「っ…ここどこだ」
目が覚めると見渡す限り、真っ白で誰もいないところに自分はいた。
???「やっと目覚めましたか。中々目を覚ましてくれないので手順を間違えたかと思いましたよ。その様子だと異常はないようですね。」
どこかで声がしたが、目の前が眩しすぎるせいか何も見えない。真っ白なままだ。
「あの…ここはどこですか、目がまだ慣れないのか何も見えなくて」
目覚めたばかりで目が慣れていないのだろう。そう思い、どこかにいるであるだろう人に問いかける。
???「これは失礼!…これで私の姿が見えますか?」
誰かの手が目元に触れた。瞬間、目の前に人が立っていた。…よく見ると、青く大きな翼が背中にあった。
「…え」
一瞬思考が止まった。ハロウィンか?いやなんだこの人。え?よくわからない。
???「おやおや、混乱させてしまいましたね。…私は大天使アズラエル。死の天使と呼ばれています。」
「はぁ…」
微笑んでる。優しそうだ。…いや絶対変質者!逃げなきゃ。
アズラエル「こら!逃げては行けません、変質者ではありませんよ。だいぶ記憶が飛んでいるようですね?死の自覚はありますか?」
目の前の翼を持った人は、思考を読んだかのように問いかけてきた。
…ん?死の自覚?
アズラエル「その様子だと、死んだことを忘れていたようですね。…まぁ、若い子達には稀にあります。」
…稀なのか。
「あの、ここはどこで、あなたは誰で、私は誰なんでしょうか。」
最後の一文は、馬鹿げた質問だと思うが、頼りは目の前の変質者しかいない。
アズラエル「ですから、私は変質者ではなく、大天使アズラエルです。そしてここは天界。あなたは自殺者ですので、転生の儀を担っている私の下へ来たのですよ。…最後の質問ですが、あなたの以前の名前は斎藤慧(サイトウケイ)ですよ。」
ちょっと怒ってしまったのか、溜息混じりで教えてくれた。
…サイトウケイ…自分はサイトウケイ
「…あ、自分死んだのか」
思い出した。全て。
アズラエル「やっと思い出したみたいですね。よかったよかった。」
また和かに微笑んでる。許してくれたみたいだ。よかったよかった。
慧「思い出しました…あなたは本物の大天使様?」
アズラエル「ええ、そうですよ。サイトウケイ…あなたのことですから、一応確認いたしますね。転生者、斎藤慧、11歳。男子小学生。特にこれといって秀でたものはなかったが、ハリーポッターの世界観に異常にのめり込む。11歳の誕生日ホグワーツからも、マホウトコロからも入学の知らせが届かず。薄々気付いていた現実が幼心に突きつけられ所詮はファンタジーだったのだと絶望し、11歳の誕生日の夜、母がケーキを切るために用意した料理包丁で、自身の腹と首を刺し自害する。…間違いないですね?」
…自分だ。とんでもなく阿呆な自分だ。
慧「はい、間違いなく自分です。」
アズラエル「先程も言いましたように、自殺者には転生の儀を行なっています。転生者の望む世界。ですから、貴方の望む世界…もちろんハリーポッターの世界でも物語ですが貴方が望めば転生ができます。」
…なに!?…いやでも
慧「…自殺をすることは罪だと聞いたことがあるのですが」
アズラエル「はい、以前までは大罪として即地獄行きだったのですが、近年増え続ける傾向になりましてね、地獄は亡者でいっぱいいっぱい……今は転生の処置をとり悔いのない安らかな死を迎えられるようにしています。そしてまた死を迎えた時、再審をしているのですよ。」
…なるほど。即地獄行きコースもあったのか。
慧「じゃあ、僕はその…ハリーポッターの世界に行きたいです。」
アズラエル「ええ、そうですよね。そうだろうと思っていましたよ。…ハリーポッターの世界に行くにあたって、貴方には天界からのギフトが5つつけられます。」
慧「ギフト…?」
なんじゃそりゃ…
アズラエル「ギフトはより転生先を幸福に過ごしていただけるよう天界からのサービスのようなものですね。貴方の場合は11歳という非常に若い年齢ですので5つまでつけられます。どんなものでも大丈夫ですよ。…ハリーポッターの世界なら、強い魔力が欲しいなんてのがありましたね。」
…そんなの、チートでしかない。
…ん?
慧「…ハリーポッターってやっぱり転生者いっぱいいるんですか。なるべく1人の世界がいいんですが。」
アズラエル「なるほど…それですと、性別が選べませんがよろしいですか?」
慧「…それしかないなら。…あ!でも記憶消してください。女になったら前世の記憶邪魔でしかないし。ハリーポッターの記憶と名前と…まぁ転生先で邪魔にならない程度に。」
アズラエル「…あー…もう1人転生者がいる世界線しかないのですが、それでもハリーポッターd」慧「それでも!ハリーポッターで!」
アズラエル「わかりました…あー…ギフトは何をつけますか?基本的にはなんでも大丈夫です。」
んー…なんでもいいと言われると悩む…
慧「あ、さっきの記憶は産まれた時からある状態にしてほしいです…本読むだけで内容忘れないでいられるとかできます?」
アズラエル「ええ、もちろん可能です。絶対記憶力ですね。…おつけいたしましょう。」
…やった、ハーマイオニーにも勝てるやもしれんぞ!こりゃ!
慧「2つめ…んー…誰も文句言えんほどの綺麗な容姿…なんて?」
アズラエル「ふふ、容姿端麗のギフトですね?これはどの世界でも人気ですね。」
…あー、まぁ、そりゃそうか。
誰だって1度は美男美女になりたいよな。
アズラエル「3つめはいかがなさいます?」
慧「ありきたりだけど、やっぱり強い魔力が欲しいですね。…どうせならダンブルドア並の膨大な魔力が欲しいです。」
アズラエル「超膨大魔力…この世界では一番人気ですねこれ。…扱えるかどうかはわからないですが。」
…えっ。
慧「使えないかもってことですか?」
アズラエル「怠ければですよ。鍛えれば力は発揮できます。」
…怠けるつもりだった。まぁ、そんなうまい話はないよな。仕方ない。
アズラエル「4つめはいかがなさいますか?」
んー…もしあの大戦の中生き延びてたら、仕事しなきゃいけないからなぁ。…魔法生物系の仕事って楽しそうだよな…。
慧「あー、どんな生き物とも会話できるようになりますか?」
アズラエル「…全種言語力にしましょう。貴方が意識を向けたものの言葉が理解できます。話すことも。…ドリトルのようになりたいのならお勧めはしません。彼方から話しかけてくるので煩くて仕方がないと言っていましたからね。」
はぁ…なるほどな…それはそうだ。
アズラエル「因みにですが、転生先は英語圏になりますが、読み書きなど特に問題はないかと思います。…前世の記憶もあまりないので逆に日本語の方が話せなくなるかもしれませんが。それは全種言語力で理解ができます。」
…あー、その問題もあったか。でも、特に気にしなくてもいいなら…
慧「不便なく使えるなら、それで。」
アズラエル「さて、最後ですね。5つめは何をつけますか?」
慧「…特にもう浮かばないんですよね。…適当につけられますか?」
アズラエル「んー…ではとっておきを。…こちらへ」
アズラエルへ近づくと慧の額に優しく口付けた。
アズラエル「私から貴方への願いは、人生を寿命まで楽しんでほしいのです。
…口付けにより、身の危険から守られる守護を授けました。私の守護により自らの決断による死は迎えられません。」
…なんだって!?自殺できないってことか!とんでもないやつをつけてくれましたね!
アズラエル「さて、転生の儀を行いますね?…」
アズラエルはそう言って目を閉じ祈りを始めた。
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???(どうなった?、アズラエル?)
???「ぅ…ぁ、」
自分から出た赤子の声に戸惑いながらも、状況を整理した。自分の手は明らかに以前より小さく、思うように動かない身体。
…転生してしまったと理解した。
大天使アズラエル
死の天使、誕生と死を記録する天使。すべての人間の名前が載ったリストを持っている。
自殺者への転生の儀を担っている。
天界では自殺は罪とされてきたが、近年増え続けるようになり、自殺者には転生の処置をとり悔いのない安らかな死を迎えられるようにしている。