第464話「人の良心につけこまれたら気をつけろ」
それはある日の事だった。飛鳥が休日に街をフラフラしていると、そこには泥棒の格好をしている紗夜の姿があった。
飛鳥「…氷川先輩?」
紗夜「!!?」
飛鳥に声をかけられて紗夜が驚いて後ろを振り向くと、
紗夜「い、一丈字さんですか…。こんな所でお会いするなんて奇遇ですね」
飛鳥「そうですね。しかし…どうかされたんですか?」
紗夜「ど、どうもしてないわ。決して最近できたアニマルカフェに行こうとは考えないわよ?」
飛鳥「…そうですか」
思い切り用件バラしちゃってる紗夜に対し、飛鳥は何とも言えない顔になっていたが、敢えて何も突っ込まないことにした。
紗夜「そ、そういう一丈字くんはこれから何をしに行くの?」
飛鳥「いえ、私はただ散歩をしていただけですので…」
紗夜「そ、そう…」
この時飛鳥は察した。本当はアニマル喫茶に行きたいのだが、一人だと勇気が出ないし、かといって知り合いだと自分のイメージが崩れると考えていたので、どうすれば良いか迷っていた。
飛鳥「そういえばそのアニマルカフェって何ですか?」
紗夜「さ、最近出来たらしいのよ。そこには色んな種類の犬や猫がいるらしくて…」
「猫?」
友希那が現れると、飛鳥と紗夜が驚いた。友希那は屈指の猫好きであり、本人は否定しているものの、周囲にはバレバレだし今に至っては完全に隠す気もない。
飛鳥「…湊先輩」
友希那「アニマルカフェに行くのかしら?」
紗夜「わ、私は別に…」
飛鳥「いえ、私も…」
と、2人とも否定したので沈黙が起きていた。友希那もアニマルカフェに行きたそうにしていたが、行きたいなんて言えないし、かといって今から行こうと思ったら自分以外の人間をどこかに行かさないといけないし、結構困っていた。
飛鳥(そして私が誘えばあの人たちが飛んでくる可能性もありますしね…)
飛鳥は静かに目を閉じた。
友希那「Roseliaにとって新たな刺激が出てくるかもしれないわ。行ってみましょう」
飛鳥(そう来たか)
アニマルカフェからどうやってRoseliaの活動に活かすんだと飛鳥は言いたかったが、もう余計な事は言わないようにした。
紗夜「そ、そうですね。Roseliaの活動の事を考えれば、アニマルカフェも悪くないかもしれません」
飛鳥「そ、そうですか…。ごゆっくり…」
友希那「何を言っているの。あなたも行くのよ?」
飛鳥「逆に私が行っても大丈夫なんですかね」
紗夜「問題ないと思うわ。二人きりではない分…」
そんなこんなで友希那と紗夜に連行される形でアニマルカフェに向かったのだった。ちなみに男子生徒達が妨害しようとしたが、飛鳥としてはもうこれ以上火種を増やしたくなかったので、容赦なく超能力を使った。
飛鳥(此間パラレルでラブライブの話があったけど、あっちはマジで平和だった…)
***
そんなこんなでたどり着いたアニマル喫茶。
「おかえりなさいませ! ご主人様♡」
思ってたのと違う喫茶に友希那と紗夜は固まっていた。まさか店員が肩を露出させた和服に白いエプロン、頭には動物のカチューシャがつけられていたのだ。
紗夜「な、何ですか! この破廉恥なお店は…」
飛鳥「紗夜先輩。そんな事言ったら怒られますよ!」
「ご主人様はこのお店は初めてですか?」
飛鳥「え? あ、はい。そうなんですよ。すみません失礼な事を言いまして…」
飛鳥が笑ってごまかしたが、店員たちは怒る様子はなかった。
「大丈夫ですよ。私達も最初はそうでしたから。3名様ですね。どうぞこちらへ!」
と、3人はテーブル席に座らされた。友希那と紗夜は思っていたのと違ってテンションが低かったが、子犬と子猫がやってきて、即落ちだった。
友希那(かわいい…なんてかわいいのかしら…//////)
紗夜(……/////)
露骨に愛でる友希那と遠慮しがちに愛でる紗夜。そんな2人を見て飛鳥も思わずニコニコした。
友希那「な、何よ…/////」
飛鳥「すいません。本当に猫が好きなんですね」
友希那「ふ、普通よ」
飛鳥「そうですか」
飛鳥がそう言うと、友希那は照れくさそうに視線をそらした。
紗夜「わ、私も普通ですよ/////」
飛鳥「分かりました」
そうは言うが、絶対大の犬好きだと思ってるし、大人の対応を取られて、こっちが年上だと紗夜は思わずムキになりそうだった。
そんな中だった。
「あ、おねーちゃんだ!」
「!!?」
聞き覚えのある声がしたので、飛鳥達がその方向を見ると、店員たちと同じようにケモミミカチューシャと和服エプロンを着たパスパレメンバーがいた。
紗夜「日菜!?」
友希那「パスパレ!?」
飛鳥「おや…」
日菜たちが飛鳥たちに近づいた。
日菜「おねーちゃん達が来てくれるなんて、やっぱりるんってするなあ!」
紗夜「あ、あなた収録じゃなかったの!?」
日菜「収録だよ? このお店で1日お忍びでバイトするの!」
飛鳥「…どうやらお邪魔だったようですね」
友希那「客を入れてるなら問題ない筈よ?」
友希那がそう言うが、猫を膝にのせていて、飛鳥や紗夜、千聖が困惑していた。
飛鳥「…大変ですね」
彩「ま、まあそうだけど頑張るよ」
イヴ「そうです!」
***
そんなこんなでパスパレが見守る中、飛鳥達はアニマル喫茶を楽しむこととなったのだが…。
日菜「注文決まった?」
飛鳥「友達感覚!!」
日菜が思った他自由に接してきた。一応接客のマニュアルはあった筈だろうが、日菜には全く意味をなさなかった。
飛鳥「そうですね…。私はアイスコーヒー…」
紗夜「そうね」
友希那「私もそうしようかしら」
日菜「アイスコーヒー3つね。あ、でもこういうのもあるよ?」
飛鳥「え?」
すると日菜がメニューを見せてきた。
飛鳥「…和風オムレツwithアニマルメイドさんからのメッセージ入りと、ご主人様への愛を囁きながら最初の一口あ~んサービス」
日菜「今ならパスパレもやってあげるよ?」
飛鳥「でも1980円か…」
飛鳥が困惑しながら値段を見ていた。
紗夜「一丈字くん。無駄遣いはいけませんよ」
日菜「ちなみにATMならあそこにあるよ?」
飛鳥「ATMあるんですか!? この店!!」
日菜「結構お客さんが使い過ぎて支払い足りない場合があるんだって」
飛鳥「…大丈夫なんですかね。その人たち」
日菜「分かんない」
飛鳥の言葉に日菜が困惑していた。
日菜「注文してくれたら、番組も盛り上がるんだけどなー」
飛鳥「私の寿命は縮まりそうですが…。まあ、1回くらいならいいでしょう」
紗夜「飛鳥さん!」
飛鳥「まあ、こうやって店員さんの口車に乗せられてATMに行くんでしょうねぇ」
日菜「毎度アリ~。ちなみにメイドさんは指名できるよ? 誰にする?」
飛鳥「じゃあ貴女で」
飛鳥が思った他カウンターを返してきたが、日菜は全く動じなかった。
日菜「はーい。それじゃ楽しみにしててねー」
そう言って日菜は去っていった。
紗夜「一丈字くん! 大丈夫なの!?」
飛鳥「もう本当に1回だけですよ…」
友希那「その前にお金持ってるの?」
飛鳥「あ、それはきちんとありますよ…」
ちなみにこの時まだ店は暇だった…。
暫くして…。
日菜「お待たせー。オムレツだよー」
飛鳥「ありがとうございます」
するとオムレツにはこう書いてあった。『飛鳥くん♡』と。
飛鳥「お、おお…」
飛鳥は本当にコスプレ喫茶に来たんだなと困惑していた。
日菜「それじゃあーんしてあげるね」
飛鳥「あ、はい…」
飛鳥は思った他抵抗はしなかった。まあ、抵抗なんてしたらじゃあなんで注文したんだという話になるし、なんだかんだ言って飛鳥は真面目だったからだ。
日菜「あ、そうだ。囁かないといけないんだよね」
紗夜「……/////」
身内が女になっている所を見なければいけないのかと紗夜がドギマギしていた。
日菜「飛鳥くん。あたしを選んでくれてありがとね。大好きだよ♡ はい、あーん」
飛鳥「……」
日菜の言葉に飛鳥は無言で食べようとすると、日菜がスプーンをひっこめた。
日菜「あーんって言わないとダメ! やり直し!」
飛鳥「敵いませんねぇ。分かりました」
日菜の言葉に飛鳥は苦笑いし、もう一度やり直した。
日菜「はい、あーん」
飛鳥「あーん…」
そう言って食べた。
日菜「美味しい?」
飛鳥「あ、はい。美味しゅうございます」
日菜「あははは! 面白―い。また来るねー」
そう言って日菜は去っていき、3人だけになった。
友希那「あなたも日菜にはたじたじなのね」
飛鳥「たじたじというより…まあ、ペースは狂わされますね」
紗夜「本当にすみません…」
飛鳥の言葉に紗夜が謝罪した。
紗夜「そういえばそのオムレツは美味しそうね…」
飛鳥「食べますか?」
紗夜「え、ええ…」
友希那「食べさせるのかしら?」
飛鳥「え? 私が紗夜先輩に出すか?」
紗夜「どうしてそうなるの!?/////」
飛鳥「冗談ですよ」
日菜「ダメ―!!」
日菜がまたやってきて、飛鳥達が面食らった。友希那の膝にいた犬や猫たちは驚いて逃げ出してしまった。
日菜「そんなのダメぇ! あたしもした事ないのにー!」
飛鳥「日菜先輩。大声出したら動物たちが…」
紗夜「全くあなたは…」
日菜の失態に紗夜は額を押さえた。他の店員さん達も少し怒っている様子だった。
千聖「ちょっと日菜ちゃん! ダメじゃないの大声出しちゃ!」
日菜「だ、だってぇ…」
千聖たちもやってきて、千聖が小声で注意した。
飛鳥「日菜先輩。冗談ですから」
日菜「ホント?」
飛鳥「ホントですよ。ですので、安心してバイトなさってください」
と、何とかなだめて、持ち場に戻って貰った。
飛鳥「…動物たちには悪い事しちゃったな」
紗夜「そ、そうですね…」
友希那「こんな時は餌で釣るのが一番よ」
そう言って友希那がインターホンを鳴らすと、店員を連れてきた。
友希那「この『またたびプロトン』を1つ!」
飛鳥「え、それ2000円…」
友希那「関係ないわ」
そんなこんなでまたたびプロトンを使うと、猫たちがやってきた。
友希那「はわわぁ…♡♡」
飛鳥・紗夜(か、完全に隠す気なくなってる…)
友希那は猫に囲まれパラダイス状態になっていた。そして紗夜は猫に囲まれている友希那が羨ましくなったのか、犬を呼び寄せる『ドッグプロトン』を注文して、犬を呼び寄せた。
紗夜「……♡」
紗夜もパラダイス状態になっていて、飛鳥は黙々とオムレツを食べていた。
千聖「すっかり独りぼっちね」
飛鳥「いえいえ。湊先輩も紗夜先輩も幸せそうで何よりですよ」
通りかかった千聖に話しかけられて飛鳥がそう答えると、二匹の白猫がやってきて飛鳥の両肩に乗った。
千聖「あら、そうでもなかったわね」
飛鳥「そうですね」
すると片方の大きな猫が飛鳥の頬にすりすりしてきた。
飛鳥「あはは。どうしたの?」
飛鳥が嬉しそうにすると、千聖は思わずときめいた。するともう片方の小さい猫もすりすりすると、飛鳥が困ったような笑顔を見せた。
そんなこんなで3人はアニマルカフェを満喫した。次第にお客さんが増え始めて、パスパレがいるという事で大騒ぎとなった。
飛鳥「すっかり大忙しになりましたね」
紗夜「そうですね」
と、飛鳥達はそろそろ帰る事にしたが…。
紗夜「…湊さん。名残惜しいですけど帰りますよ」
友希那「にゃーんちゃん…」
その時だった。
「それでね。おねーちゃんが今日来てるんだ。あそこにいるのがおねーちゃん!」
「そっくり!!」
と、日菜が紗夜の事を紹介し始めた。
日菜「それでおねーちゃんって凄いんだよ!」
日菜が紗夜の事を語り始めたので、紗夜はそそくさと会計を済まして…。
***
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紗夜「一丈字さん。あーんしてあげますね♪」
飛鳥「フ、フライドポテトは中々レベルが高い…」
紗夜「ディップしてあげます♪」
と、日菜が悔しがることをやってのけた紗夜であった…。ちなみに日菜は数日後に知ってこれでもかという程せがんだらしい。
おしまい