ある学生の軌跡   作:ウルサスに救いを

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ありったけ注ぎ込み、初の昇進2をズィマーに捧げましたので初投稿です。
ウィークリーの理性剤くらいしか使わぬ身には、泥限素材が辛いトコロでしたわ。

『腹ペコ魔人』様、評価ありがとうございます!励みとなります!


あ、今回ややご都合入りまするので、ご注意を。


悔恨の吐露

 轟音と共に、ビルが沈む………夜の街の異様な光景に圧倒されながら、ゾーヤは歩を進める。

 

「リーダーってば、まーた無茶苦茶して~」

 

 笑い、損壊した攻城兵器を片手に平然と歩く狙撃兵は、そんな光景を呑気にそう評する。見るからに重いであろう大型火器やら、無数の箱を収めたバックパックを背負う怪力の人物の周辺では、その部下たちがボウガンを片手に絶え間ない警戒を続けている。

 半ば護衛に近い立場であるが、ゾーヤとて戦う術はある………しかし、彼女たちなりの配慮なのだろう。父の形見として残されていた、軍警支給のアーツロッドを握り締め、胸中に渦巻く数多の疑問を反芻する。

 

「そろそ」

「!?!?!?」

 

 そろそろ、という短い言葉すら言い切る間もなく、聞き覚えのある声による奇妙な悲鳴が響く。

 

「っ、レナート!?」

「あ、ちょ!?」

「………アレが、青春か」

「いや違うからね!?多分!」

 

 背後の会話に耳を貸さず、悲鳴の方へと駆ける。

 

「てめっ、何食わせやがった!?」

「ロドス産の完全健康携帯食料」

 

 そんな単語が聞こえたかと思えば、続くは阿鼻叫喚。

 

「それロドスじゃなくてあの嬢ちゃん手製のだよな?!つか、お前アレ持ってたのか!?」

「医療キットに、怪我人を眠らせる序でに体力回復させるように、ってボスが常備させてんぞ」

「聞きたくなかった新事実!?」

「それ眠らせるんじゃねえ、気絶させてるんだよ!」

 

 赤いメッシュの入った髪のウルサスが、手斧を取り振りかぶる。

 

「つまりはあぶねえモンってことか!」

「ちげえよ!いや違くねえけど、健康には無害だ!クッソ不味いけどな!」

「………えぇっと………?」

 

 ゾーヤが困惑を隠せず狼狽えていると、遅れて現れた部隊が明るい声と共に存在を主張。

 

「後方隊、たっだいま~!」

「おかえ………ナニソレ」

「まーたお前の悪癖か」

「悪癖とは失礼な!」

 

 ギャーギャー盛り上がる蒼装束たちにどう対応すべきか悩んだ末、彼らとの会話の試み自体を放棄し、ゾーヤは気絶して突っ伏す友人、続けて彼と同じ制服を纏う人物へと視線を移す。どう声をかけたものか、と口籠っている彼女を慮ってか、彼女の護衛をしていた一人が傍まで静かに歩み寄り、疑問を口にした。

 

「この中に、ペテルヘイム高校に来ていた軍警を知る者は?」

 

 直球の質問であるが、一行の大半は困惑したまま。そんな中、ナターリアがおずおずと手を挙げる。ゾーヤの胸にどす黒いモノが込み上げかけるも、それは続く内容によって一時霧散する事となった。

 

「レナートが埋葬した、という話を」

「それだけ?」

「それを掘り起こそうとした方々は、皆死体になって打ち捨てられてましたので」

「………っ!?」

 

 思わずレナートに視線をやるも、気絶して地面に突っ伏す姿があるのみ。何故、という困惑と共にまさか、という疑念が沸き上がり、しかしこれまでの交流で知った人柄と繋がらず、思考が堂々巡りを繰り返す。どうすればいいのかわからず居る彼女が、肩に何か触れたと思い振り返れば、彼女をここまで護衛してくれた後方隊リーダーの姿。

 

「思うところはあるでしょうけど、今は休んでおきなさいな」

「………はい」

 

 何があったのか、知りたいとは思う。だが、一番聞きたい事を知っているだろう者が眠ってしまっている以上、出来る事は無い。やむなくやや離れた場所に腰を下ろせば、当然疑念の目が向けられる。そこに、後方隊のリーダーが割り込み、軽い調子で手を振る。

 

「この子ね、リーダーの弟さんのお友達らしいんだ………ま、それだけじゃないんだけどさ」

 

 端的に複雑な立場であることを告げながら、大型の攻城兵器を乱雑に地面に下ろす。豪快な音を響かすスクラップに背中を預け、他の面々もそれぞれの形で気を抜く。端的な情報と先の質問、そして何より、学生には似つかわしくない装備からある程度察した者が憐憫の、そうでない者はまた異なる視線を向け、その中でゾーヤは息を吐き、どうしたものかと友人を見やる。

 あちこち包帯を巻かれている事から、相当な無茶をしているのが見て取れる………彼女の父が保護し、その後彼の同僚に引き取られた人物で、幼馴染と言っても過言ではない人間だ。彼女と異なり、軍警になる事を志してこそいなかったものの、その運動能力はよく知っている。

 

「無茶、してたんだね」

「ホントにな」

 

 同じく彼を見下ろすソニアの声に顔を上げると、彼女は視線で何かを指し示す。そちらに目を向けると、地上に転がる血塗れの弾丸が幾つも。ぎょっとして彼に視線を戻せば、彼が身を置いた一団の長は自嘲気味に笑い、悔恨を吐き捨てるように言葉を絞り出す。

 

「ホント、無茶苦茶な野郎だよ。一歩間違えば、そのままくたばってたってのにさ」

「ええ、本当に………」

 

 ナターリアもまた、悔恨を隠さず唇を噛み、沈黙する。双方とも、何かしら抱え込んでいるのだと察するのはあまりに簡単であるが、踏み込んでいいモノかと言われれば、間違いなく否だと判断。ゾーヤが詮索せずに沈黙を選ぶ中、後方隊長の重砲兵長は躊躇いなく、彼女らの傷を抉るような事を口にした。

 

「ま、お貴族様と平民どもが一緒くたにされれば、ああなるでしょうね。メフィストの悪趣味は笑い話にも出来やしないけど、目の良さだけは褒めていいかもね。人格面はま、高望みってコトで」

「………ッ」

「お前なぁ………」

 

 怒り、より呆れが強い仲間の声に肩を竦め、リラックスした姿勢のまま再度口を開く。

 

「まあ、メフィストもそれを狙ったんでしょうしね。完全な被害者、とは思ってあげないけど」

「………そうかよ」

「ただ、極限状態で生きるっていうのはそういう事よ。私の居た収容所だって、少ない食料の取り合いがしょっちゅうだったもの。そうやって生き抜くことも、その過程で誰かを犠牲にする事も、一概に悪いとは言わないし、立場上言えないけどね」

 

 最後にそう残し、フードとマスクを外した女ウルサスは拳銃を取り出す。ぎょっとする者から先の発言に思うところがある者まで、学生たちが何事かと警戒している中で、彼女は銃身の方を握り、一向に差し出す。

 

「………なんだ?撃てってか?」

「近いうちに移動するんだし、威嚇用程度でも武器は必要でしょ?」

「あのな、こいつらド素人が、銃なんて難解なモン使えると思うか?」

「あっ」

 

 あちゃー、と頭を掻き、拳銃を戻す。サンクタが好んで扱う銃の類だが、ボウガンに比べ弾速や連射力に優れる反面、複雑な構造が原因で、サンクタ族以外では訓練を重ねた末に拳銃を扱うのが精々。更に、大半が出土品、或いはそのコピーということから高価であり、その希少性から弾薬コスト等が重なり、一般人には縁のない代物だ。

 無論、撃つだけなら素人でもできるが、基本的に狙った的に当たらない………逆説的に、そんな無茶苦茶な軌道の弾丸を、全て腕で防ぎ切ったレナートの反応速度の凄まじさがわかる。

 

「………でしたら、そちらのそれを頂けますか?」

「これ?中がイカれたスクラップだけど」

「威嚇用程度でも、と仰っていましたよね?」

「あちゃー!一本取られたなぁ………流石ロストフさんトコのだね」

 

 平然と素性を見破られた事に驚くナターリアだが、相手は大した反応を見せず、大型の攻城兵器から離れる。名残惜しそうにソレをポンポン叩いたかと思えば、直ぐに表情を切り替え、ナターリアを手招き。

 

「ほら、持ってくならちゃんと持てるか見せて貰わないと」

「わかりました」

 

 結果、軽々持ち上げられ、重砲兵長はその場に崩れ落ちる。

 

「え?え?」

「ロストフ、恐るべし………!それじゃ」

「探しに行くの禁止な」

「そんなぁ!?」

「ぅ、ぁ………ああ?喧しいな」

 

 蒼ヴェンデッタに探索を阻止された重砲兵長の叫びによって、レナートが目覚める。

 

「流石ボスの弟さん………あの健康毒物からこの超短時間で復活って」

「おい待て、なんだ健康毒物って!つか、弾抜かれる前後の記憶が曖昧な………ん………」

 

 大きく目を見開き、続いて安堵の息を零す。

 

「よかった、ゾーヤは無事だったんだな」

「レナートのお姉さんに、気絶させられたけどね」

「なにしてんだあの人は………」

 

 思わず頭を抱える彼へとそっと歩み寄り、ゾーヤは包帯に包まれた腕を握る。

 

「ぃいッッッ!?」

「そういうレナートは、無事じゃないんだね」

「………ま、適当やってたツケだよ、ツケ」

 

 それだけ零し、彼女の身に着けている物を見やる。

 

「………そうか、行ったのか」

「拉致された形で、だけどね」

「マジで何してんだよ、馬鹿姉………」

 

 直後、垂直に沈んでいたビルがドミノ倒しとなったのだが………全くの余談か。

 

「………父さんを殺したのは、貴方?」

「ああ」

「違う!」

 

 彼女のその問いに、躊躇いなくそう答える。それに待ったをかけたのは、ソニアだった。

 

「いいや、それ」

「違います!ああなったのは、私が」

 

 そこから始まるのは、責任の背負い合いだ。ゾーヤの求めるモノとは別に、各々が自身の胸の内をぶちまけ、責任感の強さから全てを背負おうとする。誰もが等しく間違えながらも、しかし絶対的な悪かと言われれば、やむを得ない部分も確かにある。

 

 ナターリアの煽動、指揮も間違いなく原因の一端であるが、しかしそれをしなければ彼女の命は無く。ソニアは自身の軽率を悔いているが、しかし根底にあったのは善意であり、更にあの時彼女が動かなければ、悪い方向に傾かずとも、決していい方向にも傾かなかった。

 そして、仮に事態を厳しく見て動いたところで、レナートに出来るのは暴力での鎮圧程度。立ち位置だけとはいえ、ソニアの一団に属している上、既に割れに割れた学内勢力では、善意からの振る舞いであろうと不信感、或いは不満を抱き、闘争は避けられなかった。どうあっても、彼の恩人の、ゾーヤの父の死は避けられなかったであろう。

 

 だが、彼らは負の側面しか見えない。それしか、認識できていない。

 

「あー、ストップストップ!盛り上がってるトコ悪いが、肝心なのはソコじゃねえんだわ」

 

 その堂々巡りに割り込んだのは、この場における事実上リーダーの蒼ヴェンデッタ。他の学生たちもまた、彼らの主張に思うところがあり動けない中、完全なる部外者だからこそ、ある程度の冷静さを以て対処できているのだ。

 

「要は、お前さんらは直接こいつの親父さんを殺っちゃいない、ってコトでいいな?」

「………けど」

「けどもだっても無いんだよ。それに、お前らだけで全てが回ると思うんじゃねえぞ」

 

 呆れ混じりの溜息と共に告げ、ゾーヤを見下ろす。

 

「っつー訳だ。よかったな、嬢ちゃん」

「え、あ………はい」

 

 ほっと安堵の籠った息を吐き、改めてレナートの隣に座る。

 

「部外者だから、いいとか悪いとかはわからないけどさ」

「あん?」

「きっと、悪いだけじゃないと思うんだ」

 

 幼馴染にだけ、向けた言葉という訳ではない。三人がそれぞれ、衝動的とはいえ胸中を吐き出したからこそ、確たる、とまではいかずとも信頼ができ、精神的な余裕が生まれたからこそ、客観的な意見を口にすることが出来たのだろう。

 

「私も、街がこんな有様だなんて、思ってもみなかったから」

「そりゃあ、当然だろ」

「うん。だから、レナートが悪いだけ、って事は無いと思うんだ」

 

 周りが冷静さを欠いていたお陰で、却って冷静になれた彼女は、端的な情報と学校の惨状、そして同行者に訊いたメフィストなる人物の悪辣さから、事態をある程度把握することが出来た。そして何より、深い悔恨を隠さず、感情のままに叫ぶ彼らを責める気が起きなかった。

 

「そうかい」

「それと、父さんたちのお墓、ありがとうね」

「あれくらいしか、できないからな」

 

 ぶっきらぼうに応じた幼馴染に苦笑を零し、ゾーヤもまた肩の力を抜き、嵩張る装備品を外す。

 

 彼女が身に着けてきたモノは、レナートが彼女の父の遺体と共に埋葬した、軍警支給の品。密かに墓を作成したレナートがそこを守っていた理由であり、仲間内の戦力増強よりも、故人を尊重することを望んだ彼の手で、誰の手にも渡らぬように、と配慮された品々だった。




・レナート
荒療治の後、弱った状態からゲロマズ健康食で気絶させられた可哀そうな主人公。

ゾーヤとの早い再会時、自罰的な発言により責任を感じていた二人に色々吐き出させたことで、彼女たちにとってのちょっとした救済となった。なお、ゾーヤの父の遺体とその装備品を纏めて埋葬しており、それを掘り起こそうとする輩を問答無用で抹殺していた。

・蒼ヴェンデッタ
まんま、蒼系の装いとなったヴェンデッタ。白兵部隊中心とした前衛隊総隊長。
常識人であり、真っ当な意味での大人。敵味方非戦闘員の区別はしっかりできる系上司。

ゲーム的性能では、自身のHP減で攻撃強化、味方へのダメージ、撃破で攻撃速度が強化。

・重砲兵長
大型のグレネードランチャーを主兵装とする女ウルサスで、後方隊総隊長。
武器コレクターで、放浪癖がある自由人。奔放さで言えば、グローザよりマシ程度。

ゲーム的性能は、超遠距離から防御低下効果持ち物理範囲攻撃、被ブロック時物理範囲連射攻撃。


・グローザ部隊の医療キット
ロドスのとある姉サルカズ作の携帯食料が突っ込まれており、医療班の負傷率激減に一役買っているとかいないとか。原因は仕事の関係で姉妹と接触したグローザが、姉と意気投合した為。
尚、グローザは普通に食べれる。
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