ある学生の軌跡   作:ウルサスに救いを

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ズィマー昇進2分の素材は揃った………後はレベルと金策だぁ(白目)
泥限素材の収集の辛さを思い知り、銀灰昇進2のエグさに眩暈を覚えました………


地獄の中での再会

 地獄と化したチェルノボーグの街。

 

「ターゲット確認!」

「っ!?」

「おいおい、嘘だろ………!」

 

 暴徒と化した民間人から逃げていたソニアたちは、蒼の感染者集団に前方を塞がれる。無茶をすれば突破できそうな兵力、と思いきや、現在彼女たちは連日の逃走による疲弊に加え、最も運動能力に優れる男が極端に弱っているせいで難しい。

 

「っ、離せよ!」

「今無茶したら、また傷が開くわよ!」

「このままじゃ………ッ」

 

 口論が始まるかと思いきや、深く刻まれた傷に響き、苦悶の呻きがそれを未然に防ぐ。恵まれた体躯と腕力から積極的に荒事を担当していたレナートだが、徒手空拳では対応できない攻撃もある。そんな無茶の蓄積が悪い方向に転び続けた結果、致命傷とまではいかないながらも、重い傷を複数抱え込む羽目になり、足手纏いとなっていたのだ。

 

「撃てッ!」

「ッ、上!?」

 

 その叫びに反応した直後、無数の矢と弾丸が飛来。

 

「………え?」

 

 その全てが、一行の背後から迫って居た暴徒を強襲したのだ。

 何事か、と呆気に取られていると、空から物々しい機材を背負った部隊が降下。暴徒へと向けていた物を一行へと向ける者と、亡骸へと警戒の一撃を撃ち込む者とで別れる中、前方を塞いでいた剣士たちが無線を使って発言するのが耳に届いた。

 

「ええ、無事とは言い難いですが………え?来る?あー、信号弾頼む!」

「だろうと思った」

 

 この状況下で、明らかな悪手と知りながらも信号弾を発射。当然、その詳細を知らない学生らは身構え、突破の糸口を探る。しかしながら、突きつけられた得物のせいで犠牲が出るのは確実であり、皆それを恐れて動けない。何より、的確に主要戦力と非戦闘員へと狙いを定めている為、犠牲が出ればその時点で終わりかねない。

 

「さて、そろそろ警戒を解いて………ふぁ!?」

「ボスェ………」

 

 響く轟音に顔を上げれば、ビルの壁面を何かが進んでいた。砕けた建材を巻き上げ、接近するソレに警戒を露わにする学生たちと裏腹に、蒼系で統一された装備の集団は呆れて頭を抱える。やがて、壁面を疾駆するそれがヒトである可能性に行き着いた面々の中に、恐怖を隠せぬものが現れ始め、そして

 

「みーつーけーっ、た―――ッ!!!」

「ね、姉さ!?」

 

 一切遠慮なしの、高所からの飛び込み。そのままでは、事故不可避の軌道を舞う青髪のウルサスは、しかし目前の肉親しか見えていない。その為、しっかり起動を予測して投げ放たれた何かに対しても、それが脇腹に付着した時に漸く気付く始末。そして、それは存在を認識された瞬間に、形を失う。

 

「ふぎゃんっ!?」

 

 その軌道が大きく変わる程の、爆発を伴って。

 

「………なにやってんだか」

「助かりましたわ、マジで」

 

 嘆息する銀髪のサルカズに蒼ヴェンデッタが感謝を告げ、頭を下げる。突然の事態に加え、情報量の暴力で誰もが混乱しフリーズする中、女サルカズは集団の隙間をすり抜け、呆気に取られる青髪のウルサスを見下ろした。

 

「へぇ、キミが………あの子のねー。あの子にあった危うさはそんなに………っと」

 

 振り返れば、衣類がボロボロになっているながら、爆弾の直撃とは思えない程に軽傷のウルサスがゆったりと歩を進めてくる。その剥き出しの脇腹を始めとした白い肌には、明らかな異物である黒い鉱石………源石が表出している。その姿が、彼女が感染者であるという事実を何よりも雄弁に物語るのだ。

 

「姉さん………!」

「違う違う」

「え?」

 

 人違いを疑ってしまい、レナートが混乱する中、彼女は茶目っ気たっぷりなウィンクと共に

 

「お姉ちゃん、でしょ?」

『そっち!?』

 

 周囲が唖然となる中、サルカズの女は必死に笑いを堪え、レナートもまた様々な感情がごっちゃになった末、俯いている。その様子が可愛らしく思えたのか、手を広げ突っ込もうとするも、すかさずサルカズに取り押さえられ、引き留められる。

 

「ストップよ、グローザ。弟まで感染者にする気?」

「あ、一応源石との直接接触は避けるべきよね。ごめんね、リューちゃん」

「その渾名、好きよね」

 

 リューちゃんこと(ダブリュー)は呆れた様子を見せ、グローザと呼んだウルサスから手を離す。その様子に部隊の面々が安堵の様子を見せる中、学生たちは何が何や話について行けず、弟に関しては完全に困惑している始末だ。

 

「えっと、雷雨(グローザ)って………」

「ほら、私のアーツって雷系だし?」

「あ、あれ?姉さんのって」

「お・ね・え・ちゃ・ん♪」

「………お姉ちゃんのって」

 

 再会できた身内というのもあってか、レナートは速攻折れた。整ったながらも強面に近い顔立ちに三白眼と、荒々しい口調が笑えるくらいに合う姿からその呼称はギャップが凄まじく、沈黙の中に動揺が奔った。

 

(うっそぉ!?)

(折れたな)

(あーあ、知らないっと)

 

 学生たちがぽかんとなる中、嬉しそうに頷いたグローザはそっと人差指を立てる。

 

「残念、私のアーツは雷系だったのです、まる!」

「あの一瞬で、私の爆弾のダメージをそこまで殺す、なんて芸当、電撃で出来るとでも?」

 

 Wに睨まれても笑みを絶やさず、グローザは彼女の疑念を無視して喉を鳴らす。

 

「ソコは傭兵らしく、企業秘密ってことで」

「あっそ。で、その子たちはどうするの?」

「とりあえず、術師の人たちと合流して貰って、ロドス辺りに保護して貰おうかしら」

「あら、国じゃなくていいの?」

 

 意地悪く笑うWに、グローザの表情が消えた。その瞬間、ソニアたちを強烈、どころではない重圧が襲い、一部の者たちに至っては、耐え切れずその場で胃の中身をぶちまける羽目になってしまう。その圧たるや、弟であるレナートすら顔を真っ青にして蹲る程だ。

 

()()()()()()

 

 最も馴染む名で呼ばれ、青髪のウルサスは元の表情を取り戻す。瞬間、重圧は霧散。

 

「ごめんなさいね。ちょっと、ヤなこと思い出しちゃって………はぁ。帝国は無理よ」

「ちょっとした悪戯心よ。けど、てっきり弟クンは引き取ると思ったんだけど」

「あのね、私たちとロドスなら、あっちのが間違いなく環境はマシでしょーが」

 

 乱雑に髪をかき上げる所作は、見事に弟そっくりである。

 

「それプラス、私の方で消した連中は知ってるでしょ?」

「そういう事ね。けど、よくわかったじゃない」

「流れには敏感なのよ、私」

「え、ええっと………?」

 

 話が見えず困惑するレナートを置き去りに、一応は彼らのリーダーであるソニアが声を上げる。

 

「勝手に話進めてるところ悪いが」

「貴女の意見は聞いてないわ。メフィストの悪趣味も始まってる以上、ここは余計危険なの」

 

 血色の瞳に射貫かれ、ソニアは思わず一歩後退る。恐怖を噛み殺し、前に踏み出そうとした彼女の前にレナートが割り込んだかと思えば、その瞳を真っ向から睨み返し、静かに、しかし怒気を隠さずに疑問をぶつけた。

 

「一応聞いておくけど、ソニアの意見を聞かないワケはなんだ?」

「そう遠くない内に天災が来るわ。それに、レユニオン参加者の大半は見境無しだもの」

「れゆにおん?てか待て、天災って!?」

「………今回の暴動の主犯どもに、その辺の情報も狂わされてたからね。知らなくて当然よ」

 

 笑い、改めて弟と視線を重ねる。じっと睨むでもなく、単純に見つめ続け、微笑む。

 

「ホント、大きくなっちゃってさ」

 

 ポンポンと頭を撫で、しかし直ぐ両手を拳にして蟀谷をグリグリと圧迫。

 

「ででででででで!?」

 

 続けて、半目で包帯とも呼べぬ布とそれを汚す赤で彩られた体に目を落とし、盛大に嘆息。

 

「とりあえず、この馬鹿の治療、宜しくね。他の子たちも、暫く私たちが居るから休みなさい」

 

 有無を言わさぬ圧を秘めた笑顔に頷かざるを得ない学生たちの眼前で、レナートは蟀谷を抑えて撃沈、痙攣する。周りが軽く引いている中で、グローザは先の民間人暴徒たちの死体から使えそうな服を剥ぎ、体を隠すように羽織る。

 

「さて、怪我人はさっさと名乗り出なさい。こいつら、こんなんでも手当とかできるし」

「いや、ボスが不器用過ぎるだけですからね?」

「ああ、リンゴ剥こうとして握り砕いたり、包丁の柄を握り潰したりねー」

 

 Wが笑い、グローザが無言で顔を背ける。しかし、首まで真っ赤になっている。

 

「と、兎に角、よろしくね~………ちょっと八つ当たり兼て掃除してくる」

「アッハイ」

「それじゃ、私もお暇するわね」

 

 ビルをぶち抜いてグローザが去ると共に、Wもまた行方をくらませた。驚きの連続で誰もが言葉を失う中、部隊の面々は武装解除する者とそうでない者とで別れ、レナートを始めとした怪我人の治療から、他の面々の休息の為の安全確保までを始める。

 

「随分と、酔狂なヤツなんだな」

「そりゃ、酔狂さ。わざわざ、こうやって俺らに生きる道をくれたんだからな」

 

 ソニアの皮肉混じりの言葉を、ヴェンデッタが笑い飛ばす。

 

「………姉さん、何やったんだよ」

「なに、強制収容所をぶっ飛ばしたり、軍を消し飛ばしたりした程度さ」

「マジでなにやって―――ッ?!」

「………ぐ、軍を、って………」

 

 さらりとカミングアウトされた衝撃の事実に頭を抱えかけ、治療の痛みに悶絶。沈黙した学生の中から呻くような声が漏れたかと思えば、感染者たちは笑い話だとばかりに声を弾ませる。

 

「で、そっからだよ。収容所の連中に訊いて、俺らみたいに自分で選んだのは傭兵になった」

「………マジで酔狂なヤツだな」

「だろ?酔わせるのも案外簡単だし」

「姐さん相手にゃ、ハチミツがいいぞ。あの人、匂いだけで泥酔するし」

「あ、姉さんもそこは治ってないのか」

「………『も』?」

「あ、やべっ」

 

 自身の弱点にも繋がるコトを無意識に零してしまい、慌てて口を噤む。

 

「………なんつーか、意外だな」

「うっせ」

 

 治療を受けるレナートは、驚きの目を向けるソニアへと、ぞんざいに返す。見た事もない拗ねた表情に面食らっている中、レナートはそっぽを向いたまま沈黙を保つ。ウルサスは基本的にハチミツで酔うが、匂いだけで泥酔というのは流石に弱すぎる………当然、密かなコンプレックスになっていた。

 

「そんなにダメか」

「パンに練り込まれてた時は、一口で酔っ払ってぶっ倒れたらしい」

「らしい、ってことは覚えてねえのか………マジで弱いんだな」

「しゃーねぇだろ、体質なんだから。それにその後、頭痛が酷かったもんで色々曖昧なんだ」

「二日酔いまであんのかよ」

 

 そのせいで、市販のパンなどを気軽に買えないのだ。何度、自身の体質を恨んだ事か。

 

「………苦労、してんだな」

「ホントにっ、いいいいいいいいッ!?」

「ったく、このガキ弾抜かねえでいやがったのか………コレ、本格的なの必須じゃね?」

 

 レナートの腕から、拳銃の弾が抜かれる。それを見た誰もがぎょっとして、傷だらけのウルサスが視線を集める。即座に複数名がかりで抑え込まれた彼を見下ろし、治療に当たっていた者たちができる限りの道具を引っ張り出す。

 

「さて、包み隠さず吐け。さもなくば、傷という傷に片っ端からピンセット突っ込むぞ?」

「………わーったよ」

「素直で宜しい。あ、嬢ちゃんらにゃ刺激が強」

「大丈夫だ。見慣れてる」

「………だったな。わり、忘れてくれや。んじゃ坊主、死ぬほど痛いが我慢しろよ?」

 

 学生たちへの警告を終えた傭兵たちの手により、傷だらけの馬鹿への治療が開始。舌を噛まないよう、布を噛ませている事でくぐもった絶叫が響く中、学生たちが休める筈も無い。印象の良し悪しに関わらず、誰もが心配の視線を向ける中、ソニアやナターリアからの厳しい視線を受け、隊長格のヴェンデッタが肩を竦める。

 

「ああ言うあたり、相当酷かったろうからな。悪いが我慢してくれ」

「………何かあったら、その時は」

「俺一人で済むなら、アイツらの代わりに責任取って殺されてやるよ」

 

 何の躊躇いも気負いもなく命を賭ける、と口にしたヴェンデッタは、二人を正面から見据える。隠し切れぬ驚愕と動揺から何を思ったかは不明ながら、しかし二人に確かに突き刺さる一言を告げてから、彼は自身の仕事………学生たちの安全の為の、周辺警戒へと移った。

 

「こいつらのボスは俺だからな。下のミスは上の責任、俺のミスは俺の責任、それだけさ」




・レナート
ストーリー外で無茶して足手纏いになった、今回影薄めの主人公。
銃弾が残ったままでも平然と動ける痛みへの耐性を見せたが、傷の悪化で荒療治不可避に。積極的に肉盾をしていたが、実は万全ならボウガンの矢くらいなら掴み取れる。

実は、ウルサスの中でもとびっきりハチミツに弱い。少し練り込まれただけのパン一口でも泥酔、更には二日酔いまで起こすレベル。万一食糧に混ざっていた場合、それだけで大事だった。

・グローザ(アナスタシア)
レナートの姉の雷系のアーツ使い(自称)。長距離の壁面走行という荒業が可能な程に身体能力が高い反面、それを十全に制御しきれない不器用さを併せ持つ危険人物でもある。その為、現在はスキンシップ厳禁。

穏やかに見えるが、笑顔が消えた瞬間に放たれる重圧等、不穏な要素も多い。

・グローザの部下(蒼部隊)
大半が元強制収容施設出身の、現役傭兵たち。グローザのやらかしに頭を抱える、胃を痛める等してきた常識人たちであり、私生活壊滅的な彼女の保護者団と言えなくもない。



ぶっちゃけた話、私がウルサスをどうにかするにはこれくらいしないとダメやろ、と絶望した末に組み込んだ面子です………いや、マジで地獄過ぎて………私の技量じゃ、これくらい強引じゃないとどうにもならんのです………!
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