拠点に帰った俺を出迎えてくれたのは、嬉しそうな顔をしたソラだった。
「おかえりなさい、マスター。そしておめでとうございます。」
にっこりと微笑むその顔は凄まじく可愛い。
思わず天を仰ぎ幸せを噛み締めていると、不思議そうな顔でソラが尋ねてくる。
「…?マスター、どうかしましたか?」
「え?あ、いや、その…、そ、ソラが可愛くて…幸せを噛み締めてたと言うかなんと言うか…。」
その瞬間彼女の頬に朱色がさす。
「…コホン。で、では今日はお祝いですね。腕によりをかけて作りますので、出来上がるまで待っててくださいね。」
そう言ってソラはそそくさと家に入っていく。
…可愛い。
っと、俺もいつまでもぼーっとしてないで入ろうか。
今日はもうダンジョンに行かずにゆっくりすることに決めた俺は、ソラの料理に舌鼓を打ち、ゆっくりとお風呂に浸かり、日々の疲れを癒した。
そして次の日
俺は転移機能で45階へ。すると
「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「お、おおぅ?」
何かキャラが変わったガイドさんがいた。
「どうか致ししましたか?何かご要望が御座いましたら遠慮なく仰ってくださいね。」
物腰柔らかなお姉さん風な喋り方をしているけど…正直違和感…。
そこにショップの親父さんが手招きしてくる。
(おやじさん、あれ、どうしたんですか?)
(いや、昨日お前が帰った後にな、大分うちのボスに絞られたみたいでさ。今朝からあれだよ…。)
マジか。かなり怒られたんだろうな…。
ニコニコとこちらを見つめるガイドさんの表情を見るのが何となく辛くなり、誤魔化すように大声で親父さんに話しかける。
「あー!そういえばこの階ではどんなカードと交換できるんですか!?」
「お?お、おう!実はな、ボスから指令があってカードのラインナップがガラッと変わったんだぜ!」
『ボスの指令』って聞こえた瞬間ガイドさんが『ビクッ!』ってなったのを見てしまったけど…いや、俺はなにも見ていない。
見ていないったら見ていない。
俺は自分から蛇のいる藪には突っ込むつもりはない。
それよりも、ラインナップが変わったか。
さて、どんなカードになったかな?
「おう、種類は少なくなったか、絶対にお前の役に立つものばかりのはずだぜ!!」
ショップ内を覗いてみると、そこにあったのは3枚のカード。
かなり種類は減ってるけど………!?こ、これは!!?
「必要ポイントはちょっとばかし高くなるけど、多分あんたには必要なものだろ?」
ニカッと笑いながら聞いてくるおやじさん。
確かに、これは俺にとって必須…というよりは、俺の為だけにあるようなカードじゃないか。
「そういやここからは今までよりももっとBPを稼げるようになるらしいぜ!詳しくは…あいつに聞いてくれ。」
顎をしゃくってガイドさんの方を示すおやじさん。
するとそこへシュバッ!っと高速移動でやってくるガイドさん。
「はい、ここからは私が説明させて頂きますわね。」
昨日クソとか言ってた人と同一人物とは思えない。
「簡単に言いますと、44階まではデュエルで入手できるBPの倍率は最大3倍でしたが、46階以降はその倍率の上限が上がり、最大5倍まであがります。さらに、一戦ごとの入手BP量も上がりますので、今まで以上に稼ぐことができるかと思います。なお、累計勝利数は全階層共通となりますが、各階にはそれぞれ倍率の上限が定められています。」
その後も説明は続いたが、まとめるとこんなかんじ。
①BP倍率について
41階では最大1.5倍
42階では最大2倍
43階では最大2.5倍
44階では最大3倍
46階以降は、それぞれ3.5倍、4倍、4.5倍、5倍となる。
ちなみに、41階で勝ちまくって累計勝利数を増やしても、きちんと先の階である程度の勝利数を稼がなければ倍率は上がらない。
②1回のデュエル勝利による入手BP量について
41階~44階は、100・150・200・250
46階~49階は、300・350・400・450
もちろん先の階に行くほど相手は強くなる。
つまりは、49階で勝ち続けられる自信があるなら、そこで連戦するのが一番効率が良いわけだ。
これなら確かにうまくいけば今まで以上の効率で稼げるな。
そうすればあのカードをゲットする日も遠くない。
先ずは49階に到達、そして44階みたいに連戦だな。
大体の方向性を決めて、早速46階に進むことにした。
さあ、次はどんな奴が出てくるかな?
扉を潜る俺の後ろ姿を見送るショップのおやじさんのさらに後ろで、3枚のカードが淡く輝いていた。
まるで、早く己の主の手に取られることを願うように…。
扉の先はここまでの階と同じく中央にリングがある。
おそらく仕様も同じだろうな。
リングに上ると黒い靄が現れて青年の姿になる。
「よし、俺と勝負だ!」
お互いに構えてデュエル開始。
先攻は相手。
「俺のターン!俺はモンスターをセット。ターンエンドだ。」
ふむ、初手から動きは無いか。
「俺のターン、ドロー。俺は聖獣・スザクを召喚、アタックだ!」
奴の伏せたモンスターに攻撃を仕掛ける。
現れたのは…
「ふふふ…俺のモンスターは代打バッター!」
代打バッター 星4 地 昆虫族/効果
A1000 D1200
自分フィールド上に存在するこのカードが墓地に送られた時、自分の手札から昆虫族モンスター1体を特殊召喚することができる。
何!?代打バッター!!?
「代打バッターが墓地へ送られたことで、俺はこのモンスターを召喚する!来い、インセクト
インセクト
A2200 D2400
自分のフィールド上モンスター1体を生贄に捧げないと攻撃宣言できない。全フィールド上の昆虫族モンスター1体につき、このカードの攻撃力は200アップする。このカードが相手モンスターを破壊したターンの終了時、自分のフィールド上に「インセクトモンスタートークン」(昆虫族・地・星1・攻/守100)を攻撃表示で特殊召喚する。
な、なんだとー!!!?
「くっくっくっ…、どうだ、この恐ろしいコンボに驚いて声も出ないか!」
嬉しそうな顔で煽ってくる対戦相手。
いや、確かにいいコンボだと思うが、そんなことより…、
「なんで昆虫デッキ…?」
思わず口に出てしまった。
というのも、ここまで戦ってきた相手は基本今までの大会参加者のデータを元にされているんだが、割と原作のカードを使う人が多かったんだ。
その方がイメージもしやすいしね。
だからマジシャンデッキとか、ドラゴンデッキとか結構見たんだけど、なんでここで昆虫デッキを選んだんだろう?と、とても気になりついついポロリと言ってしまった。
すると耳ざとくそれを聞いていた相手が顔を真っ赤にして喚きだした。
「は?なんだよ!昆虫デッキ馬鹿にすんなよ!!別に俺だって好き好んで使ってるわけじゃないっての!たまたま最初の相性がいいカードが昆虫族だっただけで…、気が付いたらこんな風になってたんだよ!!!」
お、おおう…。どうやら相手にとっても触れられたくない部分だったようだ。
若干同情しないでもないけど、勝負は勝負。
盤面はこちらが不利だが、負けるつもりはない。
別に昆虫デッキを馬鹿にしてるわけでも、弱いと思ってるわけでもないしな。
油断せずに全力で行くぜ!