ある学生の軌跡   作:ウルサスに救いを

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続いた。ズィマーさんや、要求ちょっちえぐくなーい?(初心者並感)
ロサ欲しい、玉が無い………あばっばばばばば



まさか、投票してくださる方が居るとは予想外でした。
『名無しの』様、『Hibiki7733』様、ありがとうございました!


誰もが悔恨を抱く

 闇の中、運よくぐっすりと眠ったレユニオン・ムーブメントの暴徒たちの中、レナートは一人緊張と焦燥から来る汗を拭い捨てる。

 

(少ない………クソ、これじゃ足りねえぞ………!)

 

 舌打ちしたい衝動を抑え、静かに素早く眠った者たちの荷物を漁る。

 個々人が持つ、そこまで多くは無い食料を必死にかき集め、学生自治団の面々に飢えを凌がせる………レナートが命懸けで日々行って来たルーチンワークだが、その日はそれぞれの集団がより少数に別れていた。そのせいで、普段以上に僅かな食糧しか得ることが出来ないのだ。

 

(流石にバレてきたか………あ?)

 

 ふと、やけに大きな袋を幾つか見つける。そっと周囲を警戒しつつ手を伸ばし開けてみれば、これまでより格段に多い食料が詰まっていた。驚愕に固まり、即座に罠を疑い警戒していると、その懸念と危惧を示すかのように声が響いた。

 

「罠じゃない。毒も入ってないから、安心して持って行け」

「ッ!?」

 

 咄嗟に振り返れば、その眉間に特異な形のクロスボウが突き付けられる。それを構える人物単独ならば、殺す事も容易く思えるのだが、既に武器を突きつけられているという状況がそれを許さない。サイズの都合、初撃を躱せばなんとか、と思考するレナートだが、自身の悪癖を噛み締め改めて思考を回し、既に詰みであることを理解。

 

「………随分と、気前がいいんだな」

「ここまでの惨状は望んでいない。けど、彼にも逆らえない。これが精一杯だ」

 

 調子のいい言葉に眉を吊り上げ激情を見せるも、その表情はとても嘘には見えない。かといって、信じ切る事も出来ず膠着状態が続き、沈黙が降りる。長引けば、その分リスクが跳ね上がる………先に退いたのは、相手の方だった。

 

「一袋一日分だ。撤退するまで、それで持つはずだ」

「本当に、なにが目的だ?」

 

 その問いに答えず、相手の狙撃手はアーツを発動。ステルスにより認識を外れ、レナートは()()()しか相手を知覚できなくなる。追跡不可能と判断し、レナートは一刻も早くその場を離れるべく疾駆。

 酸化した血でどす黒く染まったカーテンを纏い、多少なりとも夜闇での視認性を落として、何とか暴動の中で窓が消えた箇所から校舎へと戻り、学生自治団のテリトリーへと向かう。可能な限り足音は消しているが、それも外に漏れない程度でしかない。

 

「………」

 

 そんな足音が聞こえる訳でも無いが、狙撃手の少年は校舎をじっと見つめていた。

 

******

 

 そして、翌朝。

 

「えー………マジか」

「にわかには信じられませんね………」

 

 ソニアと、その古い友人のアンナが呆然と零し、レナートが肩を竦める。

 

「俺も、朝起きて改めて驚いたよ」

「けど、だからってアタシの部屋に平然と来るか?普通」

「なんだ、ボスは死体の臭いが染みついた飯がお望みだったか?」

 

 力任せに脛を蹴られ、その場に崩れ落ちる。声もなく激痛に打ち震える馬鹿から視線を外し、ソニアは改めて袋を数え、頭を抱える。ここで問題になるのが、複数日分を纏めて渡されたという点。

 幸い保存が利く代物ではあるが、これまでギリギリだった者たちが、素直にそれを聞いてくれるかどうか。それだけでも頭が痛かったというのに、ソニアが意見を求めるべく呼んだアンナから齎された情報が、追い討ちとなってしまった。

 

「しかし、これだけあると却って不味いですね」

「ん?どういう意味だ?」

「あまり物を食べていない状態から一気に栄養を取ると、体がショック症状を起こして最悪死に至ると、本に書いてありました。これまで、皆空腹とまではいかずとも、満腹には程遠いギリギリの状態でしたから………」

「ああ、結局何とかなってたのも、他のが軒並みくたばってたお陰だしなぁ」

 

 現在、ペテルヘイム高校に収容された生徒の生存者は、現在ソニアたち一行のみである。そのお陰で争いも殆ど無く、皆エネルギーを使わないお陰で比較的安定した環境にあった………が、いざ真っ当な量の食糧を前にして、危険と知らされ自制できる者がどれだけいるか。

 

 なお、レナートは毒味の為無作為に幾つか食べて確認していた為、結果的に他よりやや多めに食べれていた。その分、夜にやっていたことがハードである為、不満を言える者は居なかった。また、そのお陰で彼の安全はある程度保障されている。

 

「ってーと、最初は小分けした方がいいか」

「恐らく。ソニアと、あとナターリアも控え目にしておくべきですね」

「………バレてたか」

「二人がわかりやすすぎるだけです」

 

 わかりやすい負い目を感じていた二人は、積極的に自分の分を他の者に分け与えていた。これについては、なるべく一人で休息を取り、接触時間を減らしていたレナートにはわからなかった事だ。

 

 そのことを察したレナートは溜息を零し、食糧袋を見やった。

 

「じゃあ、今日の分を減らすとこからだな。手ェ貸してくれ」

「あの、私も本で読んだのは大分前なので、そこまで詳しくは………」

「そこまで厳密じゃなくてもいいだろ。要は、毎日ちょっとっつ増やしていけば問題無い筈だ」

 

 何かあったら、この楽観視野郎のせいにすればいい。

 

 そう笑い、今日分の食糧を調整する作業へと移る。

 アンナの手を借りての作業はそこそこ早く終わり、早速待っている仲間たちの元へと向かう。道中で食料を求めての不和が広がる可能性へと思い至ったレナートは、どうしたものかと密かに頭を悩ませながら、ソニアとアンナに続いて部屋に踏み入った。

 

「お、なんだ?なんか妙にデカい袋だけど………」

「ああ。とりあえず、数日分の食糧が確保できたんだが………アンナ、頼む」

 

 ソニアに丸投げされたアンナは、溜息の後に自らの知識を語る。その内容に緊張と落胆が返され、久し振りに満腹まで食べられるのではないか、という希望は無残に打ち砕かれた。特に、ラーダは一目でわかる程に落ち込んでいる。

 無論、皆が皆信じている訳では無いようで、訝し気な視線を向ける者も。ある程度予想通りの展開になり、レナートは肩を竦め、予め用意していたことを提案する。リスクはあるが、その分現状を幾らか緩和できるものでもある。

 

「それじゃあ、俺が図書室で本を探してくる。それに書いてありゃ、問題無いだろ?」

「馬鹿かテメエは」

 

 ソニアの目が『やめろ』と訴えてくるも、それを諫める。

 

「けど、こういうのは信憑性が大事だろ?同じようなのが複数冊に書かれてりゃ」

「わーった、わーったから!ならせめて、ロザリン連れてけ」

「お、リーダー直々のご指名とは嬉しいな」

 

 安堵したように声を弾ませる彼女は、早速とばかりにドアへと向かう。

 

「アンナ………は、居なくても大丈夫か」

「え、いいんですか?」

「安心しろ、そいつそう見えて猫被り上手の優等生だからな」

「猫被りは余計だっつーの」

「え、ええ?!」

 

 一斉に驚愕され、居心地悪そうにレナートは教室を飛び出す。苦笑するロザリンも続けて教室を出れば、異様な空気と沈黙が残される。先程まで食糧の件で荒みかけていた空気もなんのそのであり、思わず別学校の者が問い掛ける始末。

 

「えっと………マジ?」

「つまんねぇミスで点落とす事はあっても、基本学年上位だぞ、アイツ」

「………ソニアは?」

「うっせ」

 

 アンナの疑問にそっぽを向き、サボり魔だったソニアは回答拒否。

 

 その頃、レナートとロザリンは窓の下をしゃがんで進んでいた。これまでの襲撃の犯人として顔が割れている上、彼が遭遇した人物のような狙撃手が他に居ないとも限らない、と判断してのことで、ロザリンも身の安全の為、同様にしているのだ。

 

「あいつらの意外そうな顔、面白かったな」

「そうか?」

「そりゃ、アイツらはお前がソニアみたいな様子しか見てなかったからな」

「それ、本人にゃ言うなよ?」

「言わねえって」

 

 笑っていたロザリンだが、ふと神妙な顔になり、廊下に面した教室を見やる。

 

「なあ、あれ………」

「襲撃は予想できたからな。申し訳ないとは思ったが、閉じ込めさせて貰った」

 

 歪んだレールにより、ドアを開けることは不可能。吹き飛ばせれば、と思うが、皆が皆極度の空腹に置かれている為、そこまでの力を出すだけで一苦労であるし、それをすれば音でわかるよう、簡単に椅子と机が積み上げられ、ドアを塞いでいる。余計な行動を増やし体力を削ぐと同時に、荒事を起こそうとすればそれだけでわかるよう、よく考えられた悪意あるやり口だ。

 

「………アタシ、一応お前と同い年だし、顔見知りでもあるんだけどな」

「ああ、ソニアにも言ってねえからな。俺の独断、それでいい」

「汚れ仕事は引き受けます、ってか?」

 

 面白く無さそうに鼻を鳴らすロザリンを、レナートは顔を向ける事なく笑う。

 

「生憎、こうなる前に殺しは経験してるんでな。できる事なら、全部引き受けたかったんだが」

「………は?」

 

 呆けた声と共に、固まる。何を言っているのか、理解できないといった表情の彼女へと振り返った青髪のウルサスは、その反応を予想していたように苦笑を浮かべ、窓の無いエリアへと彼女を引き込み、一息吐くことにした。

 

「俺が養子ってコトくらい、知ってんだろ?」

「そりゃ、お前の親父さんもお袋さんも、目の色髪の色とちっとも掠ってねえもんな」

 

 周知の事実に何をいまさら、と首を傾げていると、これまた突拍子もなく話が切り替わる。

 

「辺境の、一晩で消えた村の噂は知ってるか?」

「ああ、聞いたことならな。確か、村のあった場所が天災に見舞われたとか」

「アレな、姉さんの仕業なんだ」

「へぇ………つまんねージョークだな。お前、姉なんざいないだろ」

「ま、感染者になっちまってたからな。俺をおやっさんに任せて、どっか行っちまったよ」

 

 悔恨の滲む声に顔を上げれば、レナートは俯いていた。感染者という、非常にデリケートな話題について触れる勇気などなく、ロザリンは比較的穏当だろう話題に切り替える………それが、地雷であると知らずに。

 

「おやっさん、って?」

「俺を拾ってくれた、今の親父の友人………もう、いないけどな」

 

 頭を抱え、塞ぎ込む………恩人が死んだこと、そしてその原因の一端が自身の楽観視にあると考えてしまっている彼にしてみれば、後悔してもし足りない。()()()()()()()()()()()()まだしも、よりによってそのいざこざで、恩人を死に追いやったのだから。

 

「………わりぃな。ちょいと、感情的になってた」

「いや、お陰でちょっと印象変わったかな。アンタ、色々な意味で不気味だったし」

「ぶき………マジか」

「そりゃあ、お前が動いたのって二回目の火事からじゃん?」

 

 下っ端を自称していた通り、今でこそ生命線の役割を果たしているが、それまでは大した活動はしていなかった。精々、夜襲を一人で片付ける程度であるが、それも自衛として見れば当然でしかなく、食事量を抑えていることもあり、あまり存在感は無かった。

 

 それがいきなり皆の為に食糧を用意し始めたとなれば、不気味に思う者が居るのも当然か。

 

「ほら、さっさと行こうぜ。ボスたちの為にも、さ」

「だな。さっきのは忘れてくれよ?」

「さあな?ま、覚えてたら忘れとくよ」

「どっちだよ」

 

 呆れつつも、本来の目的の為の移動を再開。図書室の無事を祈りながら、進んでいくのだった。




・レナート
青髪赤眼のウルサス。現在の養親の為、普段はしっかりとしていた。
楽観視の悪癖があり、しょっちゅう惜しいところで点を落としていた。今回の件の中でその悪癖が顔を出した結果、嫌という程に後悔を抱いた。現在は、自分に出来ることを最大限行っている。

感染者の姉がいるが、現在消息不明。

・?????
食糧をくれた狙撃手。強奪者の命懸けの姿が、大切な誰かと重なったのかもしれない。
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