ある学生の軌跡   作:ウルサスに救いを

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どうも、自動指揮はTW-6が限界な初心者ドクター(約一カ月)です。
ズィマー、グム、チナちゃん、アブサントとウルサス組が綺麗に刺さってくれてるのに、地力不足でTW-6の縛り突破すら無理という。スキル育成しようにも素材も本も足りないという悲しみ………


『更級』様、『sigure4539』様、評価ありがとうございます!
評価を頂けるだけでも非常に嬉しいのですが、一つだけ我儘を言わせて頂きたく思います。

できれば、感想もよろしくお願い申し上げます!


心というものは、目には見えず

 訓練室の映像を背に、笑顔のケルシーがMon3trを従え仁王立ちする。

 

「さて、言いたい事はわかるな?」

「いや、あれは流石に予想外というか………」

 

 全力で顔を引き攣らせたサルカズ、Wが映像に目をやる。

 そこには、彼女が遊び半分で渡した大型の銃を、平然と使いこなす様子を見せるシュトルムの姿………はっきり言って、異常である。しっかりとした訓練を経ても、サンクタ以外では拳銃を扱えるようになるのが精々だというのに、青髪のウルサスはその常識に真っ向から喧嘩を売っているのだ。

 

「この映像はな、拳銃の腕前が一般狙撃オペレーターの平均水準を超えた翌日のものなんだ」

「うっそぉ」

 

 頭痛を堪えるように眉間を揉むケルシーの目の前で、Wがぽかんとなり、呟く。

 

「まあ、これは氷山の一角に過ぎんのだが………」

 

 Wが違和感を覚える様子で盛大な溜息を吐き、ケルシーは目に剣呑な光を宿す。

 その瞬間、Wは降参するように諸手を上げ、せめて少しでも来たる痛みが和らぐことを祈った。

 

「誰が余計なモノを叩き起こせと言った!」

「わかる訳ないでしょ!?」

 

 瞬間、ロドスが大きく揺れ―――しかし、いつものこと(!?)なので、誰も気にしなかった。

 

******

 

「今、揺れませんでしたか?」

「いつものことじゃないかな?」

「ンなコト気にする暇あんなら、コレ処理すんの手伝えってーの」

「わ、わかってます!」

 

 その頃、元凶たるシュトルムはドクター、アーミヤの事務仕事の手伝いをしていた。

 意外極まる組み合わせであるが、素人にしては悪くない速度で書類の分類を進めており、そこそこ彼らの業務を助けていた。無論、しっかりと教育を受けた者には劣っているのだが、成り行きの助っ人としては普通に優秀と言える。

 

「っと………?」

 

 そんな彼の手が、ふと止まる。

 

「どうしたんですか?って、ああ、そういえば」

 

 アーミヤがそれを軽々回収し、とてとてとドクターのもとへと持って行く。

 

「こちらですが、シュトルムさんについての報告ですね」

「ん?どれど………んんん!?」

 

 ドクターが思わず立ち上がり、シュトルムを見やる。

 

「んだ?なんか妙なコトでも?」

「いや、え?………銃、使えるの?」

「おかしかないだろ」

 

 拳銃に限定すれば、リスカムやジェシカといった例がいるため問題ない。だが、それも拳銃に限定した場合の話である。しっかりと訓練すれば大体の者が使える代物ならば兎に角、この男はもっと異質なモノである。

 

「いや、あの………大型銃を使えるって」

「あー………まあ、使えるな」

「あの、シュトルムさんってサンクタの血とか」

「どっちもウルサスだっつーの」

「ですよね」

 

 シュトルムが呆れ気味に零し、嘆息する。サンクタ以外で銃器、特に拳銃より大型且つ複雑な代物を扱うというのは、非常に稀な例しかない。そして、それを成したのが元々素人であろう学生、しかもごくごく短期間で習熟となれば、異常というほかない。

 

「正直、俺もなんで使えてるかわからんが」

「わからないんだ………」

「まあ、サンクタの方々もそういった感じらしいですし」

 

 なお、サンクタと異なり、シュトルムが銃を扱える理由は風のアーツの素質に由来する高い感知能力にある。要は、複雑怪奇な銃の内部構造を、そこを通る風から凡そ把握できている訳だ。姉のグローザも同様のことが出来るのだが、反動を抑え込む為力んだ瞬間に銃がスクラップと化すため、どうあがいても使えない。

 

 そんなコトを知らない二人が唸る中、シュトルムは大して気にした様子を見せず、書類の整理を再開。無骨な指で器用に書類をめくり、血色の瞳で文字を読み取り、選別。表情は宜しく無いが、元が文字通り無数の山であった以上、止む無しか。

 

「ったく、一企業のボスってのも楽じゃねえなぁ………いや、ここがデカいからか」

「確かに、ロドスは各方面との」

「ああ、そういう小難しいのはいいから」

 

 学校での成績からわかる通り、間違いなく学習能力は高い。しかし、それとそういったことを好むかは別問題であり、どうやらそのテの話題はあまり好みではないようだ。顔を顰め、手を振り話題を切り上げさせる。その仕草に苦笑を浮かべたアーミヤは小難しい話を切り上げ、休憩にとお茶の準備の為一度退室。

 

「よし、行ったな?俺たちも休もう」

「それでいいのか?」

「それでいいのさ」

 

 肩やら首やらをゴキゴキ慣らし、ドクターが伸びをする。その音にシュトルムが顔を引き攣らせていると、素顔不詳の人物はにやりと笑うような気配を滲ませ、ソファに座るよう手で示す。素直に従い座ると、正体不明の敏腕指揮官は、真剣な様子で口を開く。

 

「キミは、アブサントをどう思っているのかな?」

「………いきなりだな、おい」

「そりゃあ、今まで話す機会も皆無だったしね」

 

 シュトルムが納得と共に頷く中、ドクターはソファに全体重を預けリラックス。気を抜きに抜いているように見せて、しかし中々に鋭く、痛い質問を放った。

 

「そもそもシュトルム、訓練以外でオペレーターたちとあまり交流してないじゃないか」

 

 沈黙した彼に構わず、言葉を続ける。

 

「食堂、購買の利用が皆無なのは、まあ体質の問題もあるんだろうけどね。それらを加味してみても、キミについてよく知らないオペレーターが多いみたいだし、今後の事を考えても、もっと交流の輪を広げるべきだと思うんだ」

「………」

「あとはまあ、今回みたく休暇をこまめに、って事かな。ズィマーたちも心配してるし」

「そうかい」

 

 どことなく無関心を思わせる声色だが、ドクターは何かを感じ取り、姿勢を正す。

 

「よければ、」

「お茶の用意ができ………あ、あれ?」

 

 そこに戻ってきたアーミヤにより、ドクターの言葉が途切れる。

 

「なんでもねぇよ。んじゃ、俺はこの辺で」

「あ、いや待って!お願いだからもう少し手伝って!」

 

 一転して半泣きの懇願を受け、流石に断り難くなったシュトルムは、腰を上げる事も出来ず、大人しくアーミヤが淹れてきた紅茶を受け取り、口をつける。ドクターも続けてカップを手に取り、口をつけようとして

 

(あ、あれ………?)

「どうかしたのか?」

「いや、何でもない」

 

 ドクターの疑問に、あまりにも間髪入れずに答えた為に、却って怪しまれる。シュトルムのどこか不自然な振る舞いに違和感を覚えたのは彼だけでないようで、アーミヤも微かに耳を揺らし、彼へと向ける視線の色を変える。

 その様子に居心地悪そうにしながら、紅茶を飲み干したシュトルムはカップを置き、軽く溜息。決して褒められない振る舞いであるが、二人はそれを隠し事がある反応と見抜き、どうするかアイコンタクト。アーミヤが軽く頷いたかと思えば、最初に話を切り出した。

 

「シュトルムさん、訓練以外の時間は何をなさってるんですか?」

「なんだ、藪から棒に」

「いえ、オペレーターの皆さんとの交流にも乏しいとお聞きしてますので、その時間で何をしているのか、気になりまして。ウルサスから来た皆さんが、オーバーワーク気味なのではと心配してましたから、しっかりと伝えておこうかと思ったんです」

「あいつら………」

 

 シュトルムの表情は芳しくなく、彼が命を張って彼女たちを助け続けた事実と繋がらない。一層違和感を強める結果に二人がそれぞれ思考を巡らせる中、シュトルムはそれに気付いた様子もなく、部屋でしている事を口にする。

 

「支給された装備の手入れ、とかだ。いつどんな任務に行くことになるかわかねぇしな」

「成程、それで狙撃オペレーターも目指しているんですか?」

「なんでそうなる?」

「え、違うんですか?」

 

 驚く二人に微かに驚きながら、シュトルムは苦笑気味に口を開く。

 

「使える手札が多い方が、いざって時の対応力に幅が出るだろ?そういうこった」

「成程………でも、大抵はアーツで問題ありませんよね?」

「俺のアーツ制御に難ありまくりなことくらい、アンタが一番よく知ってるだろ」

 

 武器戦闘技能において、成長性含め非常に優れている反面、シュトルムの非常に高出力な暴風のアーツについては、制御が拙いとまで評されている。事実、単純な暴風による吹き飛ばし、物理的破壊に、暴風による対遠距離攻撃防御と、出来る事は意外に限られる。その為、身体能力以上にアーツ能力の制御が卓越した姉と比べ、格上相手の突破力に乏しいのだ。

 そして、アーミヤは龍門での一連の騒動の中で彼と肩を並べていた為、その欠点もよく知っている。改めて言われてそれを思い出した彼女は、味方にも影響を及ぼす面攻撃より、小回りの利く射撃攻撃の方が有用な場面は多いだろう、と納得を示した。

 

「言われてみれば、その通りでした。ですが、大型銃の方は………」

「ああ、折角Wがくれたんだし、使えた方がいいかと思って」

 

 そんな気安く!?と叫びかける二人だが、ぐっと堪える。

 

 尚、Wにとっても当然予想外であり、ロドスに押収されたコレクションが埃を被るくらいならば、程度の気持ちで渡した結果、ケルシーが頭を抱えるようなことをしでかすなど、想定外にも程があった。

 

「前衛オペレーターであんな大型の銃を使う機会、あると思いますか?」

「まあ、普通は無いな。精々、殿とかで時間を稼ぐときの攪乱に使えるか、程度か」

 

 さらりと有事に死にに行くことを厭わぬ姿勢を見せ、二人の肝を冷やさせる。

 

「ま、本当に追い詰められた時だけだ。そうならないよう、期待してるぜ?ドクター」

「は、ははは………キミに言われると重みが違うなぁ」

 

 重みとは、双肩にかかるソレの事か。

 グローザという特級の爆弾の起爆装置足り得る以上、シュトルムが死ぬという事態は何としてでも避けるべきものである。好き好んで天災級の怪物と敵対する酔狂など、ごく一部の戦闘狂だけで十分。何より、ロドスのドクターとして在る以上、背負うものを危険に晒す訳にはいかないのだから。

 

「まあ、無茶をする必要が無いよう、しっかり指揮させて貰うよ」

 

 その返答にアーミヤ共々笑みを浮かべるシュトルムだが、彼女の方は得られた回答に引っ掛かりがあるらしく、直ぐに表情を改めて問い詰める。

 

「それじゃあ、武器の整備を終えてからは、何をしてるんですか?」

「………なにも」

 

 その回答に、二人は血の気が引くような感覚を覚える。

 

「なにも、って………その、趣味のお時間、とかは」

「あー」

 

 完全に他人事感覚の声と、続く回答から、二人は顔を見合わせ、鋭い視線を交わした。

 

「そんなのもあったな。ここしばらく、考えてすら無かった」

 

 ―――――このままでは、不味い。

 

 その結論に至るのは、当然と言えた。

 

 

 実は、ケルシーも同様であり、だからこそ、余計な素質を引出して()()()()Wへと怒りを向けていたのだ。鍛えられる要素が増えれば、それだけそちらにも時間を割く事が可能となってしまう為、それを危惧していたのだ。




・ケルシー
冒頭でWにドギツい仕置きを叩き込んだ人。
成長性の高さと、それ以上の危うさを見抜き、全力で警戒中。
何なら、手元に置いて直接監視も視野に入れている。

・W
押収予定だったコレクションから、偶然居合わせたシュトルムが興味津々に見ていた大型銃を一丁渡したサルカズ。しっかり手入れ等するのが条件であったが、使いこなされるのは完全に想定外。
結果、余計な引き金を引いてしまい、ケルシーの怒りを買ってしまう。

・ドクター
こっそり脱走がバレた先でシュトルムに遭遇し、学生だろうと知ったこっちゃないとばかりに泣きついた男。しかしながら、ダメなだけの人間ではなく、ちゃんと彼の抱えるモノ等を見抜いたりと、優秀なトコロは優秀。

・アーミヤ
何故かブラックな属性を付加されてる系コータス。今回、シュトルムの私生活に切り込んだ末、色々とヤバい事にドクター共々気付いた。今後、どのように対処するのかは………



・シュトルム
色々抱え込んでいるせいで、壊れかけている系主人公。

サンクタ以外では使える者皆無の大型銃を使用できた、素質の化物。ただし発展途上である上、まだ使用できるというだけなので、狙撃オペレーターと比較すると天と地ほどの差がある。

精神的にかなり追い込まれている様子だが、他者に打ち明けた形跡は無し。趣味というものを長らく忘れている、仲間の心配に宜しくない反応を示す、紅茶を口にして妙な反応を示す等々が表出していた事で、このままでは危険だとドクターたちが判断するに至った。
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