ある学生の軌跡   作:ウルサスに救いを

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ガチャ目的は割と性能よりビジュアル、私でございます。
最近よーやっとグムちゃんゲットで、本格的にリソースが死にそうな今日この頃。
ウルサス組、こんぺいとう食べ過ぎ問題。銀灰にもムシャられてボドボドです、ハイ。

今回より後日談という名の蛇足編スタートでございます。宜しければ、お付き合いください。


『赤牛』様、評価ありがとうございます。
蛇足でも宜しければ、どうぞお付き合い頂ければ幸いです。


~後日談~ きっと、蛇足
彼女たちから見た姿は


 ウルサス学生自治団、本部。

 

「ぅぁ………」

 

 顔を真赤にしたシュトルムが床に突っ伏す中、ズィマーの怒号が響く。

 

「おい誰だ、コイツが居る中でハチミツドリンク飲んだ馬鹿は!?」

 

 空のグラスに残る、黄金色の雫………甘い匂いのお陰で、ハチミツドリンクだとわかる。そして、匂いだけでダメになるこの男がそれを飲める筈も無い以上、犯人が別であることは明らか。

 

「多分、リェータが」

「アイツが?………いや、今はいいか。ったく」

 

 溜息を吐き、ズィマーはダウンしたシュトルムを背負い、彼の居室まで運ぶ。同じくロドスのオペレーターとして活動中の身である事もあり、彼の居室の場所はしっかりと把握しており、難なく到着。しかし、当然しっかり鍵がかかっており、持ち物を漁る訳にもいかず、止む無く彼女の部屋に放り込む。

 

「………ここまで弱いとはなぁ」

 

 程度の多少はあれ、ここまで極端に弱いのは想定外だった。今でも、時折信じられなくなるのだが、眼前の現実が真実を雄弁に語る。戦場で発揮される、強力極まる力の数々からは考えられない弱りようだ。

 

 ついこの前までただの学生だった、とは思えない程に器用に剣を、短剣を、挙句ボウガンやら拳銃まで使い、更には強烈な風のアーツで遠距離攻撃の無効化からドローンの破壊、撃墜まで………それでも尚、ロドスで上位に位置するオペレーターたちには届かないというのだから、驚くやら、飽きれるやら。

 

「なあ」

 

 自然に、そんな声が漏れる。

 

「アタシは、お前の信頼に応えられてるか?」

 

 らしくない弱音だ。

 しかし、そんなモノを抱いてしまう程に、今の彼は遠くに見えているのだろう。事実、初陣からレユニオン幹部の捕縛にと、叩き出している戦果は元学生とは思えぬほどに凄まじい。その後の任務でも、彼のアーツに大いに助けられ………と。

 

 そして、優れた指揮官であるドクターの存在だ。学生自治団の長はズィマーだが、その一員である彼に応えられるほどの活躍ができていないことが、彼女を密かに蝕んでいたのだろう。比較対象が悪すぎるとはいえ、それを指摘できる者は居ない。

 

「アタシは………」

 

 彼と違い、特段身体能力が、運動神経が優れている訳でもない。アーツ適正だって特段優れている訳ではなく、ロドスにおいても、基本的に自身の部下として収まる彼への、隠し切れぬ劣等が、焦燥が募っているのだ。

 

 彼女は一度、大きな過ちを犯している。その重責を自分のせいだ、と断じ、彼女の罪を否定しようとした男に対し、どれほど報いることが出来ているのか、不安で仕方がない。相手がそんなものを望むタチでないことは重々承知していても、不安というものは際限なく沸き上がってしまうものだ。

 怖いのだ。彼女を信じていると断言してくれたからこそ、見放されるのではないかと思うと、怖くて怖くて仕方がない。なのに、それを表に出せない。弱みを見せたところで、それを理由に見放すような人間でないとわかっていても、怖くて仕方がない。

 

「………アタシ、は………」

 

 誰よりも、自身が許せない。日々自責に苦しむ少女にとって、過ちを許し、リーダーとして受け入れてくれる人間が、どれほど有難く、また辛く苦しいか。あの傭兵たちに助けられなければ、傷が悪化し手遅れになっていた可能性まであるというのに、この男はその結果を招いた彼女を信じてくれる。それが、どれほど辛いか。

 

 力無く、ただ椅子に体重を預ける。救いでありながら重圧である男は、何も答えなかった。

 

******

 

 ズィマーがシュトルムを連れて行った後、イースチナは密かに安堵の息を零す。

 

「シュトルムお兄ちゃん、大丈夫かな………」

「大丈夫ですよ、きっと」

 

 彼に対し恩義もあるが、イースチナにとってシュトルムもとい、レナートという人間は、それ以上に恐ろしい人間でもあった。食料の強奪や他の勢力との抗争の中で見せた頼もしさは、間違いなく大きな助けとなっていたが、親友をその手にかけた身からすれば、垣間見える冷たさが酷く恐ろしい。

 

「………イースチナお姉ちゃんって、お兄ちゃんのことどう思ってるの?」

 

 グムのその問いに、どう答えたものかと思案する。そこに、意外な人物が加わる。

 

「確かに、少しばかり気になるわね」

「あ、ロサお姉ちゃん」

「貴女もですか………むぅ」

 

 ロサが加わり、尚更どうしたものかと悩む。

 

「グムはどう思っているの?」

「グムはね、優しい人だと思うな!」

 

 間違いではないだろう。グムが目にしてきた彼の一面は、仲間の為に出来る限りの手を尽くす姿が主である為、そう思うのも当然だ。数少ない年下ということもあり、シュトルム自身も他より気にかけている為、余計に好印象なのだろう。

 

 対し、ロサは納得するように頷きつつも、包み隠さず自身の抱いているモノを口にする。

 

「そうですか。私は、少々怖く思う事もありましたね」

「こわい?」

「ええ。だって彼、ペテルヘイム高校の生徒よ?」

 

 その理由は、奇しくもイースチナと同じもの………いや、同じモノであるが、イースチナはそれだけでは無い。もっと私的で、割り切るべき感情もあり、ロサ程簡単ではない、と冷静に思考。

 

「ズィマーの元で行動していた時もそうだけれど、敵対者への容赦の無さが恐ろしいの」

「………私もです。それに………」

 

 思い出すのは、校内の地獄が始まってすぐ。まだ彼が、単独での夜間防衛以外に殆ど動いていなかった頃のことで、彼女としても半ば盗み聞くような形で遭遇した中での出来事だったか。

 

『頼む!もう手は出さないから、な?俺たち、友達だろ?』

『ああ』

 

 そんな会話の直後、響いたのは何かが潰れる生々しい音と、断末魔とすら呼べない奇妙な声。

 

『友達()()()な』

 

 翌日見たその場の光景から、恐らく頭部を破壊したのだろうことは容易に想像できた。

 それでいて、彼は多くの殺戮に対し、欠片も罪悪感や後悔を見せていない。仲間内に対し見せる配慮から、殺人自体を禁忌と判断する程度の倫理価値観は持ち合わせている事が判るものの、それが却って不気味さと、その狂い様を際立たせているというべきか。

 

 ………いや、一番恐ろしいのは、そんな冷徹さに羨望すら抱いた、自分自身か。

 

「友人だったであろう学生たちを殺しても、欠片も感情を動かさない。それに、私のグループから彼を消そうと動いた人たちは、誰一人として生きて帰ってはこなかったわ」

「でしょうね。恐らく、総合的に見て一番多くの学生を殺しているのは、彼ですから」

 

 グムが微かに竦むと、ロサは優しくその頭を撫でる。そして、柔らかく笑うのだ。

 

「だけど、優しい人物なのも事実よ」

「そこは否定しません」

「それに………いえ、ここで言うことではないわね」

 

 帝国の政策もあり、感染者とそれを庇う者へは、公的機関も一般住民も極端に厳しい。その極端さは同じくウルサス帝国出身のフロストノヴァ、スカルシュレッダーを見れば明らかであり、感染者である姉を庇った彼の過去は、相応に昏く、血に濡れている。

 

 敵対者は欠片の容赦も無く殺し、それを当然と認識、過去の交友など関係無しに、記憶する間でもないと完全に切り捨てる。対し、仲間として認識したならば、喪うまいと死に物狂いで力を振い、守りにかかる………すべては、目前で両親を惨殺された過去の反動であり、暴動と動乱により、それが最悪手前の形で発露、更に環境が原因で歪んだ結果なのだ。

 

 そして、その極端とも言える程に歪んだ二面性が恐怖の象徴として、巡り巡って内部分裂を防いでいたというのだから、皮肉という他あるまい。親が軍警の中でもマトモな部類の人間でなければ、もっとひどいコトになっていた可能性を考えれば、アレでも大分まともな結果と言えるが。

 

「それでも、やっぱり怖いです。いつか、私たちも躊躇いなく殺されるんじゃないか。あの手でこの首を折られて、何かをする暇もなく、息の根を止められるんじゃないかって」

 

 彼が学内で行っていた殺傷の主な手段は、その腕力握力に物を言わせた頭蓋の、或いは頸椎の破壊による問答無用の即死。抵抗する暇など与えられず、捕まった瞬間に死が確定するのを目の当たりにしている上、彼の冷徹さも知っているイースチナにしてみれば、恐ろしくて仕方ないのだろう。

 たとえ、そんなことがあり得ない、と心の底では理解していても。

 

「わかるわ。私も、一歩間違えばあの手で殺されてたもの」

 

 ズィマーが、イースチナが生かす事を決めた時には、完全に敵意も何も折れていた。

 だが、もしもそれより前。彼女が貴族を扇動していた時に命を狙われていれば………そう考えれば、途端に恐ろしくなる。今ならその結末を受け入れることは出来るのだが、あの冷たい目で見下ろされ、首を握り砕かれたらと思うと、やはり恐怖は沸く。

 

「大丈夫だよ」

「ええ、わかってるわ」

 

 グムの優しい声に応じるように、ロサも微笑む。

 

「イースチナも、わかっているでしょう?」

「ええ。容赦の無さは恐ろしいですが、敵対する理由がない以上、こちらに向く事はありません」

「そうだよ!それに、お姉ちゃんたちが悪いコトしようとしたら、グムが止めるもん!」

 

 胸を張るグムに、二人が笑みをこぼす。微笑ましい年下の少女を優しく撫でれば、困惑しながらも直ぐに受け入れ、嬉しそうに撫でられる。その姿が空気を穏やかなものに変え、二人も自然と穏やかな気持ちになれる。

 

「そうね。間違えた時は、是非お願いしようかしら」

「任せてよ!」

 

 柔らかく笑い、ロサは遠くを見やる。

 

「きっと、ロドスの一員として活動している限り、そうはならないでしょうけど」

 

 そう微笑み、席を立つ。

 

「折角だし、軽いお茶会でもしましょうか。丁度、頂いたお菓子があるの」

「わーい!」

「おや、珍しいですね。誰に頂いたんですか?」

「ハイビスカスさん」

「「ちょっと待って」」

「ふふ、冗談よ」

 

 二人が冷や冷やするきついジョークを飛ばしたロサが席を立ち、準備に移る。

 シュトルム、ズィマーらが居ない事を惜しむ素振りを見せたものの、貰ったお菓子がはちみつクッキーであることを思い出し、どちらにせよ彼は参加できないと苦笑を浮かべ、そのままお茶の用意を始めた。




・シュトルム
開幕ダウンした主人公。戦闘力は跳ね上がったが、ハチミツ耐性は変わらず。幅広く手を伸ばしている事も併せ、リーダーの劣等感を煽ってしまっていたが、気付けてない。
良くも悪くも、敵味方の認識が極端で、敵と見做せば友人程度なら躊躇いも後悔も無く殺すことができ、また味方に無用な殺人はして欲しくないと思う程度の倫理観を持ち合わせている。
その冷酷さ以上に圧倒的な力から、明確に動いて以降、グループ内に対する抑止力と化していた。

・ズィマー
シュトルムの所属部隊の隊長であり、学生自治団のリーダー。
彼やドクターと自身を比べる、過去の負い目、等々抱え込んでおり、内心怯えている。
彼の信頼は救いと共に重圧ともなっており、どう応えればいいのか悩みに悩んでいる。

・イースチナ
彼の殺人の一幕から、その極端な二面性を最もよく知る人物となっており、内心恐れている。
また、彼が本格的に動くのが早ければ………と恨むと同時に、その極端なまでの冷酷さには微かな羨望を抱いており、その二つから強烈な自己嫌悪を抱き、と内心は複雑。

・グム
一番救われている子。最悪の選択を行うことなく、また比較的優しい面を多く見てきている為、シュトルムへの印象は良好。大体、ズィマーに対するものと似た感じ。

・ロサ
明確な恐怖と共に、確かな信頼を抱いている人物。
ズィマーと似たようなモノを抱えているが、リーダーという立場でない分重圧は多少軽い。
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