ストーリーには一切関係ありませんので、読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ある朝のこと
「…あれ?もしかして…?」
俺の独り言にソラが反応する。
「マスター、どうされましたか?」
返事があると思ってなかったので一瞬ビクッっとなりつつも応える。
「あー、いや、えーとな、実はここに来てどれくらい時間がたったのかを考えてたんだけど…、計算してみたら丁度今日俺の誕生日に当たる日だと思って…。」
ガタンッ!
勢いよく椅子から立ち上がったソラが、わなわなと体を震わせながら聞いてきた。
「た…、たん、じょう、び…?ま、マスター、の…?」
何故そんな表情をしているのか分からないが質問には答える。
「あ、ああ、確かそのはずだけd「こうしてはおれません!!」…。」
言葉をかぶせられて戸惑う。
そしてソラはズイッと顔を寄せ言った。
「マスター。今日の探索はお休みください。これよりお祝いの準備を行いますのでマスターは一度お部屋でご休憩くださいませ。」
そしてさらに俺の横に接近したかと思うと
「うわっ!」
気が付くと俺はソラにお姫様抱っこされており、さらに俺の寝室の前まで移動していた。
「え?あ、あれ?」
その後まるで音を立てずに扉が開いたかと思うと、俺は自分のベッドの上で横になっていた。
「それでは準備をしてまいりますのでお待ちくださいませ。」
声がした方を向くと、こちらに1礼して扉から出て行くソラの姿が。
………あ、れ…?今、何が起こったの……???
しばらく呆然としていた。
ソラってあんなに力持ちだったんだ…いや、それよりもあの動き、気が付いたら衝撃が一切なくベッドに移動させられてた…。
どれだけの技量があればあんなことができるのだろうか…。
確かにソラは元々カードだったという話は聞いたが………もしソラが他のカードと同じだとしたら、能力はどれほどだったのだろう?
そう考えた瞬間背筋がブルッっと震えたので考えるのをやめた。
にしても、部屋で休憩しているように言われたが、いつまでいればいいんだろう?
…ちょっと覗いてみる……?
あ、いや、これは別にやましいことじゃないぞ。そ、そうだ。トイレに行くときなんかは絶対に部屋から出ないといけないわけだし。うん、そうだ。トイレに行くという体で外に出て、どれくらい待っていればいいのか聞くことにしよう。
頭の中で言い訳を考えて、少し緊張しながら部屋の扉を開ける。
自分の部屋なのに緊張するって…等と考えながら扉を開けるとそこには…
「あーマスター!!まだ出てきちゃだめですよぅ!」
可愛らしい女の子がいた。
………え?この子、誰?
こちらを見つめてプンスカといった感じで頬を膨らませている少女。
「ソラさんから部屋で待っててッて言われてたんじゃないんですかぁ?」
腰に手を当ていかにも怒ってますよってポーズをとっているが、美少女がすると逆に可愛い。
っていうか本当にこの子は一体…。
透き通るような白い肌にエメラルドグリーンの瞳。
魔法使いのローブのようなものを身に纏い、バランスの取れた程よいサイズの胸の谷間がチラチラ見える。
緑を基調としたふんわりとしたスカートを穿き、幼さと大人っぽさを併せ持っている。
…ごめん、嘘ついたわ。俺、この子良く知ってる。
さっきからチラチラと視界に入っていたが、彼女の後ろでは『人ならざる者たち』が、部屋のあちこちをせっせと動き回っていた。
そう、この目の前の美少女。間違いなく『フウカ』だ。
「えっと…、フウカ…だよな…?」
念のため確認すると、少し首をかしげながら不思議そうに答えてくれた。…可愛い。
「はい、そうですけど…?」
何故そんなことを聞かれるのかといった表情で頭の上に?マークを乗せるフウカ。
…いやいや、?マーク浮かべたいのはこっちだから。
「あのさ、なんで拠点で実体化できてるの?」
とりあえず単刀直入に聞いてみる。すると
「なんでって…、今日はマスターの誕生日だからに決まってるじゃないですかぁ?」
……そうか、プレイヤーの誕生日にはカードは実体化できるのか…。
とりあえず思考を放棄して、「もうなんでもいいやー」と思いながら辺りを見回す。
部屋のあちこちでは俺のカードたち(実体)が飾りつけをしたり料理を運んだりしていた。
比較的人型に近いメンバーは、主に細かい作業となる部屋の装飾や配膳を行い、動物型のメンバーは、机を押して移動させたりレイアウト担当のようだ。
「マスター。まだ準備は整っておりませんが…どうされました?」
ソラが俺に気付きやってきた。
「あ、ああ、どれくらい待てばいいかなと思って…。」
「申し訳ございません、お伝え忘れてましたね。…もう間もなくですので、よろしければこちらでソファーに掛けてお待ちになってください。」
ソラに促され部屋の端にあるソファーへ座る。
うわ!めっちゃフカフカ…。こんなソファーあったっけ?
高級感のある白い毛でできたフカフカソファー。
触り心地も座り心地も最高のそれに驚いていると、不意にソファーの端の方が動いたような気がした。
ん?と思い覗いてみると
「………。」
「……………ガゥ。」
ビャッコと目が合った。
…このソファー、お前だったのか…。
表情一つ変えることなくビャッコをソファーと言い切ったソラを「なんて恐ろしい子!」と思いつつ、それでも最高の肌触りのビャッコソファーの感触に心奪われる俺。
しばらくその感触を楽しんでいると、俺の前に一人の美女が現れた。
「お待たせいたしました、ご主人様。準備が整いましたのでこちらへお越しくださいませ。」
ブロンドの髪に天使を思わせるような服。
背中には白い羽を生やし…って、まんま天使だった。
俺を呼びに来た『聖天使エリー』に席まで案内される。
席に着くと正面にはソラが、左右にはエリーやフウカを始めとした人型メンバーが、机の回りには席に着くのが難しい他のメンバーがずらりと並んでいた。
「…コホン。それではこれより、マスターの誕生日会を開始いたします。」
わーわーわー
パチパチパチパチパチ
ガォオオオ!
グオッォォ!!
お、おお…なんというか迫力がすごい。
「では…。」
ソラが目配せをすると、部屋が急に暗くなった。
そしてロウソクにぼんやりとした明かりが灯されて
ハッピバースディ トゥーユー
ハッピバースディ トゥーユー
ハッピバースディ ディア マスター(ご主人様ー)(ガウガー)
ハッピバースディ トゥーユー
パチパチパチパチパチパチパチパチ…
ロウソクの刺さったケーキを前に、みんなで歌を歌ってくれた。
「さあマスター、火を…。」
みんなの思いにジーンと感動していた俺は、ソラの声に促され、ロウソクにフゥーっと息を吹きかけて火を消す。
パチパチパチパチパチパチパチパチ…
部屋が明るくなり、周りには満面の笑みのみんなの顔。
「さあ、今日はお祝いです。遠慮なく食事の方を召し上がってください。」
ソラの言葉にがやがやと食事をとり始めるみんな。
「マスターもどうぞ。」
「あ、ありがとう。」
俺もソラが取り分けてくれた食事を食べる。
…美味い。
「ねぇねぇマスター、こっち向いてぇ?」
隣に座っていたフウカが話しかけてきたのでそちらを向く。
「はいマスター、あーん♪」
「え、え?あ、あーん…。」
言われるがまま口を開くとフウカがその手に持ったスプーンで食事を食べさせてくれた。
「フ、フウカさん、ずるいですよ。ご主人様、こちらにもお願いしてよろしいですか…?」
そう言って控えめに主張するのは反対側に座っているエリー。
「ご主人様、あーん…。」
慈愛に満ちた顔で俺に食事を食べさせてくれようとするエリー。
うむ。両手に花というやつだな、これは。
左右からの接待に浮かれた顔をしていると、急に正面から何かを感じた。
ちらりと視線をやると、無表情なんだけど何か後ろに背負ってそうなソラさんの目がこちらをじっと見ている。
うっ…。こ、怖いのですが…
「ねぇますたぁ…こっちむいてよぉ。」
ふと腕に柔らかいものが当たり、なんだろう?と思いそちらを見てみると、そこには俺にしなだれかかるフウカの姿が。
「え、お?ど、どうした!?」
思わず声が裏返ってしまった。
「ん~…、ますたぁ~…。」
さらに俺の肩へ顔をグリグリと擦りつけてくるフウカ。
な、なんかおかしいぞ……っつ!酒の匂い!?
突然の行動に動揺していると、フウカの口元から微かにアルコールの香りがした。
「まさか!?」
机の上には様々な種類のおかずと飲み物。その中には一目でアルコールと分かる瓶も何本か混ざっていた。
「そ、ソラ、もしかしてアルコールもあるのか?」
思わず確認すると無表情のままで応えるソラ。
「ええ、せっかくのお祝いですので奮発しました。それにしてもマスター、とても楽しそうですね。」
何となく言葉に棘がある。ふとフウカと反対側の腕にも重みを感じたのでそちらに視線をやると
「…ご主人様ぁ……。」
赤い顔をして俺にくっついてくるエリーの姿。
おいおい、二人してお酒弱すぎだろう…。
ちらりと視線をソラに向けると、その整った眉が若干吊り上がっていた。
ひぃぃ…
「あ、お、俺ちょっとトイレに行ってくるわ!」
これ以上視線に耐えられない。そう思い離脱を試みる。
「あぁ、マスタぁ、どこ行くんですかぁ?」
「ごしゅじんさまぁ…」
くっつく二人を無理やりはがし席を離れトイレへ。
…ふぅ。
部屋に戻るとなんだかよく分からないことになっていた。
獣系のモンスターたちがあちこち走り回り、人型のモンスターたちは笑ったり泣いたり、もくもくと食事を続けていたり。
せっかくの部屋の飾りつけも獣型モンスターがぶつかったのだろう。所々千切れたり破れたりしていた。
…なんでこの一瞬でこんなカオスな状態に…?
あっけに取られていると、ソラが机からユラリと立ち上がるのが見えた。
そして俺の方を向き、
「…マスター…、少々お部屋でお待ちいただいても宜しいですか…?」
その有無を言わせぬ迫力に思わずブンブンっと首を縦に振り、急いで自室へと向かった。
そして俺が部屋の扉を閉めて一拍後、急に外がシーンっと静かになった。
それから数秒後
「マスター、もう出てきていただいて結構ですよ。」
ソラの声が聞こえたので、そーっと扉を開けて外に出てみる。
するとそこには軍隊か!?というほどピシッとした格好のモンスターたちが。
「マスター、大変失礼いたしました。この子たちには私の方からしっかりと言っておきましたので、もう粗相することは無いと思います。さあ、続きを行いましょう。こちらへ…。」
先程と比べ、かなり緊張感が漂う空気の中、俺の誕生日会は粛々と進められていった…。
そしてその晩
片付けも終わり、気が付けばカードたちは皆実体化を解き元のカードへと戻っていた。
俺も風呂から出て今は自室でゆっくりしている。
…にしても、なんか色々あったけど、…忘れられない思い出にはなるかな…。
今日の出来事を思い出しつつ考える。
すると
コンコンコン…
「マスター、失礼してよろしいでしょうか?」
ソラの声が聞こえた。
「ああ、いいよ。」
俺が答えると彼女は音も立てずに扉を開けてススッっとへ部屋の中へ入ってきた。
「マスター、今日は色々と有難う御座いました。」
いきなりお礼を言ってくるソラ。
あれ?礼を言うのはこっちの方じゃ…?
「今日はカードたちもマスターの為にお祝いができると少々張り切り過ぎてしまったようでして…。」
ああ…、あの騒ぎね…。
「別に気にしてないよ。むしろあれだけ楽しそうにしてくれて俺も嬉しかった。ありがとう。」
素直に気持ちを伝えるとソラはフワッとした笑顔を見せてくれた。
そしてベッドに腰掛ける俺の隣に座り
「マスター、最後に私からマスターへ誕生日プレゼントがあります。」
「ん?わざわざ用意してくれたのか?別にそこまでいいのに…。」
「いえ…、これは私の気持ちですので…。」
そう言いながら徐々に距離が近づいてくる。
「あ、ありがとう。なら有難くいただくよ。で、でもそんなに近づいたら渡しにくいんじゃないか…?」
二人の距離はすでに0となり、足や肩はぴったりとくっ付いてしまっている。
「いえ…この方が渡しやすいんです…。」
そう言いながらもさらに俺の方へ体重をかけるソラ。
「え、えーっと…、そ、ソラ…さん?」
「…マスター…、本当は…分かって…ますよね…?私の…プレゼント…。」
すでに手と手どころではなく、お互いに体の半分以上がくっつき、ソラに関していえばその豊満な胸部が潰れて形を変えるほど密着している。
「マスター…。」
「ソラ…。」
段々近づいていく二人の顔。そして……。
チュンチュン チュンチュン…
「……ター…、……マスター…。」
俺を呼ぶ声に意識がゆっくりと浮上していく。
「おはようございますマスター。朝ですよ。」
寝ぼけた頭のままで声がする方を向くと、そこにはいつも通りの格好のソラがいた。
「食事の準備はできていますので、着替えたらお越しくださいね。」
ぼーっとした頭でキョロキョロと部屋を見回すと、何の変哲もない自分の部屋が目に入る。
「…マスター、どうかなさいましたか?」
「ん…、誕生日会…?」
「?誕生日会…?マスターお誕生日なんですか?」
頭にはてなマークを乗せたソラが訪ねる。
「え…?あ、い、いや、…寝ぼけてたみたいだ。う、うん着替えたら行くから向こうで待ってて。」
「?わかりました。」
部屋を出て行くソラ。
もしかして……夢…?
にしてはかなりリアルな…
頭に大量のはてなマークを浮かべつつも結局何もわからず、全て夢だということにしてなんだかモヤモヤした気持ちで朝の準備を始める俺。
その様子を影で見つめる少女の口元は、ニヤッと歪んでいた…。
というわけで誕生日回。
なぜならば…、今日は私の誕生日だから!(ドヤ顔)
今年で無事、10の位を切り上げで100歳になりました。
これからも精進します。
思いつくままに書いただけなので違和感や、皆さんの思っているカードの印象と違うかもしれませんが、あくまで夢落ち閑話ということでお許しくださいm(__)m