彼女に向けて伸ばしたその手は届かない。これは、そんな彼の思い出話である。

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リハビリ作です


水面の朧月

 ああ、やっと来たか。さて、なんか俺にインタビューとか言うけどこんなしがないおっさんにいったい何の用……あぁ、IS学園のことか。……さて、私に何か言えることはありますかね。

 ん、私を覚えていないのかって?さて……あ、名刺どうも。……あぁ、黛先輩でしたか、お久しぶりです。え、そんなドライな反応ひどいって?そうは言われましてもねぇ……。あの新聞部の事件、いまだに覚えてるんですよ?

 あ、そんな申し訳なさそうな顔しないでくださいよ、たて……更識先輩のおかげでどうにかなったし、犯人も捕まったんですから。

 というかなんで今更俺にインタビューを?モンド・クロッソ2連覇した織斑一夏がいるから適正がCの俺なんて全く意味がないってのに。いわゆるあれですか?あの有名人は今!みたいな感じの。

 え……はぁ……そうですぁ。彼女の口から俺の名が……わかりましたよ、答えれる分は答えますが。え、さっそく彼女との出会いから?……黛さん、俺の傷口抉って何が楽しいんですか?

 ……はいはい、話しますよ。

 

 あれは……そうですね、丁度10年前か。俺がまだ高校生の時、女性にしか使えない兵器であるISを動かせてしまい、そのままIS学園へと強制的に入学する羽目になった時のことです。

 せっかく受かった志望校の入学権を失い、挙句の果てにこんなところに入るハメになった俺はそれなりに荒れてた、と思います。思うというのは、良くも悪くも長い物には巻かれろで考えたから、あまり面倒ごと起こしたくないってのもあってそれなりに大人しくしてたからですね。それに1番最初の搭乗者である織斑一夏、あいつがいたからそれなりに苦しくなかったですし。

 その後、いろいろあってなんか……あぁ、セシリア・オルコットか。彼女と戦うことになり、そして俺らにISが支給されましたが、一夏はちゃんとした機体で、俺のは打鉄が専用機でした。ただ、特別にカラーだけは変えれたから赤と黒をベースとした俺なりにかっこいいのにしてもらいましたが。

 そしてもらった日の放課後から俺はISの操縦の練習を始めました。ただ歩くことすらふらふらなのに、飛ぼうとしようものなら一瞬で墜落をしてしまい、それを何日、何度も繰り返したのでしょう。

 ただそんなとき、現れたのが彼女でした。

 

 更識楯無。

 

 彼女は最初、アリーナの影で俺のことずっと見てたらしいですが、ずっと墜落してばかりの俺に何を思ったのかいきなり黙秘回線(プライベート・チャンネル)で俺にアドバイスしてきてくれたんですよね。

 俺は最初困惑したけど、彼女の指示はとても的確で、飛ぶこともままならなかったのにアリーナの締め切りぎりぎりのころにはそれなりに飛べるようにはなっていた、と思います。まあ、これでまともに飛ぶこともできず無様に負けるってことはなくなっただけですけどね。

 それから数日経ち、試合の日になった。最初一夏とオルコットが試合するはずが、専用機の搬入が遅れてるということで、俺が一番最初に出ることとなりましたが……結果は惨敗。

 一太刀も浴びせることができず、ひたすらに打ち抜かれて結果敗北。とても悔しかったですよ。

 その後……彼女、楯無さんは俺にISのコーチをしてくれることになりました。

 それはもう、地獄と言わんばかりにとても毎日が辛かったのは覚えてます。だけど、それでも彼女は俺のためにひたすら付き合ってくれました。ただ……まさか彼女が俺と一緒の部屋にいきなり住み込み始めたのは驚きましたけどね。まあ、それのおかげで学科のほうも見てもらってて、それなりに学力も上がりましたね。ほんと彼女様様です。

 

 と、まあこんなところですが……え、その後デートとかしたのか?……なんでそこまで言わないといけないのです?

 まあ……彼女と何度かデートに行きましたけど。……失礼ですね、俺だってあの時は必死に頑張ったんですよ。模擬戦で俺が勝ったら俺とデートしてくださいって。結果?まあ……何したか覚えてないけど引き分けにまでは持ち込みましたね、ええ。

 で、デートは何をしたか教えろと。まあ手短にカラオケから始まり、遊園地、水族館、縁日って。……その中でどれが一番記憶に残ってるのかって?それは……縁日、夏祭りの時ですかね。あの時見た彼女の浴衣姿。花火の色も、それを見る彼女の横顔も……もう全て遠い夢の中ですよ。

 

 そして夏休みも開けてさあ学園祭が近いってときでしたね。彼女の口から一夏の部屋に住むことになるって言われたのは。最初は信じられませんでしたよ。でも護衛の関係と彼も強くしないといけないからそうなるって言われたからには仕方ないと思いました。そのころは一応一夏にそこそこ勝てるようになってきてたんですよ。半ばアイツの自爆が多かったけど。

 ですがある日、彼女が一……織斑の部屋から裸エプロンで出てきたときはさすがに目を疑いましたね。そしてそのままアイツが彼女を部屋に押しやったのも見ました。ええ、はっきり覚えてます。

 織斑に対して殺意を抱いたのはおそらくこれが初めてですよ。それと同時に彼女に対して一瞬侮蔑に近い感情を抱いたのも覚えてます。まあ、彼氏彼女でもないのに何勝手に嫉妬してんだろうなって話ですがね。

 それからあまり楯無さんに接することなく、ただ1人でひたすらISに乗ってましたね。クラスで仲のいい子はあまりいませんでしたし、だからって専用機持ちと絡もうとするとあいつの取り巻きが俺を睨んでくることもありましたし。それにあの時は彼女と織斑を見ると、いつ仕掛けてしまうか考えてしまって極力絡まないようにしてました。

 それからいったん離れてましたが、まあある日、細かい内容は伏せますが学園で事件がありましてね。その結果彼女も怪我を負い、俺は彼女を必死に助けようとしましたが結果、俺も返り討ちに遭い、俺も彼女も織斑に助けてもらうハメになりましたけどね。正直あの時はうらやましかったですよ。ああいうのがヒーローなんだな、って。

 

 まあその後、学園ではいろいろな出来事があったけど、俺はただ強くなるため、彼女を振り向かせるためいろいろ努力しましたよ。まあ、専用機持ちたちはいろいろトラブル巻き込まれてたけど、打鉄を二次移行させた自分でもほぼ蚊帳の外でしたけどね……。

 

 それから12月入ったころだったかな。とある賭けで楯無さんと模擬戦したんですよ。結果はぎりぎり俺の勝利でした。アレ以降、一生得なかった唯一の勝利です。そして俺と楯無さんでまたデートして……。

 

「更識楯無さん。……俺は、貴女のことが好きです」ってね。

 

 あれは俺が本気でした告白でした。この時の彼女の驚き、そして目じりに涙を浮かべ、寂しそうな笑みを浮かべていたのは今も覚えてますよ。まあ、結果はそちらも知ってるんでしょう?彼女と仲良かったらしいですし。

 ……これで満足しましたか?え、もっと聞かせろ?はいはい、この話はここでおしまい!あんな恥ずかしいことしたんだからこれでいいでしょ!

 

 ……そういえば織斑は、あいつ誰かと結婚したんですかね?え、いきなり話題を逸らすなと?まあいいじゃないですか。あんなに思われてたんだから、そのうちの誰かと結婚ぐらいしてそうなんですが。

 ……6人と重婚?式も華やかだった?俺、何も知らないんですが。それにニュースにもなってないし、あいつが結婚するならそうなりそうなのに。

 はぁ……世間の混乱防止のため報道されなかったと。それで当時のIS学園のメンバーは知ってるが、俺は知らない、呼ばれてないと。はぁ……そうかー……。

 ええ、大丈夫ですよ。怒ってません。ただ帰ったら卒業アルバムを今度の燃えるゴミの日に出すか考えてるだけですよ。

 ……6人?あれ、なんか足りなくないですか?その6人の名前を言ってもらえますか?

 

 ……妹さんはされたのに、更識先輩、織斑と結婚してなかったんですか。驚いてるのかって?えぇ、そりゃそれなりに。あんな風に助けられたりしてたんで、そりゃあいつに惚れて結婚したんだと思ってましたよ。それに振られた理由もあいつのことが好きだからって思ってたし。

 もし彼女に会えるなら会いたい?それは……どうなんですかね。今の俺にもわかりませんよ、そんなこと。たしかにあの頃は彼女のことは好きでした。ですが今は……それに彼女、良いとこのお嬢様なら今となっては誰かと結婚してるでしょ絶対。だからもう好きとは言いませんよ。終わった夢なんです、これは。

 

 

 

 

 

 はぁ、やっとあのインタビューから解放されたぜ。ったく、無駄に他にいろいろ聞いてきて、すっげー疲れたわ。いや、あっちの方が一応本題、なのか?わかんねえわ。

 あぁ、冬の風は寒いな。缶コーヒーの暖かさが身に染みる。……それにしても楯無さんに告白したのはちょうどこんな日だったな。あの時はクリスマスが近くて、イルミネーションが街を照らしてたんだっけか。

 ……また会えるなら、か。そうだな、会えるならまた会いたいな。でもさ、俺はアンタに何話せばいいんだろう、わかんねえや。もし一目貴女を見れたら……俺は全てを諦めきれるのかな。

 

 また、貴女に会いたいな……刀奈さん……。

 

 

 




久しぶりに書きましたが、なんかいろいろ迷走してる気がしますね……でも、やる気を取り戻すための練習として書きました。

そして気づけばISも原作が始まって11年たちましたね。原作がまだ完結してないけど、これからもISを愛していきたいです。

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