンプを繰り返せば4mずつ上へ上ることができるが、今の身体能力(体力増強・俊敏性増強 込み)を考えたら、普通に登るのとどっちが早いか分からないな。

 

何にせよ、他でも応用できそうな移動手段が出来た。

 

ピョンピョン飛んで、時には歩き、時には戦い山頂へ。

そこに待っているのは1つの山を登り切った達成感と、今から始まる浮遊移動の爽快感。

 

「さーて、もう1回行こうかな!」

 

一度経験したら何だか癖になる。

空を飛ぶ(跳ぶ)体験と、そのスピード感に病みつきになりそう。

 

先程と同じように多少の助走をつけ、空へと飛び出す。

 

「いいやっほーーーーーい!!!」

 

2度目ともなれば慣れたもので、他に誰もいないのを良いことに、大声を上げながら空中を楽しむ。

 

しかしこの時俺は、ある物を見落としていた。

山頂についた時点で一度確認すればこんなことにはならなかっただろうに。

しかし俺は、先程感じた爽快感を早く味わいたくて、滑り台のてっぺんにたどり着いた子供の如く、到着したと同時に空へと飛び出してしまった。

 

そして、飛び出した後に気付く。

自分の進路上に、ゴロンゴロンと転がる岩の塊がいることに。

 

 

「げげっ!!??」

 

 

今さら気付いてももう遅い。

飛び出した勢いのままどんどんと岩へ近づき…

 

 

 ドゴオォォ!!!

 

 

何とか足の裏を岩の方へ向けることに成功した直後(ライ○ーキックのようなポーズになってしまった)足に固い感触が伝わり、岩はバットで打たれた野球ボールの如くポーンと飛んで行ってしまった。

 

俺はというと、足の裏で岩を踏んだことが着地とみなされたのか、その場で斜め下への運動エネルギーは消え、地面に尻餅をつく。

 

「あ痛ぁぁ!!」

 

ぶつけたお尻をさすりつつ立ち上がら、岩が飛んで行った方向を見ると、かなり遠くまで飛んで行ったようで、向こうの方でゴロゴロと転がり落ちているのが見える。

 

……うーん、交通事故…。

 

次からは気を付けないとなーと軽く考えていると、思いもよらぬメッセージが流れてきた。

 

 

【プレイヤーがモンスターへ直接攻撃を行ったことを確認しました。規則により特殊エリアへと転送します。】

 

 

「え?特殊エリ…」

 

 

全てを言い終わる前に俺は強制的に転送され、

 

「…ア?」

 

気がつけば、そこはうす暗い空間で、目の前には巨大な石の人形、ゴーレムが立っていた。

 

 

【モンスターにプレイヤーが直接攻撃することは禁止されています。もし確認された場合には特殊エリア『お仕置き部屋』にて罰を受けて頂きます。】

 

 

………えー…っと…?

 

 

【ちなみにこの情報は掲示板に書き込むことを禁止致します。もし見つかった場合には即刻削除、並びに再びお仕置き部屋へ強制転移となります。】

 

 

あの…状況についていけてないんですけど…?

 

 

【では、お仕置き開始です。やっちゃってください。】

 

 

その言葉を皮切りに、目の前のゴーレムは動き出す。

俺をスッポリと握りこめそうな程大きい手を握りしめ、大きく振りかぶる。

 

 

…うーん、俺はただジャンプしてただけなのに…

 

 

そして俺目掛けて勢いよく振り下ろす。

 

 

「どうしてこうなった…。」

 

 

その嘆きを聞くものは誰もいなかった。

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