月鋼 ー復讐者と異世界の従者ー   作:橆諳髃

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今回早めに投稿できましたし、サブタイトルの時点でネタバレですが、どうかご覧下さい……


1話 復讐者、従者となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからのアルジだが……絶賛ユキネの看病を受けていた。

 

「あ、あの……ユキネさん?」

 

「ん? なに?」

 

「こ、この体勢は……?」

 

「アルジがちゃんと休める様に……」

 

「でもそれじゃあユキネさんがキツいんじゃあ……」

 

「……いや?」

 

「そ、そんなわけない……けど……」

 

「よかった」

 

 ユキネは安心した顔をしてアルジの頭を撫でる。アルジはアルジで恥ずかしさから顔を赤くし、視線はユキネから晒す様に明後日の方向を向いていた。

 

「アルジさん、おかげんはいかがかしら? あらユキネ? まぁ! あのユキネが大胆ですわね! フフッ……よほどアルジさんの事が気に入りましたのね」

 

「ひ、姫様⁉︎ う、うぅ……」

 

(自分でやってて恥ずかしいのになんでこの体勢を崩さないんだ? しかも撫でるのやめないし……)

 

 マリアがそう言うようにユキネは現在、ベットで横になっているアルジに対して膝枕をしていた。

 

「そ、それでマリア……様と呼んだ方がいいのか?」

 

「まぁ……そこはアルジさんのご自由にでいいですわ」

 

「そうか。それで、何か用事があってきたんじゃ?」

 

「そうですわね」

 

「ならこの体勢じゃない方がいいな」

 

 アルジはベットから起き上がる。

 

「あっ……」

 

 ユキネはとても残念そうな顔をしていた。

 

「そうですわね。部屋はこれから案内致しますわ。ユキネもそんな顔をしないで、後で続きをやればいいわ」

 

「っ! はい‼︎」

 

(えっ? 話が終わった後またあの体勢を続けるのか⁉︎)

 

 今から真面目な話をするはずが、話が終わった後の事を心配しているアルジがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで話っていうと……俺の事だな?」

 

「はい。以前はユキネが記憶喪失状態のあなたと話していた事を聞きました。確か……あなたがまだ少し子供の頃だったかしら?」

 

「そうだな……宇宙旅行真っ最中の記憶から失ってたな」

 

(といってもそれももう何十年前の話だったか……)

 

 そう、ここにいるアルジは現在神様見習い(いつの間にかその扱い……)であり、とある目的の為にこの世界に降り立った。といっても他の神々はほっといても大丈夫だろうと言っていたが、アルジとしては放ってはおけなかった。

 

 その為にこの世界に来たわけだが、途中アルジを良く思わない悪神の介入で記憶喪失となっていたのである。

 

「そうですわね。それで今のあなたは完全に記憶を取り戻していますわよね?」

 

「あぁ、完全に記憶を取り戻しているな。だから、何故俺がここにいるのかだよな?」

 

「えぇ。強制……ではないのですけれど」

 

「いや、俺はマリア様やユキネさんに助けられたからこそここにいる。この地に落とされたままだったらどうなっていたか分からねぇ。だから話すさ。俺がどこから来て、何のためにここにいるのかを」

 

 そしてアルジは話しだした。自分がどこから来ていて、何を目的としてここにいるのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side マリア

 

 

 

 

 

(まさか……アルジさんが異世界人……いえ、異世界神かしら?)

 

 自分ではいつのまにかその扱いで色々とやらされていると言っていましたけど、成る程道理であれだけの力をお持ちですのね。まぁ本人曰くその世界での力関係が崩れない様にでこれでも力はセーブされた状態らしいですけど……

 

「それにしてもアルジさんが乗っていた……で良いのかしら? あの赤い聖機人は?」

 

「あれは聖機人ではないが……まぁこの世界ではその括りにされても仕方ないが」

 

「そう、正しくは聖機人ではないのね」

 

「あぁ、まぁ神といってもそれぞれ使える力が違う。俺の場合は……他の神の下働きもしてた時期もあるからそれなりには他の力も使えるが」

 

「それで俺があの場で出した力……ガンダムと呼称されるものだ。この世界以外にもパラレルワールドって形で色んな世界がある。そのとある世界で使われる決戦兵器のロボットだ。まぁこの世界での聖機人の扱いに近いが」

 

「はぁ〜……この世界以外にも色んな世界がありますのね」

 

「まぁな。だからこそその世界によって文明レベルは違う。マリア様達が俺の出したガンダムを聖機人と見えるのは仕方ねぇ事だ」

 

「そういうことですのね。にしても異世界人は昔からよく召喚などの事例によって確認はされておりますけれども、まさか異世界の神様がいらっしゃるなんてね」

 

「といっても見習いで勝手にその扱いだが……」

 

「まぁまぁそう言わずに。それでここからが本題なのですが……」

 

「アルジ・ミラージさん、あなた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユキネと一緒に私の従者になりませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

side ユキネ

 

 

 

 

 

 姫様とアルジの話を聞いていた。まさか彼が異世界人で、しかも神様の見習いだなんて……

 

(でもあの力は……見た事がない)

 

 多分この世界の誰よりも……現時点では彼が1番強い。

 

(強いけれども……精神面は本当にまだ子供みたい)

 

 ユキネはアルジの話を聞いてそう思っていた。事実、記憶喪失時はまだ家族が存命していた状態だ。その時の口調も少し幼なげで大人しい。

 

 そして記憶を取り戻したアルジは……喪失時と違って口調は今の年頃と同じ男の子と同じかそれよりも上になっている様に思える。ただアルジが自分に接する時の態度……

 

(まだ熱が引いていない影響があるかもしれないけど……もしかして恥ずかしがってる?)

 

 ユキネ自身も天然だが、そのユキネでも分かるほどアルジの態度が分かりやすく出ていた。

 

(それとも……私にはよそよそしい……?)

 

 そう思うだけでユキネはシュンとなる。まぁそれも彼女の思い込みであり、アルジ自身女性と接するのが気恥ずかしいからこそなのだが……なのでユキネが最初に感じた事が正しい。

 

 そんなところでマリアがアルジに自分の従者とならないかと問いかける。それはユキネにとってもとても嬉しい事だった。

 

「……俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は、マリア様の従者にはなれないと思っている」

 

「……それはどうしてかしら?」

 

「確かにマリア様の申し出はありがたい。この世界に来て俺がそれなりに行動とか情報を得ていく為には、マリア様の従者になって、そこから足掛かりにして行った方が良いって俺も分かってる」

 

「ならどうして断るのかしら? あなたにとっても良い条件でしょうに……」

 

「そうだ。俺にとっては良い条件ばかりなんだよ。そんな事誰だって分かる。だが俺は……逆に俺みたいな奴がって思ってる」

 

「俺がどうしてこの力を手にしているのか……まだ話していないよな?」

 

「えぇ……あなたが何故ここにいるのかは聞きましたけど」

 

「俺がこの力を手にしたかったのは……復讐のためだ」

 

「復讐の……ため?」

 

「あぁ。俺が今の世界軸に送られる前から話した方が良いんだろうな……」

 

 そして俺は……自らの過去も話した。元は違う世界軸の普通の人間で、そこを管理する神の手違いで死んで、それで違う世界に転生したこと。

 

 そこで自分なりに生活していた結果、その世界での大きな組織から封印指定を認定されて逃げていたところ、友人の手助けもあって今の世界軸に渡った事。

 

 その世界軸は神界で……神様見習いとして様々な経験をして今ここに至る事……

 

 ただ……その様々な経験の中で、さっきの答えに至る理由も話した。

 

「俺は見習いとして様々な経験をする中で、とある世界に転生してる」

 

「とある……世界?」

 

「あぁ。そこで違う人間に乗り移ったんだ。まぁそこでの事が終われば、俺が乗り移っていた人間の魂は、俺の魂が離れた後に引き継がれるし、その魂の記憶にも、俺がやった事は記憶されてる」

 

「そこでなんだよ……俺が復讐の為に改めて力を欲したのは。乗り移った人間の家族が……俺を庇う為に犠牲になった」

 

「俺に温かさをくれた両親が……こんな俺に優しくしてくれて愛してくれた姉が……あんなくだらない事が理由で命を奪われた」

 

「確かに俺が乗り移らなかったって結果は同じだったかもしれない……だがな」

 

「そんなの……そんなの許せるわけねぇじゃねぇか‼︎」

 

「だから俺はさらに力を欲したんだ……こんな下らない事をした奴らを……する奴らを野放しにしてはいけない! その為なら……この復讐を邪魔するどんな障害も容赦しないって‼︎」

 

 アルジの独白が続いた。それは憎悪に塗れながらも、とても悲しい声音にも感じた。マリアは自分と同じ年代ながらも、アルジの辿ってきた悲惨な過去に言葉が出なかった。ユキネは……憎悪のある表情で過去を語り、悲しみが混在した言葉を吐いたアルジの事を……可哀想に思えた。

 

「悪い……感情的になっちまった」

 

「い、いえ……そんな事は」

 

「それにさっきも言ったように……俺の復讐を邪魔する奴らもこの手にかけてきた。だから俺の手は……汚れてるんだ」

 

「そんな……なら私も」

 

「ユキネさんは、マリア様を守る為に力をつけたんでしょう? それに比べて俺は完全な私怨だ。だからこそ……マリア様を守るための尊い力に、俺みたいな穢れた力が入るのは……ダメだと思う」

 

「アルジさん……」

 

「それに、こんな優しくしてくれた人達がまた俺のせいで傷付けられるかもしれない……。そんな事……俺が許せないんだ。だかr「大丈夫」ユキネ……さん?」

 

 アルジの言葉を途中で遮ったのは……今までアルジの話を悲しそうに聞いていたユキネだった。彼女はアルジを優しく……何があっても離さない様に強く抱きしめる。それはまるで……過去にアルジが経験した様に……

 

「な、なにをして⁉︎」

 

「貴方が……悲しそうに見えたから」

 

「貴方が全てを、1人で抱え込んでいると思ったから。辛そうに思ったから」

 

「……でも、俺にはこんな道しか……選べなかったから」

 

「それでも貴方が……苦しそうにしてたから。だから私は……貴方を癒してあげたい。強い貴方にとっては要らないことかもしれないけど……私は、貴方の側で貴方の苦しみを少しでも癒したい」

 

「っ⁉︎ ……そんな事を言われたのも、初めてだ」

 

 ユキネの想いが詰まった言葉に……アルジはいつの間にか涙を流していた。

 

「だい、じょうぶ?」

 

「……大丈夫じゃ……ないかも。こんな顔……誰にも見られたくない」

 

「……なら、少し屈んで? それなら……多分顔も見られないから」

 

 いつもならば誰かにそう言われてもしなかっただろう。だがアルジは……何故かユキネの言葉に自然と従ってしまった。そうして少し屈んだ瞬間、目の前が急に真っ暗になった。同時に、自分の顔が柔らかくて温かい何かに包まれていると知覚した。

 

 だがその温かさが……今のアルジには必要である事を無意識に心が認識したのかもしれない。

 

「ゆ、ユキネさん?」

 

「これなら貴方の顔が誰かに見られる事……ないから。貴方が良いというまで……このままで」

 

「……っ! うぅっ……」

 

 ユキネはアルジを抱き寄せる。自分と同じ銀色の髪を優しく撫でる。抱き寄せられたアルジも、弱弱しながらもユキネの背中に手を回す。アルジが無意識でしているであろうことでも、その事がユキネは嬉しかった。

 

 自分にも……何故知り合ったばかりのアルジにこうしているのか問われれば、明確な理由は出さないだろう。それでもユキネは自身の感情に従った。自分よりも遥かに強い彼の、それでいて繊細で、子供の頃のまま取り残された彼の心を癒したいと、そんな願いを込めながら彼女は彼を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……こんなダサい格好を見せて、すまなかった」

 

「いえ、寧ろ安心しましたわ」

 

「えっ?」

 

「たとえあなたが神の見習いと言えども、人の心を持っていてくれた事についてですわ。それに私も久々に良いものが見れましたし」

 

 マリアの手に持たれていたもの……それは先程アルジがユキネに抱きしめられていた時の写真である。

 

「な……ななな、それはっ⁉︎」

 

「ユキネがあんな行動をする事がとても珍しかったものですからつい1枚、撮ってしまいましたわ」

 

「あ、アンタなんってものを撮っているんだ⁉︎ ま、まさかそれで俺に従者になれと脅迫するんじゃ……」

 

「さぁ、私はどこかの即位したばかりの貴族の様な真似は致しません。まぁ、それであなたが私の従者になるというのならかなり儲けものなのだけれど」

 

(正直無理やりやったら取り返せるが……)

 

「そしてこれはユキネにあげるわ」

 

「なっ⁉︎」

 

「っ‼︎ ありがとうございます……!」

 

 その写真はマリアの手からユキネの手に渡った。ユキネはその写真を胸元で愛おしそうに大事そうに抱きしめる。アルジは正直、あの写真を貰って誰得なのかを考えたが……現に目の前でユキネが嬉しそうにしているのだから、ユキネにとっては得なのだろう。いくら考えてもどの辺りが得なのかアルジにはさっぱり分からないが……

 

「多分アルジさんは無理やりでも取れると思ったのでしょうけど、あなたはユキネのあの顔を見て取ることなんてできるかしら?」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

「アルジ……困ってる? これ、ダメ?」

 

「うぅっ……」

 

 ユキネは自分の持っている写真でアルジが困っている事を悟ると、上目遣いでそう聞いた。それを見てアルジも顔を赤くしてそっぽを向くしか出来なかった。やがて……

 

「はぁ〜……分かったよ。ユキネさんが見せびらかす様には見えないし、写真は諦めるよ」

 

「それに……俺の心はその写真関係なくもう決まった」

 

「そうですの。それでお答え頂けるかしら?」

 

「俺はマリア様の従者になる。それで……」

 

「俺の事を助けてくれたマリア様とユキネさんを、俺の命に代えても守ろう。こんな……復讐の怨嗟で塗れたこの手がどれほど役に立つか分からないが、あなた達が側にいてくれるのなら、この力でも間違わずに使えるだろうから」

 

「ふふっ、分かりましたわ。今からあなたは私、マリア・ナナダンの従者です。これからよろしくお願いしますわね、()()()

 

「あぁ、こっちこそよろしく頼むよ。マリア様」

 

「えぇ。でしたらユキネはアルジの先輩に当たりますから、これからの事はユキネに聞いてくださいな。ユキネもそれで良いわね?」

 

「はい! アルジ……よろしくね」

 

「改めて、よろしく。ユキネさん」

 

 こうしてアルジはマリアの従者となり、一緒に聖地へ赴く事に決まったのだ。

 

 

 

 

 

 

「それで……ユキネさんはどうしてこの写真を大事そうにしてるんだ?」

 

「えっ⁉︎ あ、アルジが……可愛かったから///」

 

「っ⁉︎///(き、聞くんじゃなかった……)」

 

「あらあら? お2人とも顔を赤くして、まるで本当の兄弟みたいね」

 

「そ、そんな事ないと思うんだが……ユキネさんは美人だしスタイルも凄く良いし……逆に俺なんて目が厳ついぐらいで似てるとこなんて髪の色ぐらいか? それに俺がユキネさんの弟だったら、逆にユキネさんに色々迷惑かけて可哀想だと思うんだが?」

 

「えっ? 私の弟になるの……イヤ? 私は……アルジが弟だと、凄く嬉しいな///」

 

「っ⁉︎///(何を根拠に言ってるか分かんねぇ……)

 

「また2人して顔を赤くして……まっ、私はお邪魔な様ですから、後は2人仲良く過ごして下さいな」

 

「えっ⁉︎ ちょまっ……」

 

 マリアが部屋から退出した。狼狽えている様子のアルジの肩をユキネが後ろからトントンと叩く。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「……さっきの続き……したいな」

 

(さっきの続き……って、あ、あの状態のことか⁉︎)

 

「いこ?」

 

(も、問答無用だよなこの目って……)

 

 ユキネさんの上目遣いの瞳に、アルジさんは何も言えずに従うしかありませんでした……




アルジくんはマリア様の従者兼ユキネさんの弟てき立場に収まりました。さて、これからもアルジくんとユキネさんのイチャイチャを描いていければ良いなと思います。ではまた次回に……
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