ため息をつく。
幸せが一つ消えた。
存外にため息をつくと幸せが逃げるというのは本当のようである。
現に私の目の前から一つの幸せが去っていった。
私がついたため息の理由は至極簡単である。上司からの命令にうんざりしているからだ。まあその上司もそのまたさらに上司からの命令によるものであると理解はしているし、働かなくては次の瞬間にも首が飛ぶのも了解している。だがしかしそれでもうちの上司はなかなかにワーカホリックらしい。先程から山のような仕事が送られてくる。
そしてまたため息をつく。
幸せが一つ消える。
ところで同期のあいつは頑張っているのだろうか。あそこの部署の上司共は揃いも揃って仕事をしたがらない。まあその分部下の自分たちとしては仕事が減って楽にはなるのだがなんだかんだと言って自分の部署の上司がいきなり首を飛ばされるのはそこそこの罪悪感を感じるものだ。それなりには仕事しているといいのだが…それに比べてうちの上司は、っとまた仕事か。
また、ため息をつく。
幸せが一つ消える。
風の便りによるとうちの親会社は世界一の利益を上げており、その中でもここの地区の利益が一番高いとのこと。対外的には親会社はすごい会社で労働環境もさぞや素晴らしいものだと思われてでもいるのだろうか。実際のところ、正直上司の指示次第なものだから私のようにブラックなところや同期のあいつのようにホワイトなところもあるのだろう。
こう比べてしまうとあいつがかなり羨ましい。こちらは過労の過ぎる職場のような気がしてならない。言ってるそばからまた仕事か。
ため息をつく。
もう、一つ、幸せが、消えた。
どうやら私の上司は仕事を楽しめるような人間のようだ。今までは会社に取り憑かれたワーカホリックかと思っていたのだが。ふと視線を上司にむけてみたら笑いながら仕事をしていたのである。余程楽しいようだ。そしてかなり刹那的な思考をしてるようだともとれた。さっきも後のことなど知ったことかとでも言うように子どもたちに花火を与えていた。ああ、言わんこっちゃない。早速困り事じゃないか。それで私に仕事を振るのをやめてもらえないだろうか。
ため息をつく。
幸せが、消えた。
ここらで食事を取るようだ。疲れていたからちょうどいい。うちの会社は何故か食料が上司から供給されるから食費がかからなくて助かるのだが、如何せん上司から与えられるのは鉛色の玉が多いので代わり映えがせずそろそろ飽きてきた次第だ。供給されている身なので文句も言えないが。たまには光る玉でもくれるとやる気も出るのだが…
食事の時間も終わりのようだ。早速仕事をしろとの命だ。
ため息をつく。
幸せが一つ
おや、上司の首が飛んだようだ。やはり先程の花火が見つかったらしい。痛そうな拳骨だ。頭から赤い火花が出てる。あれは俗に言うパワハラに入るのでは?まあ首が飛んでいるのであまり関係はないだろうが。
どうやら上司の首が飛んだために私も異動になるようだ。次の上司ができるだけワーカホリックではないことを祈りたい。
世界一のワーカホリックではなかろうか。
こちらも昔書いたものを発掘しました。
追記:活動報告にて設定兼あとがき投稿しました。(2020/10/08)
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=247797&uid=273774