口笛の使われている西部劇の曲とか聞きながら書きました。

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ワイルド・ワイルド・悪役令嬢

煌々と闇夜の中にきらめく、豪華絢爛なダンスホール。

中で踊る人々もまた、相応に高貴な者ばかり。

 

そこは、王子と高貴な血を引く町娘との婚約を祝う宴の場。

 

二人は、学舎で出会い恋に落ち…

王子の婚約者等の様々な障害を乗り越え、今宵遂に結ばれる…

 

曲が終わり、一瞬、静寂が訪れる。

 

スッと立ち上がり、この国の主が、場に居るものの注目を集めた。

 

この場で、王の口から二人の婚約が宣言されれば、晴れて二人は国中が認める仲となる。

 

誰もが、幸せな二人を脳裏に描き、王が口を開かんとしたその瞬間…

 

 

何処からか、寂しげな口笛の旋律が遠く届いた。

 

 

ダンスホールに居る誰もが辺りを見回し、その場違いな音色が何処からか来るのかと視線をさ迷わせる。

 

 

口笛の寂しげながらも、放牧的で雄大な景色を思わせる音色。

先程まで貴人のために曲を奏でていた者が、釣られるように足拍子をとった。

誰もがその奏者に対して思った。

((えっ?いきなり何こいつ。))

 

 

口笛は少しずつ近づいている。

 

 

にわかに、ダンスホールの扉の向こうから人の声が聞こえ、同時に雷鳴の様な轟音が一つ響き渡る。

 

そして、何事も無かったかのように聞こえて来る口笛。

 

何が起きたのか、混乱する貴人達が慌てダンスホールがざわめく。

 

足拍子をとる奏者とは別の奏者が、慌てる者を落ち着かせる為に音を奏でる。

有るものは、何となくこの口笛に合うような気がしたギターを。

そしてまた有るものは手元に合う楽器が無かったのか、苦し紛れに鼻歌を。

 

 

ふと…口笛が止んだ。

 

 

全ての者の視線が、ホールの入り口に注がれた瞬間

 

バン!

 

その絢爛たる扉が蹴り開けられた。

 

ホールのざわめきが収り、再び静寂が訪れる…

何故か奏者は音を刻むことを止めなかったが、貴人達の声は止んだ。

 

入り口から進み出たのは、テンガロンハットを目深にかぶり、腰に二丁の回転式拳銃(リボルバー)を差した西の大陸の荒くれ者(ガンマン)の様な装いの少女であった。

 

顔もはっきり見えぬのに、この場に居る全ての人間がその者が女だと認識した。

何故ならば、ブルネットの見事なまでの()()()()がまろびでていたから。

 

 

 

最初に言葉を発したのは、この国を率いる王だった。

 

「何者だ!」

 

対して、闖入者は自嘲する様に答える。

 

「名前…名前ですのね。生憎、わたくし名乗れるような名前持ち合わせておりませんの…ある者に剥奪(うば)われてしまいまして。」

 

「何ぃ?」

 

「ですが…西の大陸(フロンティア)では、こう呼ばれていましたわ。……“悪役令嬢(Evil Lady)”」

 

「なっ!貴様まさか!!くっ!近衛!近衛兵よ、こやつを撃ち殺せっ!!」

 

王の(めい)の元、近衛兵が少女を排除せんとライフルを構え…

 

瞬間。雷鳴が()()

 

そして、三人の近衛兵が蹲る。

 

何が起きたのかと入り口に立つ少女を見れば、彼女の手にはいつの間にか銃口から煙を棚引かせる回転式拳銃(リボルバー)が握られていた。

 

凍りついたダンスホールを彼女は進み、そしてダンスホールの真ん中で、高らかに名乗りを上げる。

帽子の鍔をまだ熱を失わぬ銃で押し上げながら。

 

「…『“悪役令嬢(Evil Lady)”フローレンス』ですわ。以後、お見知り置きを、憎き憎き国王陛下。」

 

 

ダンスホールには、何故か奏者達の背景音楽(BGM)だけが響いていた。

 

 

…続・『ワイルド・ワイルド・悪役令嬢』へ続かない。


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