扉を開き中に入る。
部屋の大きさは体育館の半分くらいか?中央にはデュエル用のリングがある。
そして部屋に入った瞬間、手元から「ピンポン♪」と音が鳴った。
【 次の階へ進むには この階で 10 勝 すること (0/10)】
今俺が手に持っているのは受付で渡された1枚の真っ白なカード。
そこに文字が浮かび出てきた。
「部屋に入ると、このカードに先に進むための条件とかが出てきますから、きちんと確認してくださいね。」とはガイドさんの言葉。
ふむ、分かりやすくていいね。じゃあ早速試してみますか。
俺はそのままリングへと上がる。するとおなじみの黒い靄が現れて人の形へと変化していく。そして
「お、今度の相手はお前か。宜しくな!」
「(しゃ、喋った!?)あ、ああ、よろしく…。」
現れたのは1人の男性。歳は俺と同じくらい…か?
突然の出来事に驚きつつ、差し出された手を握る。
(そうか、対人戦の練習で、以前の参加者のデータを使用っていったらこうなるか…。)
限りなく本人に近いが決して本人ではない、データで作られた存在。
意表を突かれた形で驚きはしたが、分かってしまえば逆に、久々の対人戦に心が躍る。
「いいデュエルにしような。」
「ああ!!」
お互いにディスクを構え、手札を4枚引く。
41~45階は手札4枚だったな。さらにバトル場もモンスターゾーンが3か所と、魔法・罠ゾーンが3か所。そしてメインフェイズ2は無し。
昔遊んでいた『デュエルリンクス』ってゲームのルールと一緒だな。
あれもかなり嵌ってたな…、っとそんなことより本物のデュエルだ。
ディスクのディスプレイには…先行表示!
「いくぜ、俺のターン!!ド…。」
一瞬癖でドローしそうになるがギリギリで留まる。
「(危ね…)俺は、モンスターをセット。さらにカードを1枚伏せターンエンドだ!」
しかし以前の参加者のデータと入ったが、どれほどのものなのだろう。
もし優勝者が当時の使用デッキを使って来たら…勝てるのか?
「よっし!俺のターン、ドロー!!」
良い勢いでカードを引く相手。
「じゃあ俺は、突撃ワイバーンを召喚して攻撃だ!」
突撃ワイバーン 星4 風 ドラゴン族/効果
A1700 D1200
このカードが守備表示モンスターを攻撃する時、その守備力をこのカードの攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手にダメージを与える。
場に現れたドラゴンが俺のモンスターに攻撃を仕掛ける。
「甘い!俺のモンスターは世界樹!お前の攻撃力より守備力の方が高い上に、このカードは1ターンに1度戦闘では破壊されない!」
世界樹 星4 地 植物族/効果
A1000 D2000
守護の大樹のレベルアップしたカードだ。その守備力は2000まで上がり、効果とも相まって鉄壁を誇る。
俺が先行の時には大概手札に来てくれているし、本当に頼りになるやつだ。
相手は300ポイントのダメージを受ける。
「くっ、ターンエンドだ。」
「俺のターン、ドロー!!」
よし!俺の勝ちだ!
「俺は先ず海王龍を召喚!」
海王龍 星4 水 海竜族/効果
A1900 D1600
「そして手札より、汎用ロボB-RT04の効果を発動。このカードは俺のモンスターの装備カードとなり、その攻撃力・防御力を500アップさせる!」
「なに!?」
海王龍 A1900→2400 D1600→2100
いいねいいね!相手の反応があるって素晴らしい。
「これで終わりじゃないぜ!さらに俺は汎用ロボB-RT04のもう一つの効果を発動!」
「もう一つの効果…?」
「そう、このカードは1ターンに1度、魔法・罠ゾーンから自分の場に特殊召喚できる。」
「なんだと!?」
汎用ロボB-RT04 地 機械族/効果
A1600 D1600
①手札またはフィールドのこのカードを装備カード扱いとして自分の場の表側表示モンスターに装備することができる。このカードが装備されたモンスターの攻撃力・防御力は500アップする。
②1ターンに1度、メインフェイズ時に発動可能。魔法・罠ゾーンのこのカードを場に特殊召喚する。
③このカードを装備したモンスターが破壊された時、代わりにこのカードを破壊できる。
レベルが上がり、ランクも上がったことで強化された能力。
今使うのは②番目の能力!
「さらに、リバースカードオープン!二者択一!」
二者択一 速攻魔法カード
次の内1つを選んで発動できる
①ターン終了時まで自分の場の全てのモンスターの攻撃力を自分の場のモンスターの数×100アップさせる
②ターン終了時まで相手の場の全てのモンスターの攻撃力を相手の場のモンスターの数×100ダウンさせる
初手で伏せておいたカードだ。
このカードもランクアップにより効果がかなりアップしている。
「今俺の場にはモンスターが3体。つまり、俺のモンスターの攻撃力は300アップする!」
「くっ!!」
世界樹 A1000→1300
汎用ロボB-RT04 A1600→1900
海王龍 A1900→2200
「いくぞ!世界樹を攻撃表示にして、バトルフェイズ!先ずは海王龍で突撃ワイバーンに攻撃!」
「ぐあぁ!!」
相手LP3700→3200
「そして世界樹と、ロボでダイレクトアタックだ!!」
「うわあぁぁあ!!!!」
相手LP 3200→0
相手は攻撃の余波でその場に倒れる。
【おめでとうございます。デュエルに勝利しました。勝利報酬として100BP支払われます。】
受付で貰った白いカードを見ると、新たに『所持BP 100』の文字が浮かんでいる。
コツコツと音が聞こえたので顔を上げると、相手が立ち上がった近づいてくるところだった。
「いやー、まいったな。まさか瞬殺されるとは思ってなかった。あんた強いんだな。」
ニコニコしながら話しかけてくる。
こうやって見るとデータで再現されているだけとは思えないな。
「いやいや、たまたまだよ。手札も良かったし。」
「いーや、強いやつってのは常に手札が良いやつなんだ。あんたは強いよ。できたらまたデュエルしような!」
そう言って手を差し出してくる。
「…ああ!」
手を握り返しそう答える。
そして、手を離すと同時に、彼は元の黒い靄に姿を変え消えていった。
また…か…。
【続けてデュエルを行いますか?行う場合はそのままお待ちください。そうでない場合は1度リングをお降りください。】
頭上からアナウンスが流れる。
俺は一旦リングを降りる。
手に持つ白いカードに書かれた数字は(1/10)になっている。
1戦行った事で大体の流れは分かった。
後はこれを繰り返していけばいいだけだ。
流石に最初の階だからか、相手もそんなに強くは無かった。
もしかしたら偶々手札が悪かっただけの可能性もあるけど。
にしても、データとは言え久々の対人戦。あっという間ではあったが楽しかった。
『できたらまたデュエルしような!』
彼とまたデュエルする機会はあるのだろうか?
そしてもし再戦できたならば、彼の記憶はどうなっているんだろう?
俺のこと度覚えているのか…?
ぼんやりと、そんなことを考えるのであった。