正直あの子である必要はないけど、この話自体実際に見た夢をモチーフにしているので仕方ないね♂
原作どれにしていいかわからないので一応アイマスにしておきます
駄文でございますが読んでいただければ幸いです
文章力皆無の駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです
俺は、数人で階段を昇っているようだった。なぜ、「だった」などと言っているかというと、俺にはこの階段までやってきた覚えというものがとんとないのである。ただ、気が付けばこの階段を上っていた。
周囲の数人の顔を眺めてみるが、陰ったかのように見えなくなっている。しかし、全員女であることは確かだった。
一段一段、踊り場を超えてまた一段。周囲に合わせてずんずんと昇っていく。
ふと、こんなことが前にもあったような、こんな景色を前にも見たような、そんな気がした。しかし、頭に霞がかかったかのように思い出すことができない。
終いの一段に足をかけたとき、霞が晴れたかのように記憶がよみがえった。
ここは、昔俺が通っていた小学校だ。ああ、思い出してきた。この先にあるドアをくぐれば、屋上がある。日時計の実験をしたところだ。
そんな回想をしつつ、俺は無意識のうちにドアに手をかけた。その先に見えたのは…
「わぁ…!すごいっすね!」
「っ!?」
強烈な違和感とともに目が覚めた。
聞き覚えのある、しかして、絶対に聞こえないはずの声が聞こえた。まだ、声も耳に残っている。何なら、のどに違和感がある。
今、口をついて出てきた声は、言葉は、俺のものではなかった。知らぬ声ではない。しかし、その声はこの現実上に存在してはならない声だった。
芹沢あさひ。俺が最近はまっているゲームのキャラクターである。当然、現実においてこの声は(声帯の妖精さんが演技で出さない限り)存在し得ない声である。まして、俺のように男が出せてたまるようなものではない。
疑問と混乱で曇り始める思考をかき消すように、頭を振る。ふと、時計が目に入った。現在時刻は六時半。そろそろ起きねば学校には間に合わないだろう。
俺はこの不可思議な現象を頭の片隅によけ、ベッドから抜け出し朝の支度を始めた。
起きて以来は特に何事もなく、朝餉を済ませ学校へ登校する。教室について一番最初にやるのは、スマホだ。。校内でのスマホ使用は禁止されているが、周囲もやっているという安心感で使っている。いわゆる、「赤信号みんなで渡れば怖くない」理論というやつだ。
テストまであと2週間を切っているが、ゲーム廃人一歩手前の俺はそんなことお構いなし。当然今年が受験なのも知ったことではない。慣れた手つきでゲームのアイコンをタップし、イベントを進めようとする。
『プロデューサーさん、この間すごい人見つけたんすよ!』
ログインしてすぐに、朝のあの声が聞こえた。当然である。ホーム画面には彼女の姿があるからである。
ふと、この声でまた朝の出来事が頭の中でむくむくと鎌首をもたげ始めた。いったいアレは何だったのか、ただの夢だったのか、それとも…なんてことを考えているうちに、クラスメイトはどんどんと集まっていく。結局、夢のことを考えているうちに担任が教室に入ってきて、俺はイベントを周回することはできなかった。
「きりーつ、気を付け、れーい」
『おはようございまーす』
挨拶の間も、席についてからも、夢のことが頭から離れない。自分の身に起きたとはいえ、世界でも前例なんざ聞いたこともないような出来事だ。
(別に俺になんかあるわけでもないしな…)
考え込む癖がある俺は、現在朝のホームルーム中であるにもかかわらず、自分の思考のお布団に半ば引きこもりかけていた。
当然のことながら、こんな状況で先生の話など聞いているわけもなく。
「おい、話を聞いているのか?」
すぐに先生から目をつけられ、声をかけられる。
当の俺はその声で現実に引き戻され、うろたえている最中である。話の流れなんてわかってもいないし、そもそも興味のない話なので聞いてもいない。
ああ、面倒くさいことになったな。なんてことを思いつつ、とりあえず、取り繕おうとして口を開いた。
「聞いてました…よ…?」
瞬間、時間が止まったような気がした。
声が、違う。俺の声じゃない。思わず周りを見渡すが、特に何もない。
俺ののどから出た声は、またも芹沢あさひのそれであった。思わずほほをつねる。痛い。つまり、夢じゃない。
突然の出来事に頭がグルグルと回り始める。周りからの目線もどこか違う。周囲のざわつきが遠く聞こえる。頭が痛い。
「と、トイレ行ってきます!」
震えた声もやはりあさひの声だ。頭がどうにかなりそうになるなか、俺の足は自然とトイレへと向かっていた。
廊下がいつもより長く感じる。他教室のざわめきが、遠く聞こえる。俺は、若干ふらつきながらも、なんとかトイレへ転がり込み、思い切り胃の内容物をぶちまけた。
しばらく吐いたおかげか、はたまた、単に時間の経過で心が落ち着いたからか。少し落ち着いた私は、トイレの壁にもたれかかり、息を整えていた。
「何なんだよ…これ」
漏らすつぶやきもあさひの声である。
いったい何が起きているのか分からない。頭の中に、「奇病」や「不治の病」というような単語が浮かんでは消えていく。たまらずそんなネガティブな脳内から目を背ければ、吐いたことからくる口の中の違和感が待ち構えていた。
(とりあえず口の中をきれいにしよう。)
悩んでいても仕方あるまい。口をゆすごうと手を皿にしようとして、私は今日何度目か分からないめまいを覚えた。
男の自分ではあり得ない細く白い指。朝出るまで浅黒く焼けていた腕は気が付けば白く華奢になっていた。まぎれもなく、女の腕だ。
なんなんだ、これは。私はいったいどうしてしまったというのだ。声、手、腕。自分が自分である何もかもが彼女へと…。
いやまて、彼女とは誰だ?そもそも私って誰だったっけ?分からない、分からない、分からない。いや、まだ一つ覚えていることがあった。そうだ、顔だ。自分の顔。
ポケットから生徒手帳を取り出す。手帳には自分らしき顔が写っている。お世辞にも整っているとはいいがたい顔だが、今はその写真こそが自分が自分としてこの世界に存在している確固たる証である。よし、やはり顔だけは違う。安心した。してしまった。
ふと、鏡が目に入る。洗面所に来た時、鏡に意識なんて向いていなかったためそこに写る風景を、見た。おそらく、私の無意識が最後の砦として意識外に置いていたであろう光景をだ。その砦が崩れ去った今、私の意識は徐々に遠のき始めた。
映るビジョンは私にあらず、しかしてよく見知ったものだった。ショートヘアーの銀髪、虚ろにも見える青い目、腕と同じ白い肌。ああ、なんと言うことだろうか。既に私は、
『芹沢あさひ』だったのだ。
目が、醒めた。
いつも見る自室の天井。月曜日にかけていたアラーム。外から聞こえる鳥のさえずり。全てがここが現実であることを告げている。
何だ、夢だったのか。ならば、辻褄も合う。こんな事象、夢じゃなきゃおかしいに決まっている。そんなことを考えて、今まで見ていた景色が現実でなかったことに安堵する。
パソコンでは夢の中でもやっていたあのゲームの音MADが流れていた。しかも、題材はあさひだ。
(こんなのを流しているからこんなのを見るんだよ…)
なんてことを考えつつ、就寝時から何周連続で再生されたかわからぬ動画を止めようとして、伸ばした腕に目が釘付けになる。と同時に、めまいが再び頭を襲う。
ああ、夢は夢で終わっていなかったのだ。それともまだ私は夢に囚われているのだろうか。
白く華奢な腕、細い指。手元のスマホをインカメラにすれば、そこには最後に鏡に映っていたあの顔が恐怖に引きつりつつ写っていた。
胸に手を当てれば、小さいながら膨らみがある。思わず反射的に下に手を伸ばせば、あるはずのモノがなくなっていた。
俺は、いや、私は、『芹沢あさひ』になっていたのだ。