あれから、ほんのすこーしだけDP稼ぎをして(ほ、本当だよ!)、ついにメイドさんを召喚(?)する時がやって来た。
…やべぇ、何か緊張する…。
先ずはオプションの購入。そしてミスが無いか念入りに確認して、『メイド』カードを機械にセットする。
【使用するオプションを選択してください】
俺が購入したオプションの一覧が現れたので全て選択。
【これより実体化を行います。以降オプションの追加・削減はできませんのでご注意ください。実体化を実行してよろしいですか?】
俺は少し震える手でYESを選択する。
すると、機械はカードがレベルアップする時以上の強い光を発し、俺は思わず目を瞑る。
しばらくして光が収まった後、翳していた手を降ろしそーっと目を開ける。
「………っつ!!!?」
そこには、俺が思い描いていた通りの美少女がこちらを見つめていた。
「……ぉ…ぉ…。」
驚きと感動のあまり声にならない声がでる。
するとその美少女は、体の前に手を揃えてぺこりとお辞儀をして、その後俺の目を見つめながら言った。
「これよりマスターのお手伝いをさせて頂きます。宜しくお願い致します。」
そして再び深々とお辞儀をする。
「…あ、ああ…、よ、よろしく。」
俺はそう言うのがやっとだった。
ある程度目鼻立ちの整った、アイドル級とまでは行かずともクラスのマドンナレベルの顔。
肌は白く、髪は少し茶色がかったセミロング。
体つきは痩せすぎもせず太りすぎもせず程よい肉付きで、胸は服の上からでもそれなりに大きいことが分かる程の膨らみがある。
ロングスカートタイプのメイド服を着こなし、こちらを見つめるのは透き通った青い瞳。
完全にどストライクの女の子が今俺の目の前に…!!
感動のあまりフリーズしていた俺を不思議に思ったのか、彼女は俺に訪ねてきた。
「マスター、いかがなされましたか?」
「…!!はっ!?な、何でもない!うん、何でもないよ!!」
慌てて取り繕う。
しかし彼女は特に気にした様子も無く淡々と言葉を紡ぐ。
「そうですか。それでは先ず、大変恐縮ですが私に名前を付けて頂きたく存じます。」
な、名前?そ、そうだよな、名前が無いと呼ぶ時にも困るし。
しかし名前かぁ…。ど、どうしよう??
「なまえ…なまえ、うーん、何かこんな名前が良いとかはあるの?」
とりあえず聞いてみる。
「私はマスターのサポートの為に生み出された存在です。ですのでマスターの呼びやすい名前を付けて頂くのがベストであると考えます。」
やはり淡々と答える彼女の声と表情に若干の違和感を感じるが、今は事前に聞いていた通り『感情表現に乏しい』状態なのだろう。
そ、そうか…。じゃあ、えーっと…
「…じゃあソラっていう名前はどう…かな?」
青空のような綺麗な色の瞳を見て思いついたが、あまり自信がないので最後の方はだんだん声が小さくなっていく。
「かしこまりました。ではこれより私の事はソラと御呼び下さい。」
すんなり決まってしまった。
「じゃあ、ソラさn「ソラと御呼び下さい」…。」
「………。」
無言の圧力を感じる。
あれー?最初は感情の起伏に乏しいって話じゃなかったっけ?
「じゃ、じゃあ…そ、ソラ…。」
「はい、マスター。」
なんだか気恥ずかしい。
「と、とりあえず君が何ができるのか聞かせてもらってもいいかな?」
彼女の視線は俺の顔を捉えて離さない為、思わず目を泳がせながら喋る。
「はい、主にマスターの身の回りのお世話をさせて頂きます。具体的に言いますと、食事の準備や部屋の清掃等の家事がメインとなります。」
この辺は事前情報通りだな。
「分かった。じゃあ、一回拠点の中を案内しようか。家事をしてもらうにも色々場所とか見てもらわないといけないだろうし。」
そう言って彼女を拠点の生活スペース内へと案内する。
彼女に背を向け先に扉の中に入るが、正直さっきから心臓がバクバクいって止まらない。
きき、緊張が…と、止まらない…!!
そんな俺の心情を知ってか知らずか、彼女は素直に俺の後ろをついてくる。
「ま、まずはここがリビングで…。」
煩いくらいに鳴り響く心臓の音が彼女にも聞こえてるんじゃないかと心配しつつ、俺は説明を始めた。
現在俺の拠点は、これまでのDP稼ぎによってかなり良い生活ができるようになっている。
さらに、メイドさんと共同生活をするに当たり、できるだけ良好な関係を築きたいと思い(内半分は下心)、彼女が不自由しない様にと、掲示板でメイドの話題が出たころから少しづつ内装を綺麗に模様替えしてきた。
DPを使用すれば部屋位置を変更したり、廊下や扉を付けたりもできるので、ハウジング系?のゲームが好きな人はかなり嵌るんじゃないかと思う。
ここに来た当初はDPの稼ぎも少なく、パソコンがある部屋が普段の生活スペースになっていたが、現在では、パソコンがある部屋と生活スペースを完全に分けてある。
一応このパソコンがある部屋をこれまで通り『拠点』と呼んで、生活スペースを分かりやすく『家』と呼ぶことにしようと思う。
まず、拠点内のダンジョンに続く扉がある壁と対面の壁に、家へと続く扉があり、その扉を開くとそこそこ大きな部屋がある。
部屋の奥側はシンクとキッチン用品が並び、食料の無限箱等も置いてある。
部屋の中央にはフカフカのソファーと机があり、ここでくつろいだり食事をとったりする。
…こういう部屋って何て呼ぶんだっけ?LDK?
日本の様に靴を脱ぐスタイルではなく、靴のまま生活するスタイルだが、一応扉の中ではスリッパに履き替えて過ごしている。
設置してあるソファーや机、キッチン用品を含め、家の中の物は全て交換リストの中で、上から2番目のレベルの物なので、どれもかなり質は良い。
これより上のランクになったら豪邸にあるような質になるし、必要DPも桁が1つ違うから替えるにしてもまだまだ先の話になりそうだ。
で、玄関(扉)から向かって右側の壁に扉が1つあり、その先の廊下を挟んでさらに扉が3つ。お風呂が1つとトイレが2つだ。
廊下を間に挟んだのは、音や視覚的な面で気になるかなと思ったから。
お風呂には大きな脱衣所もついており、そこから小部屋(洗濯物干し部屋)に続いている。
トイレが2つなのは、何となく男女で分けた方が良いかなと思って1つ追加した。
玄関から向かって左の壁には扉が2つ。
1つは俺のプライベートルーム、所謂寝室で、もう一部屋は彼女の部屋にするために用意した。
流石に同じ部屋でとか、ましてや同じベッドで寝るとかは、いくらメイドさんでも困るんじゃないかと思って、彼女用に1部屋追加することにしたんだ。
べ、別に期待したりなんかしてないんだからね!
とりあえず一通りぐるっと回って部屋の場所、物の場所、俺の生活スタイルなどを説明していく。
そして最後に、ベッドやクローゼットなど一通り家具の揃えてある彼女の部屋(予定)を見てもらっていると、不意に彼女が俺を呼んだ。
「…マスター。」
「ん?何?」
「このような環境をご用意頂き、誠に有難う御座います。」
「え、いやいや、そんな大したことじゃないから。一緒に住むことになるならお互いに過ごしやすい環境を作りたいなって思ってしたことだし…。」
「いえ、こんなに素晴らしい環境でお仕えさせていただける事、本当に嬉しく思います。」
そこまで喜んでもらえるなんて思っていなかったので、なんとなくこちらの方が慌ててしまう。
「マスター。」
そして彼女は改めて俺の方に向き直り、真っすぐに目を見つめながら言った。
「私『ソラ』は、今後マスターの為に尽くす事を誓います。これから…どうぞ宜しくお願い致します。」
深々とお辞儀をするソラ。
そして顔を上げ再び俺と目が合うと、フワッと微笑んだ。
「!!?」
思わず顔をそむける俺。
おそらく顔は茹蛸の様に真っ赤になっていることだろう。
こ、この笑顔は反則過ぎる!!!
見事にその笑顔にノックアウトされた俺は、半分意識を飛ばした状態で思った。
…あれ?感情表現に乏しい設定って、…どこ行った??