「俺のターン、ドロー!」
引いたカードは…朱雀。
考えろ、なにか…、何かあるはずだ。
手札のカード、場のカード、そしてデッキに眠るカードたち。
これらを使って取れる最善の方法を考えるんだ…!
「……俺はモンスターをセットしてターンエンドだ。」
手立ては…ある。あの猫をも上回る攻撃力を一瞬だが得る方法が1つだけある。
しかしそれを行うには時間が、準備が必要だ。
今は耐える…!
「カードをドロー。」
相手のターン、
カードを引いた奴はその口元を大きく歪めた。
「…どうやら、俺の勝ちのようだな。」
何?この状況で勝利宣言…。どんなカードを引いたって言うんだ?
「俺は装備カード『騙された猫の怒り』を使用。場の『干支になれなかった者・猫』に装備!」
騙された猫の怒り 装備魔法カード
干支になれなかった者・猫にのみ装備可能。装備したモンスターは以下の効果を得る。
・場に他の干支モンスターがいる際攻撃できない効果を消す。
・罠カード『猫の恨み』の効果で自身の効果を失っている場合、1ターンに1度場の干支モンスターをリリースして発動できる効果が復活する。その効果を使用したターンこのカードは攻撃できない。
・1ターンに1度、自分の墓地にある干支カードを除外することで、上記リリースして発動できる効果と同じ効果を発動できる。
カードを装備した猫は、装備前と比べ一回り大きくなり、その顔もより獰猛なものへと変わった。
「さぁ…、覚悟は良いか…?」
ただでさえ強いプレッシャーを放っていた相手が、より圧倒的な威圧を放ち始める。
こ、これは…無理なのか……?
絶体絶命。
そんな言葉が頭をよぎった瞬間、思わぬところから救いの手は現れた。
【……を発…。データ…信。正……ータをイ……トール。不具合デ………クセス…始…解析…了。原因不…。次のプロセ……進みます。現…を正常に戻……とを優先………。】
な?何だ何だ?
突然デュエルフィールドに1台の小型浮遊機械が現れた。
何かブツブツ言ってるけど…良く聞こえないな。
いきなり現れた乱入者をポカンとした表情で見ていると、先ほどまで戦っていた彼は苦虫をつぶしたような顔をしていた。
「っち…ここまでか…。」
そして俺に向かって話しかけてきた。
「おい、受け取れ!」
彼が投げ渡してきたのは1枚の真っ白なカード。
これは…前ももらったことのあるブランクカード?
「絶対に無くすなよ!」
???…えっと?
いきなりの事で頭が付いていかない。
「もう時間がない。後言えるのは…、カードを信じろ!デッキを信じろ!戦って分かった!お前ならだいじょう…だ!!あ…のこ…はたのん……!!!!」
一瞬の出来事。
瞬きをした瞬間には、すでに彼はいなくなっていた。そして
パリィィィィィン!!!!!
ガラスが割れたような音がして、気が付けば俺は一人でデュエルリングの上に立っていた。
【エラー発生。確認のために少々お時間を頂きます。プレイヤー強制転送】
状況を理解する間もなく俺は強制的に転送され、次の瞬間には拠点のパソコンの前に立っていた。
………えーっと…?…だれか、状況を、説明、してください…。
その後、俺が帰ってきたことに気付いたソラに事の顛末を話し、二人して首を傾げたが結局あれが何だったのかは分からなかった。
そして次の日、パソコンに【メンテナンス完了】の文字が出ていたので49階へ向かった。
ガイドさんやショップのおやじさんは何も変わらず。
デュエルリングに上がってみると、昨日のデュエルは無かったことになっており、普通に別の対戦相手が現れた。
勿論強さはそれなり(38階までと比べ、こんなもんだなって言うレベル)で、間違っても昨日のあいつのレベルの相手は出てこなかった。
それからごく普通にデュエルを繰り返し、ごくごく普通に49階の突破条件をクリアしたので、とりあえずここでしばらくBP稼ぎをすることにした。
元々ここでポイントを稼いで、ショップのカードと交換するのが目的だった訳だし。
何となく心の中に釈然としないものを残しつつも時間は流れ、数日後、俺はショップのカードを3枚とも入手することができた。
そして…
「行ってらっしゃいませ、マスター。」
「ああ、行ってくる。」
ソラに見送られ、俺は転移機能で49階へ向かう。
今日は50階に挑戦する予定だ。
ショップで新たなカードを手に入れた後は、使用感を試すために何度か49階でデュエルをして、問題なさそうだったので今日50階へ挑むことにした。
結局あの時の事はいくら考えても分からない。
夢…ではないことは、あれからずっとEXデッキに入れているこのブランクカードが証拠だ。
まぁ気にはなるが、いつまでもそればかりにかまけてもいられないし、何より今日は50階。
俺の予想が正しければ、出てくるのはおそらく…
ガイドさんとショップのおやじさんに挨拶をして先へ進む。
50階への階段を降り、やって来た扉の前。
一度大きく深呼吸をして、そして扉に手を掛ける。
開いた先には……リング…?
いつもと違うことに少し戸惑いつつも、中央にあるリングへと上がる。
するといきなり四方にスポットライトが現れ、リング全体が照らされる。
そして
「…来たか。」
気が付くと目の前には1人の青年。
見間違えるはずもない。こいつは…
「さぁ、決着をつけるとしよう。今度は前回の様に手を抜いたりはせん。本気で行くぞ。」
45階で戦ったあの中ボスが、再び俺の眼前に現れた。
「…やっぱり、出てくるとしたらお前だと思ったよ。」
「ふん。1度まぐれで勝ったぐらいでいい気にならないことだ。」
お互いの視線が交錯し、同じタイミングでデュエルディスクを構える。
「「デュエル!!!」」
今ここに、戦いの火蓋は切って落とされた。